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40.旅烏

今回も勢い任せに書きました。

 夕方の町の中で宿「旅烏」に向かって行くシン達。赤く染まった周りの建物は店屋で今閉めようとしている店があればこれから開こうとしている店がチラホラ見える。そんな町通りを歩いていくとエリーが立ち止まっていた。

 それに気が付いたシンはエリーに訊ねる。


「エリー?」


「・・・・・」


 シンはエリーの目線を追って見る。するとそこには大きな箱型の荷馬車があった。エリーはすれ違う大きな箱型の荷馬車を見つめていた。それは見覚えのある馬車だった。はめ殺しの鉄格子の窓が付いて幌馬車と比べると少し大きい木製の箱型の馬車。それは奴隷商人が奴隷商品を運搬に使う、収容専用の大きな馬車だった。


「・・・・・」


 暗く嫌悪する顔になるエリー。恐らく、売られる前の事を思い出していたんだろう。エリーが見ていた方向へ皆が見るとあの頃を思い出していたのか暗い表情になっていた。どういう経緯で奴隷の一歩手前になったのかは知らないが少なくともあまりいい経緯では無いのは確かだ。

 シンは静かにエリーの肩にポンと手を置いた。その事に気が付いたエリーは徐に後ろを振り返る。


「エリー、行こうか・・・」


「・・・うん」


 シン達はやや急ぎ足で宿の「旅烏」に向かっていった。




「ここか・・・」


 他の建物と比べればやや大きく、やや古びていて、赤い屋根が特徴の建物の看板には「旅烏」と書かれていた。

 漸く目的地の宿屋「旅烏」に着いた。

 シンが「旅烏」らしき建物のドアノブに手を掛けて中に入る。

 ドアを開けたと同時に大声が聞こえた。


「だからよぉっ、でっけぇ虫が5匹出たって言ってんだよぉ!掃除が行き届いてんじゃねぇのか、あぁん!?」


 カウンターの方から大声で叫んでいたのはいかにも冒険者風で頭がハg・・・スキンヘッドのガラの悪い男がこの宿屋の店主らしき男と何か揉めていた。


「そ、そんなはずがありません・・・。うちはきちんと掃除していますし、大きな虫が出るなんて事は・・・」


 店主らしき男はオロオロとしながらも懸命に対応していた。だが、ハg・・・・・スキンヘッドの男はさっきの大声よりもさらに大きな声を上げる。


「あぁ!?俺が嘘ついてるって言いてぇのか!?」


「い、いえそんな・・・」


 店主らしき男は徐々に押されていく。その様子を見たハg・・・・・・スキンヘッドの男はさっきの様な大声を上げず厭らしく諭すように店主らしき男に告げる。


「だったら、誠意ってもんを見せろや・・・!」


「そ、それは・・・」


「半値、いや、1/4の値にしろや・・・!なぁ!?」


「そ、そんな・・・」


 完全に店主らしき男が押されていた。シンはこの宿の中の床や窓、棚を見るが埃らしきゴミは何一つなかった。掃除は十分に行き届いていた。シンはハg・・・・・・・・スキンヘッドの男を見て呆れたようにため息が出る。

 クレームをつけて、向こうから折れて自分が思う通りの要求にさせる。クレームと言う形の脅迫だった。

 つまり、明らかな言いがかりだ。

 誰かが止めればいいのだが、周りは一切面倒事に関わりませんという空気だ。

 このまま、何もせずに待ってやり過ごすのも手だがせっかくここを紹介したニニラに申し訳が立たない。それに・・・


「・・・・・」


 シンは宿屋の奥の方を見る。するとそこには黒い影が店主らしき男とハg・・・・・・・・・・・スキンヘッドの男の様子を眺めていた。


 シンは小さなため息をついた。だが今度のため息は「やれやれ」といったものだった。


「・・・皆はここで待ってろ」


 その言葉を聞いた皆は素直に従う。シンはガラの悪いハ・・・ハゲ頭の男に近づいた。


「その辺にしておけ」


 と言い放つ。


「あ”あ”?」


 ハゲ男がシンの方へ振り向いた。顔は明らかにメンチを切った形相になる。


「なんだ?てめぇ?」


 今しようとしていた事を邪魔された事に腹が立ったのか、ズンズンとシンに近づきながら突っかかってきた。


「てめぇが払ってくれんのか?あ”あ”?」


 そんなハゲ男にシンは少しも動じず



 目付きを鋭くし殺気を放った。



 スッ・・・


 ガタタタッ!

 ガタガタッ!

 ガッシャーンッ!


