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400.万民の御馳走

ずいぶんと遅く案って今って申し訳ございません

続きをどうぞ!

 

「お待たせいたしました、「カトブレパスの大判肉の香草燻製」でございます」


 白い大きな皿の上には大判と言うくらいに手の平の二回りくらいのサイズのステーキが乗っかっていた。副菜となる物は赤いマッシュポテトと黄色いアスパラガスのような茹でた野菜が添えられていた。

 香りはソーセージやハムといった何かの燻製肉で、それをステーキとして出されているようだ。

 しかし、ハムやソーセージのような見た目ではなくどう見ても牛肉のステーキの見た目だった。だがステーキの売りとしてあるはずのステーキソースが一切かかっていなかった。代わりにローリエのような香草が一本添えられていただけだった。


「どうも」


 シンはそう答えて出された香草燻製を見て、前に出された料理のことを思い出す。


「そういえば、カトブレパスっていうのは?さっきもソーセージとして出されたが・・・」


 この地域ではポピュラーなモンスター・・・動物なのだろう。本日の夕食で2回ほど「カトブレパス」の単語を聞いた。

 ゲームでか何かで聞いたことがあるがあまり想像がつかない。


「大型の首の長い動物だ。牛のような頭と尾に、首に大きな棘が無数にある。体は・・・そうだな牛に似ているが、もっとがっしりしているな」


「食べれる・・・んだよな」


 今にして思えば結構な数で知らない肉を食べていることが多い。ほとんどが知っているような肉の味と香りで問題ないと判断して食していた。


「ああ、こうして出ているし、そもそも食べているだろ」


「まぁ確かに」


「想像がつかんのか?」


 もう既に切り分けられており、辛うじて何か大きな動物の肉であるというのが分かる。

 香りも肉の質も牛肉に近い。

 だから口かでた感想が


「・・・首の長い牛か何かと考えている」


 とポツリと答えた。


「まぁ、大体そんなところだ。それより冷めるぞ」


「ああ」


 自分の解釈は強ち間違っていなかったことに納得してから、ナイフとフォークを持ち、香草燻製を切り分け、口に運んだ。


「・・・!」


 先に口に運んだシンの様子を見たサクラはフッと笑いながら


「美味しいか?」


 と尋ねた。その言葉に


「美味いな」


 と答えた。

 実際美味かった。


「ふふん」


 燻製と香草の香りが強くある。だから食欲をそそる香りが暴力的に鼻腔を擽る。甘い脂を売りにしている高級牛肉の味だがしつこくなく、口の中で脂が溶けて消えていく。一噛みで噛み切れるくらいの柔らかさに溢れる肉汁が喉の奥へと流れてももたれることがないのを感じる「爽やかな脂」だ。燻製ならではの塩気の強さが脂の甘味をさらに引き立たせる。


「燻製と香草の香りがすごいな」


「ああ、元々臭みが強いから」


「なるほど、それでか」


 二口三口と食を進めていると、どことなく牛臭さというべきか、獣特有の匂いと血が混じった匂いが僅かに、ほんの僅かにしていた。


(まぁ、気になるほどのものでもないな)


 するといえども、本当に気にならない程度だ。例えるならば、元々乳牛だった牛をステーキにした時、乳臭いステーキに当たったようなものだ。その乳臭いものがハーブや燻製などである程度消して、僅かにする程度のものだ。

 その程度の話だ。


「鼻が敏感な者はそれは好まないことがあるが、シンは気にならないのか?」


「気にならないな。昔、獣臭い肉に当たったことがあるが、アレと比べれば遥かに美味い」


 そう答えつつ、頬張るシン。


「そうか」


「この香草燻製はこの辺でしか出されない御馳走なのか?」


 味わっているとふとした疑問が浮かんできた。この料理は明らかに豪華な料理だ。それも普段生活している分にはあまり出されないようなものだ。


「万民の御馳走だな。ワタシは違う理由であまり口にしたことがないし、この料理自体、祭事の時にしか出されない物だ。だがここまで美味いのはここだけだ」


「違う理由というのは所謂「身分」か?」


「・・・そうだ」


 口に運ぼうとしていたフォークをそっと元の皿に戻すように置くサクラは目を細めた。


「正直、今の立場でなければワタシも「万民の御馳走」は「貧民の御馳走」と考えていただろうな・・・」


 特別な時だけしか出されない料理と言えども、身分によって同じ「豪華」でも違ってくる。たくさんの量を出すことが「豪華」とも言えるし、出された料理の中身、内容、質といったことが「豪華」でもある。

 身分によっては違うのは「量」で豪華は身分が低い、市民、農民と言った上の人間を支える立場の者達で、「質」の豪華はその上に立つ者達だ。

 サクラは良いように「万民の御馳走」と言っているが、おそらく実情は偏見などで「貧民の御馳走」とみている人間が多いのだろう。

 食に対する偏見は意外と現代世界でも多い。今でこそ食べることが増えてきているが、日本では当たり前に食べられているタコは2000年代のヨーロッパ(一部の地域は除く)では「悪魔の魚」と呼ばれていて食べられることはなかった。

 逆に日本では昆虫食は根付いていないが故に気持ち悪いものと見ているが、東南アジアでは今でも当たり前に食べられている。

 ただ、シンの場合は少し特殊だった。


「・・・俺は「貧民の御馳走」でも美味ければいい。まともに食える時はあまりないことも多くあった。まともだったであろう食事は泥や砂が混じっていた」


 その言葉を聞いたサクラはシンの目に優しくのぞき込むように見て、静かに尋ねた。


「過酷だったのか?」


 その言葉にシンは頷いた。


「ああ。それでも食わざる得ない」


「・・・・・」


 無言になったサクラは僅かに俯き、動かしていたナイフとフォークが止まった。

 想像もできないくらいの過酷な戦場。その中で泥まみれの食事も食わざる得ない。この世界では、少なくともサクラが知っている限りではあまり平和とは離れた話が多くある。

 だから、飢える者、病める者も千万の数でいることも十分に理解している。その上で人の上に立つ王族の立場でそれぞれの食の楽しみに「格」をつけようとしていた自分自身に色々思ってしまう。

 思ってしまうが故に食指を止めてしまったのだ。その様子にシンは顔を覗き込んで


「サクラ」


 名前を呼んだ。

 呼びかけにサクラはシンの顔を見た。


「こうした料理を知って俺に食わせてくれた事に、俺は・・・」


 そう言いかけた時、気配を感じ取って


「お待たせいたしました」


 最後の料理がきた。


「こちらは「クードの実の折りパイの包み玩具付き」でございます」


 出されたのはデザートのようだ。


「「・・・・・」」


 さっきまでのどうとも言えない空気が払拭できたからだろうか、それとも掛ける言葉を遮り、サクラは聞こうとしていた気持ちが断たれたからのものなのか、2人は無言で向き合いつつ、最後の料理に手を伸ばし始めた。

事後報告になってしまいましたが、具体的な話はできませんが実は急に引っ越すことになりました。

しかも早く引っ越さなければならないことになってしまい、準備や作業に追われて遂には執筆活動にも大きな影響がでました。今後でも新生活で安定した状況は当分先になります。

こうした理由により、しばらくの間は完全な不定期更新になります。

大変申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

本当に申し訳ございません!

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