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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
一の代価から十の結果
277/396

275.別種

「ここもか・・・」


 そう言葉を零す様に呟いていたのはディエーグだった。この言葉の理由はディエーグの視線の先にあった。

 視線の先には黒くなった巨木の幹が表面だった。自然と黒くなっている訳ではなく、炭化して焦げていたのだ。

 現在ディエーグがいる場所は大陸のエーデル公国、国境から少し離れた大森林のど真ん中にいた。所謂森の奥と表現してもさして違いがない位の鬱蒼とした森の中にディエーグは探索をしていた。

 探索目的は素材調査兼、現世界に存在する生物の脅威についてだ。現状は新素材になりうそうな焦げた樹木を発見してその表面を調査していたのだ。

 そんなディエーグはそれぞれの木々の様子を見てある事に気が付いた。

 それが木々の表面の焦げだ。


(この焦げ・・・落雷によるものではないな・・・)


 木に落ちた落雷は縦に裂く様にして割れて、内部が酷く焦げている事の方が多い。

 だがディエーグが見ているこの木は表面から強く焦げており、内部にも達している。

 しかし驚く事はここではない。

 この木そこまでひどく焦げているというのに


(ここまで焦げているというのに堂々と芽吹いている)


 樹木としての成長が決して止まっていないのだ。

 寧ろ異様なまでに成長をしている様にも見える。


(表面だけ焦げているのは分かるが、この木であれば深々と焦げている様に見えるな・・・)


 ヤドリギの様な寄生植物と考えるも、それらしい植物は見当たらない。明らかにこの樹木の葉だった。

 だとすれば考えられるのは熱を加える事により成長が速くなる性質を持っている可能性だ。

 実は植物では無いがシイタケは電気ショックを与えると生存本能により成長が速くなる。植物であればトマトなら肥料をやらず、水を最小限にしか与える事をせずに生育すれば糖度が高くなる。

 こうした過酷な環境の中での独特の進化しているのであれば納得が出来る。


「ここの植物は火や熱に強い様だな・・・」


 だからディエーグは思わずそう呟いた。


(ここまで熱に強いのは、頻繁に火炎並みの熱に晒される環境にある、という事だろう・・・)


 木の内部まで焦げているという事は相当な火力があったという事になる。となればこの土地では頻繁に熱に晒さる様な環境にあるという事になる。


(という事は近くに活火山がある・・・という訳ではないか)


 すぐに考えられるのは、落雷と活火山。落雷の線はすぐにないと考えた。何故なら今見ている木よりも標高が高くて背の高い木等いくらでもあるからだ。今見ている木がある場所は比較的に標高が低い。更に言えばこの周辺一帯の木にも今見ている木と同じ様に焦げた跡があった。

 という事は落雷の可能性は低い。

 活火山の可能性もすぐに思い付くが、この辺一帯は活火山ではない。遥か昔も火山としての活動は停止している。この可能性も考えにくい。


「となれば考えられるのは・・・」


 ディエーグがそう呟いたその時だった。


 ズンッ!


 酷く重い地鳴りがすぐ近くで聞こえた。

 ディエーグ音がする方向へと徐に向いた。

 そしてその

 重い地鳴りの正体は大体は想像が付いていた。何故ならディエーグは()()とは対峙した事があるからだ。


「やはり・・・」


 そう呟くディエーグの視線の先には


 ゴルルルルルルルル…


 低くも辺りを響かせる大きな唸り声を上げる巨大なドラゴンだった。体高6m程、全長ならば25m程のゲームで出てくる様なスタンダードなドラゴンだが、以前見たドラゴンとは違う点が多くあった。

 まず、対峙しているドラゴンは羽根が無く4足歩行。しかも体つきが引き締まっており、トリケラトプスの様な襟巻部分には角が多くあった。その姿は初代の竜のクエストのゲームを凶暴性を増している様な姿だった。

 だが対処方法はもう知っている。

 それ故に「ああ、またか」と言わんばかりに


ドラゴン(これ)か」


 と思わず呟いた。

 ドラゴンは唸り声から僅かに口を開いて


 ボッボッボッ…


 小さな炎を吹かしていた。


「!」


 それを見たディエーグはドラゴンが臨戦態勢に入っていると判断したその時。


 シュゴオオオオオオオォォォォォ…!


