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38.問題去ってまた問題

「あ、次そこを切って素材として袋にしまうんだ」


「はいっ」


「あー、切り方雑!」


「ごめんなさい!」


 ガヤガヤ。オノマトペで表現すればまさにそれだろう。

 グリフの死骸の前で解体のレクチャーを受ける皆とシン。その解体をシン達にレクチャーするニニラ。

 助けてくれた事のお礼と皆に迷惑をかけたお詫びの意を込めて解体のレクチャーの役を無料で請け負ったニニラ。リースはレクチャーを受けた皆を責任もって次の町まで護送する。そのため皆のレクチャーを待っている。


「これで大体の部分は手に入るから。次は・・・シンとシーナ、ニックかな?」


 グリフの解体の順番が回ってきたシンとシーナとニック。


「やり方は分かるかい?」


「俺は何となくだが・・・」


「やってみて」


 解体を促すニニラにシンは躊躇う事もなくグリフの解体を行う。


「あ~、あの・・・」


「・・・・・」


 何か言いづらそうにするニックとシーナ。


「何だい?」


「・・・できれば」


「もう一度見せてほしいのですが・・・」


 本来なら一度でマスターしたかった2人だったが、途中でどう切り取ればいいのかが分からなくなったので素直にニニラに聞く事にした。


「・・・まぁいいけど?」


 一度で解体がすんなりと行ける人間はそういない。ニニラは面倒くさいと思いつつこればかりは仕様が無いので快く教える。




「こことここを切り分けたら後の残りは捨てる。分かった?」


「はい!」


「ありがとうございます!」


 ニニラはシーナとニックにどこが分からなくなったのかを聞き、丁寧に同じ箇所の切り取りの仕方を説明していた。するとシンから


「なぁこれでいいのか?」


 とニニラに声を掛けた。

 グリフの解体を終えたシンはこれで良いのかニニラに聞く。


「ん~、どれ?」


 そう呟きながらシンが切り取った獲物を見るニニラ。


「・・・・・・・・・」


 ニニラは絶句していた。

 ニニラが見たシンが解体したグリフが綺麗に肉や臓器等が並べられていた。まるで理科の実験のカエルの解剖の様に。


「う、うん、あんた飲み込み早いねぇ・・・」


 あまりの手際の良さと早さに背筋に冷たいものが感じたニニラ。


「割と手に入るものが多いんだな」


「え、ええ、そうね・・・グリフの解体で手に入ってありがたいのは、羽と嘴、爪、毛皮だからね」


 シンの言葉にニニラは少しドモリながらも答える。


「ああ、でも多すぎて袋に入りきれず肉は放置することが多いね」


「そうなのか?」


 詳しく聞けば、嘴、爪は薬を作る過程で必要な素材で、羽は弓矢の加工に、毛皮は丈夫さで防具の材料になるそうだ。

 肉はササミの様で結構おいしい。だが、ほとんどの場合は肉の量が多すぎて荷物に入りきれない事と、売っても大した金にならないため放置する事が多いそうだ。そのため解体にかかる時間は30分もかからない。


