30.大陸を知った者
今回も勢い任せに書いてすぐに投稿したおバカな作者の折田要です。
今回は1話のみとなります。
「ふ~ん・・・所謂「超大陸」ってやつか・・・」
関心と納得の声が漏れるシン。声が漏れた原因はアカツキから送られてきた画像だった。目を通すとど真ん中に「超」が付くほどの巨大な大陸が映し出されていた。
「・・・一応島々はあるんだな」
この大陸のせいで所々にある他の小さな島々の存在に気が付くのに少し遅れてしまう。
かつて地球にも存在していた幻の大陸、「パンゲア」。ペルム紀から三畳紀、つまり2億8900万年前から2億4700万年前までの時期。爬虫類は勿論、両生類、紡錘虫が繁栄し、裸子植物が発展しはじめた頃にかけて存在した超大陸。
大陸移動の関係や別の理由で分裂し、その結果が世界地図等で見る現在の大陸だ。つまりこの世界では地球の様に分裂した大陸ではなく大きく一つにまとまった超巨大大陸だった。
すると通信機から
「ボス、この惑星は地球の約2.2倍だ」
とアカツキが補足の説明をする。その補足に気になる事があったためシンは思っていた事を質問した。
「つまり、この大陸も約2.2倍という事か?」
「そうだ」
「マジか・・・」
たった一言。だが、その言葉は言葉が見つからない中必死に探し出した言葉だった。
地球の大きさがおよそ12742 kmだ。単純計算すればこの世界、この惑星の大きさはおよそ28032.4kmという事になる。
「・・・でかいな」
さっきの言葉に更に付け足したシン。するとアカツキが更に言葉が見つからないような事を言う。
「ああ、俺も確認して驚いたぜ。しかも、この大陸の真ん中の長い山脈帯、約8000 mもある。この山脈帯じゃないが最も高いとこじゃ10000を超えているとこもある」
ヒマラヤ山脈のエベレストが8848mでその次がカンチェンジュンガで8586 m…と連なっているがこの大陸の真ん中の山脈は丁度半分に切るかのように山脈帯になっている。それが平均8000mずつ。もはや出てくる言葉と言ったら
「・・・この世界、やべぇな」
「ああ」
これに尽きる。
「・・・思ってた以上にでかいな」
「ああ。それにこの世界の生き物はかなりでかいのがいる」
「どれ位だ?」
「クローズアップの事で計算すると少なくとも高さ20mの生き物がうろうろしている地帯がある。」
「・・・・・」
もはや言葉も出なくなった。現在分かっているのは高さ20mの生き物がいる事だけだ。つまり少し移動しただけで恐竜サイズの生き物ががウロウロと歩いているという事だ。もしその生き物が肉食か雑食であれば人間なんぞひとたまりもない。陸路での移動は危険だと考える。
(という事は海路、いや空路で移動した方が良いか?)
シンは「自動開発」で飛行機の様な物を製作し空路を確保しようと考えを纏めた。ところが、アカツキは
「・・・ボス、もし移動するのならできれば陸路の方がいい」
とさっき地上に20mの生き物がいたというのにとんでもない事を言い出す。
「何故だ?」
シンは慌てず冷静にアカツキの意見を聞く。
「続けてこの惑星の監視を続けていたんだが空飛ぶドラゴンであろう生き物に人間らしきものが乗っていたのを確認した」
アカツキがそう言うとシンは何が言いたいのかすぐに分かった。
「・・・ああ、なるほどな。陸からでも空からでもこちらの存在が分かるな」
空飛ぶタイプのドラゴンの背に人間らしきものが乗っていた。いや、馬等の生物に騎乗して移動する生き物はかなり限られてくる。この事を考えられればおそらく人間だろう。
もし、人間であれば問題がある。人間は基本的に群れで行動して生きる。その人間の群れの事を分かりやすく表現すれば「国」だ。つまりどこかの国の騎竜の可能性がある。シンは自分の事は明かさず旅をするのが目的だ。空路で移動すれば、あっと言う間に自分の存在を知らしている事になる。
それは拙いと考えたアカツキは陸路の移動を提案したのだ。
「そういう事だ。俺がナビするから移動は陸路にした方がいい」
アカツキはシンから定期的に送る魔力さえあれば不眠不休でこの惑星を観測し続ける事ができる。つまり、四六時中天気予報から支援砲火までのサポートする事ができる。
この世界について知りたい。だが、己の存在は何なのかはエリー達やギアの反応から見れば分かる。なるべくなら己の存在を見つからずに進みたい。空にはドラゴンの背中に乗った人間らしき存在や、陸上ならばエリー達が捕まっていた奴隷商人や恐らく盗賊もいるのだろう、そういったややこしい存在に邪魔はされたくはない。
