1.状況確認
2話ほど書きました。
真は一度目を瞑り軽い深呼吸をして目をもう一度開く。
「・・・」
息をのみ自分の右手をゆっくりと確認する。
「・・・・・」
そして、今度は左手、両足を見る。
「・・・」
今あるこの両手は自分の物なのかどうかを確かめる為にゆっくりと握ってみた。
ギュッ…
「・・・!」
どうやらこの黒い両手は紛れもない自分の両手だった。
ここに誰かいるなら是非とも聞きたい。「ここはどこ?私は誰?」と。
今まさにそんなセリフを叫びたくなる状況だった。
「これはどうなってんだ?」
どこかの洞窟だろうか。周りは兎に角、岩の壁に、上から垂れてできた岩の氷柱とで灯り一つもない真っ暗闇。
しかし、目が慣れているのか、周りの様子がはっきりと分かる。おまけに匂いを嗅ぐとカビ臭い。自分がさっきまで寝ていた所を目を凝らす様にして見ると大きな石でできた台だった。人一人寝れる位の大きさで円を基調とした魔法陣の様な彫刻が施されていた。
まるで祭壇のような物だった。
真は両手の次に自分の胴体を見た。
今の真の身体は中肉中背の身体だったのに身長が前より少し高くなって多分175cmを少し超えているくらいになっていた。また、胸板がぶ厚く、腹筋が六つに割れていた。まるで軍人の様な引き締まった体になっていた。
だが真にとってはそんなことはどうでも良く思うほどの事態が起きていた。
「これ・・・・・俺の体・・・?」
自分の両手を見て力なく呟く。そして、膠着する。無理もない。起きてみれば、ここがどこかも分からない上に、両手両足が漆黒に染まっており、両足には全指がない。
何が起きているのかが分からない為に頭が混乱していた。
真は今までの事を必死に思い出してごちゃごちゃになった頭の中を整理する。
その時夢の事を頭を過った。
「夢・・・じゃないよな・・・」
真は力なくそう呟く。今の目線は自分の爪先を眺めているようなポーズをとっていた。だが、決してそれを見ていたわけでなくどこか遠い目をしていた。
真が出したこの言葉には2つ根拠がある。
1つは感覚があまりにもリアルすぎる。理由は 匂いを感じることができる。また、両手を握ると、握った感触がある。真の経験上ここまでリアルな夢は見た事が無いからである。
もう1つの根拠はあの夢だ。あの夢で「その時に起きることは現実です」と鮮明に覚えている。
偶然にしては出来過ぎている。まるで、特撮の悪役の改造人間によろしく、何者かに自分の体を変えられ、ここまで連れてこられたような・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そう考えても、考えている事を口にしても、誰もいない、何もない殺風景な洞窟では誰も何も答えてくれる者はいない。
真は小さく溜息を付き行動を起こそうと思い立った。
(考えても仕様が無い。とりあえず、ここを出よう)
そのまま祭壇から降りようとするが、急に視界が上下逆転した。
ドスッ
乾いた音が洞窟内で鳴り響く。その音に反応して小さく叫ぶ。
「痛てっ!」
真は普段の様にベッドから降りるつもりで祭壇から降りようとした。結果見ての通り真自身が逆さまに落ちてしまっていた。
逆さまになった身体をそのままにしていくわけにもいかない。姿勢を正そうと立ち上がろうと地面に手を付けて起き上がろうとする。
「・・・!?」
力が入りにくく、体の制御が上手くできない。その為、うまく立つ事ができず、立膝をつくような姿勢になっていた。
「はぁ~」
イラつきを通り越し呆れたため息が出る。
そして、もう一度立ってみた。
「・・・・・」
フラフラとしながらもバランスを保ちつつ
「・・・・・(よし)」
今度はうまくいった。今度は歩いてみた。
普段通りの様に力を入れず、少しずつ少しずつと徐に歩き始める。
「・・・・・」
ズ…ズッ…ズッ‥…
「・・・・・」
最初はすり足だったが、そのうち徐々に歩きらしい歩きになっていった。
「・・・」
最初の失敗と比べれば遥かに良い結果となったためか真のポーカーフェイスが安堵の色に染まったように見える。
「やっぱり、リハビリが必要か・・・」
両手を握った時、どこかぎこち無い。恐らく両足同様に練習をしなければならない様だ。
改めて、自分の体の状態を確認した真は歩きながら、両手足のリハビリを行いながらここから出る出口を探す事にした。
散々両手足のリハビリを行ってきたおかげで以前のように動けるようになった真は歩いてきた真っ暗で坑道の様な洞窟の先には小さな光が見えた。
(光?)
リハビリをしつつ洞窟内を移動しまくったおかげで走れるようになった真。思い切って光の下へ駆け上がる。小さな光は徐々に大きくなっていきその出口の大きさがようやくわかった。横幅が約3m縦幅が約3.5mの洞窟だった。
「出口・・・・・」
真の言う通り出口ではあった。外は薄明るく曇っている事が分かった瞬間だった・・・。
カッ――!
目の前から強い閃光が真の目の中に映る。
ゴロゴロゴロゴロォォォ…
空から轟く大きな音。
ザアァァァァァァァァ…!
上から連続してバケツをひっくり返すかのように大粒の雨が降っていた。
「・・・・・」
止むまで外には出られないと判断して小さな溜息を付く真。昼の様に明るいとも夜の様に明るいとも呼べず薄明るい現状に真は改めて自分の身体を見てある事に気が付いた。
「あ、服・・・」
今着ている服が青の短パンと黒に近い灰色のTシャツでしかも、ドロドロに汚れている事に気付いた。
追記 改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。