「あ、ああ・・・あひ・・・ひ・・・」


 ハゲ男は情けない声を吐きながら床に尻を付けていた。文字通り腰を抜かしていた。額から滝の様に冷や汗を流し怯えきった目はシンの方へ向いていた。


「「「・・・・・」」」


 宿屋に居た冒険者らしき客達はシンを見ていた。


「おい」


 ハゲの耳には頭の中に不気味な鐘が鳴り響くが如く、シンの声がよく通っていた。その証拠にハゲはビクッと身を震わせる。


「はひっ!」


 また情けない声で返事をする。


「宿代は?」


「は、払います!払いますから!」


 ドシャッと袋をカウンターの上に置き


「ひぃぃー!」


 ダダダッと逃げるようにしてこの宿屋から出て行った。

 その様子を見て何事もサッサとカウンターへ近づきなかったかのように宿屋の店主に尋ねる。


「7人だ。空いている部屋はあるか?」


「・・・・・」


 店主は唖然としていたかのように反応が無かった。

 シンがもう一度声を掛けようとしたら


「空いているよ。この宿帳に書いて」


 と奥の方からオレンジの髪の少女が宿帳をシンの前に出してきた。


「ああ」


 シンは宿帳に皆の名前を書く。


「じゃあ、止まる部屋はこっちね。旦那様はいつも通りに、ね?」


「う、うん、頼むよネネラ」


「はーい」


 明るい返事をしたネネラという少女。


「こっちだよ」


 ネネラは早速シン達を泊まる部屋へと案内した。



「ここを突き当たって左の2部屋だよ」


「わかった」


 シンの返事を聞いたネネラはいたずらっぽい顔になって


「・・・間違っても女の部屋にはいらないでね?」


 冗談を言った。


「ああ」


 シンのそんな素気ない返事を聞いたネネラはつまらなさそうな顔になる。


「あっそ。あ、それから下で美味しいものが振舞っているからよかったら来て」


 そう言ってネネラは下の階へ行った。その場に残ったシン達は奥の2部屋に向かって行った。


「あの人シン兄に全然動じなかったね」


「ああ、付き合い長い俺でもシン兄の事・・・な・・・」


 ボソボソとココとナーモが話していると


「・・・あの娘は少し動じていたぞ?」


「!」


 急に2人が話していた事を答えるように話しかけて来たシン。それに驚き体をビクつかせるココとナーモ。


「まあ、少なくともあの場で俺が行かなかったらあのハゲのチンピラはタダでは済まなかっただろうな・・・」


「!?」


「どういう事?」


 と疑問を投げかけてくるシーナとニック。


「もしかして、ネネラって人の事、気づいていたの?」


 エリーが恐る恐るシンに尋ねる。エリーのその問いにシンは頷く。


「ああ、あのハゲのチンピラがここの店主にイチャモンつけてた時、あの娘は他の者とは明らかに尋常じゃない気配を感じた」


 それを聞いたシーナはそのまま思った事を口にする。


「え?じゃあそのままネネラさんに任せても良かったんじゃ・・・」


 シーナの疑問は当然のものだった。だが、シンがあの行動に出た事をシンプルに答える。


「あの場で血なんて見たくないだろ?」


「・・・・・」


 それを聞いたシーナは思わず黙ってしまう。


 つまり、事の真相はこうだ。

 シンは宿屋の奥にいたネネラと言う少女がさっきのハゲと店主のやり取りを見て臨戦態勢をとるかのように殺気を醸し出していたのだ。このままでは血を見るような事態になるのではと判断したシンはハゲと店主の間に割って入った。そして、ハゲがシンに突っかかってきた時シンは殺気を出した。

 一般人が檻に入ったライオンの前で威嚇されたら思わず怯む。ハゲが体験したのはまさにこれだった。

 シンは明らかに自分より弱く劣っている相手にはこれを使おうと考えていた。そして、成功しハゲは持っていた金をそのまま宿屋のカウンターに置き逃げて行ったのである。


 しかしここで疑問が出てくる。シンが殺気を放ち宿屋の客や店主が怯んでいた。その証拠にシンが店主に声を掛けても反応しなかった。なのにも関わらずネネラという少女は少ししか動じずシン達の対応をしたのだ。


(やはりあの娘、只者じゃないな・・・)


 いくつか疑問が残る中、男女別にそれぞれ部屋のドアノブに手を掛け部屋の中に入った。


「割と広いな・・・」


 シンが明けた扉の先には宿泊客を休ませるための4人分のベッドがあった。ベッドはそれぞれ頭が木目調の板の壁の方に向くようになっていた。ベッドのすぐ横には小さなテーブルと2つの椅子が備え付けられていた。部屋の奥には大きなクローゼットがあった。クローゼットの左右の壁には外の様子が見えるように2つの小さな窓が付いていた。


「おーっ!」


 見た事もない光景だった事に興奮してなのかククのテンションが大きく上がっていた。


最近今まで投稿してきた話を見返して直さなければならない所や、今後の物語の進行と比べると内容が薄かったり、矛盾がある事が発覚しました。ですので昨日(?)に「物語の進行を優先」と書きましたが、また暫くの間は今まで投稿してきた話のを修正していきます。

いつ次話が投稿できるのかは楽しみにしている方は申し訳ありませんが未定です。また改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。

こんな小説ではございますがどうかよろしくお願いします。

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