表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/396

48.真実を写す

今回の話の一部は前回の話のシンの推理の描写がありますが、説明がうまくできず、何回も何回も書き直してしました。それでもうまく説明できているかどうか怪しい箇所があります。

どうかご容赦ください。

 シン達がギルドで丁度シーナが受付に言っていた時間まで遡る。

 ナーモの登録が終わり、次にシーナの番の時、後ろの方で様子を窺って熟考している時の事。


「ボス、あれがギルドカードを作るための手順か?」


 何の前触れもなく突然アカツキが声を掛けて来た。


「ああ、そうだが?」


 何かあると思い声を低く小さくしアカツキに聞く形で返答するシン。


「ボス、実は水晶の上に手を置いて瞬間キラキラ光る煙のようなものが上へと続いていたんだが」


「・・・何も見えないが」


 シンは目を凝らし、よく見てみるもアカツキが言うキラキラ光る煙のようなものは見えなかった。


 だが、アカツキが言う一切信じない訳では無かった。アカツキはカメラのレンズ越しにそれを視認したのだ。

 カメラ等のレンズに映るものは人間の目以上に物をよく視認する事ができるため人間の目では見えない物が映る。実際に高性能のカメラで都会のど真ん中で空に向かって撮影すると白い靄の様なものが映る。これは人間の目では見えない少量のスモッグを捉えていた。

 シンはその事を本で知っていた。そのためアカツキが言っている事は嘘とも誤認とも思っていなかった。だが


「?アカツキがカメラ越しに何か特殊なものが見えるのは分かったが、この世界は魔法が中心だからだから別にどうって事は無いんじゃないのか?」


 この世界では魔法や魔術が中心である。そのため空気中にその魔法が使える源となるものが漂っていても決しておかしくは無かった。

 シンはギルドカードの事で頭がいっぱいのせいなのかアカツキが何を言いたいのかが分からなかった。するとアカツキは


「魔法がどうこうの問題じゃなくて、そのキラキラ光っているのが上に続いているのだが・・・」


 そこまで言うとシンはアカツキが、何が言いたいのかが何となく分かってくる。


「・・・2階に何かあるのか?」


 シンは不意に上を見上げる。すると上へと上がる階段に続き太い木で出来た手すり越しに廊下が横から見る形で見える。

 丁度その時歩いていたギルド職員らしき女性と奥の部屋からギルド長であるアウグレントが出てきて鉢合わせる。ギルド職員らしき女性が頭を下げ挨拶しているのが窺えた。アウグレントは少し縦に頭を傾けるような形で挨拶をする。この様子から誰が見ても頭が下げられたほうの男が上の立場である事が分かる。するとアカツキが


「ボス、さっき出てきた男の部屋へとその光が続いている」


「・・・何?」


 シンは少し大きく目を見開いた。


「・・・・・」


 シンは黙って考えを纏める。



 アカツキが確認したキラキラ光る煙のような靄。



 ギルド長らしき男の部屋へと向かっている魔法の源の様な靄。



 ニニラの豹変。



 冒険者の帝国軍人への転職。



 ギルドの洗脳疑惑。




 シンの目がさっきの開き具合がさらに大きくなる。


「!そうだとしたら・・・」


「何か分かったのか?」


 とアカツキがシンに尋ねる。


「ああ・・・」


 小さな声で返答し隣の受付へ向かう。その受付は幾人か並んでいたがシンはお構いなしに割り込み


「ペンと紙を借りるぞ」


 と言った。後ろの冒険者らしき男は「何だこの男」という目を見て何か言おうとする前に


「は、はいどうぞ」


 受付嬢がペンと紙1枚をそのまま渡した。シンはそれを受け取ると紙をカードサイズの大きさに破いた。紙を誰からも見えない様に片手の手の平の上に乗せ、何かを書き込み


「どうも」


 とペンを乱暴に置き、書いた紙を握る。そんな態度のシンに見かねて次の番だったはずの冒険者の男が


「おい、お前・・・!」


 と突っかかる様に言い寄ってきた。


 ギラッ…


「・・・!」


 シンが出した殺気に思わず黙った。その場で冒険者の男は固まったままだった。


「・・・・・」


 シンは目線を戻しそのまま皆の元へと戻る。


(どうやって洗脳しているのかは知らないが、少なくとも帝国が軍事力を強化するのに冒険者を洗脳していると考えるべきだろう。だが誰でも良いってわけでは無く強い人間を兵力に加えたいはず。そのためには情報が必要となる。恐らく水晶の上に手を置いた時、置いた人間の情報を読み取ってカードを作るとともにその情報をさっきの男の部屋へと送信していた。光る煙のような靄はその時の魔法による化学反応の様なものだとしたら辻褄が合う・・・!)


