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41.お礼と変化

このまま1ヶ月投稿しないままというのもどうかと思い投稿しました。

 

 きゅ~…


「「「・・・・・・・・」」」


 可愛らしい音がククのお腹から鳴った。


「おなかすいた」


 恥ずかしがる様子も無く、ただ今の気持ちを素直に口にしたクク。


「あ~そろそろ晩飯か」


「そう言えば美味しい物を振舞ってるって言ってたよな・・・」


 男子組は顔を見合わせた。数秒後全員頷く。

 皆の意見が下の食堂へ行く事が決まった瞬間だった。




「「「あ」」」


「「「あ」」」


 男子組が部屋を出たその時、丁度隣の女子の部屋、エリー、シーナ、ココが部屋から出て来た。


「食堂?」


 丁度出て来た女子組にナーモが聞いた。


「あ、そっちも?」


 シーナそう答えた。


「ココ、行こう!」


「あ、待ってよ~クク~!」


 そう言って先に食堂へ向かう2人。


「・・・・・」


 呆れながらも微笑ましい光景に溜息をつくシンは2人を追うように食堂へと向かった。




 シン達がここに到着した頃には賑わっていた。


「どこも混んでいるな・・・」


 シン達がキョロキョロと見渡していた。すると


「お~い!こっちこっち!」


 と声がした


「ん?」


 声がする方へ視線を移すと


「ここ、ここ!」


 とネネラが大手を振って皆に合図していた。シン達は混んだ食堂の中、他に座れるような席も見当たらない。という事はそれを見越してネネラが用意したと判断しネネラの元へ向かった。




 シン達は混んでいた席の合間合間を縫うようにしてネネラの元に辿り着いた。するともう既に食事の用意が出来ていた。


「ん?もう用意ができているのか・・・」


 食堂のテーブルの上には丸パンがたくさん入ったバスケットに大皿には焼いた大きなステーキがあった。


「うん、私のオススメなんだ!これは高いから流石に驕る事は出来ないけど、明日の朝ご飯は私の奢りね!私に変わってあのハゲのチンピラを追い払った事へのお礼として、ね」


 勝手に値段の高いメニューを決められていた上、驕らないときた。これには人としてどうかと思ったがもう既に用意されていたメニューを取り下げるように頼むのも何か気が引ける。結局シンは


「・・・そうか、すまないな」


 とお礼の言葉を述べて出されているこのメニューを頂く事にした。一応金貨はそれなりにある。万が一足りなければ代わりになる物を「ショップ」で手に入れてそれで許してもらおうと考えるシン。


