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347.余裕ある態度

「申し訳ありませんが、お嬢様の身に危険が迫っているやもしれません故」


「すまんね。ここから出させるわけにはいかないよ」


 スクッと立ち上がるアルバとステラ。対してサトリはヘラヘラとそう答える。そんな問答最中にアンリはそっと外へ出ていく。


「・・・私達にも、用事がございますが?」


「アンリさんは別さ」


「「・・・・・」」


 ドスのきいたステラの声に変らずヘラヘラとした口調でそう答えるサトリの様子にステラはおろか普段年の功で冷静さを持っているはずのアルバですらも怒りに満ちた眼光をサトリに飛ばした。


「本当にすまんね」


 その眼光を見ていないはず目で確認したかのように軽く謝罪してサトリはそっと立ち上がった。





「っ!」


 BBPで指を刃物に変えてイズメクを切り裂こうと動くが、掠るかどうかギリギリのところで避けて距離を取った。


「きゃ~!」


 シンの右手のBBPの刀の一振りから寸前で避けるセーナ。


「ぬぅ・・・」


 さっきから手を翳して次々と土人形を大量に生成してシンを襲おうとするも、生成の途中でバラバラにされて思うように造らずにいた。


「結構やばいね・・・」


 そう呟くイヒメはシンに瞬時に迫って正拳突きを食らわす。


「っ!」


 ヒュンッ!


「あっぶな!」


 シンに攻撃する、若しくは仕掛けるもほとんどが避けるか、手段を潰されていた。こうした事が先程から続いていた。

 シンはブレンドウォーズの戦闘経験とBBP化による臨機応変に対応する戦闘スタイルと(センス)で1対複数による戦闘を苦も無くこなしていた。

 対して3人は年の功なのか経験則によるものなのかシンの常人では避ける事が至難の業と言える攻撃手段を対処できていた。


「・・・・・」


 半ば拮抗しているように見えるが、実際はイヒメの呟き通りかなり拙い状況だ。

 シン自身は難なく熟してきている戦闘行為が激しいのにそれなりに時間が経っているのに息切れ一つもしていない。その様子を見て短期戦で何とかしなければならないと考えたイヒメだが、決め手に欠けるものばかりしかなかった。


「・・・!」


 ピャゥッ!


「僕狙いか・・・モテモテは辛いね!」


 サクラとギアが押さえつけられている元凶はイヒメだと考えた。少なくとも2人が解放されればシンにとって有利な状況に傾く。シンが知っている限り2人は味方よりだ。その場から離れるだけでも十分だ。だから最優先的に狙うはイヒメと判断したのだ。

 寸前に避けるイヒメに更に追い討ちを掛けようとするシン。


 ボッ・・・


「またか」


 シンの足元からあの白いキノコが現れた。

 どうやら猛攻されそうになっているイヒメにセーナの魔法によるサポートだったようだ。


「・・・!」


 セーナを先に対処すべきと判断したシンは今度は距離を詰めて、ほぼ目の前まで迫り、刀でセーナの腰を横一文字に線を引こうとした。


「きゃっ!」


 身を後ろに引いてシンの斬撃を躱すセーナは視界の左側面から何かが出てきた事に気が付き、そちらの方を見た。


「!」


 シンが何か持っていたようだった。それは人の拳大の石を握りしめており、いつでも投げられるように構えていた。


「あらやだ」


 ビュン!


 セーナがそう言った瞬間、シンが思い切り投げた。セーナは目を細めて踏んでいる地面を強く蹴った。


「あ・・・」


 強く蹴って6m上に逃げたセーナの目の前には空中に浮かんでいるシンが刀で袈裟斬りにしようと構えていた。空中では移動する術はない。


「!?」


 キキキキキィィィン


 5つの氷の矢がシン目掛けて飛んできた。その矢をシンは全て弾き落とした。その一瞬をセーナはすぐに体勢を整えて着地した。

 同時に着地したシンは飛んできた方向を見た。


「この程度ではどうにもならんか・・・」


 そう呟く矢の主、ウルターは更に攻撃するべく無数の小さな氷の鏃を空中で魔法によって作り上げた。


「!」


 シンの目が大きく見開いた瞬間に無数の氷の鏃がシン目掛けて飛んできた。


 キキキキキィィィン!


