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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
旅の準備
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4.出会い

「見つけた・・・」


 シンはそう小さく呟く。

 動かなくなった吹き矢を飛ばした男を左脇に抱えて、奥に行った連中の後をついて発見するまでそれほど時間はかからなかった。

 やや遠くから見るに人数は15、6人程で剣や鎧等で武装していた。中には抜身の剣を持ってウロウロしている男が何人かいた。

 動かなくなった男と同様の服装であったり、皮の鎧を身に付けていたりとしていたが、とてもガラの良いとは言えず、まるで漫画やR(ロール)P(プレイング)G(ゲーム)等に登場する盗賊の様な恰好した連中だった。2台の荷馬車があり、1台は幌馬車。もう1台は幌馬車と比べると少し大きい木製の箱型の馬車。はめ殺しの鉄格子の窓が付いていた。


(こいつらは犯罪とか関わってんのか?)


 よく人を見た目で判断するなと言うが、盗賊の様な恰好した連中を見てそのまま気軽に声を掛けられる気分にはなれないだろう。


(というか、俺に攻撃してくる時点で明らかに碌でもないって事だろうな・・・)


 吹き矢を自分に攻撃してくる男の仲間である事を考えた真は碌でもない連中と判断した。

 特に何か仕掛ける事も隠れもせず、そのまま真っ直ぐ連中の前に立った。


「○○○○○○!?」


「ん?」


 聞き取れなかったのだろうか、連中の内の男の言葉が理解出来ていなかった。抱えていた男をドサッと下す。


「○○○○!?○○○!」


「○○○○○○!」


 目の前にいた2人の男は真が抱えていた男に何かを叫んでいた。それに対し抱えていた男は


「・・・・・・・・・・・」


 何も喋らなかった。というより喋れなかったというべきか。


「○○○○○○○○○!」


 改めて男達の声を聞いても、やっぱり何て言っているのかが分からない。言葉から察するに英語でもその他の国の言葉でも無かった。

 ただ分かるのは何か怒声の様な声で真にぶつけていた事だけだった。


(何を言ってんのか分からん・・・。まぁ異世界だし特有の言語とかあるか・・・)


 前の世界、真の居た現実の世界でも日本という国があれば日本語、イギリスという国があれば英語という言語がある様に、異世界があるのであれば異世界特有の言語があるのだろう。だとしたら当然知らない言語があってもおかしくはない。

 真はそう解釈した。


「「「○○○!」」


 真は連中が何を言っているのか分からなかった。

 分からなかったが、連中は多くは剣や斧、弓矢、槍等を出して構え、数人の魔術師風の男達は木製の仙人が使う様な布が巻いた杖を取り出し構えた。真を取り囲んだ。真に対して戦闘を挑んでいる様子だった。


「・・・・・・・・」


 少なくとも真に対して敵意を持っている事だけは明らかだった。


「○○○○!」


「○○○○○○○○!」


「○○!」


「○○○○!」


 男が何て言ったのかは分からないが、戦闘開始の合図のようだった。


 魔術師らしき男が呪文の様な言葉を唱える


「○○○○○○○、○○○○○○○○○、○○・・・」


 同じく魔術師らしき男が別の呪文のような言葉を唱え始めた


「○○○○○、○○○○○・・・」


 魔術師らしき2人は呪文のような言葉を発していた。

 連中が戦闘を今か今かと構えていると、真は怠そうに黒い右手で頭をかき、ため息をついた。


 ヒュンッ!


 何か風を切ったような音がした。すると、連中は真の右手を見た。いつの間にか真の右手の指は大きく鋭利な刃物になり、右腕を真っ直ぐ斜め下に伸ばしていた。

 そして右手をバッと振り払った。後には血がついていた。


「いけね、余計なモンまで斬っちゃった」


「!?・・・・・!!!」


 一体何が起きたのかを連中が理解しようとする。すると一人の男が、仲間の首や胴体等にツツーッと切れ目が浮いて出てきて事に気が付いた。


「っ、○○・・・」


 男は何か言おうとした瞬間に自分の視界が意図しても無いのに大きく斜め下にズレ落ちる。


「!?」


 ドスン・・・と地面に顔が落ちていった瞬間・・・


 ブシュ―…!


 斬られた胴体や首から噴水の様に大きく血飛沫が上に向かって出た。


 ドサッドサッ・・・ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサッ!


 次々と斬られたところから大量の血が出て頭や上半身の一部が地面に落ちていった。


 ピシッ…


 今度は2台の馬車の車輪が横一文字に切れ目が浮かぶ。


 グラッ…


 切れ目が浮かんでそのまま地面に落ちるまで大して時間はかからなかった。


 ドスンッ!