「いいって。さ、席に座って」


 今のネネラの言葉が図々しく聞こえる。だが、ククとココは目を輝かせていそいそと席に座る。後から呆れたように溜め気を吐きながらシンと皆が座った。そしていつものように



「「「いただきます」」」



 その挨拶を聞いたネネラはキョトンとした顔でシン達に


「何それ?」


 と聞く。するとククとココが


「かんしゃのことばだよ!」


「かんしゃ?」


「うん!ごはんを作ってくれた人や生き物に」


「・・・へぇ」


 ネネラはやや複雑な感じではあるが「感謝」という単語で何となく納得した。

 シン達は早速ステーキを切って口に運ぶ。


「!」


「~~~~!」


「・・・おいしい」


「♪」


 それぞれが口に運んだ瞬間普段食べなれていない牛のような生き物のステーキを初めて味わったのだ。

 シンも一口食べる。


「!」


 シンは少し目を大きく見開き少しの間動かなくなった。




「どうしたの、シン兄?」


「もしかして、これ嫌い?」


 シンは皆の方を見て


「・・・いや、美味いなこれ」


 皆は「何だ、美味しくて動かなかったのか」と勝手に納得する。

 しかし、シンは別の理由で動かなかったのだ。




「あ~おいしかった」


「ふぃ~」


 夕食がおいしい上に満足できるまで食べたニックとナーモが椅子の背もたれに体を預けた。お腹いっぱいだ、と言わんばかりに腹を手で擦り満足そうな顔で愉悦に浸っていた。


「ナーモ、ニック、だらしないよ」


 そう言ってククとココが真似しない様にする為に注意するシーナ。しかし時既に遅し。ククとココもニックとナーモと同じ様な姿勢になっていた。


 因みにエリーもその姿勢になりそうになり慌てて姿勢を戻していた。


「もう・・・」


 呆れながらもだらしない姿勢をしていた4人に注意し続けるシーナ。そんな皆とは余所にシンはネネラと話していた。


「確かにおいしかった。勘定したいんだがこれはいくら何だ?」


「えーと・・・つ、通常の夕食のメニューとな時だったと思う・・・」


 何か歯切れの悪い回答だった。


「あ~、通常のメニューの値段は?」


「1人当たり銀貨1枚よ」


 最初は値段が高いから歯切れの悪い答え方かと思っていたがそうでは無い様だった。ではあの歯切れの悪さは何だったのか。シンは疑問に思いながらも


「そうか、銀貨1枚か」


 今晩のメニュー代、合計銀貨7枚をテーブルの上に置いた。事実上の食事代を支払った。


「ネネラ、いいメニューを教えてくれてありがとう」


「ううん、気にしないで」


 シンは気になっている事をネネラに聞く。


「・・・所で()()()()()()()()()()やっているのか?」


 シンがそう尋ねると


「え!?あぁ・・・これは・・・期間、そう期間限定なんだ。だから、明日はもうやっていないんだよ!」


 ネネラは何か慌てたように答えた。そんなネネラの答えに皆は


「えっそうなの!?」


「しまった・・・。もっと味わえば良かった・・・!」


 と惜しむ声が聞こえた。シンも


「・・・そうか、それは残念」


 と少し惜しむ様な言い方をした。




 部屋に戻ったシン達男子組は部屋に戻った。


「はぁ~まさかここでも満腹に食えるとは思っても見なかったなぁ」


「最悪、パンと干し肉と水位しか食えないかとおもっていたけどね」


「おいしかった・・・」


 ナーモ達が夕食の事を思い出し愉悦に浸っていた。そんな中シンは


「少し出る」


 と言って部屋から出ようとした。


「あれシン兄、何処かに行くの?」


 ナーモが聞いてきた。


「ああ、ちょっとな。すぐに戻る」


 何だろうと思いつつ部屋を出て行くシンの後ろ姿を見送った。




「まだ混んでいるのか・・・」


 シンは下の階の食堂にまた来ていた。

 現在の時間は恐らく8~9時位だろう。そんな時間でも食堂は未だに賑わっていた。酒が飲める年頃であれば酒を飲んでいるし、只々喋っているだけで楽しんでいる等それぞれなりに楽しんでいた。シンは近くにいた木の樽の様な形をしたジョッキをぐい飲みしている1人の冒険者風の男を見つけた。シンはネネラがいない事を確認して銀貨でジョッキたっぷり入ったエール2つを頼んだ。


「すみません」


 シンは男にそう訊ねた。


「ん?何だ?」


 ぶっきら棒にシンの方へ向く男。


「ちょっと聞きたい事があるんですが・・・」


 2つのエールの入ったジョッキを持ったシンはそう言って男に近付いた。このエールはシンが飲むためではない。このエールはここいる冒険者風の男に奢る為の物だ。

 そのエールの意味に気が付いた冒険者風の男は顔がにこやかになる。


「おぉ、いいぜ。んで何だ?」


 ぶっきら棒な雰囲気から一変して他人からとっつきやすい様に振舞う男。シンはこの宿屋を活用している冒険者なら当たり前の質問をした。


「この宿屋で一番高いメニューは何ですか?」




「・・・でよ~、俺はあいつの事が好きなんだ!」


 あれからどの位経ったのだろうか。男は完全にエールによって()()()()()()()()、いつの間にか男の惚気話になっていた。


(う~ん・・・飲ませすぎたか?)


 別の用事もある為この場から離れたいシンだが中々この男が帰させてくれない。時間はアカツキによれば30分程しか経っていないが、どうでもいい話を聞かされると長く感じてしまう。


(仕様がない。きつい酒でも飲ませるか)


 きつい酒を飲ませて男を潰れさせよう。シンがそう考え、酒の追加注文をしようとした時―――


 ドガァ!


 テーブルの上で大きな音を立った。


「ぐぉーぶぉー」


「・・・・・」


 大きな鼾を立てて男は爆睡していた。どうやら丁度この時、完全に体に回ったらしくそのままテーブルにダイブする様な形で眠ってしまったようだ。


(ここで寝んのかよ・・・。でもまぁ丁度いい)


 男がここで眠るおかげで頼もうとした酒は買う必要もなくなり、男の惚気話から解放される。シンは男が眠ったのを確認したらそっとその場から離れ「旅烏」から外へ出た。




 外は暗くなっていた。だが、家々や宿屋や店等の灯りのおかげで町の中は明るくまだ人がたくさん歩いていた。シンはそんな人がたくさん歩いていた通りから少し離れた寂しい小道に入る。


「・・・・・・・・・・」


 寂しい小道から少し顔を覗かせれば人がたくさん歩いていた通りが見える程度の距離まで入ったシン。シンは周りに誰もいない事を確認した上に


「アカツキ、この周辺に誰もいないか?」


「いや、いない。ボス、何をするつもりだ?」


 シンは「ショップ」を開き、3つのある物を買った。1つ目はサングラスだった。目が見えるか見えないか位の黒くて大きい丸いサングラスだった。シンはまず最初にそれを掛ける。


