343.次々に来る
大変長らくお待たせいたしました。
それから
明けましておめでとうございます。
本年度も宜しくお願い致します。
カメラからは死角。
シンの背後。
それ故に声と気配でしかその存在を確認する事ができない。
「・・・・・」
声は中性的で異性同性も誘われてしまうような甘いチョコレートの様な声に惑わされるのは間違いない。だが、シンはその声に対して警戒心MAXでいた。
「黒いね、目」
そのせいかシンは冷や汗が沸々と出てきて鋭い眼光で「神の手」を睨むようにして見ていた。
「・・・腕も黒いね?」
「・・・・・」
人誑しのような笑顔でシンに接する「神の手」にジッと見る。
「どうかしたの?もしかして僕に見とれてたかい?」
ニコリと笑う「神の手」の細い眼からは只管シンの姿が映っていた。その瞳が写しているその奥には真意として何があるのか分からなかった。
だからなのかシンは
「・・・シン」
「え?」
「「クロモト・シン」だ」
自分から名乗った。いきなり名乗った事に「神の手」はカラカラと笑い始めた。
「ああ、そっかそっか。ゴメンね~、僕をどう呼べいいのか分からなかったよね~」
近所の小母さんの様な物言いの「神の手」は笑顔で細めていた目をスッと普段の形に戻し、静かにシンの方を見つめて
「初めまして、僕はイヒメ・ユーマーラン・カッシー。「神の手」のイヒメ」
「・・・・・」
改めて自己紹介をするイヒメ。先程の人誑しで気さくでどことなく魅力を感じさせるような態度だったイヒメから打って変わって声色からして礼節を弁えて花の様な美しさがあり、優雅さを感じさせるものがあった。それ故か、見とれてしまう心境も理解できる。だが、その雰囲気の中にどことなくゾクリと感じさせるものを漂わせるものを放っていた。
その自己紹介の時にシンはジッと見ていた。一つ言えるのはシンはイヒメのゾクリと感じさせる雰囲気についてを慎重に探っていた。
「それからシャーロット女王の従姉だよー!」
「は?」
だからなのか普段の様な雰囲気になり、口調は無邪気な子供を連想するようなものになっていた。その百変化にシンは見極めようとしていたが、掴み処のないイヒメに只管に慎重でいるしかなかった。だから静観するくらいしかできない。
そんなシンにイヒメは
「そして、こちらの方々は・・・」
と口にした瞬間だった。
「「!?」」
その時、気配を感じた。
3人。
それもシンの周りにいる。その事にシンは一気に目を大きくした。しかもうち一人はシンのほぼ真正面にいた。その為、シンのワークキャップについているカメラにも瞬時にその姿が映った事にアカツキも驚いていた。
「・・・・・」
驚くシンの様子にサクラはジッと見ていた。何か引っかかりを覚えたのか目を鋭く細めていた。
「あら、カワイイ子じゃな~い?」
一人は完全にオネエだった。
筋肉質だが、決して太くなくプロポーションやスタイルに気を配りつつ、しなやかさを主にした格闘を重視した体に仕上がったオネエだった。
胸元がしっかりと開いた赤いシャツを着て、メインは暗めの赤でピンクの水玉が入ったサルエルパンツを思わせるようなズボンを履き、ハイヒールを意識したライトブラウンのブーツを履いていた。
髪型はオールバックで睫毛を意識しているのか自慢するかのように特出して長かった。顔つきは30代前半で男性特有のごつさがあるものの、女性を意識した化粧の仕上がりを施し、女性からはかっこいいと言われても別段変でもない雰囲気のあるオネエだった。
早い話、女性はおろか、男性ですらも違う意味でモテるオネエだ。
「は、まだガキじゃねぇか」
紫色の肩まで袖無し胴着を赤色の丈夫な帯でしっかりと結び、胸の部分は晒を巻いてしっかりと姿勢を固定していた。下の胴着は来ておらず、代わりに胴着の裾からチラチラと見えるホットパンツの様な股引を履いていた。赤い手甲と赤い脚絆を着けていた。普段から裸足なのか足裏が靴底のように分厚く仕上がっていた。
髪は赤毛で短いポニーテールにしており、褐色の人種なのか浅黒い。キラリと光る茶色の瞳はムエタイのように引き締まった体に似合うような厳かを感じさせる。そのせいで10代後半から20代前半のはずだが熟年の格闘家を感じさせる。しかもキレのある雰囲気のあるせいで顔つきもキレのある顔つきになり、どことなく鋭気ある少年に見える。男性からは友人として見られて女性ととしては年下の男として見られてしまうような人物だった。
