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56.再会と憂鬱

な、何とか書けた・・・。

 シン達が「羽休めの町」のヨルグから離れてから夜が明けた頃。バルドラは「羽休めの町」のヨルグから離れた山岳地帯の上空にいた。翼を大きくはばたかせ下の様子を窺っていた。


「そろそろ見えてくるな・・・」


 ギアはシン達が無事にギルドで登録ができているだろうと考えていた。

 ナーモ達に「生き方」を十分に教えた後、ギルドで登録すれば、シンとナーモ達とは離れ離れになる。そこへギアはさり気無くサクラの屋敷に誘導する考えだった。


「ナーモ達は・・・そのまま冒険者になっているか・・・」


 だが、ギアのこの考えからするとシン達は登録してすぐ依頼を受けるか、他所の国か町へ向かう事になる。いくらなんでも気が早すぎる。シン達がヨルグでゆったりと観光か屋台で買い食い等の事を考えていなかった。

 そんな事を考えずに空から眺めていた。


「さてどこに・・・」


 ギアが何気なく山の麓の岩だらけの崖沿いの部分を見ると何かが動いているのが見えた。


(む?旅人か?)


 崖沿いで動いていた何かを目を凝らして確認しようとするギア。


「!」


 それはシン達だった。しかも、シン達の前には数人の黒に近い藍色のフードを被った者達が先行していた。まるで連れていかれるような図になっていた。


「何故山に・・・?」


 誰も答えない疑問の呟きにギアの目は大きく見開いていた。


(・・・ギルドで何か依頼を受けたのか?)


 ギアはナーモ達がギルドで登録は出来ていたという考えに疑いは微塵も無かった。そこから考えられる可能性で浮上したのが依頼だ。

 依頼で山や野原、洞窟、河辺等の素材収集かモンスター討伐の依頼が舞い込んできて早速受けたと考えていた。

 だが、その考えにすぐさま頭を横に振った。

 何故なら、シン達の前にいたフードを被った連中を見たからだ。


(いや何だ、あのフードの者達は?)


 明らかに怪しい。ギアの第一印象はそれだった。


(シンの事考えれば負けてどうにかされたとは考えにくい)


 ギアはシンが負けて変な連中にどこかに連行されているとは考えられなかった。ギアとの仕合と言う名の模擬戦闘での結果を考えればまずあり得ない。皆を或いは皆のうち誰かを人質を取られたとしてもシンの強さであればそれも問題にはならない。

 この事を踏まえてギアが辿り着いた答えは


「妙な連中に騙されておるのか?」


 これだ。何らからの形で妙な連中とシン達に接触する。言葉巧みに騙してどこかへ連れていこうとしていた。ギアはそう推理した。


「もしそうであればどうにかせんとな・・・」


 ギアは目つきを鋭くしシン達の前に居る連中対して睨み付ける。


「皆よ、今参るからな・・・!」


 ギアは盛大な勘違いを起こしながらシン達の下へ突っ込んでいった・・・!





 同時刻、シンの耳にアカツキの緊急の通信が届く。


「ボス!」


 耳を傾け、小さな声で返事をする。


「アカツキか?」


「ボス、ギアと思しきドラゴンがそっちに突っ込んでいくぞ」


「何?距離は?」


「1.013kmだ。ものの5分もせずにそちらに着く」


「マジか・・・」


 シンはギアが来るであろう方角に目を向ける。そんな様子のシンに対して気が付いたのはネネラとエリーだった。


「シン・・・?」


「どうしたの・・・?」


 2人がシンに声を掛けた時残りの皆が同時にシンの方を向いた。


「どうした、何かあったのか?」


「何か起きましたか?」


 今度はナーモとリビオがシンに尋ねる。


「・・・全員戦闘準備をしろ」


 アカツキから聞いたのは、飽く迄()()()()()()ドラゴンだ。ギアと決まったわけでは無い。もし、こちらに害なすドラゴンのような生き物であればこちらがタダで済むはずがない。その可能性があるためシンは全員に警戒を促したのだ。


「・・・!?」


 ほんの一瞬黙ったがすぐさま何かが空を飛んでこっちに飛んでくると分かった瞬間、全員シンが向いている空の方へ目を向け、臨戦態勢を整える。


「「「・・・・・」」」


 じっと目を凝らし何かを確認しようとする。





(ああ、やっと分かった)


 シンは最大半径約600mまでのシンに対して害意や殺意、悪意を持った何かを気配で感じる事は出来る。

 ギアが500m地点までこちらに迫った時視認しにくいがシンはその存在を気配で感じるという形でやっと確認できた。つまり、ギアは自分達に対して害意をもって接するつもりのようだ。


(だが、何で殺気立っているんだ?)


