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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
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297.殺すか・・・

 街角の袋小路にて、少数ながらも市民として生活してきた者達は何かに追われて、追い詰められて大きな黒い影に覆われる様にして陰りに入って、その存在を見ていた。


「ひっ・・・」


「悪かった・・・俺が悪かった・・・!」


「ヤダ・・・許して・・・」


 許しを請う者、唯々恐ろしくて恐ろしくて声が出ない者が見る先にいたのは複数のドラゴニュート達。

 ドラゴニュート達は酷く怒りを込めた目から許す気配がなかった。

 だから


 スゥ…


 ボオオオオオオォォォ…!


「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」


 袋小路に追い詰めた人々を火炎を吹いて焼き払った。

 焼かれた人々は唯々悲鳴を上げて藻掻き苦しみ死にゆく道以外他なかった。





 暗い地下道。その場所はやたら水の音、正確には水が流れる音が聞こえていた。そこは地下水道、正確には下水道だった。

 慣れた足取りで走りながら松明を掲げて進んで行く複数の者達がいた。


「はぁはぁ・・・」


 先に走る者以外は息を切らしていた。先に走る者は後続が遅れない様に様子を窺いながら走っている。だから早いながらも助けられる命は助けられているというそれなりに良い手段で助けられていた。


「ホントにここから出られるのかよ・・・?」


 息を切らしている後続の1人がそう尋ねる。すると先頭で走っていた者は


「出られる・・・!もうそろそろだ!」


 と自信満々に答えた。

 走る者は物乞いと言わんばかりの風体だった。というより、実際物乞いなのだ。この物乞い、実はこの下水道の事について、よく知っていた。

 物乞いの時、効率よくより良い物を物を手に入れる為に拠点を作っていた。移動するにしても物持ちの良い物乞いはただの金づるに過ぎないから狙われる。そこで下水道を移動して地上に出て拠点に現れている。こうした活用方法で物乞いとして生きてきたのだ。だからよく知っていたのだ。


「・・・!」


 気が付くと奥の方で小さな光が見えた。


「あ、あれか・・・?」


 疲れていた後続の者達は見える文字通りの「希望の光」に喜びの色が見えて疲弊が一気に吹き飛んだ。


「ああ、あれだ・・・!」


 物乞いもその光が見えて大きく頷いた。


「やったぞ・・・!」


 そう言って後続の者達は我先にと言わんばかりに駆けだした。


「俺ら、助か・・・」


 一番乗りの様に光の先に出た者が目にしたのは


 グルルルル…


 武装したドラゴニュート達だった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」


 何故目の前にドラゴニュートがいるのか?、と疑問符と遅れてやって来る恐怖心が滲み出て来て先頭にいた男が逃げてきた人々の代表で思わず疑問の声を漏らしてしまう。

 そんな人々にドラゴニュート達は


 スゥ…


 息を吸って


 ボオオオオオオォォォ…!


 一気に火炎を吐き出した。


「「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!」」」


 その火炎は当然人々に向けて物だ。

 当然下水道にも、抜けた先でも人々の悲鳴が木霊した。




「酷い・・・」


 その様子を遠目から見ていたシーナが思わずそう呟いた。

 その呟きを耳にしたジロウは目を細めて


「・・・これが「逸脱の民」を敵に回してはならない理由だ」


 と冷静な口調でそう答えた。


「徹底的、ですね・・・」


「うむ・・・」


 背中に滝のように流れる冷や汗を掻きながらそう答えるナーモにジロウは頷きつつ周りの様子に冷静に見極めていた。


 ・・・・・


 そんなナーモ達の様子を見ていた1頭のドラゴニュートがジッとナーモ達を見て眉間に強く皺を刻んだ。

 その時だった。


 ガッ!


「!」


 突然ナーモに掴み掛ってそのまま持ち上げたのだ。


「わああああっ!」


 悲鳴を上げるナーモに


「「「・・・!?」」」


 エリー達・・・だけでなくドラゴニュート達も悲鳴する方向へ向いた。


「何を!?」


 ジロウは予想外の行動をするドラゴニュートに思わず大声でそう尋ねる様に叫んだ。


「っ・・・!離せ・・・!」


 強く握られているせいで圧迫して苦しいナーモは死に物狂いで抵抗する。


 グルルルル…


 掴み掛っているドラゴニュートの唸り声は酷く怒りと憎しみが籠っていた。その唸り声に思わず騒ぎ始めていたエリー達は黙ってしまう。

 掴み掛ったドラゴニュートはそのままナーモを一気に握り潰そうとしたその時


 バシン!


 別のドラゴニュートが尾で掴み掛ったドラゴニュートの胴を叩いた。


 ギャオッ!


 思わず悲鳴を上げる掴み掛ったドラゴニュートはナーモを離さなかった。


 グガアアアアアアアアア!


 何をする!?、と言わんばかりに咆哮する掴み掛ったドラゴニュートは睨む。


 グオオオオォォォォォン!


