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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
302/396

300.軍門に下る

 城壁都市から2km程離れた森の中にて。

 仄暗い森の中で冒険者の装い、兵士の装い、商人の装い等々、格好からして様々だが何か一つの目的の為に動いている者達がここに集っていた。


「本物のドラゴンの皮を持ち込まれた時は冷や冷やしたな・・・」


 そう言う男はドラゴンの皮を自慢気に見せびらかした時に鋭い目になっていた冒険者の男だった。


「ああ」


 そう答える兵士の男は一息ついたかのように軽い深呼吸をしていた。


「だが、それも過去の話だ。これで邪魔な国が消えて、領土を手に入れる事が出来たな」


 もう一人の兵士の男は片手に何かを持っていた。サッカーボールほどの大きさで上部分を布を引っ掴む様にして持っており


 ポイッ


 と投げて


 ドサッ…


 地面に叩きつけられ


 ゴロゴロ…


 転がった。

 それはドランゴンの皮を持ち込んだ商人の首だった。どうやらこれ以上何か話され欲しくない為に、口封じの為に殺されたようだった。

 まるでこれ以上ドラゴンの皮について知らされたくない様に。


「ああ。結果として俺達の国も豊かになるだろう」


 どことなく安堵の顔になって穏やかな口調でそう答える兵士の男。


「俺の息子・・・まともな野菜、食えるよな・・・?」


「食えるさ・・・」


 冒険者の男と兵士の会話。

 それは遠出の仕事で自国にいる子供の安否を気にしている父親達の会話だった。

 安堵に浸り、確実に自分達の家族の未来が明るいものであると約束された現状。

 そんな彼らに


「すまない」


 不気味で低い男の声が聞こえてきた。


「「「!?」」」


 集った円陣が一気に崩れて声のする方へと向いた。


「食えるかどうかについては知る事はもう二度とない」


 現れたのは髑髏の鎧を纏った不気味な男だった。

 ウルターだ。


「何者だ、お前っ!?」


 そう大声で訊ねた時、集った男達は武器を手に取った。


「その時が来るまではお主達は吾輩の名を知る事は無い」


「・・・何を言っているんだ、てめぇっ!」


 不気味な雰囲気な上に訳の分からない事を言っている。これが増々不気味さを引き立てる。だから先手を打つ為に抜剣した。

 その瞬間に


 トスッ


「っ・・・!」


 いつの間にか自分の右肩にウルターが持っていた杖の尖った先によって貫かれていた。


「吾輩の名を知る事は出来ん」


 ズッ…


 そっと引き抜いたウルターの姿を見た集った男達は後退りする。


「聞かれたからには、見す見す逃がすわけには・・・」


 奮い立たせる様に勇ましくも敵に威嚇する様な声で牽制しようとするも


「吾輩もだ。見す見す、生かすわけにはいかぬ」


 ウルターの言葉によって遮られた。


「あ・・・?」


 訳の分からない言葉の意味に思わずそう聞き返す。


「なんだ?そ・・・」


 更に聞こうとしたその時


 ドクン


 自分の胸から強い鼓動が感じて


「りゃ・・・?」


 言葉を発し終えた時


「「「っ~~~~!?」」」


 急に心臓が動きを止めた。

 一体何が起きたの分からずにその場に倒れ込んでしまい俯せる形に地面に伏せた。

 一人の男がウルターのの方へ見上げると


 コォ~…


 ウルターの口が、バイザーが少しだけ開いており、そこから独特の呼吸音とも不気味な風の音ともつかない独特の音を鳴らしながら白く霧状の何かが吸い込まれていた。

 その光景はまるで死神の様だった。


「漸く以てしてお主達に吾輩の名を知る事が出来る」


 吸い込みながらそう答えるウルターの言葉に集っていた男達が次々と力無く伏せていく。

 兎に角こうした苦しい状況に抵抗してどうにかしようとする男は振り絞って出た力で周辺の様子を改めて把握して打破しようとしていた。

 だが


「吾輩はウルター・ライツァイ・トーテンコップと申す。またの名は・・・」


 それも叶わず最後に耳をしたのは


「「高笑い」のウルターなり」


 ウルターの2つ名だけだった。


「~~~~~~~~~~~っ…!」


 最後まで抵抗した男に齎されたのは冥途の土産にその2つ名だけだった。

 静かになったその場に残されたウルターはボソリと


「だが、それは()()名に過ぎんがな・・・」


 と言って


「・・・・・」


 何も言わなくなった集った男達だった、()()


 ボコボコボコッ…!


 土の魔法で地面に穴を開けて


 ズズ…ズズズ…


 引き摺る様な形でその穴に入り


 ザラザラザラ…


 土が覆い被さる形で埋められて、その周辺に何も無かったかのようになった。

 ただあるのは何かを埋めたような跡しかなかった。

 そして魔法によって埋葬したウルターはその場でジッと動かずに


「そうか・・・この者達はやはり他国の、それも貧困の出の者で明日の飯の為につまらぬ者の手先となって動いていたか・・・」


 とブツブツと呟く様な形で誰かと会話をしていた。

 相手が何故こうしてこうなってしまったのかについてを静かに語っている所を静かに聴いているかのように。

 そして納得した口調で事の経緯を口にしてその者を憐れんでいた。


「さぞかし、辛かったであろう・・・さぞかし、苦しかったであろう・・・さぞかし・・・」


 一拍おいて少し怒りの口調が混じって


「愚かであったであろう・・・」


 と言い放った。

 この言葉を投げかけていた者に対する怒りと同情を感じさせる言葉にその場にいる者は誰も反応はしない。当然誰もいないはずだから。

 だがウルターはそれでも尚、会話を続けていた。


「最早、敵対する大義も無し。されど、騙る言葉よって踊らされた哀れなる強き者達よ、我が軍門に下るが良い」


 周りには誰もいない。あるとするならば土の中にいる死体になってしまった暗躍していた下の者達。

 そんな存在しないはずの周囲に向けてウルターはまるで、王が騎士に忠誠を誓うかどうかについてを問いているかの様だった。

 その問いの言葉を発してから数秒経った時、ウルターの目の青白い光が大きくなり揺らいだ。


「よろしい、余の為に戦え。余の為に奮え。余の為に・・・」


 そう言った時、持っていた杖を掲げて


「浄化せよ」


 と言った。

 まるで忠誠を誓った兵士に鬨をあげる総大将の言葉を口にした。

 その瞬間、ウルターの目の青白い光が大きくなり


 オオオオオオオォォォォォォォォォォォォ…


 体中、鎧の中から窓に吹き込んでくる様な不気味な風の様な音が鳴り響いていた。


 ォォォォ…


 音が収まった時、ウルターは掲げていた杖を下ろして踵を返した。


「ふむ・・・」


 そう呟き、顎の所に手で撫でて下の方を見た。何か考え事をしている様子だった。

 そして軽く頷いて


「では、もう一つの所用の方へ向かうか・・・」


 とそう言って森の奥へと消え去っていった。

つい先日コロナワクチン注射を受けましてその副作用が今になって出て来ています。

熱が38度近くまで上がっていまして、結構執筆活動に影響出ています。

ですので、次の投稿が先延ばしになると思います。

楽しみにされていた方々には本当に申し訳ございません。

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