 シンは何故ギアが殺気立っているのかを考える。その時ふと思い当る事が出て来てリビオ達やネネラを見た。


(彼らがいるから、か・・・?)


 彼等とはリビオ達やネネラの事だ。シン達は面識があるが、ギアは知らない。つまり何か誤解しているのか、ギアは彼らを敵と考えてこちらに迫ってきている。


 ものの5分もかからずに来るとアカツキはそう言ったが実際は30秒ほどでおおよそ1kmから500mにまで縮めて来たのだ。このペースだと10秒足りるか足りないかでこっちに来るだろう。


 リビオ達とネネラはもう既に剣を抜いていた。




 空から飛んでくる何かがこちらに到達するまで300mを切った時


「白いドラゴン種だ。警戒を怠るな!」


 と声を上げ更に警戒する皆。完全に緊迫した状況になった。そんな中





「「・・・・・ぁ」」


 と声を漏らし最初に気が付いたのはククとココだった。


「ギア・・・」


「・・・・・」


 シンとアカツキ以外で空からくる存在の正体が200m地点でギアと分かったのはこの2人だった。そんなククとココの言葉に


「「「・・・え?」」」


 と残りの皆は思わず声を上げる。確認するかの様にもう一度目を凝らす。


「ホントだ・・・!」


「ギアだ!」


「おーい!」


「・・・ギア」


 シーナとナーモ、ニックは漸くギアの存在に気が付いた。ニックは大きく手を振る。するとリビオ達が


「ギア・・・?」


 とリビオ達とネネラの頭の上に疑問符が上がる。


「そこの者達、何者だ!?」


 ギアが大声でシン達に声を掛ける。いや正確にはリビオ達とネネラ達に、だ。


「!?」


 いつの間にかギアはシン達の5m離れたまで来ておりバサバサと翼を動かしながらリビオ達に何者かを問い詰めていた。


「しゃ、喋った・・・」


 と驚くコモンドールや


「うそ・・・」


 と絶望した様な顔になるネネラ。そして


「ギア・・・?」


「え?」


「何、どうしたの・・・?」


 何故リビオ達とネネラに対して穏やかではない接し方をしているのか分からないニックとククとココ。

 そして、ギアは更に厳しい目付きで


「もう一度問う。貴様らは何者だ!?」


 更に声を大きくし荒げる。


「「「ひっ・・・」」」


 こんなギアは見た事が無く思わず小さな悲鳴を漏らしてしまったシーナとククとココ。


「・・・・・」


 口をキュッと一文字に結び冷汗を流し決してギアから視線を外さないネネラ。リビオの部下達も圧倒的な存在のギアに対し臨戦態勢を取るもののどうすればわからず今にも氷のように固まりそうだった。

 まるで災害に遭った時の様に体が動かなくなってしまうように。

 下手をすれば一触即発になりかねない状況にシンはリビオ達の前に出て説明しようとする。


(これは俺が前に出て説明を・・・)


 とシンが行動に移そうとした瞬間、先に行動に出たのが


「ギア・バルドラ様!」


 リビオだった。


「「「!?」」」


 全員が面を食らった。シンと皆とリビオの部下達、ネネラはまさかこのギアと面識がある事を示唆するセリフが飛んでくるとは思わず驚く。

 ギアはまさか自分と面識がある者がここに居るとは思いもしなかった。

 驚く状況に更に上乗せするかのように


「お久しぶりです、ギア・バルドラ様」


 とリビオはそう言ってシン達よりも前に出てギアの方に向かって跪いた。


「「「・・・・・!」」」


 リビオの部下達は同じく跪いた。ネネラはリビオがギアに対して「様」付けで呼んでいた事を思い出し同じように跪いた。


(どういう事だ?リビオはギアと面識がある?)


