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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
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331.戻る前

「「「・・・・・」」」


 大きな驚きの声を出した後、固まってシンの方を見ている相沢と九の3人。シンは少しショックを受けていた。

 そんな沈黙を破ったのは


「私は17歳」


 九だった。

 気まずいからと言う理由ではなく、ただ単にシンの年齢が意外だったから思わず自分の年齢を明らかにしたのだ。


「え、17なの?」


 驚いていたのは相沢だった。相沢は少し意外そうな顔をしていた。この様子からすると自分より年上である事に対してだろう。

 そこから必然的に相沢はシンと同じ16歳である事が分かる。


「うん。4月生まれだから」


 その答えを聞いて納得できた相沢は「ああ」と声を漏らす。

 九の答えにシンは改めて自分の年齢を答える。


「実際に俺は16だ。2人と変わらない。もっと言うと元々こんな顔じゃなかったしな。あ、性別は男のままだけどな」


 その答えに3人は眉間に皺を寄せた。


「元々って・・・じゃあ本当の顔じゃないのか!?」


「そう言う事になるな」


 この様子からするとシンの転生なのか来訪なのかが分からない方法でこの世界に来たのかがよく分かる。早い話どれだけ異常な方法で転生・・・?来訪・・・?で来たのかが良くわかる。


「何があったん・・・」


「・・・・・」


 九からの追及をシンは掌を上げて首を横に振った。そのジェスチャーは「これ以上追及するな」という意味だ。

 その様子を見た2人は思わず口籠った。同じく様子を見ていたサクラは小さな溜息をついて2人に


「・・・シンにも言えない事情がある。丁度お前達の様にな」


 と言った。

 サクラの言葉を聞いた2人は正論と受け取った。実際シンは2人の事情を探る様な真似をせず、自分達のタイミングで話す様に勧められていた。だから自分達のタイミングで言う様になっているのに、シンに詰め寄って言わせるようにするのはフェアではない。


「・・・すみません」


「ゴメン・・・」


 サクラの言葉とシンの考えを受け取った2人は素直に謝った。


「いや、いいんだ。それよりも今後の参加についての日程だが・・・」


「ああ、はい・・・」


 受け止めたシンはコクリと頷きつつ、そんな事よりもと言わんばかりに別の話を進める。サッパリとしている様子から思わず呆気をとってしまう2人。

 だがそれは僅か2秒程の事。


「2人の回復状態から見て取敢えずもう3日様子を見ようと考える」


「それもそうか・・・」


 シンが進める話は自分達にも関係のある話だったからすぐに切り替わった2人。実際自分達の状態の事を考えればこのまま大掛かりな移動は体に負担をかけてしまう。

 少なくとも1日、長ければ1週間は必要になる話だ。その折衷案としてシンは2人の状態を見る為に3日と設定したのだ。その事に意を汲んだのかサクラは頷き、2人も納得した。


「す、すみません」


「何から何までお世話になります」


 納得した2人はこれから世話になる事に必要な礼儀として一言だけでもと考え、挨拶をした。


「いや、気にするな」


「それでワタシもここで滞在するのか?」


 サクラも負傷を負った身だ。だからまだここに居る必要がるのかと訊ねた。


「いやサクラはほとんど動けるようだからこのままオオキミに戻る」


「そうか・・・」


 実際リーチェリカと組み手を行った時の事を考えれば、マザーベース(ここ)に居る必要は無い。その糸は理解していたサクラだが、どことなく残念そうに見える。その様子を見ていたシンは小さな溜息をついて