だが、シンにはアカツキという心強いパートナーがいる。目的地ができればそこまで安全な道に誘導してくれる。だが今は目的へ行く目途を決める前にエリー達の依頼の「生き方」を教えなければならない。取敢えずはこの場所から移動するのは当分ないだろう。
「アカツキ、当分の間はエリー達の依頼で当分の間はここから動けそうにない。引き続き周囲を監視していてくれ」
「了解、ボス。それから俺の存在は秘密だろ?さり気無くでいいから「エリー達」について紹介してくれ」
ついさっき起動したばかりのアカツキはエリー達の事は当然知らない。
「分かった、多分これから朝食の用意するからその時に・・・」
「OKボス」
シンが最期に言い切る前に何をするのかについてすぐに察したアカツキはアッサリと承諾した。アカツキはある合図の事を言った。
「合図は震えるからな」
「了解、一旦交信を終了する」
シンもまた、アカツキが何をするかについてすぐに察してアッサリと承諾し一時的にお互いの通信を終了した。皆がいるキャンピングカーの所へ戻るシン。
暗闇が完全に消えて晴れた空が見えた頃。シンは皆を起こし朝食の手伝いをさせていた。
「エリー、このシチューをかき混ぜてくれ」
シンはそう言ってエリーの方へ顔を向ける。
「うん」
「ナーモはレタスを千切ってくれ」
今度はナーモに。
「おう」
「シーナは人数分の皿を。ニックはシートを広げて」
シーナとニックにも同じく顔を見る。
「はーい」
「わかった」
それぞれに朝食の用意の指示をする。すると
「僕らは?」
そう声を掛けてきたのはククとココだった。シンは思わず2人の顔を見る。
「あー・・・ククは人数分のパンを。ココはシーナの手伝いを」
「はーい」
「うん」
それぞれに朝食の用意を手伝わせていた。普段はシンが全て用意していたが皆にもある程度の料理などの経験を積ませようと思ったから手伝わせているんだとここにいる皆はそう考えていた。確かにシンは皆が「生き方」を教わっているのに毎食の準備をシンばかりがするわけにもいかない。少なくとも具材の皮むきや火加減等を覚えもらうつもりだ。今回は小さな子供でもできる簡単な手伝いをさせていた。
シンはそんな思いで皆に手伝わせていたのは事実だ。しかし、実際は皆に朝食の用意を手伝わせていた理由はもう一つあった。
そんな中エリーは普段のシンとは違う所に気が付く。それは黒いワークキャップを被っていた事だ。その事に疑問に思い尋ねる。
「・・・シン兄、どうしたのその帽子?」
そんな疑問に答えを用意していなかったシンは歯切れの悪い返答する。
「・・・まぁ、その、気分転換みたいなものだ・・・」
「ふーん・・・」
ジト目でシンを見てやや納得がいかないような返事をする。数秒シンと目を合わせた後鍋の中のシチューの中の方へ視線を向けてお玉でかき混ぜる。
(勘がいいな・・・)
シンは何とかやり過ごしたと判断し内心ホッとする。
エリーの疑問は当たっていた。実際シンがワークキャップを被っていたのには別の理由があった。シンの黒いワークキャップの鍔より少し上の面には薄いカメラが仕込んでいた。ワークキャップのカメラを通してアカツキにさり気無く紹介して、皆のそれぞれの顔と名前を覚えさせたのだ。料理の経験はついでだった。
シンの首の通信機から
ブゥゥ、ブゥゥ、ブゥゥ…
と小さな振動がしていた。
(上手くいったか)
この振動は通信機特有のバイブレーションだった。このバイブレーションの意味は「アカツキは皆の顔と名前を覚えた」という合図だった。アカツキが言っていたあの言葉。「合図は震えるからな」はこの事だった。
結果上手くいった。
シンは周りの様子を見てそろそろ朝食ができると判断して皆を呼んだ。
「そろそろ出来たな。じゃあ食べるか」
それぞれがシートの上に座りパンとクリームシチューが入った皿を受け取り各々の前に置く。シンが手を合わせていつものように
「いただきます」
「「「いただきます」」」
完全な日課となった挨拶をしてパンとシチューを頬張っていった。
(皆子供か・・・)
アカツキにはふと疑問が浮かぶ。何故6人の子供がここに寄せ集まっているのか。
「・・・・・」
その事についてシンに聞きたいが今は話せない。今話すとシンは独り言を呟いているように見える。下手すればアカツキの存在がばれてしまう。食事が終わってから改めて聞こうと考え今はシン達の動向をただ見守る事に徹した。
更新頻度が少ない上に遅いかもしれませんがよろしくお願いします。