 ズカズカと受付の方へと向かうシン。



 シーナの受付が終わろうとしていた僅かな時間でシンは辻褄が合う仮説を立てていた。




 丁度その頃シーナの番が終わり、次はニックが受付へ向かおうとしていた。その時


「!シン兄?」


 急にニックの前に出るシン。


「もう十分です。ありがとうございました。」


 シンは受付嬢に向かってそう言い終えると、後ろを振り向き


「帰ろうか皆・・・」


 と衝撃的な発言をした。


「シン兄、まだお・・・」


 何か言いかけたニックに書かれた紙を


 スッ…


 と見せた。


「?」


 何だろうと疑問符を浮かべメモに目を通す。


「!」


 紙に書かれていた内容は



『ギルド長が洗脳の犯人』



 10歳のニックでも分かりやすく短い文章だった。


 ニックが書かれた紙の内容を知った事を確認したシンは


「・・・帰ろうか?」





 これが事の真相だった。シンが導き出した答えであろう仮説を歩きながら皆に説明した。すると皆の反応は


「「「・・・・・・・・・・」」」


 当然ショックを受けていた。この中で特に酷くショックを受けていたのはナーモとシーナだった。これもまた当然の事だろう。何せさっき自分達が登録しに行ったギルド全体が真っ黒で自分達の個人情報を掠め取られたのだから。

 そんな中でもエリーは青褪めた顔ではあったが


「これからどうするの?」


 と冷静に毅然とした口調でシンに尋ねる。


「取敢えず、この町から離れよう」


 シンは逃げる算段を確実にし、ヨルグから出ようと考えていた。このままいれば何かされる可能性は十分にあった。


(とは言えここに来て数日しか経っていないしな・・・)


 シン達はヨルグの事について全く知らない。シン達が通った検問所のある門以外の門等については知らなかった。つまり地の利から考えれば向こうの方が有利という事だ。


(「ショップ」でRPG-7をいくつか購入してキャンピングカーで強行突破するか?)


 等と物騒な考えでこの町から脱出を図ろうと考えていたシンだが


「待って!ニニラは・・・ニニラはどうするの?」


 とネネラが怒声の様な大声でシンに待ったをかける。


「助けたいが、今の俺達じゃ無理だ・・・」


「何で!?」


 ネネラは怒声ともとれる大声でシンに詰め寄った。するとシンは冷静な口調でネネラに聞く。


「ネネラ、俺達の人数を見てどう思う?」


「どうって・・・人数が多い・・・とか?」


 ネネラは何が言いたいと言わんばかりにこう答えた。


「・・・俺達は得体のしれない方法で俺達の情報を手に入れ洗脳をしようとした「帝国」というでかい相手だ。つまり、ここに居る人間でどうにかできるというのは・・・」


「・・・それでもニニラを助け出す事位出来るんじゃないの?」


「俺はともかくナーモ達は生き物を殺した事があっても人間を殺した事は無い」


「・・・・・」


 そこまでシンが言うとネネラはシンが何を言いたいのかが分かってきた。

 戦士と素人には決定的な差がある。それは武器を使って戦った事があるかどうかだ。人間は人間を殺す事に強い忌避感がある。


 第一次世界大戦では8割近くの新兵は対人で発砲しないか、敵を殺していない。そのため、現場の隊長は腰にピストルを構え「撃てない」者や逃亡者を容赦なく撃ち殺していた。逃げ道を無くして突撃させるように仕向けたのだ。それでやっと戦争らしい戦争になったのだ。つまり、それ程人は人を殺せないのだ。その差故戦士とは素人の天敵である。殺しなれた戦士と人に剣を向けた事もない素人。人を「殺せる者」と人を「殺せない者」の戦力差など論ずるまでもない。


 するとナーモが


「・・・シン兄、俺達って足手纏いか?」


 と恐る恐る尋ねた。するとシンは


「ああ」


 何の迷いも無く、冷静に、文字数にして二文字。たったそれだけの返事が重く冷たいものだった。


「・・・そっか」


 ナーモ達はギリッと悔しそうに歯を噛み締めた。しかし、実際ナーモ達は人を殺した事が無い。皆を守りつつニニラを救い出すというのはかなり無理がある。

 そのため一旦この町から脱出し、その後ニニラを助け出す。それがシンのプランだった。


(だが、俺達だけでもこの町から脱出するのはちょっと厳しいな・・・)


 シンは振り返って皆を見る。ナーモ、シーナ、エリー、ニック、クク、ココ、ネネラと7人もいる。ヨルグの情報が足りない現状から考えればそれだけの人数でヨルグから脱出するのはかなり困難だろう。そんなシンにアカツキが


「ボス、俺の案内で動けば・・・」


 と提案するが


「俺もそれ考えたが検問所がな・・・」


 と小さな声でその提案を却下する。


「ああ・・・」


 アカツキの案内で行動するのも考えたがさっきのギルドでのやり取りでアウグレントがヨルグの検問所がより厳重にしてもおかしくはない。厳重になっていると考えればアカツキの案内だけではやはり厳しい。


(マジでどうしようか・・・)


 益々、打つ手がなくなっていくシン達。


(やはり、ここは俺の情報が漏れるのを覚悟でキャンピングカーで検問所を強行突破するしか・・・)


 そんな最後の手段とばかりに思いついた提案を受け入れ実行しようとした瞬間、シンは後ろから複数の気配を感じた。


「お困りの様ですね」


 シン達の背後から声がした。人通りが少ないとは言え人は幾人か通っていた。そんな見通しが効く所でシンは兎も角ネネラが気付かない程に静かに背後を取っていたのだ。


 バッ!


 振り返ると数人の藍色のローブを着てフードを被った者達がいた。


「もしよろしければこの町から出して差し上げましょうか?」


 傍から見れば明らかに怪しい者達から思っても見ない提案がシンの前に突き付けられた。




何かおかしな所がございましたらご連絡ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