 始めにガスの引火の様な燃え方から始まり、その後に細くなった液状の、それこそガソリンの様な物が更に引火してレーザービームの様に火炎が飛んで来た。


 バッ!


 臨戦態勢から防御の構えに入ったディエーグは一気にドラゴンの焔に包まれた。


 ゴォォォォォォ…


 火を噴いた場所はこれから焦土に成り変わろうとしていた。辺りが真っ赤になり、通常の生き物であれば苦しみながら死に絶えているだろう。


 ・・・・・


 だが油断はしない。

 そう言わんばかりに真っ赤になった光景をじっと眺めるドラゴン。

 そしてその判断は正しかった。


 !


 ズン・ズン…


 真っ赤になっている奥の方からディエーグが歩いてきた。

 焼け野原になろうとしている領域からそのまま出てドラゴンの目の前まで来たディエーグの尾の先が


 キャパッ…


 開いた。


 ゴォォォォォ…!


 !


 火を噴く尾を見たドラゴンは思わず目を見開いた。その瞬間にディエーグの火炎が襲い掛かって来た。

 通常の生物ならここで怯んだり逃げようとする。

 だがドラゴンは違っていた。


「!?」


 ブオッ!


 自分の火炎に自信があるディエーグは3秒程火炎放射した後一旦打ち止めにしたのだ。

 だがその判断は間違っていた。

 何故なら噴いた先の火炎からドラゴンが猛スピードでディエーグ目掛けて突進してきたのだ。


 ドゴッ!


「・・・!」


 そのままディエーグの腹にドラゴンの頭突きを喰らいそのまま後ろへと押される。


 ガリガリガリ…!


 地面に足で強く踏み込んでこれ以上後ろへと下がらない様にするも、それでも勢いは止まらなかった。

 勢いが止まったのは


 ドンッ!


 巨木に打ち付けられた時だった。巨木は21m程の高さに幹回りが4mもあった。強く打ちつけられたディエーグの頭が激しく揺らす。

 その衝撃で


 メキメキ…


 バキバキ…


 巨木が折れていき


 ドドォォン…


 ヂュンヂュンヂュンヂュン…!


 そのまま倒れてしまった。倒れる時、衝撃や大きな音のせいで近くにいた鳥達は騒ぎ立てて飛んで逃げていく。

 幹回りが4mと言うのはかなりの太さだ。そうであるにも関わらず折れて倒れたのだ。


「・・・!」


 巨木の幹に強く打ち付けられたディエーグは体勢を立て直そうと同時に現状の確認する為に揺らされた頭を動かして現状を確認した。

 すると目の前にいたのはここまでされたドラゴンが


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 咆哮を上げ、前足で


 ガッ!


 ディエーグを薙ぎ払った。


「ぬっ・・・!」


 下から突き上げる様な薙ぎ払い方のせいでディエーグの体のバランスが崩れてしまい、そのまま30m程吹っ飛ばされてしまう。


 ドオオオオオォォォン!


 ヂュンヂュンヂュンヂュン…!


 ギャアギャア…!


 再び違う巨木に打ち付けられてしまい巨木に止まっていた鳥達はおろか近くにいた動物達ですらも怯えて逃げ惑っていた。


 ズッ


「・・・・・」


 打ちつけられたディエーグはユラリと体を立て直して構えようとした。


 グォッ!


「!」


 いつの間にか距離を詰められて前足で前に突き出す様にディエーグを押さえつけようとした。


 ギュンッ!


 ディエーグは身を捩ってドラゴンの押さえつけを避けた。


 チリッ…!


 ドラゴンの技が酷く速く避けたとは言え、僅かに掠る。しかもその上、前に突き出す様に攻撃をしたドラゴンはそのまま踏み込んで突進してディエーグの体のバランスを崩した。


 ドン!


「ぬぐっ!」


 思わず声を上げてしまうディエーグは倒れてしまった。その瞬間を見逃さなかったドラゴンは


 ダンッ!


(尾を押さえられた・・・!)


 ディエーグの尾を押さえつけたのだ。


 グッ…!


「!」


 火炎が出る場所の事を考えて先端部分を強く押さえていた。しかも力を徐々に入れていき


 ベキベキベキ…!


(転移装置が!)


 明らかに攻撃手段を封じようと潰しに掛かっていた。

 想像以上に力が強い。その事に驚きつつ今の状況を打破しようと抵抗する。だが先に仕掛けたのはドラゴンの方だった。


 グァッ!