「ボス、何故それを掛ける?それに・・・まさか、()()を吸うのか」


 アカツキが言った「それ」。「それ」は紙煙草セットだった。細かく言えばシャグと巻紙だ。


 2つ目のシャグとはタバコの葉っぱの事だ。銘柄によってグラム数や価格が様々あるが日本円で大体1,000円前後で購入できる。香りのないノンフレーバー系とバニラやフルーツの風味のあるフレーバー系とメンソールが揃っており、また、このシャグをブレンドする事によってオリジナルのフレーバーのシャグを楽しむ事もできる。


 シンはメンソールだ。


 3つ目の巻紙は無論シャグを巻くための紙だ。巻紙はシャグを巻く紙で市販の紙巻タバコと違い、燃焼促進剤が入っておらず燃える速度が遅い。材質も、普通の紙もあれば、「ヘンプ(麻)」、「ライスペーパー」、「リコリスペーパー」等様々な種類がある。


 シンはリコリスペーパーだ。


 本来なら()()()()()が必要な場合ではあるが、好みで使ったり使わなかったりで、それぞれだがシンの場合は使わなかった。フィルターの種類が太さが6mmのスリムサイズと8mmのレギュラーサイズ、プレーンフィルターやチャコールフィルター、メンソールフィルターがある。


 この3つあれば後は巻くだけだ(シンの場合は2つだが)。巻く時に便利なローラーやローリングマシーン、チュービングマシーンがあるがシンは使わなかった。


 まず、シャグを解して筒状の形に整えて左手の薬指と小指で軽く持つ。

 次に巻紙の端から3mm程の折り目を付け、左手の人差し指と中指の間に巻紙を置く。

 左手の薬指と小指で軽く持っていたシャグを右手で形を崩さずに持ち、巻紙の上に乗せて軽く均す。

 両手の親指、人指し指、中指でクルクルと回して形を更に整える。

 親指を立て、折り目を親指でしっかり押し込み、人差し指で包むように丸める。

 最後に巻紙の糊が付いている部分を舐めて巻紙を閉じ、はみ出たシャグは取り除く。


 手慣れた手順の最後はライターで火をつける。ライターはこの世界で初めてカレーを作った時に使った某ライターだ。


 キンッ


 シュボッ!


 カチャンッ


 煙草に火をつける。


 スゥ~


 身体に染み渡らせるように煙草を吸い込む。


 ハァ~


 全てを吐き出すように煙を吐いた。



 しかし、それ以降は吸う事も吐く事もせず只々、煙草を燻らせていた。

 ボーとしながら暗い中でさらに闇に包まれたかのようなサングラスの奥の瞳にはどこか遠い目をしていた。


「・・・・・」


 何をするわけでも無くそっと目を瞑った。


 ブレンドウォーズ時、プレイヤーキャラクターのシンは酒も煙草もやっていた。特に拘っていたのが煙草とサングラス。


 あれだけ好きだったはずの煙草が・・・


 あれだけ拘ったはずのサングラスが・・・


 今となっては


「・・・邪魔だな」


 鬱陶しい物になっていた。


 今にして思えばシンの身体は「BBP」になっている箇所が多くあった。頭部と胴体の皮膚と頭髪、眉毛、睫毛、筋肉以外は「BBP」化している。つまり臓器全般が「BBP」になっている。という事は肺もそうだ。肺が「BBP」になっていれば本来取り込まれる酸素の量を調節出来たり、人体に有害な物質をフィルターの様に除去する事ができる。その為煙草本来のおいしさが分からなくなってしまった。


 またサングラスも同様に感覚器官の内の一つである目も「BBP」で強化されている。その為夜目が効いたり、光の眩しさが分かりづらくなり、回復も早くなった。という事はサングラスも必要が無くなったのである。


「・・・・・・」


 右手で煙草を口から離し、そのまま熱さの感じない右手で火を揉み消した。揉み消した煙草は何かに仕えるかもしれないと考え、そのまま「収納スペース」に入れる。


 カチャ・・・


 サングラスも取る。サングラスは元々は砂埃等の異物を目に入れないようにするための物だが目線を相手に悟られないという目的にも使える。サングラスも煙草同様「収納スペース」に入れた。


 最後にライターを「収納スペース」に入れようした時ライターに彫られていた文章に目に止まる。


「・・・俺はこの世界でも同じような人生になるのか?」


 シンはそう呟きライターを「収納スペース」に入れそのまま男子組の部屋に戻った。







 某ライターには英語でこう彫られていた。



 “死にそうな目にあった事があるか?平和の中に身を置いてる奴には決して分からない人生だ”




サングラスと煙草の話は後日「閑話」と言う形で発表するつもりだったのですが、変更してこの話に組み込みました。

「閑話」のつもりで待って頂いた方々には申し訳ありませんでした。


またもう暫くの間は話のプロットの構成や話の修正や変更をしていきます。


このような変更が多々あると思いますが今後ともよろしくお願いします。

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