2.状況確認2
薄明るい空には灰色に曇った雲から大粒の雨が降り、激しい雷鳴が響く。誰もがこんな中で外はで歩きたくはない。
突然訳の分からない状況へ放り出された真も決して例外ではなかった。
今着ているTシャツと短パンは寝る前に着ていた服だった。今の今まで自分の体の事で頭の中がいっぱいいっぱいになっていたせいか、自分の服装の事なんて気が回っていなかった。
「・・・・・」
真は汚れた自分の格好を見て考えていた。
(そういえば、俺の体って“ブレンドウォーズ”のプレイヤーキャラクターとそっくりなんだよな・・・)
今露出している部分は両手足。その両手足には黒くなっており、爪や毛がない。更に言えば、足には全指が無い。
(そういえば、ここに来るまでに岩の棘みたいな所もあったが難なく歩けてたな・・・)
洞窟の出口までに床一面が岩の棘が所狭しとあった場所の事を思い出す。最初は大丈夫なのかどうか不安だったが恐る恐るゆっくりと一歩ずつその床の上を歩いたものの踏んだ感触はあるが何の痛みもなく踏破できた。それどころか、岩の棘が折れてしまった。
(やはり俺は「BBP」を手に入れてしまったのか・・・)
真はまさかとは思ってはいたが、さっきの状況を思い出す。「ブレンドウォーズ」の「BBP」の特徴をである「BBP」となった部分は触った感触はあるが苦痛が無く、少なくとも岩の棘よりも頑丈である。つまり自分は「ブレンドウォーズ」のプレイヤーキャラクターになってしまっている。そこまで結論付けた真はふと
「・・・まさか、「ステータス」画面とか見れるってことか?」
と一つ可能性がある事を思いついた。
「ステータス」画面とは今の自分の状況確認を分かりやすく画面で表示できる機能の事である。
また「BBP」と武器のアップグレード、「ショップ」等がある。「ショップ」では武器や兵器、弾薬、回復薬等が売られており、報酬で手に入れた通貨で購入することができるのだ。
とは言え、この世界はゲームではない。これは現実だ。ゲームであればボタン1つで事終える。だが、コントローラーやマニュアルもない。とりあえず、ゲームや漫画のように真は右手を突き出すように翳してみた。
バッ
「・・・・・」
・・・・・何も起こらない。
何も起こらない事への対してなのか中二病的なポーズへの対してなのかどことなく虚しさと恥ずかしさが僅かに感じた。
そのまま突き出した右手を静かに戻す。
しかし、瞬時に切り替えて真剣に「ステータス」について考える。
「・・・どうやって「ステータス」画面を出すんだ?」
右手同様に左手を翳したり、「ステータス」と叫んだりしてみたが何も起こらない。
(どうしたものか・・・)
ゲームでは右手を翳すと「ステータス」が表示されていたが、今はそんなことは起きない。
(「ステータス」、「ステータス」・・・)
その事ばかりに集中して考えていると・・・
シュン!
「出てきた!」
思わず声に出してしまった。真の視界に黒みがかった灰色の画面の様な物が表示された。真にとっては嫌と言う程見覚えがあるものだった。
「よし」
ついに「ステータス」が表示された。表示された「ステータス」を見る。すると真はある事に疑問を感じ、目を細める。
(ゲームとは違っている・・・)
そう、「ブレンドウォーズ」とは大きく違っていた。「BBP」のアップグレードやショップ等があったが、大幅に変わっていた。
まず、「BBP」に関するアップグレード等が無くなっていた。
また、「ショップ」では武器や兵器、弾薬、回復薬等が中心だった品揃えが食品や生活雑貨、本、服、ドラッグ等のカテゴリーが追加されていた。
その他にも色々変わっていた。
(そういえば、夢でノートにこの体の事とかについて書いたな・・・あのノートがあれば確認ができるんだが・・・)
夢で書いたノートの内容と今自分の身体に起きている現実と一緒。
ということはあのノートさえあれば今の身体の事についてもっとよく確認できる。
まさか、どこかにあるのでは。
そう思い、真は「ステータス」画面を切り替えて「収納スペース」を表示した。
「収納スペース」とは「ブレンドウォーズ」の時からある魔法で基礎中の基礎の魔法である為初めから使える。これは空間や次元を利用して大きさ、量関係なくほぼ無限に収納できる魔法。RPGで言う所のマジックボックスとかアイテムボックスに分類される。
すると、「ブレンドウォーズ」のLv MAXで手に入れた「レーザーピストル」と夢で書いたノートが収納されていた。少ない。他にもAPS(ロシア製の自動拳銃)、RPG-7、NTW-20(南アフリカ共和国製の大型スナイパーライフル)、HK416(ドイツ製のアサルトライフル)等の武器があったはずなのに・・・。おまけに10000ポイントは全て無くなっていた。
(何で武器が無くなって・・・あ)
真はある事を思い出した。LvMAXになると10000ポイントが手に入る。すると、「BBP」と魔法、手に入れたレーザーピストル以外はリセットされてしまうのである。10000ポイントが無くなっていたのは恐らく持っていてもどうしようもないから無くなったのだろう。
「マジか・・・」
「ハァ」とため息をついた。無理もない。せっかくの攻撃手段が一気に減らされたのだから。
真はノートを手に取り、内容を確認した。
「! ・・・やっぱり、ノートに書いたとおりの身体にされていたんだな」
真はこの身体で生きていくためにノートの内容を全て頭に叩き込んだ。
(読んでみればみるほど、俺が如何に人間離れした存在なのかが分かるな・・・)
確かに真は「現実で「ブレンドウォーズ」のプレイヤーキャラクターをベースにして自分なりに自由に改造して生きたい」という願望はあった。
だが、いざそうなってみると何とも言えないような複雑な気分だった。
一通り読み終えるとノートを「収納スペース」に収納し、「ショップ」画面を開いた。今の服装では如何なものかと考え、適当に服を購入した。薄暗い洞窟の中で真は着替えながら考え事をしていた。
(今使った通貨は、この世界の魔力が源だからな・・・。何かから魔力を手に入れなければこの通貨は遅かれ早かれ無くなってしまう・・・)
今の所はその通貨は莫大と言って良い程あるが、決して無限ではない。いつかは無くなる。手に入れる方法はある。
それは「魔力吸収」だ。
この魔法は真が思い付き例のノート書いたオリジナル魔法で、魔力を持った相手又は物から魔力を手に入れることはできる。しかし、現状では吸収する対象がない。当分の間は、レーザーピストルの弾(電池)を中心に買い、食べ物や水は現地調達する事にした。
もし、それ以外で「ショップ」を利用するときは細心の注意を払おう、と真は心にそう誓った。
とりあえず、何か分かるまでの間は、己の身体の「BBP」と特殊魔法を中心に戦うことにした。銃がある世界でも十分戦えたのだ。自信はある。万が一、遠距離攻撃をする時はレーザーピストルで何とかなるだろう。
取敢えず今後の事を考え、ふと近くにあった水溜りを見た。
(・・・そういえば俺の顔はプレイヤーキャラクターなのか?)
何気なくそう思った。真は着替えていた少し横に大雨によって洞窟の中に流れ込んで出来た水たまりがある事に気が付いた。それを鏡代わりに、そっと自分の顔を見た。
「!?」
目を疑った。そこに映っていたのは自分の顔でもなければプレイヤーキャラクターの顔でも無い。全く別の姿の人物だった。
勢いで書きましたので至らぬことがありますがどうぞよろしくお願いします。