「結構もったいないな・・・」


「大体の場合は格下の冒険者に譲るか、死骸を放置して食べにくるモンスターを狩るとか割と使い道があるからもったいなくは・・・ないと思うんだけど・・・」


「ふ~ん・・・」


 冒険者なりに考えてマナーやルールを取り決めている。そのため死骸を放置したからと言って二次被害やトラブルは起きにくいそうだ。


 そんなやり取りをしていると


「もう終わりましたか?」


 とリースが聞きに来た。


「ああ、もう終わったよ。でも驚いたねぇ、あんたあの時グリフに何をしたのさ」


「・・・」


 リースも気になっているのかジッとこっちを見る。

 シンの目は笑わず


「・・・冒険者とかって知りもしない人間に手の内を見せるのか?」


 と低い声で返す。ピリッとくる殺気を感じる。



「「・・・・・」」



 2人の首筋に冷たい風の様なものが流れ込んできて鳥肌が立った。ニニラは小さな深呼吸をして両手を挙げる。


「・・・冗談だよ、アタシだって知りもしない奴に手の内なんか見せないよ」


 ニニラの返答を聞いたシンはリースにも目をやる。


「生きていく上でそういった秘密は必要ですものね・・・」


 と静かに答える。

 ニニラとリースはあれだけの強さは「魔法」によるものだろうと勝手に解釈する事にした。

 そんなやり取りをしているといつの間にか冒険者達と騎士達が全員集まっていた。


「おーい、何をしているんだ!町に戻るぞ!」


 騎士風の男が大きな声でシン達に町に行く事を伝える。それを聞いたリースは大きな声で返事する。


「はい!今行きます」


 リースはシン達の方へ向く。


「近くに町がありますが、どうしますか?」


 この問いにはシン達は当然の答えを出した。




 ガシャガシャ、ザクザクと足音を立てながら次の町に向かうシン達。後方では荷馬車が付いてきていた。この荷馬車は本来は、冒険者達と騎士達が乗ってきた荷馬車だ。だが、今の荷台には冒険者達と騎士達の遺体が乗せられていた。次の町の教会で埋葬する事になるそうだ。そんな道中でニニラが皆に


「そう言えばあんた達はギルドで登録するために次の町まで行ってるんだよね?」


「はい」


 ナーモが答える。


「大変だよ?アタシ達の最終的な目標は・・・」


「“安定した生活”ですよね?」


「・・・・・」


 ニニラは呆気にとられていた。ナーモだけで無くエリー、シーナ、ニック、クク、ココも真っ直ぐな瞳がニニラの顔へと突き刺さるように見ていたからだ。

「冒険者」とか「傭兵」、「行商人」は肩書や旅ができて自由に動ける。また、冒険者としてやってきて成功した者もいる。これらの事から若者からは憧れの職業の一つだった。

 だが、実際この職業に就いてみるとあまりにも過酷だ。冒険者で成功した者はほんの一握りだ。

 命を落としたり、冒険者稼業生活に疲れ果て自分の故郷へ帰る者は決して少なくは無かった。

 だから、その事を諭そうとナーモ達にギルドの者としての最終目標の事を言おうとした。だが、ナーモ達は覚悟の上で冒険者になろうとしていた事をナーモの答えで知ったのだ。


 ニニラはフッと笑い


「ごめん、野暮な事を聞いたね。精々気張って・・・」


 静かに目を瞑り、片手でヒラヒラと振り、そっけない返事をした。だがこれはニニラなりの応援の言葉だった。

 そんなやり取りの中でシンはギルドについて気になる事をニニラに聞く。


「登録って何をするんだ?名前を書くだけなのか?」


「いいや、受付の人から水晶を取り出してくんだけど、そん時に水晶の上に手を置くのさ。それで自分のギルドカードができて自分の状態が分かりやすく表示が出来んのさ」


 そう言ってニニラは首から下げているカードを見せる。最もカードというよりネックレスプレートかドッグタグの様なものだった。


「・・・やっぱり魔法か?」


「そうだね、魔法でズルができず身元確認ができるようになっているからね」


「そうか・・・」


 シンは少しやばいと考えていた。


 何故なら、シンは「解析」の魔法が効かず「アンノウン」と出ている。魔法が効かないという事はカードができないという事になる。また、仮にできたとしてもまた「アンノウン」とか出て他人からその事を突き付けられるからそれも困る。

 かと言ってできたとしても自分の情報が他人から分かる様になってしまう。自分が転生者である事を隠したいシンからすればそれはそれで困る。

 だが、カードを作らなければ自由に国から国へと行き来ができなくなる。カードを作らず国を出て行く事も可能だが怪しまれたり、最悪バレれば動きづらくなる。

 やはり今後の事を考えればカードを作った方が何かと便利だ。

 だが・・・・・・・・・・


 う~んう~んと唸って考えるシンの尻目にククとココが


「シン兄、大丈夫?」


「お腹痛いの?」


 と心配してきたが、シンは悩んでいる最中で気が付いていない。するとニックが


「クク、ココ、シン兄なら大丈夫だから」


 と諭す。


「シン兄、どうかしたの?」


「シン兄は何か考え事でもしているんだろうからそっとしてあげようよ」


「う、うん」


「・・・わかった」


 そんな3人をよそにシンはギルドに着くまでにカードの件についてどうにかしようと必死に考えていた。


「活動報告」の事をすっかり忘れてしまいすみません。

なるべく活用する様にしますが、またすっかり忘れてしまうと思います。

だから、大目に見ていただけると・・・・・・・・・・










すみません。ちゃんと活用します。はい・・・。

ああ、そんな冷たい目でこっちを見るのはやめてください・・・。


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