 無数の鏃をはじいたシンの視界が一瞬にして何か遮ったような影の暗さを感じた。その事に気が付いたシンはすぐに後ろを振り返った。


「!」


 後ろにいたのは岩と土くれでできた12m位の巨大な人形が巨大な棍棒でシンを叩き潰そうとした。


 フッ…


 シンの姿が消えて


 ピャィッ!


 すぐさま人形の体に無数の直線の切れ目が入った。


「・・・!」


 ガラガラガラ…


 崩れ落ち行く人形に着地して背を向けたシンは人形を作りだした元凶であるウルターをロックオンして刀をギラリと光らせた。


「マジかよ・・・」


 その呟きを耳にしたシンは即座に上を向いた。


「っらあぁぁぁぁっ!」


 イズメクは再び踵落としした。8m程髙く飛んで其処から急降下で砲弾のように一気に。


「・・・!」


 そこから離れようとするシンだが、足に違和感を感じて見た。足には急成長した雑草の蔦が絡まっていた。それを見たシンはウルターの方を見た。ウルターはシンの方に向けて手を翳していた。

 完全に自分を足止めする為に使ったのだろうと。


 ドッゴォォォォォッ!


 イズメクの踵落としは確実にシン目掛けて落とす事に成功した。その証拠にシンが居た地点付近は土煙と大きなクレーター、上からバラバラと小石が落ちてくる。


「・・・~ッ!」


 土煙がモワモワと立ち込めている中、その中では何か聞こえてくるのだが、その様子が分からない。ただ一つ分かったのは土煙の中で何かあまりよろしくない状況になっている事をすぐに把握したイヒメとウルター、セーナは次の攻撃に移れるように構えを変える。土煙が晴れた瞬間なのか、それともモワモワと立ち込める中からいきなり飛び出てくるのかが分からない以上、臨機応変に対処できる構えになっていた。


「「「・・・・・」」」


 土煙が無くなった時、イズメクの呟きが聞こえた。


「・・・マジ、かよ」


 モワモワと立ち込める土煙が聞けていくにつれて冷や汗をかいて体が膠着しているイズメクを見た一同は何か変と判断した時にイズメクの首に何か黒い物が見えてきて


「2人を放してもらおうか?」


 人影が現し、シンを現した。背後に控えてイズメクの喉元を握り潰すように掴むか掴まないか位に手を当てていた。

 攻撃してきたイズメクを逆に人質に取った。


「ぅ・・・」


 イズメクはシンから逃れようとするが、変に動けないでいた。何故ならシンが手を当てている部分から鋭利な刃物特有のチクチクした僅かな痛みが浅黒い肌から感じ取っていたからだ。

 イズメクの様子に3人は下手に動く事が出来なかった。寧ろ考えていた以上にシンがここまで動いた上に交渉材料を持ち込まれてきた事に驚いていた。


「これは・・・」


「困ったわね~」


 イヒメとセーナはどうにかしてシンからイズメクを引き離そうと考えていた。だがウルターは違っていた。


「まずは「見事」とお主に賛辞の言葉を贈ろう」


 ウルターの様子にシンは少し警戒を強めた。正直な話、3人の中で要警戒ししていたのはイヒメとウルターだったからだ。

 この2人からは変な余裕さを感じていたからだ。イヒメは掴み所のない無邪気な子供の雰囲気を持ちながらも自分の事を狙うかのようなものを感じるし、ウルターに至っては風格や佇まいが違う。そのせいで異様な余裕を持っているように見えるのだ。


「お主は見事イズメクを手中に収めて、こうして話の材料として我輩達に見せつけた」


「なら・・・」


 シンが続けて何か言おうとした時、庵の方から気配を感じ取ってそちらの方を見た瞬間だった。


「!」


 異様な速さでシンを突こうと動いたサトリが目の前まで迫っていた。

 シンは咄嗟に捕らえていたイズメクを話す形で避けた。


「だが、それも無意味となる」


 そう言ったウルターの横にアンリの姿があった。

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