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49.脱出交渉

今回の話で人物描写が上手く説明できているかどうか怪しい箇所があります。

どうかご容赦ください。

「もしよろしければこの町から出して差し上げましょうか?」


 そう声を掛けて来たのは5人の藍色のローブを着てフードを顔が見えない位まで深々と被った者達だった。傍から見れば明らかに怪しい者達からの提案がシンの前に突き付けられた。声から察するに若い男の声だった。


「・・・・・」


 警戒しつつも男の様子を窺う皆。


「あなた方はこの町の事を怪しいと考え、ここから今すぐにでも出たい。しかし、そうそう簡単には出られない」


「・・・感心しないね、盗み聞きするなんて」


 ネネラはこちらの話を盗み聞きしていたと抗議と威圧を兼ねた低い声で答える。


「・・・どうかご勘違いなさらないで下さい。あなた方がこの町の事を怪しいと疑う前からこの町は変だと私達はそう考えていました。」


「へぇ、それはいつからそう思ったの?」


 とネネラは猜疑心満々に更に尋ねる。


「私達の国が失って暫く経った頃にです・・・」


 フードの男が言った「国が失って」。ネネラはその単語に引っ掛かりフードの男に聞こうとする。


「それって・・・」


 だが、ネネラが何か問おうとするがシンが先に


「話し込んでいる中悪いんだが、お前らに聞きたい事がある」


 と話の中へ割って入る。


「・・・何でしょう?」


 シンはズイッと前に出てさっきからこっちに話してきたフードを被った男に鋭い目を向けて


「お前ら、俺達の事を付けて来ただろ?」


「「「!」」」


 フードを被った者達は驚いた。


「分かっていらしたのですね・・・」


「ああ」


「いつ頃からお気づきに?」


「この国から入る前からだ」


「そうですか・・・。それもそうですよね、あのグルフ達を倒した人ですからね・・・」


 シンは少し眉を顰める。さっきの物言いからすると、少なくともシンが複数のグルフを倒したあの時からシン達の事を尾行していた事になる。


 実際シンの目の前にいるフードを被った者達はある目的のためにシン達を尾行して来たのだ。


「何の目的で俺達に近づいた?もし、金目的ならあるが?」


 藍色のローブを着てフードを被って、あからさまに怪しい格好の上に、ヨルグからの脱出方法を探っている時に「この町から出して差し上げる」とこんな旨い話が出て来たのだ。何かある。そう思いシンは疑心気味に威圧するようにフードを被った者達に尋ねる。

 万が一金銭目的であればパーソ商会での塩と胡椒の金貨がある。シンは恐らく目的は金だろうと考え、もし金であるなら提案に乗るつもりだった。するとその中の一人が代表するかのように


「いえ、個人的にはお金が欲しいですが、そうではありません」


 シンが考えていた相手の目的とは違う事にポーカーフェイスの顔の目が少し開く。


「じゃあ、何なんだ?」


 ピリッとした真剣な空気になった。フードの男は真面目な声のトーンで答える。


「あなたの武器です」


「・・・何?」


 シンはフードの男を睨む。フードの男が言う武器とは恐らくシンが使った改造KSG事、あのショットガンの事だろう。シンが武器らしい武器を使った時はは間違いなくあの4頭のグルフとの戦いの時だろう。

 また、フードの男が言っていた「あのグルフ達を倒した」。あのセリフから考えれば4頭のグルフとの戦いの時、約1kmという離れた位置からその様子を見ていたのはこの5人だろう。


(そういや、アカツキが「黒いマントを着た」とか言ってたな)


 それも考えれば「黒いマント」を着た連中はここにいる5人の藍色のローブを着てフードを被った者達の事だったのだろう。


「チッ」


 シンは誰からも聞こえない小さな舌打ちをした。あの時もっと真剣に対応すれば良かったとシンは後悔した。


「私は・・・いや私達はあなたが使っていた武器を譲ってほしいのです」


 フードの男は真剣な声でシンに言う。だがシンは


「断る」


 拒否をする。当然と言えば当然だ。


「・・・それは、あなたにとっては商売道具だからですか?」


「・・・・・」


 ある意味正解ではあった。確かに、銃器があれば大抵の生物を殺す事は出来る。しかし、シンは「BBP」と、ごく僅かではあるが「ブレンドウォーズ」の魔法がある為、銃器は無くても困らない。

 シンが一番懸念している事はこの世界での影響だ。この世界の武器の事情は知らないが少なくとも前の世界と比べれば銃器の類は無いだろう。この世界の文明レベルは大まかにいえば中世ヨーロッパとほぼ同じだ。こんな世界に500年先の技術を教えるという事どんな影響を与えるのかシンは知っていた。良くて軍事バランスの崩壊。悪ければ血で血を洗う乱世の到来。


