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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
285/396

283.レベルが高い

 先行く過酷な道のりの中、シン達はカナラの説明を耳を傾けていた。


「ナマハゲは道具を用いて動物を狩り、独特の言語を使って群れで生活しているらしい」


 全身図を目にしているサクラ達にカナラがそう説明する。するとサクラが気になる箇所を見つけて指を指して訊ねた。


「この持っているのは何だ?」


 指差した箇所はシンも気になっていたナマハゲが持っている武器とも道具とも取れる物だった。指さした箇所を見たカナラはスンナリと答えた。


「黒い石の包丁だそうだ。偶にだが、丸太を刳り貫いて作られた巨大な桶の様な物を持っている事もある」


 この事を聞いたシンは「増々ナマハゲだな」と思っていた。

 対してサクラは質問を重ねる。


「かなり手先が器用なのか?」


 コクリと頷いて答えるカナラ。


「らしいな。それにクマの様に歩きはしない」


 今までの説明からしてそれほど詳しくないが、詳しい人間から聞きかじったか、文献で確認したかのどちらかの様だった。


「ん?じゃあワタシ達の様に2本の足で歩くのか?」


「うむ」


「人間だな」


「そう、最早人間として接した方が良いと思うた方が良い」


 風貌からしてやはり人間の様に直立2足歩行で行動する様だ。この事からして人類と考えた方がしっくりと来る。

 それ故かシンは思わず


「所謂「現地人」って奴か・・・?」


 と口にした。

 だが確かに「ナマハゲ」の事を「生物」とカテゴライズするよりも「人類」か「現地人」とカテゴライズした方がしっくりくる。


「ゲンチジン・・・?」


 サクラはオウム返しにそう尋ねる。

 サクラ自身は屋敷に文献が多く持っている故に余り物を知らないという可能性は低い。という事は聞き慣れない専門用語として扱っているか、元々この世界には存在しない知らない単語であるかのどちらかになるだろう。

 シンはどちらの可能性もあると考えて素直に


「ああ、その土地に前々からいる住人の事を指すんだ」


 と答えた。

 その答えにサクラは


「それが「現地人」というのか」


 とスンナリと理解出来て変な疑問は持っていなかった。その証拠にカナラは「現地人」と言う単語に疑問を持っていなかった。この様子からしてどうやら専門語扱いになっている様だ。


「もし接触したらどうすれば良い?」


 納得したサクラは更に質問を重ねる。

 確かにこれから出会うのは良く言えば「頭のいい隣人に近い現地住民」、悪く言えば「人類以上の高い知能を持った獣の群れ」だ。

 変な接触の測り方をすれば間違いなく一悶着・・・どころでは済まない事になる。

 だがこうした事の他所方法は古今東西変わらなくもスタンダードな方法。


「敵対行動は取らずに大人しくしておれば問題ない。場合によっては向こうから物々交換を要求してくる事もある」


 これに尽きる。

 知能が高いという事はこちら(人類)側が群れていて脅威はどれ位なのか位は理解できているはずだ。おいそれと向こうから手を出す事は無いだろう。その事を考えれば大人しくしている方が良いだろう。

 納得できたサクラに対してシンは「知能が高い」と「現地人」の2つのキーワードで連想するかのように気にある事を口にした。


「物々交換が出来るのか?」


 少なくともこれから会う「ナマハゲ」は知能が高く現地人に近い生物だ。という事は人との交流の際でもこうした行動もとるかもしれないと考えたのだ。

 するとカナラは


「する」


 とすんなりと答えた。

 同時に想像以上に「ナマハゲ」は知能が高い事に思わず目を見開くシン。


(マジかよ・・・この世界の現地人ってそんなにレベルが高いのかよ・・・)


 自分達よりも体が大きくて身体能力も高い上に知能も人間以上に高く、道具類を持ち、集団で行動する人間以上な生物「逸脱の民」。ここまでレベルが高ければ流石に驚きを隠せずにいる。

