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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
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328.言えない

 

 サクラの登場により、2人は驚いた。そして


「・・・・・」


「・・・・・」


 黙って他所の方を向いていた。


「・・・ん?」


 よそよそしい態度にサクラは首を傾げる。


「いや、そう言う反応になるんじゃないのか?」


 シンの言葉にサクラは反応せず、そのまま2人の方をジッと見ていた。


「・・・・・」


 数秒程見たサクラは目を細めて2人の方に少しだけ近付いた。


「?」


 その様子を見ていたシンは首を傾げた。


「九、相沢」


「「はい」」


 毅然とした声色に気迫ある言葉に思わず声を合わせて返事をしてしまう2人はサクラの顔を見ていた。


「レンスターティア王国、サクラ公爵にて命じる。お前たちに何があったのかを全て話せ」


「「!」」


「・・・・・」


 命令で2人の事情を聞き出そうとしたサクラ。その言葉を聞いた2人は表情が一気に変わった。

 シンは一瞬止めようとしたが、さっきまでの会話は恐らく筒抜けになっていたと考えた。

 サクラは何も考えなしにこんな傍若無人な命令はしない。何か意図があると考えた。


「どうした?何故黙ったままなのだ?」


「「・・・・・」」


 すぐに答えないどころか、黙ったまま5秒近く経っていた。その沈黙の間とサクラからの圧に耐え切れなかったのか口を開いた相沢は


「・・・せません」


 小さな声で何か言った。


「・・・?」


 サクラは相沢の方を向いた。


「話せません」


 改めて答える相沢は口をキュッと一文字に閉めてそう答える。眉間に皺を寄せて小さな冷汗を掻いていた。

 その様子を見たサクラは目を細めた。


「ワタシはレンスターティア王国の王族である事は理解した上でか?」


「はい」


 自分の立場を強調した上で改めて訊ねるサクラ。

 迷いなく答える相沢の言葉に九もコクリと頷いた。


「いくら来訪者と言えどもそのような真似は許されない事は?」


「重々承知です」


 今度は九もそう答えた。

 サクラの立場と身分は重々に承知している。確認は取れている。

 だからサクラは改めて


「ならば話せ」


 命令する。


「できません」


 だが拒否する。


「・・・・・」


 サクラの気迫ある目で2人の目を覗き込む様に見る。


「「・・・・・」」


 2人の容姿は弱々しい印象がある。だが譲る事が出来ない真っ直ぐな目でサクラの目を見ていた。

 数秒程その目を見たサクラは小さな溜息をついて目を静かに閉じて


「よく分かった。これ以上は訊かん」


 と諦めの言葉を口にした。


「・・・すみません」


「申し訳ありません・・・」


 謝罪する2人の言葉には確かな謝意を感じさせるものがあった。その言葉を聞いていたシンとサクラは2人に対して僅かに目を細めた。


「まぁ体の事もあるから、ここで失礼する」


「・・・そうか、身体の方が余り回復できていなかったのだな?すまなかった」


「い、いえ・・・」


「・・・・・」


 歯切れの悪い感じがある答え。シンとサクラはそのまま部屋を後にする事にした。


「大事にせよ」


 部屋を出る時にサクラは少し労りのある言葉を置く様に口から出して2人のいる部屋を後にした。

 そして出てすぐに


「シン、ちょっといいか?」


「・・・・・」


 シンに声を掛けて別の部屋へ向かった。





「どう思う?」


 別室のソファにドカッとでありながら王族らしく優雅に座るサクラはシンにそう尋ねる。


「・・・お前に対して怖がっていた」


 率直に答えるシンの言葉に目を細めた。


「確かにそう言う風にも見える」


 そう言うサクラの言葉には「そうじゃない」と言わんばかりのものを感じさせた。


「違うのか?」


 シンの言葉にサクラは鼻から小さな溜息をついて答え始める。


「ワタシ達を怖がっているのではなく、別の事で恐れている」


「ズレているという事か?」


 恐れているのは別の件。それはシンも感じていた。


「あれは多分、()()()()のではない。()()()()のだろう」


「・・・どうしてそう思う?」


 正直な話、シンはサクラが言う事には共感していた。あの様子からして「言えない」と言うのが正しい。ただ何に対してなのかは分からなかった。だからさっきのやり取りからしてこの世界の住人であり、高圧的とも言えるサクラの態度に怖がっていたのではないかと考えていた。