 どういう事かが分からないまま状況は進んでいく。


「我ら魔眼族を代表してお礼を申し上げます」


 いきなり跪いたリビオ達にギアは


「・・・・・そうか、其方達は魔眼族であったか」


「はい、我らの目の件の事があります故、大変ご無礼ではございますが今はこれを取る事ができません」


 無論「これ」とはリビオ達が被っているフードの事である。


「よい。所で何故シン達と行動を共にしている?」


「!」


「それにそこの娘は?」


 言うまでもなく「そこの娘」はネネラの事である。


 そんな中シンにとっては拙い事が起きていた。シンが持っている銃器を魔眼族だけでなくギアにも知られてしまう事態になってしまう。下手にギアに知られてしまえば第三者に銃器の事を知られてしまう。それだけは避けねばならない。


(何か手を打たねば)


 シンがそう思った時リビオが


「シン殿に帝国による危険が迫ってきていた所を我々が助けました」


「・・・・・」


 シンは驚く。圧倒的な強さを誇っているであろうギアに銃器の取引の事を話さなかったからだ。そしてリビオの説明に続けるようにネネラも


「わ、私も帝国の危険から逃れるために彼らについてきました・・・」


「ふむ、相変わらずお人好しだな」


 半ば呆れ、半ば感心するギア。


「・・・・・」


 ギアはリビオ達の前に着地し腕を組む。


「・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 リビオ達は冷汗をかく。血を吐く思いで新兵器のヒントになるであろうシンの情報を隠しギアに接していたからだ。バレればどんな事が起きるのかさえも想像もしたくもなかった。


「・・・・・ふむ」


 数秒の沈黙から初めて声を発したギア。そんなギアにリビオ達やシン達は緊迫した雰囲気にのまれていた。


「あい、分かった。ならば我も同行しよう」


「えっ」


「何?」


 リビオとシンは聞き間違いではないかと思う程驚いた。


「我なら空から危険がないかどうか位何とでもなる。それにいざとなれば我が潰すしな」


 中々に物騒な事をアッサリと言うギア。


「わ、我々としても嬉しい限りですがよろしいのですか?」


「む?何がだ?」


「我々の都合に付き合っても良いかと・・・」


「何、構わぬよ」


「そう、ですか・・・」


 リビオが言ったセリフには半分本音で半分はシンの銃器を知られたくないためギアに用事の有無について尋ねたのだ。もしあればその用事の方へと促しを掛ける。だが結果はギアには用事は無く自分達の難民キャンプに向かい入れてどうにかしてギアにシンの銃器の事について隠しながら接する事になった。