「・・・またここに来れる」


 と「仕方がないな」と言わんばかりにそう答えた。

 シンの返答を聞いたサクラは目を大きくして


「いいのか?」


 と少し嬉しそうに答えた。

 喜んだ顔はどことなく年頃の少女のような可愛らしさが出ていた。ほんの一瞬、僅かな間だがシンはサクラの顔を見とれていた。


「ああ。それに話自体がまとまったらここも関係してくる話もあるしな」


 一秒にも満たない一瞬の時にすぐに切り替わって話を進める。


「どういう事だ?」


 シンの言葉にサクラは気になって尋ねるが、シンの視線に気が付いた。


「それよりも着替えてくれ」


「!もう行くのか?」


 シンの言葉にサクラは子供の駄々こねる様な心境になる。


「ああ。これ以上、待たせるわけにはいかないからな」


「・・・そうだな」


 シンの言葉を聞いたサクラは納得した。実際あれから3日も経っている。だからこれ以上従者達や仲間達に心配を掛けたくない。

 すぐに行動するべきと考えたサクラは


「すぐに着替える」


 そう言って踵を返して自室に向かった。


「ああ」




 2人の部屋の廊下にて。リハビリついでに外に出て見送りに来ていた相沢と九。廊下では九の為の部屋確保する為に動いていたグーグスが最終チェックとして九の所まで来てベッドの移動の事について確認して終わっていた。

 改めて皆の前に出てきたサクラ。

 サクラは自分の格好を皆に見せびらかす様にクルリと回った。


「セーラー服・・・」


「やはり日本人か・・・」


 その時、九がそう呟いた。そのセリフを耳にしたサクラは目元を細めて2人の方を見ていた。どうやら自分の姿を見た2人の様子から見て本当に日本人である事を確認していたようだ。


「セーラー服の事を知っていたんですね」


 相沢達も過去にやはりこの世界に日本人が来ていた事は分かった様だった。しかし、驚き方の様子から見てそれ程驚いていない。サクラがセーラー服を見せびらかす前に何か日本人がやって来ていた事を物語るものを知ったのだろう。


「そう。確か学生服であるのだろう?」


 サクラの言葉からその服が学生服である事を知っていた。という事はこの世界にやって来たのは学生服を着ていない状態の人物がこの世界にやって来た可能性が高い。

 何故なら飽く迄もサクラの来ているセーラー服はセーラー服ではなくよく似たドレスだ。アレンジの様なモノもされている。つまり口伝えでこうした服になっているという事。

 そこまで考えた相沢。シンはサクラのそう言った情報はサクラの父親からだと考えている。九は何となくサクラの零した単語「学生」が気になった。


「学生・・・。そう言えばサクラさんはどこかの学校とか在籍した事があるのですか?」


「・・・いや、座学においては幼少期から父と家庭教師から受けていた」


「・・・学校に行った事が」


「ないな。どんな所なのかも知らないな」


「・・・・・」


 首を振って応えるサクラの様子を見た九はサクラの少し寂しそうな顔色を垣間見た。それはシンも同じだった。

「学生」という単語は恐らくこの世界にもある。だが日本人であるソウイチの口から出た「学生」の事についてを知って次第に憧れを持った。だが自分は王族で現政権を支える身分。だから学生になるはおろかまともに学校に行った事も無いのだろう。教育については先程言っていた通り、家庭教師と自分の父親から受けていた。だから問題なく自分を振舞っているのだろう。

 けれどもサクラ個人としては学生生活を送って見たかったのだろう。

 その事を理解しつつも今は今の事が大事と割り切ってシンは


「・・・サクラ、用意は良いか?」


 と訊ねた。

 シンの言葉にサクラはコクリと頷いて


「ああ、行こう」


 と気を引き締めた声でそう答える。その言葉を聞いたシンはサクラを案内する為に先に歩いた。サクラもシンに後を付いて行く様に歩き始めた。

 その様子を見ていた九は


「気を付けて」


 と声を掛けた。

 その言葉にサクラはその場で一旦止まって振り返り、2人の姿を一瞥した後歩いた。シンは構わず前を見たまま進んでいた。

 九の声掛けに対して対応が違うシンとサクラだが共通していた事があった。


「「ああ」」


 2人に対して一言だけの言葉を送った。

 そして更に共通していたのは2人の言葉には力強さを感じた。

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