「まぁ、そんなところだ。それにそんな簡単に自分の情報を開示なんかしない」


 軍事バランス云々は言わず、自分の戦力の秘密を保持したいという名目で話を進めようとしていた。


「・・・成程。確かに私もそんな状況であれば断るでしょう」


 フードの男はシンは何が言いたいのかは理解しているようだった。だが、


「ですが、あなた方にこの町から出られる手立てはございますか?」


 引き下がる気は無かった。それどころかシン達の脱出手段があまり無い事を見透かすように尋ねて来た。


「・・・・・」


 飽く迄、「シン達の脱出手段があまり無い」のであって「全く無い」訳では無かった。だが、思い付いている手段は「ショップ」でRPG-7をいくつか購入してキャンピングカーで強行突破するというものだった。しかし、それだと「ここに化け物の様な戦力の塊がいますよ」と誇示してしまう。下手をすれば自分の情報が漏れる。これは、なるべくなら避けたい。

 つまり、出来ればこの案は使いたくはないというのがシンの真情だった。


 すると急にその中の一人が


「先程、あなた方はこの町から出る事が出来なくなりました」


「・・・は?」


 更に彼らの提案に乗らざる得なくなる様な追い打ちをかけるように事実を告げる。あまりの突然に驚くネネラ。男は話を続けて


「あなた方は指名手配になっています。」


 シンは眉を更に顰める。


「おかしいでしょ!?何であたしたちが?」


 ネネラが声を荒げて今の状況に異を叫ぶ。


 シンはギルドの2階の奥の部屋から出て来た男、アウグレントの顔が頭を過る。


(あいつ・・・か)


 ざわめく皆の中でニックが不安な声で


「・・・やっぱりあのギルドは帝国に着いたんだ」


 とポツリと呟くように言った。


「・・・・・」


 考えたくなかった。帝国に置くギルド支部は帝国に付いていないと。しかし、現実は考えたくなかったものとなっている。皆は一言も発せず黙る。

 そんな中でもシンはフードの男に対して


「出来ればタダで出してくれると嬉しいのだが」


 ダメ元で言ってみる。


「申し訳ございません。タダではございません」


 やはりダメだった。やっぱりかとシンは顔を顰める。このままモタモタしていると帝国の連中に見つかってしまう。


 時間が無い。


(こいつらに改造KSGの事を教えると間違いなく混乱が起きる・・・)


 この世界に銃器の事は教えたくはない。だが、だからと言って強行突破案は使いたくはない。この2つの件を絶対的として、シンはどうにかして出る方法を考える。だが、やはり思いつかない。


 フ~…


 シンは大きくため息を吐き、フードの男に


「分かった。俺の武器を譲ったり、全て教える事は出来ない。だが、ヒントの様な物を教えるというのはどうだ?」


 シンは考えるに考え譲歩できる提案をする。


(もし、ダメならそれこそRPG-7とキャンピングカーで強行突破だな・・・)


 シンは銃器の譲渡や全て教える事はせず、銃を作るためのヒントのみを提供するという形で脱出の案に乗ろうと考えた。

 フードを被った者達顔を見合わせ、相談するかの様に少し間を置いて


「分かりました。その提案を受け入れます」


「!そうか」


 思ってた以上にすんなりとシンが提示した提案に賛成した事に少し拍子抜けをした。


(こんな提案だとごねるかと思っていたんだが・・・)


 何故こんなにもすんなりと提案に賛成した事を考えていたが


(・・・いや、今は脱出の事を考えよう)


 さっきの考えを振り払うかの様に首を少し横に振りこれからの事に専念する。

 リーダー格と思しき男が前に出てきて


「では協力するからにはこちらの身分を少しだけですが明かします」


 と言った。すると5人のフードの者達が、顔が見えない位まで深々と被ったフードを少しだけ上げる。


 スッ…


 深々と被って分からなかった顔が見える。男性が3人と女性が2人。全体的に見ると20代前半と若々しい。角や翼と言ったファンタジーな物語でありそうな特徴は見当たらず、人間と同じだった。だが、彼らの目を見た瞬間只者ではないと思える特徴が現れる。目が普通の人間と違っており、人間の言う所の白目の部分が黒く瞳が血の様に深い赤色だった。


 その顔を見たネネラの顔が驚愕の顔になった。


「貴方達、「魔眼族」?」


 ネネラがその単語を口にすると5人は少し物悲しそうな顔をした。


もし、おかしな箇所がございましたらご一報ください。

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