 だが、ここまでのサクラとのやり取りと2人とのやり取りの事を思えば何か違和感を感じた。


「・・・日本という国には王族がいるのだろう?」


 突然日本の事について話し始めた。


「・・・確かに王族、正確には皇族だが、いる」


 と言うよりもサクラが日本に「皇族」がいる事に驚いていた。恐らく父親のソウイチから聞いていたのだろう。


「王と面向かう事等は早々ない。だからどうしたらいいのか分からずに右往左往する事の方が多い。しかもワタシから「言え」と言っているのに()()()()


「・・・ああ、そう言う事か」


「そうだ。そもそも2人の驚き方が変だった」


「・・・・・」


 そう考えて見ればそうだ。そう言わんばかりのだんまりだった。よく考えてみれば驚き方の様子が変だった。普通王族と言った日常生活に非日常がやってくるのだからリアクションもそれ相応の事になる。驚きの表情も大きくなるのだが、あの2人にはそう言った様子が無かった。

 更に言えば王族がやって来て身分を明かして、一般人の反応も大きいはず。右往左往や緊張ガチガチの無理な礼儀作法を行う等をする。だが2人の反応は驚くだけで反応自体も小さかった。

 その事を考えれば妙な話だ。


「あれだけワタシの立場を見せていたのだが、それでも言わなかった」


 サクラが鋭い目でそう言うと


「という事は・・・より・・・」


 釣られる様にしてシンも鋭い目になった。


「ああ、「上」の可能性がある」


「・・・・・」


 サクラがあれだけ自分の身分と立場を明確にしたのに頑なに言わなかった。考えられるのはサクラの身分以上、レンスターティア王国の王族以上の力が動いているという可能性が高い。

 もしそうだとすればジンセキの存在について知られる可能性も高くなる。力が、特に権力としてであれば情報収集力も大きければ大きい程それに比例して高くなる。王族以上となれば今のこの状況としては拙い方向だ。

 早めに手を打つ必要がある。今マザーベースにいる2人の様な事情を知っている日本人、現代世界の人間と接触する必要がある。

 そう考えていたシンにサクラが


「そこでシンに提案がある」


 と持ち掛ける。

 その顔はどことなく悪戯好きな子供のような笑顔だった。


「提案?」


「ああ」


 シンはサクラからの提案をそのまま耳に傾けた。


「ワタシが所属している組織は来訪者や転生者と大きく関わりがある」


「何?」


 その事を聞いたシンは目を大きくした。


「「星の柱」・・・それがワタシの所属している組織だ」


「星の柱・・・」


 サクラはコクリと頷いて話を続けた。


「星の柱は名を馳せた実力者、国をも動かす財力を持った者、他を有無を言わせぬ権力を持った者等、力ある者が集っている」


「何の為に?」


 目元が鋭くなるシン。

 何かしらの力を持っている集団であるという事は何かしらの目的で動いているという事だ。

 その目的は何なのか。

 それ次第ではサクラへの見方が大きく変わる。


「そう睨むな。転生者と来訪者の保護、並びに情報の共有が主な目的だ」


 シンの凄みにサクラは冷静に答える。


「!」


 自分が思っていた以上に現代世界の人間と関わりのある事に驚くシン。

 そして目的がそれという事は当然提案と言うのは


「お前は兎も角、2人の保護についてをこちらが執り行うというのはどうだ?」


「・・・・・」


 シンはジッとサクラの方を見ていた。

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