26.今後の課題
最近初めて「プロット」と言う言葉を知った折田です。
今回も勢いで書きました。ですのでお見苦しい部分があるかもしれませんがよろしくお願いします。
「俺には格闘術が無いと思ってたのか?」
仁王立ちでギアの方へ見てそう言い放つシン。地面に座り込むような姿勢でシンを見ていたギア。
「・・・・・」
正直なめてはいなかった。だが、ここまでできるとはギアは思わなかった。思わなかった事を素直に伝える。
「いや、ただここまでやれるとは思わなかった」
最初にギアと戦った時のシンは素人拳法で戦っていたため、柔道技が出るとは思わなかったらしい。
「あれは、組合の時は良いものだな」
「ああ、俺の世界では「柔道」っていう、武術?のうちの一つの技だ」
それを聞いたギアは今まで見ていた目とは違う目でシンを見る。
「・・・「ジュードウ」・・・」
ギアは気が付いていないのか神妙な顔をしている事にシンは気が付き声を掛ける。
「どうかしたのか?」
「・・・・・いや、何でも無い」
何でも無くはない。明らかにギアの顔が難しい顔をしていたからだ。
「・・・・・」
シンがジーッとギアの方を見ていた事にギアは気づく。
「それから、さっきの其方の技は覚えて間もないように見えるが?」
「!」
話を逸らすように話しかける。だが、在り来たりな話の内容ではなくさっき見た事実を述べた。結果シンは食いついた。しかもギアが言った事は当たっていたためシンはギョッと驚く。ギアの言う通り確かに柔道を習ったのは体育の授業の時だけで基礎中の基礎と簡単な寝技を数えるくらいしか教わっていない。つまり事実上の付け焼刃の技だ。
ギアはシンの様子を知ってか知らずかさっきの話を続ける。
「もしそうなら完全に覚えた方が良いだろう。生半可な武術は命取りになるぞ」
シンに注意するように言う。
「生兵法は大怪我の基」とはよく言ったものだ。これは少しばかりの知識や技術は、それに頼ったり自負したりして、かえって大失敗をすると言う意味だ。戦場においての失敗は死だ。この先どんな事が起きるのかは分からない。今でこそ「BBP」によって圧倒的な強さを持っているが、驕ってはならない。相手がどんな手段で来るかも、何が起きるかも分からない。臨機応変に対応するには学習する必要がある。「ショップ」で本を手に入れて知識を本格的に自分の物にしなければならない。自分の身体は「BBP」で変える事が出来るため、ある程度のオリジナルの技を作ることができる。ジャンルは武術のみならず、自分にプラスとなる要素があるならどんな本でも良い。とにかく今は自分を磨く。それが第一目標だった。
だが、シンには気がかりな事があった。
(皆の面倒をどうするか・・・)
「生き方を教える」。それが皆との取引だった。今のシンは言葉はスムーズに話せる様にはなった。だが皆の生きていく上での戦い方がまだマスターできていない。
知っている近接格闘術は「ブレンドウォーズ」のプレイヤーキャラクターで何となく元から体が覚えている。だがそれだけを教えるわけにはいかない。
何故なら近接格闘術は相手が銃器や短いナイフを想定しているものばかりだからだ。また、長剣を持って戦う術も近接格闘にはない。今回は生半可な柔道を覚えていたから勝てたものの、ギアの様な相手に対する対抗策もシンは知らない。つまり、この世界に合っている戦う術はシンは知らない。シン自身も学ばなければならない。
つまり、皆に「生き方」を教えつつ自分もあらゆる事を学ばなければならない。
「・・・しんどくなりそうだな」
取敢えずは、皆に教えつつ、時間の合間に本を読むと言った方法で自分自身を磨く事にしたのだが、そんな余裕があるのかと不安がよぎる。
ギアはシンが言っていた「柔道」の事を思い出していた。
