293.逃がさない
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
城壁都市の落とし格子側の兵舎や民家、兵器が燃えてしまって白い土煙が黒い煙に変わった。
そんな様子の落とし格子側から見て反対側の門ではドラゴニュート達は自分達よりも大きく丸い大岩を転がしていた。
ゴロゴロ…
転がしていく様子に気が付いた兵士達は何をしているんだとザワザワと騒ぎになるかならないかになっていた。
「おい、あれ・・・」
「何する気だ?」
「それよりも、落とし格子の所、行かなくていいのか?」
「だが、こいつ等が何をするのかが分からないだろ?」
この兵士の言う通り、何を仕掛けてくるのかが分からない。だから簡単には離れる事は出来ない。と言うのはドラゴニュート達は落とし格子側程とはいかなくとも近辺の民家、近くにいた人々を火炎等で追い立てて蹂躙の限りを尽くしていた。道端、野原には燃える薪となった人だった何かがあちらこちらで見かける。その為、こちら側でも黒煙が上がっており、悲惨な状況であった。
・・・・・
ゴロゴロと転がすドラゴニュートは反対側の門の真っ直ぐの道に合わせて転がしている岩を合わせた。
「何だ?」
首を傾げる兵士達の内一人が当たって欲しくない現実を口にした。
「まさか・・・」
そのまさかだった。
グオオオオォォォォォン!
何かを合図するかのように咆哮する1頭のドラゴニュートに応じて他のドラゴニュート達、特に岩を転がしてきたドラゴニュート達は一斉に岩を押し始めた。
ゴロッ…
動き始める大岩に兵士の一人がすぐに気が付いて
「弓矢で岩を転がしているドラゴニュートを射殺せ!」
と叫ぶ。
その叫びに兵士達は一瞬何を言っているのかが分からなかった。だがすぐに何か取り返しのつかない何かをすると察した兵士達は一先ず怯ませるだけでもいいから弓矢を放った。
「放てーっ!」
パパパパパン…
弦が弾く音が響き、ドラゴニュート達にヒットする音が聞こえた。
だが、突き刺さった矢は一本もなかった。
そればかりかドラゴニュート達の速度がドンドン早くなっていく。
「・・・っ!衝撃に備えろーっ!」
最早止める事が出来ないと判断した兵士、恐らく兵士長に当たる人物はそう指示を下した。練度が高いからか他の兵士達はすぐにその指示通りに動いた。
「っ!」
兵士それぞれが構えて衝撃に備えた。
その瞬間
ドーン!
反対側の城門の所に大岩が直撃した。
「・・・・・!」
直撃した門は岩によって
「壊されて・・・ない?」
確かに壊されていない。
岩は門にぶち当たってそのまま塞ぐ様な形になっていた。
てっきり壊して突破すると考えていた兵士達はホッと安堵するよりもどういう事なのかについて疑問符がいっぱいになっていた。
ただの失敗なのか?それとも別の理由で?
そうした疑問が浮かんでいる中
ジッ…
と自分達兵士達の方を見ていた事に気が付いた。
「・・・・・」
ドラゴニュート達の視線はどことなく失敗したからこれからどうしようという雰囲気ではなく、何か狙って門を潰した様に見える。
こうした様子から一人の兵士が気が付いて
「まさか・・・塞いだ?」
と口にした。
「報告!」
伝令兵はお館様の元までやって来た。この時、お館様は鎧を着こんで城塞都市の地図に目を通してそれぞれの地区にどうするべきかについての命令を下していた。
各々の対応を指示し切ってその後の事についてを考えようとした矢先の事だった。
「申せ!」
気迫ある声に伝令兵は一拍空けてすぐに報告に入った。
「ドラゴニュート、大岩で城壁都市全ての門を塞ぎました!」
その報告を聞いたお館様は目を大きく見開いた。
「なっ!?」
「塞いだ・・・?」
信じられない光景だった。本来ならば比較的脆く、攻め込みやすいはずの門を大岩によって塞いだのだ。これは流石に困惑の色を隠せずにいた兵士達。
そんな城壁都市の兵士達の様子を見ていたナーモがそう呟くとジロウは目を細めて
「そろそろか・・・」
と呟いた。
「え?」
ナーモは疑問符付きの声を漏らす。
だがその疑問符は次の光景を見てすぐに解消される事になる。
最も、惨い物見させられ、という形だが・・・。
グュオオオオオオオ!
塞いだ瞬間、咆哮する1頭のドラゴニュート。すると
グュオオオオオ!
遠く、正確には門近くにいた1頭ずつのドラゴニュート達が咆哮する声が全ての城壁都市の門付近のドラゴニュート達の耳に届いた。
その瞬間、門の近くにいた1頭ずついたドラゴニュート達は
ガウガガァガアガグアァァァァァァ!
と何か意味のある言葉で叫ぶように咆哮した。鳴き方もどれもこれも同じ声だった。
そして、この方向を聞いたドラゴニュート達は一斉に
ガァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
と咆哮した。
それを合図と言わんばかりにすぐに城壁都市へ攻め込んでいった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!
