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371.蟲

 道中で説明を受けながら2人を面倒を見てくれる地へと向かっていた。説明の内容は具体的な場所、出会う複数の人物、道程等々を話し込んで。道中で、シキテと言う人物と合流した。


「「「・・・・・」」」


 出会えばすぐ分かる。

 そう言われて出会って見たらすぐに分かった。分かったのは分かったが・・・


「よぉ、アンタらがこっちに来たっていう”来訪者”か?」


 蟲の人だった。仮面を被ってバイクで走行する特撮モノのヒーローの様な印象もあるが、どちらかと言えばやはり文字通りのクリーチャーと呼ぶべき処寄りの姿だった。

 道中である程度話して1時間くらい経った頃、その人物と出会った。

 その人物は赤い深編笠を被っており、その深編笠を取ったその顔は昆虫そのものだった。

 全身が深緑色で光沢を放ち、装甲とか鎧と言った酷く丈夫そうな外骨格を持っていた。その上から黄色の着物と橙色の袈裟を連想させる着物を羽織り、黒色で表現した何かの植物の柄のある、茶色の袴に毛沓を連想する履物を履いていた。頭には赤い深編笠を被り、腰には団扇を連想させる大きな革の鞘に納まった豪奢に仕上がったであろう刃物と、長い革紐、漆塗りを連想する黒い独特の形をした数十cmの棒が収まっていた。大きな網袋を背負うその姿は何かの宗教の門徒にも見える。

 体が当然深緑色であれば顔も深緑の甲虫特有の外骨格の虫の顔。その虫の顔は無機質で畏怖を感じさせられるものだった。

 昆虫特有の大きな2つの目は複眼で吊り目になっており、額に3つの単眼があった。太く長い触角は単眼の横から出ており、アリやスズメバチ、トンボのヤゴ等の、兎に角顎を主体になっている虫を連想させる丈夫で強靭な顎を持っていた。全体の顔からしてどことなくスズメバチを連想させるような凶暴でありながら礼節を弁えている様な顔だった。

 特撮モノで見るようなヘルメットや仮面の様な無機質さは感じられず、生きているが何を考えているのか分からない無機質に、どことなく見透かすような印象のある目でこちらを見ているような神々しさを感じる。


「・・・シキテさん?」


「ああ、そうだ。誰からか聞いたのか?」


 頷きながらそう答えるシキテは深編笠を片手で持ち直して改めて


「改めて名乗るぜ、オレが「健啖なる」シキテ、シキテ・イペタム・キキリと言う。名前の通り良く食べるから、何か食う時はよろしくな」


 自己紹介した。


「「「・・・・・」」」


「・・・!、おい、俺の種族とか言ってねぇのか?」


 絶句するシン達の様子にシキテは星の柱のメンバーの方へ向いて口調強めにそう尋ねた。


「ゴメンゴメン、言ってないね」


「はぁ?じゃあ俺の名前とか誰も言ってねぇの?」


 イヒメの言葉にキョロキョロ見回すように他のメンバーに尋ねると


「シキテ、許して。初めて見せるお前の姿を来訪者らはどう反応するのか見てみたかった」


「サクラよぉ・・・って事は他の奴らも知ってて言わなかったのかぁ?」


 溜息混じりに自身の事を誰も行っていない事に呆れる。


「ホント、ゴメンね。サクラちゃんのそういうびっくりさせて反応を見るのは僕も半ば同意したからね」


 イヒメの言葉を聞いてシン達の方を見るシキテは、真ん丸になっている目でシキテを見るシン達の心境を慣れたように振る舞い、再び溜息を付いた。

 サクラ達は透と葵は想像通りの反応だった様子に対して、シンが絶句している様子に意外だった。だから面白いという感想と驚きの心境が混じった気持ちがシンの方へ向けられていた。


「かぁ~・・・まぁいいや、あ~俺は「鉄蟻族」っていう・・・見りゃ分かんけど、虫に似た種族だ。驚かして悪りぃ」


 どうやらそこまで気にしていないようだ。それよりもシン達の方を気にかけている様子から気を使うタイプなのかもしれないようだった。


「そうだね~驚かしたね~」


 のほほんと言うイヒメ。


「無言になっていたな」


 シレッと他人事のように言うサクラ。


「まぁあんな反応だと思うよ」


「仕方なかろう」


「まぁしょうがない、しょうがない」


 仕方ないと言わんばかりに言うアンリ、ウルター、サトリ。


「ハッ」


 鼻で笑うイズメク。


「テメェらも謝れやぁっ!」


 セーナ以外の言葉が他人事でいる事に僅かな癇癪を散らす。その様子を見ていたセーナはそっとシキテに近づいて


「ホントにごめんなさいね~、シキちゃん。それから葵ちゃん、透ちゃん、シンちゃん」


 と彼・・・彼女の、セーナらしい謝罪をシキテとシン達に送る。


「・・・いや、大丈夫です」


「お前のその言葉は他の連中のものとして受け取るぜ。感謝しろよ、テメェら」


 セーナの対応に怒りの矛を納めるシキテに3人を代表して透が受け入れの言葉を口にした。と同時にセーナが言った単語でシン達3人は頭に残った思いを一緒に共有するかのように


(((”ちゃん”づけ、か~・・・)))


 と連想した。

 おバカな幼稚園児のアニメを連想してしまった。それ故に透とシンはそれに当てはまってしまうから葵は思わず


「ブフッ…」


 吹き出してしまった。

 その様子を見ていたシンは眉間に皺を寄せて


「耳に息は吹きかけんからな?」


 と言い


「あ、大丈夫です。そんな趣味ありません」


 と透は低い声でそう言った。


「あ?」


 そんな様子の3人にシキテは首を傾げていた。

 それよりもと言わんばかりに


「これからの事でシキテとはどういう関係があるんだ?」


 と尋ねた。実はシキテとこれから向かう場所とはどういう関係なのかは分からなかった。これから向かう地には元から身元引受人がいる。

 シキテではない。

 ならばシキテの目的は?


「あ~オレは放浪の身だ。()()()()()()と行き渡って流れて行ってんだ」


「群れから?」


 気になる単語に葵はそう尋ねた。


「あ?人の集団は「群れ」だろ?」


「・・・・・」


「んん?」


 それは、「群れ」ではなくて「国」とか「町」じゃないのかという沈黙を漂わせる葵。そんな彼女に疑問が増えるシキテ。その様子にシンは2人に


「多分だが、種族の習慣とか文化とかの違いで俺らの一般常識とシキテの一般常識は違うからだと思う」


 とシンが感じた事を口にした。


「あ~そうか、確かにテメェらは他所の国とかの話じゃねぇもんなぁ。悪りぃ、変な噛み合わせになったな」


「い、いえ・・・こちらこそすみません」


「気にすんなよ。オレ、旅してっから文化の違いって事も理解してるよ」


 理解があったシキテ。理解した葵。お互い歯車の噛み合わせが上手くはまり、お互い謝罪した。


「まぁオレの事もついでに話すから、行こうぜ。あ~どっから話しゃあいいんだ?」


 そう切り出し歩みを止めずに目的地まで向かっていった。


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