 逆にお前は一体何をしているんだ!?、と言わんばかりに咆哮する尾で叩いたドラゴニュートはギラリと睨みつけていた。


 グルルルル…


 睨みつけてきたドラゴニュートへの視線を切って掴んでいたナーモの方へと憎しみを込めた視線を向ける。その瞬間再び握る力を強めてナーモを潰そうとするドラゴニュート。


「ぐ・・・っ!」


 一気に苦しくなって苦痛の声を漏らすナーモはドラゴニュートの手を引きはがそうと掴み掛っていた。だが一向に剥がせれる気配がなかった。


「ナーモ!」


 ニックは拙いと考えて弓を構えた。

 だが


「待て!手を出すな!」


 ジロウはすぐに制止の声を入れる。

 同時に


 ガオオオオオン!


 グオオォォン!


 掴んでいるドラゴニュートに対して怒りの咆哮を上げるドラゴニュートが威嚇しあっていた。人間でいう所の言い争いと言える状況だった。


「何で!?」


「今手を出してしまえば、確実にドラゴニュートに手を出した事になってしまう!」


 ジロウの言い分は事実だ。変に手を出してしまえば城壁都市の人間と判断されかねない。今までナーモ達が襲われなかったのは城壁都市からかなり離れていたからと、彼らの行動が飽く迄も植物採取だけに留まっていたという点と、リザードマン達とドラゴニュートの子供の違いを認識できていた点があったからだ。後者はジロウにだいぶ助けられている。

 だからここで手を出してしまえば城壁都市の人間と捉えかねない。


「でも向こうから手を出した!」


「向こうも仲間が急にナーモ殿を掴みかかったのは想定外だ!だから何もしなければまだ希望がある!ここで変に手を出して皆殺しになってしまう!」


「俺達の仲間だ!見捨てられない!」


 熱くなっているニックに冷静で且つ正確な理由を口にして落ち着かせようとしていた。だが気が気でない様子に、仲間がピンチに手出しができない歯痒さに拍車をかけていた。

 何とか落ち着かせてチャンスを窺う様にしようとするジロウ。

 そんな両者が内輪もめに近い状態の時、苦しみながらも今の状況を脱出する方法を模索していたナーモ。


「う・・・ぐ・・・」


 自分の腰にある剣に手を伸ばそうとするもドラゴニュートの指が邪魔して抜けない。

 掴まれ方は両手は自由だが腰の剣が指が絡む様な形で抜刀が出来なかった。


「・・・・・」


 他に何かないかと自分の腰に手当たり次第に探ろうとした時、霊剣に触れた。


 カッ


 抜けれる気配がなかったはずの霊剣を藁にもすがる思いで触れた時


 抜ける


 と感じて


 キン・・・


 抜く事が出来た。


「!」


 ここぞ


 そう瞬時に判断したナーモは


 ドス…!


 掴み掛っていたドラゴニュートの手首に強く突き刺した。


 ッ!


 痛みのあまりにパッと手を離したドラゴニュートは


 ギュオオオオオオオォォォォォォン!


 痛みと威嚇が混じった咆哮する。


 ドサッ!


「グッ・・・!」


 地面に叩きつけられたナーモを目にしたニック達は


「ナーモ!」


 と強く張った声で名前を呼んだ。


 フラ・・・


 ナーモは掴まれた時のダメージと地面に叩きつけられたダメージが諸に目に見える形で理解できる状態になっていた。

 その様子を見ていた。ジロウはすぐに駆け寄った。


「今行くぞ!」


 ジロウの言葉を聞いたニック達は


「エリー!」


「うん!」


 エリーとニックは後方で支援する形で護衛をした。だがそれもそれ程必要としないと言わんばかりに目にも留まらぬ速さで一気にナーモを抱え上げて


「・・・!」


 ニック達がいる所まで駆け寄った。


「ナーモ!」


「大丈夫!?」


 シーナとエリーの心配の声に


「ああ・・・でもヒビがいっているかも・・・」


 無事を確認が取れる言葉を聞いて胸を撫で下ろしたエリー達。

 だが安心はできない何故なら自体はまだ終わっていないのだから。


「兎に角連れて下がれ」


 ジロウがナーモ達を守る為に自分の後ろにいる様に言っていつでも抜刀が出来る様に構えて、シロウ、ゴロウ、ロクロウがいつでも急襲掛けられる様にしていた。


 グガアアアアアアアアア!


 掴み掛ったドラゴニュートは怒りが込み上げて怒声の様な強い怒りが籠った咆哮を上げ、ナーモ達の方へ向いた。

 だが、止めに入ったドラゴニュートは


 グオオオオォォォォォン!


 まるで「やめろっ!!」と強く言っているかの様に咆哮する。その咆哮を聞いた掴み掛ったドラゴニュートは目元を細めて漸く大人しくなった。


「一体何を・・・」


 ジロ・・・


 大人しくなった事を確認できた止めに入ったドラゴニュートはこちらを向いた。


「「「!」」」


 こちらの方を見た事に警戒して構え直すナーモ達。

 それとは別にドラゴニュートはお構いなしにこちらの方へ近付いて来る。


 ズン…


 ズン…


 ほぼほぼ手前まで気近付いてきたドラゴニュートはジッとナーモ達の方を見た。


「「「・・・・・」」」


 沈黙が2秒程漂った時


 スッ…


 ドラゴニュートは両手で何かしようとジェスチャーの様な事をし始めた。


「!」


 その様子を、エリーの目に映った瞬間、目を大きく見開く事になった。

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