「!」


 ガブッ!


 大きな口を開いてディエーグの胴を強く噛み付いた。


 ブチブチブチ!


「・・・!」


 強く噛み付いた勢いからなのか胴体の筋線維が切れる音が聞こえてきた。それ故に流石に拙いと考えて不自由でない右腕で


 ガッ!


 ・・・!


 ドラゴンの鼻先を強く殴った。実は鼻先が弱点と言う動物は意外と多い。犬やクマと言った嗅覚を頼って動く生物は勿論、魚類のサメですらも鼻が弱点だ。ディエーグはその事を知っていたからもしかすればいけると判断して殴ったのだ。

 そのせいでドラゴンは驚いて


 グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!


 ブォン!


 パッ!


 尾を押さえつけていた前足を退かし、首を強く振ってディエーグを離した。


「っ!」


 ドドォ!


 ガリガリガリ…!


 勢いがかなり強く、振った衝撃で吹っ飛ばされる形で地面に叩きつけられて地面が引き摺られる形で抉られていた。


「・・・・・」


 ギュッ、パ、ギュッ、パ、と両手を握って開いてと繰り返して自分の身体の調子を確認するディエーグはすぐに自分の異常に気が付いた。

 上手く左腕が動かせない。胴体部分ではうまく動かせない箇所が数点ある。何よりもディエーグの主力武器の尾がまともに機能していなかった。

 これは拙い。

 そう考えたその時だった。


「!」


 ビュォッ!


 ディエーグのカメラ()に映ったのは巨大な鱗の塊、ドラゴンの巨大な尾だった。


 バンッ!


 ミシミシ…


 ディエーグの身体にまともに喰らって身体に嫌な音が聞こえてきた。そのままバランスを崩し、身体がフワリと浮いてしまい


「・・・・・」


 ビュンッ


 そのまま大きく吹っ飛ばされ、崖下へと落ちていった。


 ガサッ…


 崖下の森の中に沈んでしまったディエーグ。


 コルルルルルルル…


 その様子を終始眺めていたドラゴン。

 ドラゴンはディエーグが自分の主力武器である火炎放射が効かなかった。しかも、先手を取って押さえつける形をとっていたとは言え人型の生物であれば簡単に絶命するのにそれでも戦闘を継続していた。

 だから相当警戒していたのだ。


 ・・・・・


 静かな森。

 ドラゴンの目にはそう映っていた。

 つまりは少なくともディエーグは動けなくなっている。しかもあの森は自分の縄張り外だ。わざわざ確認する必要も無い

 そう判断したドラゴンは踵を返して


 ズンズン…


 その場を後にした。

 その様子をただジッと様子を見ていたのは


「・・・・・」


 ディエーグだった。

 もしあのままドラゴンがこちらに来るような素振りがあれば直ちにその場から去る。もし追い付いてしまえば必然的に戦闘になる。

 しかし今のディエーグはまともに戦う事が出来ない。


 ググッ…


「ぬ・・・」


 自分の身体に一気に筋肉を張らしてみた。その時動きが悪くなったり、最早機能していない部分があったとしている箇所が幾つも見られた。


(噛まれた時に線維をいくつか断裂したか・・・動きか悪くなっている・・・)


 それだけでない。

 もっと言えば前足で薙いだ時でもドラゴンの爪で引っ掛けられてしまっていた。その時から動きが悪くなってしまった箇所が出てきだしていたのだ。

 実はディエーグの皮膚は衝撃等には強いのだが鋭利な刃物等による線の攻撃には弱いという素材で構成されてた。

 元々戦車の徹甲弾といった物に対しての対策は取られていた。しかし、言ってみればゲームの時のままでいるという事になる。

 その為、以前のドラゴンの時の様にいけるという経験からの誤った対策、動きからして速くて強力で、何よりも知性ある行動だった。

 この事から思う様な対策が取れず、ほぼ一方的に攻撃を受けてしまったのだ。


「・・・・・」


 特に大きな痛手だったのはディエーグの尾に搭載された転送装置が破壊されてしまった事だ。

 ディエーグの十八番とも言えるべき主力が使えなかった上に無力化されてしまった。この事に想像以上にドラゴンへの脅威を再認識する必要があると思い知った。


(これは想像以上・・・)


 ディエーグは全身の筋肉の力を抜いた。


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