80. 帰ってきたのは・・・
・・・思い付きです。勢いで執筆、投稿しました。
ですのでおかしな箇所があるかもしれません。
「話のプロットの構成や今までの話の修正や変更をしていきます」って書いたのに、また勢い任せ・・・。
太陽が昇り切った朝、エーデル公国の人々が次第に外へ出る頃。その頃になると開店する為に準備をする人が多かった。
果物を売る者は採りたて新鮮な状態の果物をこれでもかと見せる為に少し斜めに倒した箱の中にたくさん入れている。
また、何かを売る者は看板を店先に出して掃除をする。
そんな人々がいつもの様に働き始めていた時だった。
ムシッ…
ムシッ…
ムシッ…
身体中血まみれになった者が通りの真ん中を歩いていた。当然右手にもベットリと血が付いていた。それにも拘らずその右手で干し肉を貪り食っていた。
「?」
さっきまで無性に腹が減っていたその者は周りからの視線に気が付いた。
「「「・・・・・・・」」」
血まみれになったその者に対して幽霊か厄介事の種ではないかと怯える者もいれば大けがをしているのではないかと心配そうに見る者もいた。その事に気が付いたその者は無言で目だけキョロキョロと周りを見た。
「・・・・・・・」
だが、その者はそんな事をお構いなしに歩く足を止める気配はなかった。こうなる事承知でここエーデル公国に戻ってきたのだ。そしてその者が歩いている先はエーデル支部ギルドへ向いていた。
エーデル公国ギルド支部の中では帝国ギルド支部の時とさほど変わらなかった。荒くれ者が大勢集まり、好き勝手に酒を飲んで時には喧嘩をし、時には下品な程の大声で笑い声を上げているのが聞こえてくる、そんなのが日常茶飯事だった。
ただ、流石に午前中・・・少なくとも朝から酒を飲んでいる者はごく少数だった。
だが、それでも中が騒がしいのはあまり変わらなかった。ギルドの中では依頼書が貼っている掲示板の前には複数の冒険者達がいた。
貼られた依頼書はそのまま剥がして受付に持っていけば受付嬢が受注する。それで依頼を受けた事になる。掲示板から先に誰かが依頼書を剥がした者勝ち、つまりは早い者勝ちという事だ。
どの依頼を受けるかを仲間と相談したり、「この依頼書は俺のだと」静かな喧嘩が始まっていたりとこう言った事から騒がしさが生まれていた。そして、普段の話声は次第に大きくなって騒がしさの原因となる。
そんな中ギルドの玄関口のドアが開く。
ギィィィ…
蝶番特有の音が鳴る。するとさっきまで賑やかだった声が急に静まり屯っていた冒険者達は音がする方へ向く。
「・・・・・・・・・」
一人。
「・・・・・・・・・・」
また一人。
「・・・・・・・・・・・・・・」
そのまた一人・・・といつもの様に普段見慣れない人間が自分の目の前を歩くなんて事は当たり前の事だった。
見慣れない者がギルドへ入ると普段の騒がしさはピタリと止む。
好奇心や見定めるような目、初心者と分かっていてか、からかっているのか、やや威圧するような目で出迎える。当然見慣れない者はその視線を浴びる。気の弱い者であればすぐにでも引き返してしまうだろう。
それもまたごくありふれた日常だった。
だが、今回目の前で歩いていた者は「当たり前」とは言い難い者が歩いていた。
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
すれ違っていくにつれて一人、また一人とその場にいた冒険者はギョッと驚き大きく目を見開きその者を視線から外さずにいた。
見慣れない者への洗礼として煽り文句の一つや二つ言おうとする者達も決して少なくなかった。だが、今回はそれをしなかった。いや、できなかった、と言うべきか・・・。
ムシッ…
ムシッ…
ムシッ…
まず、その者は血まみれの男だった。ワインとかそう言った別の液体ではなく紛う事無き血だった。その証拠にその男の身体から異様なまでに鉄の匂いがしていた。
その血まみれの男はやや俯き気味に右手で干し肉を周りに咀嚼音を鳴らしながら無心に齧り付いていた。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
誰も彼もがその男を視線で追っていくと男の行く先が分かった。
「お、おい、あいつ受付の所へ行くぞ・・・」
ギルドの中にいた冒険者達の内の誰かが言った。実際その誰かの言う通りその男が行く先は受付だった。
「・・・・・・・・」
流石にあんな異様な雰囲気のまま受付に行く男をそのままにするのも何か気が引ける、そう思ったその場にいた冒険者達の内の一人の男がその男の肩を掴んだ。