 シンはこれから会うであろう「逸脱の民」事「ナマハゲ」に対してカルチャーショックを受けつつ、ナマハゲがいるであろう場所まで向かって行った。






「想像以上だったね」


「何が?」


「「逸脱の民」の事」


「ああ・・・」


 所変わって城壁外のある森の中にて。

 ナーモ達はギルドの依頼書から薬草となる植物採取を行っていた。

 それぞれが手分けしてその植物がありそうな所を探している最中、エリーが何となく「逸脱の民」の事についてを口した。

 それに反応するニックは採取しつつもエリーの言葉にちゃんと受け答えする。


「でもこちらから何もしなければどうもしない良いんじゃないの?」


 シーナが話に交わって来る。確かに逸脱の民に関しては変に関わらなければ問題は無い。そうすれば向こうからも手を出してこない。

 それは理解できていた。


「確かに何もしなければいいだろうけど・・・」


 だがエリーはどことなく気がかりなことがある様な言い方をする。その言い方にシーナは


「何その煮え切らない言い方?」


 と少し突っかかり気味にそう尋ねた。

 そのエリーの言葉をフォローするかのようにニックが


「仕方がないよ」


 とボソッと言った。


「何で?」


 首を傾げるシーナにニックが説明を続けた。


「だって私達今日初めて「逸脱の民」の事を知ったんだから」


「それが何?」


 そんな事分かっているわよ。

 そう言わんばかりにそう言うシーナにニックは少し呆れ気味にシーナの方を向いた。


「よく考えてみなよ、シーナ。俺達は今日初めて知ったんだろ?という事はその「逸脱の民」の種類なんか全く知らないだろ?敵と間違えて攻撃したら・・・」


「あ、そっか・・・」


 シーナはニックが何を言わんとしていたのかをやっと理解出来て少し反省した。

 ナーモ達は今回初めて「逸脱の民」の事について知ったのだ。

 種類や特性など知らないからどれがどういった生物が逸脱の民なのかが見分けの仕方が分からない。

 それ故に自分達の知らない生物を目撃したら即座に退避する必要がある。


「そうならないように俺達は少しでも危険を感じたらすぐに退散するべきだろうな」


 理解出来たシーナを宥める様にそう言うナーモは苦笑していた。


「そうだとすれば結構危険だよね」


 やっと脅威を理解できたシーナだが、ナーモは苦笑を崩さず溜息交じりに


「ああ。でもお金が足りないから流石にそうも言ってられないよな・・・」


 と答える。その言葉に他のメンバー達も同意の言葉を口にする。


「野宿は流石に・・・ね?」


「はぁ~・・・仕方ないよな・・・」


 ナーモ達が溜息をついていると


「「ねぇ」」


 ククとココがそう声掛けした。ナーモ達はそちらの方を見た。


「しゃべらない!」


「おわらない!」


「「「ゴメン・・・」」」


 ククとココの言う通りだ。

 いつの間にか自分達の手が止まっており、植物採取が捗っていなかった。このままでは植物採取が大量に手に入る事が出来ず、少量のままで変える事になり兼ねない。

 当然少量の採取は少額の金額になる。

 ククとココの正論にナーモ達は深く反省の言葉を口にした。




 同時刻。

 森の上空にて白い鳥の様な生き物がクルクルと周って飛んでいた。


 キュイー!


 鷹の様な鳴き声を上げながらそのまま地上の方へと降り立っていく。


 バサバサッ


 降り立った場所は地面や木の枝ではなく


「む?」


 人の側だった。

 その者がいた所は森の中で仄暗い陰の中だった。

 辛うじて人の腕だと分かる位にまで暗い場所にいたその者は


「向こうで子供が?」


 と白い鳥から聞き届けたかのようにそう口にしたのだ。


「それは危険だ」


 危惧するかのような発言と共に仄暗い森の中から四つん這いの生き物、シルエットからして大きな犬か狼の様だった。同時に木々の枝に掴まっていたのはシルエットからしてそれはゆったりとした服を着た猿だった。

 その2頭はその者から少し離れて控える様にして待っていた。


「向かうよ、シロウ、ゴロウ」


 そう言った時、その者の足を動かし始めた。すると控える様にして待っていたその2頭はスッと動き始めた。まるでこの者の忠誠を誓っているかの様に。

 そしてその者は仄暗い森の奥へと吸い込まれていく様に消えていった。


 方角はエリー達がいる所―――

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