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354.面白そう楽しそう

 部屋の隅にイズメクがゴロンと寝転がって眠っていた。その傍にステラが膝枕をして、その上にはアンリが眠っていた。よく見ればステラも眠っていた。

 サトリはゆったりとした空間に寛ぎ、アルバは少し呆れ気味にステラの様子を見ながら何かの作業をしてサトリの前に出た。


「ふむ・・・」


 ギシリと音を鳴らし、恐らく竹製の座椅子に背を預けて虚空の一点を見つめるウルターは室内だというのに未だにその鎧を脱がなかった。そんなウルターに何の違和感を持つ事無く


「如何なされましたか?」


 とアルバがサトリにお茶を出していた。


「む、アルバか。いやなに、シンの事を考えておったのでな」


 さっきの様子からしてどうやら考えに耽っていたようだった。


「シン様の事で?」


「へぇ、興味深いね。ウルターさんから見たシンさんはどうだった?」


「お主と「同じ」と言った方が良いやもしれんな」


 顔の表情が一切読み取れないウルターに目隠しをして全く見えないはずのサトリはウルターがこちらの方を向いて含みある言葉でこちらに物言いたげな笑みを向けているように感じた。


「・・・わっしは言ってねぇが?」


 飄々としていながらも疑念が強く籠った言葉を口にするサトリにウルターは滔々と答える。


「お主の目には「戦士」として映っているように、我輩の目には「兵士」として映っておる」


「ははっ、こりゃ参ったね。お前さんの言うとおりだよ」


 自分の態度や雰囲気からシンに対してどう思っているのかを僅かにも出していた己の未熟さに少し恥じりながらも、見抜いたウルターにサトリは改めて見事と称賛を送る。


「わっしからすりゃワクワクさせるね」


「我輩は「油断ならぬ将軍」であるな」


「お、将軍かい」


 お互いが男だからなのか、それとも「戦士」故の「性」なのか、こうした軍事面(ミリタリーまがい)の事で花を咲かし始めていた。

 そんな様子に大元が大元だからのか人によっては意外な人物がこの話題に入り始める。


「アタシなら「かなりのやり手」かしらん」


 セーナだった。

 セーナは「彼女らしい」と言ってもいいくらいの表現でシンの事を評価した。シンは見た目通り若い男。少年と表現してもいいくらいに。

 だがセーナはシンの事を「少年」でもなければ「男」でもなかった。この言葉で表現した時のセーナは笑っていたが決して目は笑っていなかった。

 一言で表現するならシンは・・・


「オレはヤベェ奴だな」


「あらあら、起こしちゃった?」


 次にこの話題に乗り込んだのはゴロンと寝転がっていたイズメクだった。イズメクはセーナの話の時に目を開け始めていた。


「私も起きている」


 瞼を閉じていたがアンリも起きていた。どうやらまだ眠っていたのはステラただ一人だけのようだ。だから気を使っているからなのかアンリは膝枕しているステラを起こさないように自然に寝ているような姿勢で話に交わった。


「アンリはどう見る?」


 その質問を聞いてアンリは一旦は沈黙を空気を作る。それが数秒程経ち、あれまた眠ってしまったのではないか、と思い始めそうになった時に口を開いた。


「本当に「計り知れない何か」だね」


 答えると同時にアンリは閉じていた瞼を開く。


「は、アンリだな・・・今度来る奴、ヤベェ奴が紹介するようなもんだろ?」


 アンリらしい答えにイズメクはニヤリと笑い、確かな答えに頷く。


「だからワクワクするんだよ」


「原石みたいなもんなら、騒いでみてぇな」


「お主ら、程々にいたせ」


 お互いがシンとのもう一度手合わせしたいと願っている2人に暴走・・・とまでいかなくともそれに近い事は避けるべく忠告するウルター。

 明らかにシンが紹介する人物に喧嘩はおろか殺し合いに発展するような事を望んでいる様子に呆れの感情を持ちつつ制止の言葉を投げた。

 その言葉を聞いたイズメクとサトリは


「わーってるって」


「大丈夫、大丈夫。わっしはその手の事でやり過ぎた験しはないよ」


 生返事に飄々な返し。

 そんな2人にウルターは少し呆れていた。己の言葉が今一つ響いていない事に諦め気味になる。この様子だと攻めかかるのは目に見えている。ならば自分がどうにかしようと考え始めようとした時、アンリが口開く。


「でも、ヒヤリとする事はある」


「そうよねぇ、アンリちゃんの言う通り、少し間違えればという事もあったよねぇ~」


 どうやら過去にそう言った事を平気でしてしまっている。一言いえば「やらかしていた」のだ。セーナがそう物言いになった時、イズメクとサトリは胸からドキッとギクリと言う鼓動が響き、小さな汗をかいて弁明を始めた。


「流石に普人族の子供を怖がらせるような事はせんよ」


 小さな汗をかきながらヒラヒラと手を振り、飄々と否定するサトリ。だが何となくだが「ああ、守れそうにないな」と判断できそうな雰囲気。


「そんなしょうもねぇマネすっかよ」


 そう言って何もない壁の方へ向いてムスッとするイズメクの額にも小さな汗をかいていた。こちらも「こっちもか」と判断されかねない雰囲気。


「頼むよ」


「厳粛にな」


 そうした2人にアンリとウルターは念を押す。念を押す声には少し気迫が籠り、力が入っていた。どことなく怒気のようなものを感じる。


「承ったよ」


「へいへ~い」


 そう答える2人に「やはり自分達でどうにかして防ぐか、最悪場を収めて落し処を作る必要があるな」と判断して2人の答えに期待せずに行動しようと判断した。

 最早この2人は「性」と言うべき何かを持ってしまっており、どうする事も出来ないだろうと2人以外の全員がそう考えた。

 小さなやれやれと小さな溜息をついて周りの様子を見まわしていたセーナがある事に気が付いた。


「あら、そう言えば、ギアちゃんは?」


 確かにこの部屋にギアが見当たらない。と言うよりもギアの様な体格が居られるような部屋ではない。寧ろギアがこの部屋でいっぱいいっぱいになるか、若しくはこの部屋よりも広い部屋でなければ無理だ。

 その事についてはどうやら星の柱一同は知らないようだった。この場に居ないサクラを除いては。


「ギア様でしたら・・・」


 当然サクラの従者であるアルバはギアの行方は知っていた。だからこうして静かに答え始めた。





 ブルルルッ…


 馬達が少し困った様子であるものを見ていた。本来ならそこは自分達の食事をする為の場所だ。だが、そこに邪魔者がいた。

 この場合なら自分達が前に出てその邪魔者を追い出すような真似をする。場合によっては自分達の自慢の走って鍛え上げた後ろ足で蹴り払う事もする。

 だがその邪魔者は自分ら馬達ではどうにもできそうになく、強気で出るに出られないのだ。


「グォォォォォォ…」


 ギアは厩で、大量の干し草が入った長さ6m幅2mの大型の木箱のど真ん中で爆睡していた。

 見方によっては棺桶に入っているとも言えるような状態だった。

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