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356.事前説明

お久しぶりです!

 3日後の夜の事。


 ゴォォォォォ…


 轟音を鳴らし夜空に翔るのはフリューだった。その中で夜空を眺めてボーッと見ていたシンにアカツキは通信を入れた。


「ボス、数分後にマザーベースに到着する」


「了解」


 そろそろ拠点に着く事に対する報告の通信だった。その通信連絡を聞いたシンは返事だけして未だにボーッと外を見ていた。そんな様子をキャップのカメラを通して何か思ったのかアカツキは通信を切らずに続けた。


「ボス」


「何だ?」


 素っ気のない返事。構わず続けるアカツキ。


「2人の心理的サポート面で自信がないのか?」


 アカツキのその言葉にシンは思わず絶句した。胸に突き刺さるのような事実だったからだ。


「・・・ああ」


 数秒程からしてそう答えるシンの声にはどことなく自信の無さを感じさせるものが窺えた。よくその自信はどこから来るのかと言いたくなる話は多くある。何の根拠に他人の面倒を見るという自信があるのかと問われてもおかしくない。だがシンは子供を面倒見ていた事はある。だから自信を持ってもいい話だ。しかし、今回はどこからその自信の無さはどこから来るのかを問いたくなる。

 その理由はアカツキは尋ねる必要はなかった。


「身を戦場に置いた者として現代日本の平和に居れるかどうかが分かんねぇってか?」


 この言葉の意はエリーが以前言ったあの言葉。


「「鉄」になる」


 この言葉の意味。

 自分は気を付けて人の生死を決めていた・・・・・つもりでいた。だが正直な話何の躊躇いも無く機械的に殺してきた事の方が多く感じる。そればかりか何となく自分が・・・上手く表現ができないが何か渦巻いてそれが自分の中でかき回されるような感覚がある。

 その事を口にしようとシンが口を開いた。


「アカツキ、俺は・・・」


 自分の事を言おうとした時、アカツキは遮った。


「・・・ボス、話は後だ、そろそろ着くぜ?」


 アカツキの言葉にシンは窓から外を見た。確かにマザーベースにそろそろ着くという距離であることを確認したシンは小さな溜息をついて


「・・・分かった」


 と答えた。





 ゴォォォォォ…


「・・・・・」


 マザーベースのヘリポートの近くにある施設の休憩室の窓からエンジン音を鳴らし再び大空へと旅立ったフリューを見送るシン。質素な室内に誰かが入ってきて、そっと近づく誰かの気配。


「あ、お帰りなさい・・・」


「・・・ああ、ただいま」


 葵だった。


「話の方はどうだった?」


 葵の疑問にシンはコクリと頷いて


「ああ、一先ず滞りなく、2人を連れてくる事になった」


 と答えた。

 その答えを聞いた2人はホッとした顔つきになる。


「一段落が付いたね」


「よし・・・!」


 透はガッツポーズをしていた。透のアクションを見ていたシンは


「2人とも体の方はどうだ?」


 と尋ねた。

 ここに来るまでにかなり憔悴しきっていた状態でマザーベースに来たからシンは気になっていた。更に言えばこれからする事においては体力面はかなり重要な話でもある。


「大丈夫だね」


「さほど、体力も落ちてなかったし、勘も鈍ってなかったしな」


「・・・・・」


 シンはリーチェリカの方を見て確認するとコクリと頷いた。


「何か必要な事とか物とかは?」


「問題ありません」


 葵の言葉に透もコクリと頷いた。


「じゃあ、行く方向で話を進めるぞ?」


「「はい」」


「お願いします」


 張りのある声。力強さを感じさせる声を聴いたら、決心はついたと判断してもおかしくない。だからシンは説明を始める事にした。


「まず、2人をフリューで向こうから指定された場所の近くに向かう。そこで降下して俺達は指定された場所に向かうという形で行くことになる。具体的な場所は・・・」


 シンは説明しつつ、持っていたフラッシュライト型のプロジェクターを左手で床を照らすように映した。


「わっ」


「すご・・・」


 シンが持っているプロジェクターを見て素直な感想を言う葵と透。

 プロジェクターに映ったのはこれから向かう土地についての、地理が詳しく表示された現代の地図だった。


「初めて見せるついでに・・・」


 シンはそう言って右手の指をスッと音らしい音を鳴らす事無く、プロジェクターに表示されたゴール地点を瞬時に60cmほど伸ばして指示棒のように指差す。


「「っ!?」」


 息を呑む、とはこの事かと言わんばかりの驚き様の2人。


「え、何?」


「伸びた・・・?」


 驚く2人にシンはうっかりで指を伸ばしたわけではない。意図して伸ばした。


「具体的な事については話せないが俺の腕とか黒い部分はこういう理由だという事は一応知ってほしい事と他言無用でいてほしい。いいか?」


「「・・・・・」」


 と簡単な説明のみで己の身の事情を説明した。具体的な理由や説明は言葉でなくても一目だけで理解した葵と透は無言で頷いた。

 黒い腕は何か理由があると思ってシンと接している時、屡々自分の腕の方へ向けて視線を向けていた事は気が付いていた。だから簡単な理由を述べると同時に見せて、誰にも言わないように釘を刺したのだ。