これだけでもかなりの印象的なのだが何よりの印象が強かったのは全身の白い刺青の様な模様だ。
顔の左頬当たりと全身に縄文タトゥーとトライバルタトゥーを足して2で割ったようなタトゥーが入っていた。いや、よく見ればタトゥーと言うより、体の黒子の様に自然にある様に見える。何となくだが、これがタトゥーと言うより、黒子と言った何か自然な出来物がある様に感じる。
「ふむ・・・」
一人は髑髏の鎧を着た騎士のような大男。
額から3本の角が生えた暗めの黄金色の髑髏を模した兜。その兜は少し特殊で、上顎部分がバイザーとなっており、開けば大きく口を開ける様に見える変わったデザインの兜だった。
黄金の頭部と首部分より下は黒い金属によって構成されたプレートアーマー。よく見れば上半身は男性の鍛え上げられた裸体を模したデザインであり、下半身は西洋騎士で見られるデザインのものだが、所々の淵に不気味に輝く暗めの黄金の輝きが煌めかせている。上半身を脱ぎ、下半身が西洋の鎧を装備しているという独特のデザインの鎧だった。
手にはグリップとなる部分には暗めの黄金の金属で丸い王冠に模したメイスの様なデザインになっており、それ以外は黒い金属によって構成されて、石突部分が一般の物よりも更に鋭さを帯びた、明らかに戦う事を前提の杖を握っていた。
首元には暗めの紫のマントを羽織っていた。
言うまでもなく彼がウルターである事は明白だ。
「・・・どうも、初めまして」
シンが返事した時、アカツキは冷静にシンに
「ボス、それらしい姿は映っていなかったぜ?」
と報告する。
実際違和感ある何かがあるようには見えなかった。
「・・・・・」
シンも同様、それらしい怪しい気配や違和感ある何かを特定するに至らなかった。だから気配や殺気に敏感なシンですらも分からない方法でシンを囲むようにして近づいたのだ。
「初に目にかかる。吾輩はウルター・ライツァイ・トーテンコップと申す」
礼儀正しくそう挨拶をするウルターにシンは軽く会釈をして
「・・・聞いたかもしれないが、シン・クロモト・・・クロモト・シン」
と答える。
その答えにウルターの青白い光がユラリと揺れ動いた。
「やはり、来訪者か」
確信を得たように言うウルターに
「あらあらあらあら、じゃあ、美味しい料理のレパートリーが増えるわ~」
「料理?」
「あら、ごめんなさ~い。アタシは「草枚」のセーナ、「セーナ・シェニー・コグメロ」よ」
改めて自己紹介したセーナは最後にウインクする。明らかにハートの様なものを飛ばしていた。そのハートにシンは気にも留めずに気になる単語を口にした。
「「草枚」・・・」
草牧。
それはアオモノ、いわゆる山菜と言った食用可能な野草の事を指す言葉。その言葉に関してシンは初めて聞いた。
その単語の意味を知ろうと何か言おうとした時
「オレは「騒がしき」イズメク、イズメク・ヴィア・ルーシャーカリーだ、よろしくな、ガキ」
もう一人の格闘家の様な女性、イズメクが大雑把な自己紹介をした。口は悪いが別段何か仕掛けるつもりもなければ悪意も敵意もなかった。元から口が悪いようだ。
「・・・ああ」
シンの言葉を遮ったことに対して少し不満はあるものの今は理解できない出来事に対して下手に動く事ができない事と、下手に話す事ができない事に打開策を巡らす事を優先させた。何故なら現時点で何かされたと考えてもいい。
最悪の場合、攻撃されていてもおかしな話ではない。
巡らせようと脳回路に血を巡らせるも
「シン君?」
「っ!」
予断を許さなかった。
まるでこちらの動きを感じ取っているかのように声を先にかけてくるイヒメ。感じ取っているのではないかと思ってしまう事を顔に思わず出してしまうシンにニコニコと笑いながら
「そう驚かなくても~」
と驚く子供に近づく要領で声を掛ける。
「・・・何?」
警戒心マックスになってしまうシンに子供に優しい言葉をかけるように
「僕にも他に知っている遊戯を教えてくれないかい?」
「・・・・・」
シンに語り掛ける。
声には決して怪しい事がなく、甘くて決して危害を加えない事を納得してしまうような不思議な声だった。
「ね?」
「ああ」
その言葉に乗ったわけではないが、本当に敵意はおろか、悪戯心の様な僅かな悪意すらない彼女にシンは頷いてしまった。
12月に思わぬ用事や出来事が遭遇してしまって1話しか執筆できませんでした。
こんな調子で話を進めてしまっていますが作者は元気です。
今後もこうした頻度になってしまうかもしれませんがよろしくお願いいたします。