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230.予感

お待たせしました!

続きをどうぞ!

(こいつ今、演算って言ったか・・・!?)


 冷静に答えたアンリにシンは目元を鋭く細めて「演算」と言う単語に引っ掛かりを覚えていた。

 この世界の大半の文明レベルが中世ヨーロッパに近いものが多い。だからアンリが演算と言う単語を口にする事自体に違和感を覚えたのだ。

 違和感を覚えたシンは試しにある単語を口にした。


「・・・まるで計算機器だな」


 シンは「演算」(イコール)「コンピューター」を連想した。だがここで「コンピューター」を口にするのはこの世界の人間からすれば聞き覚えのない単語でそれがシンが居た世界ではどう使われているのかすぐに分かる事だ。ましてや自分と同じ世界から来た人間と大きく関わりのある者がいるから尚更口にはできない。

 そう言った時アンリの目がシンの目の奥を射抜く様にジッと見ていた。まるで見透かされているかの様に。

 いや、実際見透かされていた。


「なるほど、シン君はそう言った()()()()があり、戦争が日常茶飯事の世界から来たんだね?」


「!」


 アンリがこの言葉を口にした瞬間シンは試しに言った単語を口にした事を酷く後悔した。今までの事を思い返せばシンとサクラ達と(強制的に)行動を共にしていると相手の事が少しずつ分かる。当然シンの事もサクラ達に知られていく。

 サトリの勘によってシンは戦が日常の世界からやってきたと推測されている。勘で判断されているそれにアンリは信用している。

 そしてシンが口にした「計算機器」。アンリが口にしたのは「演算」だけであってそれが「計算機器」と直接繋がるのは少し違和感がある。演算とは、加算や減算、比較といった計算処理の事で意外と古くからある言葉だ。だから「演算」(イコール)「手動操作で行う計算器具」ではなく「演算」(イコール)「自動で計算が出来る何か」と言うのは妙だ。

 シンは「拙い」と思った。もしこの世界に「コンピューター」の概念について知られてしまえばこの世界の人類は飛躍的に考えが進歩する。そうなればそれのせいで国が亡ぶ等の重大な影響があるのは目に見えている。

 また「コンピューター」を知っている、或いは持っている事を知られればシンとジンセキが狙われる可能性も十分にある。

 これ以上知られるわけにはいかない。そう考えた時アンリが再び口を動かした。


「今回の突発的な行動もそれと関係があるのかな?」


 話題を逸らそうと考えたシンは答え始めた。


「違う」


 興味深い答えにサクラ達はシンに注目を集中した。

 注目が集まったシンは構わず続けた。


「嫌な予感がして思わず目が覚めてそのまま出て行った。それだけの事だ」


 その言葉を聞いたサクラは眉を顰めた。


「嫌な予感?」


「ああ」


 正直に話した。ただ言葉が足りなかった。

 今回も同じ事をした。


「どう嫌な予感か分かるか?」


 アンリがそう尋ねる。

 シンが嫌な予感に関して信じている様だった。


「ああ。ただ時間が無い。移動しながらでもいいか?」


 シンの真剣な態度にサクラは


「・・・良いだろう」


 と頷いた。






 シンは移動しながら嘘のこの国にやってきた事と事実のツチコロビの件と村でもてなされた事について話して、起き抜けにただ何となく村の事が気になり嫌な予感がした事を伝えた。

 それを聞いたサクラは急いでアルバに航行ギルドで馬車の手配、ステラとアンリには警務隊とギルドへ報告する様に伝えてサクラ達は先にゴンゾウ達がいる村へと向かう事になった。当然シンの勘によるものだという事は伏せて、ロクロクビの件で妙な遺体について切り出す形で報告する事にした。ステラとアンリのペアは後程合流する事になった。


「慌しくなってしまったな~」


 シンとサクラ、御者のアルバのペアの箱馬車と決まってサトリもその馬車に乗る事になった時、後ろの方から


「あの失礼、一緒にその村まで向かう事は出来ないだろうか?」


「私達はその村での依頼で動いているのですが、宜しいでしょうか?」


 ほぼ同時に行く理由まで言ったその2人の女性の声を聞いた時、サトリは眉間に皺を一瞬寄せた。2人の女性は笠を深く被り、黒装束と言った色気がない無骨な格好をしていた。唯一と言うべきか個性があるとすれば腰に赤い長い布を巻いている者と腰に小刀2振りを差していた。