 2人はシンの圧力で頷いたというよりも、シンのあまり言えない事情がこの黒い腕が理由で・・・と直感的に理解して頷いたと言った方がしっくりくる様子だった。


「ここが目的地だ」


 ススーッと伸ばした指を目的地からずらして近くの岩場の方を指さした。


「降下地点はここだ」


 シンがそう告げると眉間に疑問で歪ませる2人。


「「降下」地点?」


「「着地」じゃなくて、「降下」するんですか?」


 特定の単語「降下」を強調して言う透に、間違っているじゃないかと改めて尋ねる葵。


「着陸はできない場所だからな」


 対してシンは変わらず冷静に答える。その答えに2人はお互いの顔を見合わせる。


「ヘリみたいなものは?自衛隊の、あの・・・2つのプロペラが付いた長くてデカいヘリ・・・」


 拙い断片的な特徴で説明する透にシンは心の中で「ああ」と合致するイメージを思い浮かべて呟き、無理である事を説明する。


「ないし、チヌークの航続距離は大陸間を往復できるほどのものではない。大陸に支部を構えるくらいの基地はないから、ヘリポートはおろか、飛行場そのものもない。だからフリュー・・・という飛行機を使って現地近くまで行く。着地できるような平坦な土地はないから、降下する」


「何故ない・・・て言っても、目立つからですよね・・・」


「そうだ」


 葵の言葉に理解してくれて何よりと答えるシンに透が少し慌て気味に質問をした。


「パラシュートですか?」


「いや、ロープによる降下方法だ」


 その言葉を聞いた2人は顔が少しずつ血の気が引いていった。どうやら高い所が怖い・・・と言うよりも未だ嘗てない事を体験するかもしれない事に対してのようだった。


「あの・・・俺たちはしたことがないのですが・・・」


 降下技術等受けたこと事のない2人は不安で仕方がないのは間違いない。だからおずおずとした様子でそう言ってもおかしくない。


「括って下ろす形をとる」


 即答するシンの言葉に2人はとも唖然としていた。


「・・・荷物みたいですね」


「したことがないのだろ?」


「まぁ、そうですが・・・」


 はっきり言って荒っぽい方法で降下する事になる。だから少し呆れ気味にそう言う葵の言葉にシンは淡白に答える様子に何となく「ああ、何を言っても無理だろうな」と察して何か言う気が消え始めた。


「・・・過酷な形をとったのはゴメン。でもこうでもしなければ安全に行くことができないんだ」


 シンが言いたい事は理解できた2人は渋々ながら了承した。だからその方法で行く前提で話を進めた。


「・・・あの、降りた後はどう形で移動するのですか?」


「移動は基本は徒歩になると思う。変に乗り物は使うわけにはいかないし、向こうも乗り物となる物を用意するとは考えにくいからな」


「徒歩・・・ですか」


「トホホ」


 小さな声でそう呟く透。

 実際、乗り物を使っての移動は大きく目立つ。そこも理解できた2人は小さな溜息をついて仕方がなさそうにした。流石に自分達も目立つ訳にはいかない。だから乗り物を使う事はしたくないのは自分達も同じわけだから徒歩になるのは当然だろう。

 だが2人は現代日本社会で生きてきた。どのくらいこの世界に滞在したのかは分からないが、それほど長くないだろう。という事は体力面はこの世界の人間よりも低いのは間違いない。体力をつける事をしていたとしても恐らく付け焼刃程度だろう。本格的な体力トレーニングや訓練などしていない上に時間がなかった。だから可能な限り2人を合わせる形をとる他ない。


「こっち側の都合の上に急な話で動く事になる事だから、可能な限り2人に合わせる様に動くつもりだ」


「・・・分かりました」


「お願いします」


 2人も理解していた。だからすんなりと頷いた。その様子を見ていたシンは


「こっちこそ頼む」


 と頭を下げて改めて合意の言葉を述べた。

 お互いの話の折り合いは恐らくできたと考えているシンと葵と透。お互いが合意し合った事を確認して移動するためにも準備の為に一旦は解散として当日集まって動く事になった。





「九」


「うん、大丈夫・・・」


 名前を呼ぶ透の声と返事する葵の言葉には共通して「不安」の色があった。


「出会っても平気だよね?」


「そう言う相沢も・・・」


 シンとの、あの話し合いで本当にあれでよかったのか、何か言い忘れた事はないのか、反対の意見はないのか、あらゆる不安が話し合った後に出てくる。だからお互いがそう言い合って確認してできる事なら今すぐにでも、と未だに気を張っていた。


「全然平気って程でもないけど・・・できる事はしたいな」


「うん」


 自信こそ無いものの、希望のあるものが実際にある。だから「縋る」を感じさせる声で「次」を臨む2人は一歩を出した。

活動報告にも記しましたが、ここ最近は体調面と仕事面、精神面で思うように書く事が難しくなり、定期的な投稿ができなくなりました。

楽しみにされている読者の皆様には大変申し訳ないのですが、今回のように不定期更新という形をとり、いつになるかも分からない投稿する作品をどうか楽しみにお待ち下さい。

可能な限り、早め早めに投稿するように致します。

こうした形で話を更新して参りますが、今後とも「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」をよろしくお願いいたします。

いつも読んで下さりありがとうございます。

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