「おい、何があったのか知らんが、そのまま行くのは・・・」
「まずいだろ」、そう男が言おうとした時だった。
ギラッ…
「・・・っ!」
「「「・・・!」」」
その男が振り向いた瞬間、不気味に輝くその眼光に威圧された冒険者の男は思わず絶句してしまった。同時にその男の視線の先にいた冒険者達はその男の眼光を見た瞬間凍り付いた。
「・・・・・・・・・・・」
無言のまま睨み続けるその男。その男の正体は身体中に血まみれになったシンだった。
「・・・っ」
シンが何か言おうとした時、受付の方からある女性の声がした。
「シンさん!?」
「・・・・・・・・」
シンは声がした受付の方へ向くとそこにいたのはここエーデル公国ギルド支部の副ギルド長で、かつてAランク冒険者だったマリーだった。マリーの顔が驚きのあまり引き攣っている事にシンは何かあったのか尋ねる。
「どうかしたのか?」
その問いにマリーは今度は心配そうな声でシンに訊ねる。
「・・・どっ、「どうかしたのか」じゃありませんよ!ど、どうされたのですか?その血は?」
シンは今の服装を見る。「ああ、これのせいで視線を浴びていたのか」、と判断したシンはマリーに問題無い事を言った。
「ああ、大丈夫だ。それよりもギルド長と話がしたい」
「大丈夫って・・・」
今のシンの姿は血まみれだ。どこからどう見ても大丈夫じゃない。その上干し肉を貪り食っている。傍から見れば狂人と言われても仕方がない光景だ。
「俺の血ではないから大丈夫だ」
「・・・・・」
明かにただ事ではない何かに関わっている。その場にいたものであればそう判断するだろう。だが、シンは自分の事であるはずなのに、傍から見たと言った、まるで第三者からの視点の物言いだった。
何か得も言えぬ冷たいものが背筋を撫でるかのような寒気が襲ってきたマリー。顔がだんだん真っ青になっていくマリーにシンは声を掛ける。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
シンは純粋にマリーの様子に気になって声を掛けた。心配する言葉であるのにも関わらず、まるで頭の中に響くような声に聞こえマリーの心は火を強くする為に息を吹きかける様に、更に恐怖心を煽る。一拍位空いてから答えるマリー。
「・・・・・ええ、大丈夫、ですよ」
「・・・そうか」
そう短く返事したシン。そのままを一緒に行くのもどうかと思ったシンは、そのまま自分の足でギルド長の所へ向かう事にした。
まず行く前にギルド長が2階のギルド長室にいるかどうかについて尋ねた。
「今、グランツギルド長はどこにいるんだ?」
シンがそう尋ねるとマリーはやや小さくなった声で答えた。
「ギルド長室にいます」
「分かった」
シンはそう言って2階に上がってそのままギルド長室へ向かった。
「・・・・・・・・・・・」
その様子を見届けたマリーは堪えていたのか一気に冷汗が噴き出した。
「フゥ~…」
静かに目を瞑り小さな音ではあるが明らかな深呼吸をして息を整える。改めて2階の方へ見る。
(あの雰囲気は何・・・?)
敵意とも悪意とも殺気ともいえぬ、不気味で恐ろしく、圧倒的な異様な雰囲気。そんな雰囲気を出しているシンに対して、未だに冷や汗をかきつつマリーなりに心配していた。
ギルド長室ではグランツは机の上にある何かの書類に目を通していた。
コンコン…
ギルド長室のドアからノック音が聞こえた。職員であれば自分の名前を言うのが普通だった。だが、今回ノックしてきた時にはそれが無かった。という事は部外者の誰かがギルド長室まで来たという事になる。
グランツはドア向こうの何者かに訊ねる。
「誰じゃ?」
すぐに答える。
「シンだ」
3文字という短い答えにグランツは驚きつつも中へ入る様に言った。
「うむ、入ってくれ」
「失礼する」
「!?」
グランツからして・・・いや、他の誰から見ても今のシンは異様な光景だった。ほぼ全身血まみれになったシンは未だに干し肉を貪り食っていた。
そんな様子のシンにグランツは恐る恐る訊ねる。
「・・・腹が減っておったのか?」
「ああ」
「・・・・・よく血まみれでも食えるの?」
額に小さな冷汗をかいて呆れた様に言うグランツ。
「こんな事はよくあったからな・・・。悪いが、食べながらで話を続けるぞ。それで・・・」
シンの口から出た「こんな事はよくあった」を聞いたグランツは眉を顰める。
(何をしてこうなったのじゃ?)