走るドラゴニュートだけでなく、大岩を転がすドラゴニュート達も一気に走り出した。ドラゴニュート達の総攻撃の開始だった。
その様子を見た城壁都市の兵士達はすぐに弓矢を構えた。
「!弓放て!」
パパパパパパパパパパン…!
一斉に放たれた無数の矢がドラゴニュート達を襲う。だが・・・
カカカカカカンカカカカカカカカンカカカンカカカカカカカ…
突き刺さる事は無かった。終始突き刺さる事が無かったのは単純にドラゴニュートの皮膚、正確には鱗は硬くて丈夫で分厚かったのだ。その為、弓矢程度はおろか、バリスタですらも突き刺さるかどうかすらも怪しい位の丈夫さを誇っていた。
その上、ドラゴニュート達は服の様な武具を着込んでいる為尚更難しかったのだ。
だから別の手を講じる事にした兵士達。
「投石しろー!」
セッティングされたトレシュビットの可動レバーを倒した兵士。
ガキン…
周る歯車は長い投石棒を大きく
グオン…!
振って
ビュンッ…
投石した。
ドドドドドン…
数台の統制が着弾した音が聞こえてくる。だがドラゴニュート達にヒットした様子はなかった。ほとんどは避けられたり、転がしている岩に当たったりしてドラゴニュート達にダメージに与えるような結果にはならかった。
そればかりかほとんど構成のスピードを落とさなかった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…!
落ちない勢いに気圧されてしまう兵士達はすぐに弓矢を構える。
「っ!」
「来る」
だが遅かった。
ドドドドドドドン!
城壁に到達してしまった。大岩を転がすドラゴニュート達はそのまま城壁にぶつけた。ぶつけた様子を見た他のドラゴニュート達はすぐにその大岩に集った。
「!」
集ってすぐにその大岩に登ってそれを足掛かりにそのまま城壁を上り切ろうと動くドラゴニュート達。
「隊長ー!奴ら登ろうとしています!」
「見りゃ分かる!油、湯を落とせー!」
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
「トレシュビットの岩を持ってこい!岩を落として登らせるな!」
それを見た兵士達はすぐに対応を始める。用意していた油や湯をそのまま流し落としたり、弓矢を持っている者は即座に放ったり、急いで岩を持ってきた者はそのまま岩を落とした。
ワアアアアァァァァァァ…!
そうした者達の集まりの喊声が次第に多き流れの様になり、気圧されて萎縮しかかった戦意を奮い立たせる。
「このっ!」
ある兵士は迫ってくるドラゴニュートに対抗する為に持っていた岩をそのまま投げ落とした。
ブンッ!
ゴンッ!
ドラゴニュートの頭頂部にヒットするも
グルッ…
ギロリと睨んでくるドラゴニュートの視線に効いていない事を悟った兵士は下にいる別のドラゴニュートがこちらを見ていた事に気が付いた。
「!」
ブォッ!
こちらを見ていたドラゴニュートは投げるモーションに入った事に
「クソ・・・!」
と言葉を零したのが最後の言葉となった。
ババババババババ…!
モクモクと白い土煙が立った時と同時に風が吹いた。その時、城壁都市の兵士達の被害が見えた。
「あ、あああああああああああああ!」
「・・・!」
兵士達の体中には大量の石飛礫による被弾により、粉々になっていた者もいれば、半身が吹っ飛んで、絶命している者もいた。
そんな兵士達を見た他の兵士達は唖然とした顔に心境は上の空。
最早何がどうしてこうなったのかが分からないと言った顔だった。
兵士達がバラバラに、それも広範囲になっていたのはドラゴニュート達が投げた物が原因だった。
バババババババババババ…!
それは人間の拳大の無数の石飛礫だった。滑らせてきた複数の巨大な橇の中にドラゴニュート達からすれば、細かい無数の石飛礫を運んでいたのだ。それらを持ってきて集団で動く兵士達を潰したのだ。
無数の石飛礫は一握りで投げる事によって散弾となって集団で戦う兵士達には非常に効果的だった。例え当たらなかったとしても怯ませる事が出来る。その為、後方にいるドラゴニュート達が橇の近くに常々におり、前線のドラゴニュート達を援護をしていた。
だから・・・
「何している!登らせるな!すぐに動け・・・」
ズンッ・・・!
容易く・・・
「の・・・っ!」
「登って来たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「「「あああああああああああああああああああああああああああああ!」」」
グルッ…
登ってこられたのだ。
以前投稿頻度の事について記述していたのですが、暫くの間は10~15日おきの投稿していく形になるかもしれません。
去年の忙しさに続いている状態ですので、思う様に執筆活動が出来ていません。
楽しみにされている方々には大変ご迷惑をお掛けします。
こんな状態が続いてしまいますが、「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」をよろしくお願いいたします。
本当にすみません!