 サトリはクルリと振り向いて


「構わんよ。だが連れに一言断っておくから少し待ってくれ」


 とそう答えてすぐにサクラ達の方へ向かって行き


「急ですまん!わっしらは後で向かう事になった!先に行ってくれ!」


 と言ってすぐに女性2人の元まで戻りに向かったサトリ。

 その言葉を聞いたアルバは本当に急な事で慌てて立ち上がろうとした。


「え、あ、あのサトリ様!?」


 と呼び止めようとした。だがそれを静かに制止したのは


「アルバ、いい。ワタシ達は先に向かおう」


 サクラだった。


「しかし・・・」


 アルバは今の状況であれば共に行くべきではないかと進言しようとするもサクラは首を振った。


「サトリなりの考えがあっての事だ。変に待つより動くべきだ。それに・・・」


 静かに目を開けて


「今回の事で一番動きたいのはあいつだしな」


 その言葉を聞いたシンとアルバは思わず黙ってしまう。


「「・・・・・」」


 サトリはこの国の出身だ。この国にしかない風土、服、道具、食べ物、人・・・と自分にとって慣れ親しんだ居場所だ。


 それ故にこの国を守る。


 唯一無二の居場所。


 自分だけの場所を守る。


 シンも仮の世界の上、ブレンドウォーズを引き起こす様な事になったとは言え、自分だけの居場所がある国、故郷を守りたい。だからサトリの気持ちは分かる。

 だからシンはそのまま口を開かず、アルバもサクラとサトリに一礼して先に村に向かうべく馬車を動かした。





 走る箱馬車。御者はアルバ。だから必然的に箱馬車の中にはシンとサクラだけだった。だからサクラは聞きたい事をシンに訊ねていた。


「改めて聞くが、シンが言う「嫌な予感」はかなり当たるのか?」


 真剣な物言いで訊ねるサクラに頷くシン。


「・・・当たって欲しくない程に」


 ジッとサクラの瞳を真剣な眼差しで見続けるシン。


「・・・分かった。お前の言う村まで向かう」


 サクラはそう答えてそっと静かに目を閉じた。


「・・・信じるのか?俺の勘みたいなものを?」


 意外な答えにシンはキョトンした心境でそう尋ねる。いくら人を見る目が養っているからと言って「勘」と言う不確かな判断材料で動くのは余りにも愚策過ぎる。なのにサクラはシンの勘を信じて動くと言った。その事にシンは頭の中では疑問符だらけだった。

 対してサクラの返答は


「ああ」


 だけだった。そんなサクラに眉間に皺を寄せて、半ばドスの効いた声で


「何故だ?俺が戦争に行って生き残った者だからか?」


 そう尋ねるシン。

 何か企みがあるのか、自分の事を知ろうとしているのではないか、とそう勘ぐってしまう。

 だがサクラは冷静で穏やかな口調で答えた。


「それもあるし、我が国の事での一件で信用している。まぁそれ以上に・・・」


 呼吸を整えて一拍が空いてから


「私の勘が信用していいと言っているんだ」


 と断言する様に答えた。

 その顔は輝く様に自信に満ち溢れ、疑う事を知らない澄んだ瞳だった。そんなサクラにシンは軽く息を整えてフッと笑うかのように静かに目を閉じて


「・・・そうか」


 と呟く様に答えた。

 そんなシンに少しペースを崩されそうになり、揶揄い気味に軽口を叩いた。


「それにこのままこの件に関われば貴様の事が分かるかもしれないしな」


 その言葉を聞いたシンは呆れた溜息を付いた。


「それが本音か」


 どことなく意地悪で勝ち誇ったかの様な笑みを浮かべて


「そうだな」


 と答えた。

 だがシンは静かに頷き


「・・・まぁ、信用してくれて助かる」


 と言った。

 対してサクラは同じく揶揄い気味に軽口を叩こうと考えた。


「そうだろう。感謝をするが・・・」


 サクラが「いい」と言い切る前にシンが


「ありがとう」


 と感謝の言葉を述べた。サクラはシンは借りを作ってこちらの要求を飲ませる事に嫌がるだろうと考え、感謝の言葉を言わないと踏んでいた。

 だがシンがすんなりと感謝の言葉を述べた事に少し唖然としていた。


「お、おお・・・」


 サクラはただそれだけしか言えず、心境ではシンに何があったのかと考え込んでしまっていた。当の本人は現状の実情を知っているから形振り構っていられず、一先ずサクラに借りを作る形で動く事にしただけの事だった。だから借りを作ってしまった事にシンはどうサクラに借りを返そうかについて後にしようと少し後悔していた。

思えば2016/年から始まって4年も経ちました。










4年!?


もう4年も経っていたのか!?


と言うのが率直な感想です。

自分は仕事とのんびり休日に、小説執筆という片手間の形で生活しています。いつか完成させるぞ!、息巻いているものの、数十年レベルで完成するのかな?とぼんやりと思いながら執筆をしていました。その内飽きてしまうだろうな~とかも考えていました。

ですが・・・


まさかの



4年!




現在自分は体調不良で休職になっております。執筆活動の方でも当然影響がありました。ですので更に投稿頻度が減ると思います。

しかし決して折れる事も飽きる事も諦める事も無く、ここまで執筆していました。夢中になるというのは凄いですね。

時間を忘れるとともにこれだけの話を執筆していた事に改めて驚いています。

そして、ここまで読んで下さってくれる方々がいる事に大変感謝しております。

ありがとうございます。

最後に1/1以降この小説に関して活動報告があります。

それは来年のお楽しみという事で。


1時間切っていると思いますが、来年度も「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」をよろしくお願いいたします。

皆さん良いお年を!


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