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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
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282.逸脱の民

 朝日が昇り切って人々がザワザワと賑わいが出て来た時分。門の外ではこの城壁都市に国外からやって来た者達がゾロッと大行列になっていた。

 そんな大行列になっている門の外とは対照的に、無事に城壁都市に入る事が出来たナーモ達は城壁都市の様子を見渡す様に眺めていた。


「お~」


「結構賑わっているな・・・」


 城壁都市と言う位だから中は想像以上に賑わっていた。市場では人の行き交いが激しかった。

 家の様な施設で構えた店もあれば、屋台という形で出している店もそこかしこあった。まるで祭りでもあるのかと錯覚する位だ。

 そんな活気づいた街の空気に半ば飲まれかけていたシーナ達に


「それよりもギルドに向かうぞ」


 と強めの声を掛けるナーモ。

 その言葉にシーナはハッと我に返って


「あ、そうだね」


 と言ってギルドがある施設へと向かって行った。





 探して2時間位たった時、漸く見つけたギルド支部の中に入ったナーモ達は少し減った財布の中を満たす為に依頼書を手に取り、受付に向かい、手渡した。

 因みに依頼書は製薬目的と研究目的の為に城壁外の薬草採集だった。


「はい、確かに受諾しました」


 対応したのは受付嬢・・・ではなく中年の女性だった。その道のベテランで長年この仕事を捌いて来たと言わんばかりの風格と貫禄のある女性だった。

 人当たりの良い言葉遣いにナーモは


「ありがとうございます」


 とコクリと一礼した。

 そんなナーモ達に受付の女性はある事を思い出した。


「ああ、そういえば君達は冒険者になって間もなかったよね?」


 突拍子の無いいきなりの質問だがすぐに答えられる質問だったから


「はい、そうですけど・・・」


 と頷きながらそう答えた。

 その答えを聞いた中年の女性は「ああ~」と言ってから


「だったら、「逸脱の民」には気を付けて」


 と聞き慣れない単語を口にしてナーモ達の身を案じた。当然聞き慣れない単語に


「はい?」


「何ですか、その・・・」







「「逸脱の民」ってのは?」


 こういう反応を示した。

 所変わってオオキミ武国。その場所はある山の麓にある山村外れにいた。シン達は、正確にはシンとサクラ、アルバ、ステラ、そしてカナラがいた。その上、カナラが率いる赤い甲冑を着込んだオオキミ武国の兵士達20人編成で何かしらの荷を積んだ荷馬車があった。

 こうした編成にシン達は詳しい事は何も聞かされずにここまで来たのだ。

 そしてカナラがここに来た説明を山の森の中に入った瞬間にカナラが気になる単語を口にしてシンが気になって口にしたのだ。

 そして気になった単語をカナラは説明に入った。


「「逸脱の民」と言うのは人間並みかそれ以上ある知力のある巨大生物の事を指している」


 詳しく聞けば通常の人間サイズ以上で、知能が高く、それらがいるだけで国単位の脅威となる存在とされている生物の事を指している。知能が高い為、人類にとっては大きな利潤を得る事が出来る場合もある。また人類から見る「生物」としての概念とも違い、だからと言って「人類」としての概念とも違う為、「逸脱の民」なのだ。


「ん?民という事は群れ単位で動くのか?」


 民と言う単語に気になったシンはそう尋ねる。確かに「民」と言っている以上、その種の生物は単独ではなく複数で生活をしている事になる。


「うむ、様々な形だが群れで行動して生活している」


 頷きつつそう答えるカナラ。

 そして事実だった事に


「そうなのか・・・」


 と唖然とした心境になりつつある事を声という形で出た。

 シンはギュウキレベルにデカい生き物が人間以上に知力を持っており、その上群れで生きている事に驚いていた。


(進化の過程で別の方向に進化した人類と考えた方が良いな・・・)