(“ジュードウ”か・・・。シンは転生者よりの“何か”だ。と言う事はあいつなら何か分かるやもしれんな・・・)
ギアは「柔道」と言う単語にある事を思い出していた。ギアが知っている者の中で「柔道」と言う単語を使っていた人物がいたのだ。それはつまり、転生者や来訪者の事を知っている。或いはその者自身がそのどちらかだ。
(ふむ、久しぶりにサクラに会ってみるか・・・)
シンの実力を見たギア。最初にあった頃のシンはかなりの実力を持ち、自分を驚かせられた。そして今はそれ以上のものを見せられより驚きを隠せなかった。おまけに実力を知るために勝負をしたが油断していたとはいえ負けてしまったのだ。
そこでギアが知っている者の中でシンと同じように「柔道」と言う単語を使っていた人物がいる。
その者の名前は「サクラ・キシュリーゼ・エイゼンボーン」という人物だ。「サクラ・キシュリーゼ・エイゼンボーン」と言う人物は転生者や来訪者の事を研究しており、シンの世界にある武術の事も体得もしている。そのため、「柔道」の事も知っている。ギアとは知り合いであるためギア自身も「柔道」と言う単語に聞き覚えがあったのだ。またギア自身もシンの世界「現実世界」にある「拳法」の使い手でもあり、ギアに「拳法」を教えた張本人でもあったのだ。
ギアはシンの方を向いた。
(なるべくなら敵対は避けたいものだ)
敵対か友好か。どちらを取るかと問われれば友好を選んだギア。
現時点では取引した中である。だが、今は友好でも依頼が達成されれば取引終了だ。それはお互い中立のような他人同士の関係になる。そうなった時、今後の事を考えれば敵になる事も味方になる事もある。できれば味方にしたい。何故なら自分が負かされた相手である上に下手をすれば無敵に近い存在になりえるかもしれないのだ。ギアはシンの事をそう思っている。また何よりも
(ピザが手に入らなくなる事だけは断固阻止・・・!)
自分が気に入ったピザが手に入らなくなるのは何が何でも避けたい。だが、力ある者がシンの存在を知られるのは時間の問題。ならば、説得して最低でも敵対はしないように便宜を諮ろうと考えていた。
「(ならば)シン、少し良いか?」
「?」
「シン、我は用事ができた。明日にて旅立つ。4日後の夕暮れまでには戻るのだが良いか?」
シンは少し眉を顰める。
「・・・それは行かなくてはならない事か?」
「すまぬな・・・」
本来なら、自己鍛錬する上に皆の訓練と食事の面倒を見なければならない。その為猫の手も借りたい位に忙しくなる。この場合は「ドラゴンの手も借りたい」になるが・・・。ギアにも手伝ってもらいたかった。しかし、シンは
「・・・わかったよ」
無理に止める気は無かった。むしろ、シンにとっては好都合な事だった。シンは2日後にあるものを空に上げるつもりだった。それは、ギアやエリー達に知られては困るものだった。残る問題は
「皆をどうするかだな」
「それならば心配ないぞ?我が戻り次第厳しく行うつもりだ。それまでの間は体力作りに専念してもらえれば十分だ」
「そうか・・・」
午前はシンが走った後を皆が付いて走って行くというあの訓練を繰り返せば問題ない。午後は、休憩を兼ねてアウトドアで役に立つ技術を教える。後は、己自身を磨くために「ショップ」で役立ちそうな書籍を手に入れ学習する。取敢えず、そういうメニューで4日間過ごす予定だ。
シンは予定が決まりギアに
「ギア、皆にお前の口から4日間いない事を伝えてやってくれ」
「承知した」
シンはギアの何の用事かは聞かなかった。向こうにも都合があるだろうとドライに構えていた。
ギアは「サクラ」と言う人物と会ってシンの事についてを相談する。
それぞれの判断が良くも悪くも大きな結果を招くことになるのは皆まだ知らない。