「「「キャーッ!」」」


 地面に落ちた瞬間、幌馬車の方は落ちる音だけだったが、少し大きい方の馬車は落ちた音と共に中から何かの悲鳴の様な声が複数聞こえた。


 そして最後に・・・


 トスッ!


 抱えられていた男の頭を「BBP」で細長い棘に変わった右手の指でとどめを刺す。抱えられていた男はビクンッビクンッと数秒程体を痙攣させやがて止んだ・・・。


 ヒヒヒヒヒヒーンッ!


 瞬く間に乗組員が殺されて大人しくしていた馬車の馬達が急に暴れだす。


「・・・・・」


 そんな暴れだしていた馬達にシンは近付く。

 馬達が暴れて馬車諸共暴走しでもしたらまた面倒な事になる。そう考えた真は右手の指を再び大きく鋭利な刃物に変え馬車につながれていた馬具を目にも止まらぬ速さで切った。


 ガキンッ!


 ガキンッ!


 馬達を野に放った。これにより馬達を逃がして暴走を防いだ。


 グイヒヒヒヒヒヒィーン!


 狂った様な悲鳴の様な鳴き声を上げる馬達。


 ドドドドッドドドドドドド…


 そしてそのまま足早に逃げ去っていく馬達。

 怖がりながら逃げていく様子の馬を複雑な気持ちで見て小さく溜息をついた真。


(これで一先ず馬達による暴走の危険は無くなった・・・)


 真は辺りを見回す。連中の死体が転がっており、ものの見事にスッパリと切断されて血や腸が出ていた。辺り一面が血の海になり、一気に鉄臭くなっていた。


(悲鳴が聞こえたのは・・・)


 悲鳴がした方へ振り向き、そこまで歩いて向かった。

 

 真は少し大きい箱型馬車の傍まで来た。箱型馬車の片側の車輪が物の見事に横一文字に斬られて傾いた。そのとき複数の小さな悲鳴を耳にした。それは箱型馬車の中だ。複数の気配はあったが、固まって動かなかった。


「・・・・・」


 このままにして置くのもどうかと思い箱型馬車の後方に回りドアを見つけた。南京錠のような鍵で施錠されていた。


(面倒だな・・・)


 真は鍵を探すのが面倒くさいと思い、南京錠の様な鍵を思いきり握った。


 ガキンッ


 扉の鍵の部分についていた鍵そのものをもろとも引きちぎってその辺にポイッと捨てた。


「・・・・・」


 真は少しの間だけドアを見つめ無言になる。


 真は箱型の馬車を見て何の目的でこの馬車があるのか何となく分かっていた。大型で鉄格子の窓が1つはめ殺しに取り付けられている。これだけ大きいと運ぶものが限られてくる。

 中からは何かの悲鳴の様な声が複数聞こえた。

 考えられるとしたら家畜か・・・。或いは人間か・・・。


 箱型の馬車のドアノブを静かに握り、キィッと蝶番特有の音を鳴らしながら、そっとドアを開けた。すると


「「「キャーッ」」」


 とまた悲鳴が聞こえたのだ。それも複数。その悲鳴は動物ではなくやはり人間だった。

 そっと中を見ると薄暗く、光ははめ殺しの窓から差し掛かる日光だけだった。

 奥の方を見ると6人の子供が寄り添っていた。姿を見るとボロボロの貫頭衣を着て、首輪と手枷と足枷に鎖が繋がれていた。痩せた8~15歳位までの男女関係なく押し込められていた。


「「「・・・・・・・・」」」


 寄り添っていた子供達は皆怯えきっていた。

 一番前でキッと睨み付ける赤毛で赤い瞳の15歳位の少年やグスグス泣く年下の子供達を抱いている長い金髪で、青い眼の少女。

 いきなり、外が騒がしくなり、馬車が大きく傾き、鍵のついたドアを無理やりこじ開け、見た事のない人間が立ってその後ろには死体が転がっている。

 そんなものを見て彼らが不安になるのも無理はない。


 不安がっていた子供らになるべく穏やかに


「おーい、大丈夫か?」


 と声をかけてみた。


「「「・・・・・・・・・・・・・」」」


 だが連中同様、言葉が通じておらず、それどころか、より強い警戒をしていた。


(まぁ仕様が無いか)


 と溜息をつき、首輪等の鍵を見つけてここに置き自分はここを去ろうと考え、後ろへ向いた。すると・・・


「あなた、日本人・・・?」


「!?」


 真の足が止まった。すぐさま「日本人」と発した者の方へ振り向いた。


「・・・・・」


 思いもよらない単語を発したのは首元までかかった水色がかった銀の髪で12歳位の少女だった。


「「・・・・・」」


 銀の髪の少女と出会った真。この出会いが後に真にとって重大な事実を知る事となる。


追記 改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。

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