 同じ銃器の事について隠したいシンは


「・・・・・ハァ」


 思わずため息が漏れる。当然シンもリビオと同じくその事については隠しながらと言う形になった。


「え!ギアも一緒!?」


 ココの黄色い声が発する。


「うむ、暫しの間共に行動する事になった」


 ククも目を輝かせてギアに近付く。


「ホントに?」


「本当」


 ギアの顔が笑っているように見えた。多分ギアもまた皆と一緒に居られる事に嬉しいのだろう。


 そんなククとココが喜んでいる中シンは最早ギアが難民キャンプまで来るのは避けられないため策を練る為アカツキによって情報を得ようとしていた。


「アカツキ、魔眼族の難民キャンプらしきものはあるか?」


 シンは小さな声でアカツキに魔眼族の難民キャンプの場所を予め知っておき、ギアがいないのを見計らって魔眼族に銃器のヒントを教えようと考えたのだ。


「ボス、彼らの難民キャンプと思しき場所があるんだが少し問題が・・・」


「問題?」


 アカツキが言う「問題」にシンは訝し気に訊ねる。


「ボス、以前俺がこの惑星を観測した時、高さ20mの生き物がうろついていた事覚えているか?」


「ああ・・・って、まさか!?」


「・・・その「まさか」なんだよ」


 つまり、これから行く場所は「高さ20mの生き物がうろついている」難民キャンプという事になる。シンはゆっくりと天を仰ぎ


「・・・こういうのを「天に見放された」って言うのかな」


 とアカツキに向けるかのように言った。


「だが、何故そんなバカでかい生き物の側で暮らしているんだ?」


 確かに「高さ20mの生き物」が存在する場所。という事は少し動いただけで大惨事になる事だってありうる所だ。それなのにも関わらずそんな危険な場所に難民が住んでいる。

 考えられる事はただ一つ。


「その「高さ20mの生き物」が知性と理性を持った存在だって事だろうな・・・」


 もし家畜等の動物であれば「魔眼族の家」と言う物が分からないまま踏みつぶしたりしているだろう。そうなれば魔眼族は住む事はできない。

 という事は少なくとも「高さ20mの生き物」は大人しく「魔眼族の家」という建築物をちゃんと理解しているという事になるだろう。


「まぁ最もアカツキだけの情報じゃここまでだな」


「悔しいがボスの言う通りだ。後は俺達の目で判断だな」


「ああ」


 アカツキのカメラでは上から確認している為「高さ20mの生き物」の頭上だけしか分からなかった。今のシンの情報収集手段はアカツキによるものとシンが移動し、その目とワークキャップのカメラで確かめるという事しかできなかった。


「取敢えずそこまで行ってからだな」


「ああ、ヤバそうなら皆を連れて逃げるさ。そろそろ移動する」


「そうか。じゃあここまでだな。通信終了」


 アカツキはそう言うと


 ブツッ…


 と電話回線が切れる特有の音が鳴った。


(さて、どうなるか・・・)


 やや不安を抱えながらもシン達はリビオ達の魔眼族の難民キャンプへ再び歩む。





 リビオの元へソラミが近づきリビオの護衛全員の疑問を投げかけた。


「リビオ様、あのドラゴン・・・ギア様と知り合いですか?」


「はい、昔我が国が盗られた時国民を非難させるために行軍をしていたのですがその時にアイトス帝国の兵士たちに見つかってしまったのですが、その時偶々ギア様が通りかかれた時に助けていただいたのですよ。つまりあの方は我が国の恩人なのですよ」


 と簡潔ではあったが丁寧に答えるリビオ。


「そうだったのですか・・・」


 リビオ取り巻きの護衛全員は当時かつてBランクの優秀な冒険者として活動していた。リビオの護衛として働きだしたのは自分達の祖国がアイトス帝国に奪われた時に魔眼族の難民キャンプの元へ行き、自警団として働いた後、リビオの護衛となったのだ。


 コモンドールはその事実を知り


「私達は他国に助けられているだけでなく、一頭のドラゴンと()()()()()に助けられているのですね」


 と静かに語るように呟く。その呟きに答えるかのようにリビオが言う。


「はい、我々はその方々に恥ずかしくない様に恩を返さなくてはなりません」


 リビオは真剣な表情で


「この先苦労をおかけしますが、付いて来て下さいますか?」


 護衛全員に訊ねる。そして、全員何の躊躇いや迷う事無く


「「「はい」」」


 力強い返事で返した。





 ギアはギアで大きな問題を抱えていた。ギアはシン達の身の安全の事を考えて暫くの間は行動を共にするつもりでいた。だが1年以内にサクラの屋敷まで連れてこいと言う依頼がある。ギアはさり気無くサクラの屋敷までシン達を誘導させ連れてこようと考えていた。


 だが、シン達ではナーモ達の旅支度が不完全な状態にあるのが現状では一番大きな問題になっている。それらを用意するのに少なくとも数日は動けない。


 また、帝国から追われている事も考えれば、ほとぼりが冷めるまでは動けない。ギアの見立てではその期間はどんなに少なく見積もっても1ヶ月。


 そしてギアにとっては最大の問題はシン達がいつまで魔眼族の難民キャンプに居るのか、だ。しかし、飽く迄これは予想だ。確実なのはシン達に聞けば良い。だがさっきの旅の準備と帝国の件の事を考えればもっと長くなる可能性が高い。その事を考えれば答えによっては1年以上に伸びてしまうだろう。もしそうなればサクラの雷が確実にギアに直撃するだろう。


「・・・・・」


 ギアはブルリと身震いする。達成できるのかどうかが不安になっていた。


「むぅ、サクラにどう言えば・・・」


 ギアから出る言葉はサクラにどう言い訳をしようかと依頼が失敗する前提で考えていた。


私作者は何をトチ狂ったのか、慣れない事をしたからなのか、文章でおかしな事を書いてしまいました。申し訳ありませんでした。取敢えず修正はしました。ですが、それでもおかしな箇所がございましたらご一報ください。

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