383.変な職業
最近パソコンを大きく変えてキーボードの感触や文字変換の面で色々と苦慮して執筆していますので変なことになっているかもしれません。
読み辛い事がありましたら修正いたしますのでご一報ください。
ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…ドドッ…
道なき道として存在する森の中を突き抜けるようにして進んでいくシンは慣れてきたおかげで余裕が生まれて走りながらにして話す口を開くことにも余裕ができた。
「ギアは上手くやっているよな?」
声のトーンからして余裕がなかった。
「まぁどうとでもなっているだろ。・・・下手なことさえしてなけりゃ・・・」
そう答えるアカツキの声もとても「大丈夫」のつもりで言っているようには聞こえなかった。それゆえに不安がより増す。
「「・・・・・」」
思わずお互いが無言になり僅かに間が開くことにお互いが気付き口を開く。
「大丈夫・・・」
「ああ・・・大丈夫・・・」
「「・・・・・」」
不安しかない言葉になっていることにお互いが気が付き思わず無言になり、結果として口にした言葉が
「「無理だよな」」
これに尽きてしまうことに無情の間に無言で答えてしまう。
「「・・・・・」」
もう決めて行動に移した以上最早後戻りはできない。こうなれば進む他ない。そんな現実に伸は頭を切り替えてコクヨウに話しかけた。
「道じゃない道を走っているが、かなり進んでいるよな?」
「はい。しかし、あの空飛び船よりは遅いのは間違いございませんので、遅れて到着してしまいます」
「・・・そうか」
道なき道を最短ルートで進んでいるのだが、地形による起伏の激しい場所を通らざる得ない。だから空からによる最短ルートで目的地に向かうことの方が早いのは間違いないだろう。
「まぁ、変な奴には遭遇しないだけマシか」
「ああ、俺がナビして」
「私が走っている限りは問題ございません」
「そうだな」
とは言え、この世界の情勢に合わせて移動手段を得ているのは間違いない。一見程度では怪しまれないし、暁のナビによって安全で最短ルートを選んで進んでいる。その上馬ですら行けないような悪路とも言えない道すらも走ってのけるコクヨウのサポートによって進行している。
正規の道、所謂街道を選んでないが、楽に早く移動している。
「正規、か・・・」
「どうかなさいましたか?」
思わず頭に浮かんだ単語を声に出してしまう。
と言うのも前々から気になっていたことがあるからそれに連動して連想してしまったのだ。
「いや、よく考えたら俺は軍隊とか兵隊みたいな軍事関連に関わっていたが、正規軍は真面に居たことって少ないなって思い出してさ」
ブレンドウォーズでのシンの身分は一時は自衛隊や国連軍に大きく関わって軍事活動を行っていた。だが正規に軍人として動いたことは一度もない。ほとんどが日本やカナダ、オーストラリア、国連等々から依頼という形で活動していた。依頼を受けるということは命令ではなく金等の報酬で動いていた。つまりシンはPMCの従業員であり、社長で活動していた。
PMCとは、直接戦闘、要人警護や施設、車列等の警備、軍事教育、兵站等の軍事的サービスを行う企業。 PMC、PMF、PSC、PMSC 等と様々な略称で呼ばれる。ここでは「PMC」で表現する。
だからシン単独のPMCとして動いていた。
そのことに触れるとアカツキも会話に参加した。
「じゃあよ、またPMCとして活動・・・この世界じゃ、傭兵ってのに、いや・・・そう言や、冒険者ってのはなんだ?」
アカツキもシンと同じように連想ゲームのように連動して疑問に変わった。最初はPMCと表現したが、この世界にはないから、中世ヨーロッパなら存在していた似たような職業の「傭兵」という表現をとった。だが、その職業に似たような職業があったことを連想して思い出して思わず「冒険者」というのは何か、と疑問として繋がってしまったのだ。
「変わった職業でございますね」
「変だよな・・・」
アカツキの疑問にシンもコクヨウも疑問に感じる。と言うよりも前々から疑問に感じていた事柄だ。
「冒険者」とは一体何だ?
「フ~・・・」
大きなため息をついてギルド長の椅子の上で仰向け様に座っているマリーが額に腕を押し当てていた。
「お疲れが出ているようですが?」
書類確認をしてもらう為にギルド長の部屋に来ていた男性職員が疲れ気味にそう尋ねる。
「うん・・・引継ぎでね、中々分からない事が多くてね」
僅かに動かす形で頷き、そう答えるマリーの声には疲れの色が出ていた。
「引継ぎで、ですか?」
「うん」
正直このやり取りをするよりも、静かにボーッとさせて欲しい。そう考えていたマリーの声に少し面倒臭さが見え始めようとした時
「どのような事で?」
と追及の声が何となく、本当に何となく圧力を感じさせる質問に感じた。それに驚く形で目をハッと開いて男性職員のほうへ目を向けた。
「あ、あの・・・」
目を向けるとそこにいたのは急に鬼の形相というべき顔をしたマリーに職員はオドオドとしていた。その様子にマリーは一呼吸整えてから答えた。
「ギルドの会議資料で詳細でどこまで進めているのかを知りたいのだけれど、よくわからない事が多いのよ」
「そうですか・・・。生憎私には」
どうやら仕事に根を詰めて気を張った故にあんな顔になっていたと解釈した男性職員は手伝わされると考えてしまい申し訳なさそうに言う。
そのことを察したマリーは
「ああ、うん。期待していないわよ。安心して資料置いて、貴方の仕事に戻って」
と答えた。
「分かりました。無理なさらずに」
少しホッとしたような顔になってそういう男性職員はそっと書類を机の上に乗せた。
「うん、このまま少し休むから~」
マリーは再び背凭れにもたれて目を閉じて男性職員にヒラヒラと手を振ってそう答えた。
「失礼しました」
男性職員はそう答えて静かにギルド長室を後にした。
「・・・・・」
一人になったマリーはボーッと天井を眺めていた。
(ギルド長は地図を見ていたようだったけど、何を見ていたのかしら・・・?)
フラッシュバックするように思い出す、グランツが亡くなっ後始末の為に入ったギルド長室にあった地図とそれらに関わる資料の数々。
その事を思い出すと同時に気になる事も次々に思い浮かぶように思い出した。
(それにギルド長が亡くなってから何か視線を感じる事が多いし、何となくだけど新しく来た職員が怪しく感じるわ・・・)
それはグランツが亡くなってからマリーは部屋を整理すると同時に地図と資料を検めるようにして調べた。対して何か書かれているわけでもなく、ただのギルドとして必要な地図とギルドで必要な事柄が記録された資料だけだった。何も特別な事はなかった。
だからこそ何者かに殺されたであろう亡くなり方をしたグランツの死に疑問を持っているのだが何も分からない。
分からないが不穏で不気味な感覚があり、その上状況証拠・・・ではないが、状況として誰かの視線が自分の方へ向けられている事は間違いなかった。
はっきり言って孤立に近く、無援は一切ない状況だった。
こんな状況にマリーは深い溜息をついてポツリと
「グランツギルド長・・・」
自分以外誰もいないギルド長室で呟いた。