グランツは以前この付近で起きた紛争の事を思い出す。この世界・・・いやこの近隣で紛争が起きたのは遠い昔の事ではなかった。その事を考えればシンはその紛争に関わったのかと考えていた時、シンは徐に懐から手帳を取り出した。
「そ、それは?」
「アウグレントが握っていた今回の事件の証拠品だ」
「!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「それを作れば今洗脳で苦しんでいる奴をある程度はどうにかなるだろ?」
一言に「苦しむ」と言っても、色んな形で苦しんでいる。
「後は、アンタらがどうするかで洗脳された連中の今後が決まる」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
シンのその言葉を重く受け止めたグランツ。今後の対応の事はエーデル公国とアスカ―ルラ王国と交えて話し合いをする。その時に洗脳された冒険者達についてどうするべきなのかを議論する事になる。その時までにグランツは洗脳された冒険者達をどうしたいのか決めなければならなかった。
「・・・確かに受け取った」
そう強く言ってシンから手渡された手帳を受け取り、言葉を続けた。
「儂は洗脳された彼らの待遇をなるべくなら良いものにしようと考えておる」
「・・・そんな金、あるのか?」
少なくとも意図していないとは言え今回の一件はギルド側に非がある。立場としてはかなり小さなもので発言権はかなり弱いだろう。だが、それでも冒険者達を身内の様に思っているグランツは冒険者達を被害者として扱い、ある程度の補償金の援助をこの2国に求めるつもりだった。
「な~に、どうにかなるじゃろう」
グランツはにこやかにそう答える。
「・・・そうか」
対してシンは素気ない返事をして未だに干し肉を貪り食っていた。そんなシンに気にも留めずグランツは机の方へ指を指す。
「それと・・・ほれ、そこにある箱と袋の中を見てくれ」
グランツの言う通り高級そうな小さな木箱と群青色の小さな袋があった。
「ああ、「銀のメダル」だな。こっちは大金貨か?」
「うむ、大金貨10枚じゃ」
シンは机の上にあるその2つの中を確認する。
「確かに報酬は受け取ったよ」
確かに高級そうな小さな木箱の中には「銀のメダル」があった。群青色の小さな袋には大金貨10枚が入っていた。
それを確認したシンはそれらを持ってギルド室長のドアの方へ向かった。
「・・・今日は疲れた。それに流石に血まみれのままこれ以上うろつくのも、問題あるしな。取敢えず城へ帰る」
シンがそう言うとグランツは頭を振る。
「そ、そうじゃな、詳しい事は後日という事で良いかの?」
「ああ、後日で。じゃあ俺はこれで・・・」
「今まですまなかったのぅ」
グランツは笑顔でそう感謝の言葉を送った。
「気にするな」
シンはそう言ってギルド室を後にした。その時グランツは自分の椅子にドカッと座り直す。
「スゥ~…フゥ~…」
静かに目を閉じて深い深呼吸した瞬間、大量の冷や汗が流れる。今まで恐怖心を表に出さない様に堪えていたのだが、もはや限界だった。
コンコン…
「!」
ドアノック音で勢いよくそのドアの方へ見るグランツ。恐る恐るノック音の主を訊ねる。
「・・・誰じゃ?」
「失礼します」
それは嫌というほど聞き慣れた声だった。
「ああ、マリー君か・・・入ってくれ」
グランツの言う通りドアから入ってきたのはマリーだった。マリーが入ると見た事ないグランツの様子を目に入る。
滝のように流れる冷や汗を流し、蒼白となった顔になったグランツを見たマリー。なぜこうなったのかは想像つくが、一応声を掛ける。
「ギルド長、大丈夫ですか?」
その掛け声に僅かに首を縦に振るグランツ。
「うむ、大丈夫じゃ。それよりも君の方は?」
グランツはマリーが未だに冷や汗を流し、どこか硬い表情をしていた事に気が付き、声を掛ける。それに気が付いたマリーは軽く深呼吸をした。
「・・・はい、大丈夫です、ギルド長」
それを聞いたグランツは椅子から立ち上がってギルド長室へ来た理由を訊ねた。
「それで何か用か?」
「は、はい、今回の依頼の事で・・・」
「そうか・・・そうじゃったな・・・」
グランツのその言葉で少し間だけ沈黙が漂った。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
今回の依頼は達成された。確かに達成された事に嬉しさはあった。だがそれ以上にシンの異様な光景に2人は・・・シンを見た者は何か寄り難い雰囲気を醸し出していた。
まるで人の形をした何かの存在を直に見た様な・・・。
「シン君って何者なんでしょうね・・・」
「分からぬのぉ。じゃが、一つ言える事は彼のおかげで儂等の大きな悩みの種は消え去った。その事には感謝するべきじゃ」
グランツはさっきの言葉に少し横に首を振る。
(いや、あれは何者かというより・・・)
グランツとマリーのシンに対する目は英雄と化け物と混ざり合ったような複雑な視線だった。
(何か・・・と言うべきじゃろうな)
グランツとマリーはお互いそれ以上シンの事について話す事も無く、いつもの様に書類の受け渡しをしてそのまま普段通りのギルドの一日を迎えた。
今度こそ・・・今度こそプロットの構成や今までの話の修正等をちゃんとしていきます。
ですので話の更新の日程はまだ分かりません。
こんな行き当たりばったりな小説ですがよろしくお願いします。




