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361.分断

 

「シン!」


「相沢君!」


 叫ぶ透に葵は声をかけて今の状況を把握するように名前を呼んだ。イヒメがシンの方へ向かい、今はそれ以外のメンバーがここにいて自分達を囲んでいた。

 そんな自分達に飄々とした口調でこちらに語り掛けてきた。


「あっちはちょっと用があるんだ。済むまでわっしらとで遊ばんか?」


 目隠しをしているのに明らかに獰猛な眼光の様なものを感じる。ヒシヒシとした強い殺気の様な猛々しい気配が2人を覆うようにして襲ってきた。


「マジかよ・・・」


 小さな身震いを感じる2人はこれからどう切り抜けるかを小さな声で相談し始める。


「防ぐくらいならなんとかできると思うけど、逃げる?引き付ける?」


 葵は透の背に透は葵の背に、と言ったか具合にお互いの背を預ける様にしてこうして囲まれている状況を対処していた。

 そして葵が言っていた提案に透は


「バランスよく動く。そしてシンを助ける」


 と答えていつでも行動に移せるようにしていた。

 その言葉を聞いた葵はコクリと頷いて


「じゃあ・・・」


 良しとした。

 バランスよく。

 その方向で動く事にした葵はそれ以上言う事なく


「ああ・・・」


 透も自分の案に乗ったことを確認した。

 その瞬間だった。


 バッ!


 2人は二手に分かれた。


「「「「「!」」」」」


 二手に分かれて動いた事に星の柱のメンバーは意外そうな顔をして合わせて動き始めた。





 グワッ…!


 シンの足元の地面が急に巨大な掌の上に成り代わった。指の大きさだけでシンの身長程もある。それがシンを


 ギュッ!


 掴みかかったが、それを避けた。


「遊ぶ気はないぞ!」


 避けたシンは軽いステップを踏むように体勢を0.という時間の中で整えてすぐに近づいた。


「なら僕に近づいてきたのは・・・」


 壁のように立ちはだかった巨大な壁のような巨大な手が


「何でだいっ!?」


 シンを掴みにかかった。

 だが、これもステップを踏むように寸前で避けてイヒメの脇に近い傍まで来て


「無力化」


 とセリフを吐き捨てた。


「!」


 その時シンが持っていたシャベルで自分の喉元を突こうと狙っている事に気が付いたイヒメは微動だにせず


「っ!」


 シャベルが動かない。

 何故ならイヒメが作った無数の魔法の手がシンのシャベルを掴みかかっていた。


「っ・・・」


 シンは躊躇わずシャベルを捨てた。


(躊躇なしに捨てるか・・・)


「おっと・・・」


 シンは構わず攻撃を仕掛けようとする気配を感じたイヒメは


 サッ…


 距離を取った。


(しかも、さっきからシン君の事を捕まえようとしていたけど、全然捕まえられない。手をシン君に近づける度に消える・・・。彼の魔法かな?)


 シン自身を無力化を図るために先からかなりの手段を講じていたのだが、シンの体だけに触るとどういう訳か消えてしまっていて決め手になる様な方法がとれなかった。


(さっきから俺を手足を掴みに掛かっているが、すぐに消える。思うように動けないな・・・)


 一方のシンも先から何かが自分の手足、とにかく攻撃手段できる部分となるところが思うような動きが取れない。正直言えば動きが鈍い。だからシンも決めになる様な手段が講じる事が出来ずもどかしさを感じていた。

 そんな2人に共通して思っていた事があった。それは


((面倒だな))





「ほんと、面倒だなぁおい」


 ドガァァツ!


 そう呟きながら硬い地面をかち割っていたイズメクの視線は常に追っている者がいた。


「おっ・・・」


 土煙の中から出てきたのは透だった。


(どう見てもやばいよな、あれ)


 颯爽と逃げる様に土煙から出てきた透はイズメクから一目散に逃げ出すように走る。


「テメェ!何しやがった!?」


「何もしてない!」


 獰猛に笑い、宙に舞いつつ追いかけながら攻撃モーションに入るイズメクに只管に走って逃げる透。


「じゃあ、何でオレはテメェから目を離せなくなってんだ!?」


「気になってならないじゃないのか!?」


 ドゴンッ!


 宙に舞うイズメクの言う言葉に八つ当たりではないのかと言わんばかりに言う透にイズメクはお構いなしに透に目掛けて踵落としを行う。


「っ!」


「じゃあ、気にならないようにしねぇとなぁっ!」


 何とか避けるも、イズメクの言う言葉は滅茶苦茶だった。要は透を叩くまで攻撃を仕掛けるという事だ。

 冗談じゃないと言わんばかりに我武者羅に走る透の傍までやってきたのは


「あらあら、避けてばっかりはよくないわよ?ぼーや」


 セーナだった。


「っ!」


 ビュッ!


「あぶねっ!」


 気が付いた瞬間、セーナが掌底を透の脇腹を突こうとしてきた事に咄嗟に身をかわして避けた透は走り続けた。


「何だかアタシもアタシでぼーやの事が気になって気になって仕方がないのよ~?何したの?」


 言葉遣いは恋追いかける乙女らしくいうものの、殺気はかなり出していた。


「・・・それはそっちの勝手でしょっ?」


「勝手って事はねぇだろっ!?」


 逃げながら問答する透の頭上位の宙に舞いつつ透の頭部目掛けて回し蹴りを入れようとしていた。


 ビュッ…!