 最早人類と言ってもおかしくない位の存在にそう判断するシン。

 そんなシンに補足説明が付くかの様にカナラが続ける。


「彼らは拙者達の言葉を喋る事が出来ないが、こちらの言葉や話している内容について理解できている」


 カナラの言葉を聞いたシンは思わず目を見開いた。


「俺達の言葉が?」


「その上、罠やこちらの仕草といった事柄についても的確に察知する」


 想像以上に知能が高い。

 そう考えたシンの口から自然と出た言葉は


「つまり敵に回してはならないという事か?」


 これに尽きた。

 奴らは危険である。

 これ以外に他ない。

 だから自然と出た。


「そう言う事だ」


 自然に出た言葉にカナラは世間話に同意するかのように頷いた。


「(ますますヤバいな、この世界の生き物は・・・)それでその「逸脱の民」と、今回向かう所についてとどういう関係があるんだ?」


 想像以上に危ない生き物が多い事に気に留めつつ、今回の件について尋ねる。


「これから向かう所には逸脱の民であるモノ達がいる場所まで向かうのだ」


「何故?」


 目を細めてそう尋ねるシン。


「うむ。今回はそれを見てお主の目で確かめよ」


 シンは少し前にギュウキの事についての会話を思い出した。

 カミコは「少なくともそうではないかとされているのが何種類いる」と言っていた。

 ギュウキ以外にそうした知性ある生物がいるとするなら、かなり脅威になりうる存在するという事になる。更に言えばギュウキの様に図体が大きいとすれば尚更だ。

 こうした存在が他にも存在しており、未確認であれば調査する必要がある。

 つまり今回の件でギュウキの件で対処で出来たシンに「逸脱の民」の事をシン自身の目で確かめてこれから案内される先にいる生物を「逸脱の民」であるかそうでないかについてを判断してもらうという事だろう。


「まず確かめるにしても何を見させるのかについてを教えて欲しいんだが?」


 カナラは「むぅ・・・」と唸る声を漏らした。


「此度お主達に見させるモノは「ナマハゲ」と言うモノだ」


「ナマハゲ・・・」


「なまはげ」は怠惰や不和等の悪事を諌め、災いを祓いにやってくる来訪神で、大きな出刃包丁(あるいは鉈)を持ち、鬼の面、ケラやミノのような用具、ハバキをまとって、なまはげに扮した村人が家々を訪れ「泣ぐ子は居ねがー」「悪い子は居ねがー」と奇声を発しながら練り歩き、家に入って怠け者や子供、初嫁を探して暴れる。家人は正装をして丁重にこれを出迎え、主人が今年1年の家族のしでかした日常の悪事を釈明する等した後に酒などを振舞って、送り帰すとされている。

 妖怪等と同様に民間伝承である為、正確な発祥はわかっていない。秋田には、「漢の武帝が男鹿を訪れ、5匹の鬼を毎日のように使役していたが、正月15日だけは鬼達が解き放たれて里を荒らし回った」という伝説があり、これをなまはげの起源とする説がある。

 因みになまはげには角があるから、鬼であると誤解される事があるが、実は鬼ではない。なまはげは本来、鬼とは無縁の来訪神であったが近代化の過程で鬼と混同され、誤解が解けないまま鬼の一種に組み込まれ、変容してしまったという説が有力だ。

 と、まぁ兎に角「ナマハゲ」と言う単語だけでも有名な神様だ。

 今までの名前から考えるに恐らく「ナマハゲ」と言うのは「なまはげ」に似ているのだろう。


「これがそのナマハゲの姿だ」


 カナラはそう言って紙を手渡された。

 その紙にはナマハゲの全身像が描かれていた。


「・・・・・」


 サクラやアルバ、ステラは「これがナマハゲか・・・」とか「人に似ていますね」と言った事を口にしているのに対してシンは少し唖然とした心境に浸っていた。

 何故なら大きな理由としては「やはり」似ていたからだ。

全身図からでは、鬼の様な赤い顔に角が生えており、白く長い体毛が蓑の様に着込む様にモッサリとしており、足には指がなく、毛むくじゃら。片手には何か黒いナイフのような物を持っていた。

 見る限りでは相当似ている。


(しかも武器とか道具とか持ってんのかよ・・・)


 明らかに武器らしきものを持っている。

 秋田の「なまはげ」は包丁か鉈を片手に、もう片方は桶を持っていた。この事を考えれば相当似ている部分が多くある。


(オオキミ武国では日本の妖怪とか神とか言った存在の名前をここで宛がわれているんだよな・・・)


 確かにここまでの生き物の名前が間違いなく神や妖怪、怪物と言った架空の生物の名前が宛がわれている。この事を考えればこうした事に詳しく、この世界の人間では無い人物と考えるべきだろう。


(同一人物か・・・?)


 その上大陸にいる生物も宛がわれていた。

 という事はこの世界の生物全てにこうした名前が宛がわれている可能性も十分にある。もしそうだとすれば恐らくこの国の生物に名前を宛がわれた者と同一人物と考えるのがしっくりくる。

 とそんな事を考えつつシン達は先へ向かって行った。

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