「ひっ!」


 咄嗟に身を屈めて躱して走る足を止めない。それをしつつ透は口を開いて弁明しようとする。


「そっちの言いがかり・・・」


「なわけねぇだろ?」


 言い切る前にイズメクが遮る様に言い切る。


「そーよそーよ、だってぼーや、さっきからあっちの少女(おとめ)ちゃんの事、気ににしているじゃないの~?」


 セーナもイズメクの言葉に同意して透との距離を詰める。


「!」


 距離を詰めてきた事に驚いていた、と言う訳ではない。


「あら図星~?」


 どうやらセーナの言葉で反応してしまったようだ。そして図星でセーナとイズメクに悟られてしまったようだ。


「テメェ、俺らをこっちに引きつけるつもりで何か仕掛けたが、俺らしか引っ掛けられなかったから焦ってんのか?」


「そうよね~。だって~アタシ達~視線がずっと貴方の方しか向けられないんだものね~」


 しかもさっきから否定していた透の言葉は嘘だったことも見抜かれていた。実際、透は少なくともイズメクとセーナに()()()()()()()()のは確かだ。

 この事から何かあると考えたイズメクとセーナは葵の事を一旦無視して透に集中攻撃を図っていた。

 ここまで言われた透の顔つきが切り替わった。





 パァァンッ!


 空中で突然の破裂音。

 跳ね返ってきた物はサトリの刀の白い刃。


「ほっ」


 想像以上に跳ね返りの衝撃が来たから宙に舞うサトリは魔いながら体制を整えて着地する。


「むぅ・・・」


 今の破裂音と跳ね返った様子をウルターは唸って見ていた。


「ふ~・・・」


 跳ね返ったサトリが着地した瞬間と言わんばかりに深呼吸のように息を吐く葵の額に大量の汗が出ていた。

 その様子を見ていたウルターは


「娘よ、先程から何をしておる?」


 と低い声で尋ねた。

 そのウルターの問いに葵は短く毅然とした態度で


「防いでる。それだけ」


 と答えた。

 短くてシンプルだが、確実で間違っていない答え。

 事実だと、突きつけられるような答え方。

 本当に防いでいるだけ。

 だが、その言葉を疑う者がいた。


「防いでるだけって事はぁ無ぇでしょ?」


 実際受けたサトリ本人だった。

 サトリは性懲りもない形で唐竹割のように縦一文字に斬りかかった。


「っ!」


 パァァンッ!


 それを確認した葵はすぐさま魔法を発動したのか、サトリが振りかぶった刀の刃が自分に触れるまであと15cm位と言うところで宙で止めて、「0.」何秒という刹那にも似た時間で跳ね返した。


「おぉ、またかまたか♪」


 跳ね返した瞬間サトリは子供のように燥ぎ始めた。その様子を見ていたウルターは


「ふむ」


 と何か納得したものを感じて右手の平を仰向けにしてそのまま上に上げる。その時


 グァ…!


「!」


 無数の石や岩、倒木が宙に上がった。それらが


 ヒュアッ…


「っ」


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!


 葵に向かって飛んで行った。同時に


 パパパパパパパパパパパパパパパパァァァァン…!


 跳ね返るあの破裂音が聞こえた。


「ほぅ・・・」


 感心するウルターの視線の先にあったのは土煙でモワモワとドーム状に立ち込める様子だった。


「ここまで存外なものを見せれては、お主の言うように防いでおると言うのは間違っておらんな」


 そう言って風の魔法を使ったのか周りを振り払うかのように左手で振り払う動作をした時、風絵が巻き起こり、葵がいた周辺の土煙が消えた。


「ふ~・・・」


 また深呼吸のように大きく息を吐いていた。同時に額に汗の玉が増えていた。今がいっぱいいっぱいで無理をしているように見える。


「だが、防戦一方にも程があるな」


 無理をしているように見える様子を見てそう言うウルターは首を軽く横に振り


 パァァッ


「!?」


 ウルターの胸の前に青白い光でできた小さな星の様なものが生まれて葵に目掛けて飛んで行った。


「っ!」


 パァァンッ!


 跳ね返す事に成功したが


「ふん、我輩の「鏃星」で大袈裟な」


 呆れた口調で葵に言葉をぶつけたウルターに対して葵は


「ふ~ふ~…」


 最早余裕がなかった。


「ありゃりゃ・・・」


 その様子にサトリも軽口ながらもどことなく拍子抜けした気持ちが伝わってくる。


「やはり、青いな・・・」


 変わらず呆れ口調でやれやれと言わんばかりに言うウルターの青白く光る眼は細くなる。


「ウルターさん、こりゃあ、わっしらが教えんとだめだねぇ」


 同時にサトリもそう答えて納刀した。


「娘よ、もう身構えなくとも良い。少し手ほどきを致す」


 先の呆れ口調から一転して、穏やかな口調になっていた。

 だが、葵は未だに戦意を無くさず、猛気とも言えるような敵意をウルターとサトリにぶつけていた。

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