225.考えられない光景
今頃になって投稿時間がどういう訳か、0時になっていた・・・。
おい、ちょっと待て、どういう事だこれ!
と叫びつつ8時に戻しました。
8時で待っていた方々にはどうも申し訳ございませんでした。次こういう事が無い様に「しっかり」と時間を確認します。
案内された場所はオオキミ支部ギルドの数ある内の一つの施設の内部だった。
その場所は体育館並みにかなり広く、コロッセオの様な円形闘技場の様な作りで天井は吹き抜け、地面は砂地だった。多くの人と多くの動物がいた。しかも危険な生き物、怪物と呼ばれる存在も見られ、決して少なくなかった。
だが、その怪物事、危険生物は決してその場にいる人々に牙を向ける事は無かった。寧ろ友好的で人に慣れていた。
ある者はある種の動物の詳細な説明・・・恐らく自慢も含めてしているし、ある若い女性は見た目が猫に似た動物を撫でていた。しかもその動物も多種多様で犬や猿、ネコ科の肉食獣、イノシシ、クマは勿論、大きな虫に近い生物、大蛇、大トカゲ、アカナメの様な不定形の生物もいた。だが、決してお互い敵対行動はとらず大人しくしていた。普通馬を見た馬は怯えて吠えたり、馬はクマを見て怯えたり、蛇は鼬と対峙して食うか食われるかの命の張り合いをする。だが、そんな様子はなかった。寧ろ友好的に接している事が多く、敵対しても命の奪い合い迄の発展はなかった。
現代世界ではを目の当たりしたシンの率直な感想が
「動物ふれあいパーク・・・って訳じゃないよな?」
と疑いの言葉だった。というのもパッと見ただけではドッグランの様な和気藹々とした様子だったからだ。いやそれ以上にゲームやアニメと言った創作物の光景を目の当たりにしているような気分でとてもでは無いが現実的な気分にはならなかった。
シンの言葉に気が付いたサトリは
「ん?動物ふれあいぱ~く?」
聞き慣れない単語にオウム返しして訊ねた。それにシンは首を横に振った。
「あ、いや何でもない。それよりここは?」
シンの問いに首を傾げるサトリは聞き返す。
「ここはギルドだよ?来た事なかったか?」
サトリはギルドの存在に関して知らなかったのかと言わんばかりの口調でそう尋ねる。だが来た事があるシンは首を振りつつこの場所に関して知らない事に関してを口にした。
「いや、あるがここは来た事は無いな」
その答えを聞いたサトリは「ああ、なるほど」と小さく呟き、この部屋の事について軽い説明する。
「ここはギルド内部の数ある部門ある内の一つ、使役者部門だ」
更に詳しく聞けば使役者とは言わば「獣使い」、テイマーの事でかなり重宝とされている国は多くある。例えば竜を馬の様に乗って戦う戦士のドラゴンライダーであれば、ドラゴンは大概の動物は天敵である事が多いから吠えるどころか、姿を見せただけで馬は覚えて言う事は聞かなくなり、その隙に攻める事が出来るし、武器を使うコボルト等の社会種は単純な戦力として加える事が出来る。こうした事から使役者は重宝されている。
だが動物を扱う職業となればそれ相応、いや想像以上に信頼がなければできないものだ。
こうした使役者の様な役職は、ゲームや漫画等の創作物でもかなり多く見られているが、実は現代世界でも多く見られる。馬の御者や狩人の猟犬、家畜、食糧庫の猫等は古くからある。江戸時代ではハエトリグモを飼って「座敷鷹」と呼んでコバエを食わせていたという記録がある。最近では戦場で仕掛けられた地雷を探すのにネズミを使って除去している。
これらの事から人間は古くから動物の力を借りて生活が成り立っている面の方が多く現代世界もこの世界も重要な存在なのだ。
詳しく聞いたシンは視線をある動物に向けた。その動物は服、と言うより和風の鎧を着たダックスフントの一回り大きいイタチに似ていた。そのイタチは栗毛で耳は横に広く片方が少し切れていた。鼻はピンクが混じった薄い茶色で髭が長い。そして何よりも顔が小さく、目が黒くクリクリとした瞳をしていた。口とも鼻とも言える部分の髭がヒクヒクと動かしていた。森の妖精、雪の妖精と呼ばれるオコジョに良く似た見た目だった。イタチに似ていたのだが良く見ればアナグマの様な特徴があった。飼われているのか、胴体には革と縅で造られた動きやすく邪魔にならない事を重視された鎧の様な物を着込んでいた。
その様子を見たシン以外の者達の心の感想は
(((可愛い)))
これに尽きる。
当然サクラ達の反応も同じようなものだった。
(可愛い)
ステラは無表情ながらも頬に小さな赤みを浮かべていた。
(とても可愛い)
アルバは愛しむ様な顔になる。
(酷く可愛い)
アンリは小さな笑みが零れ、頬を隠していた。
(くぁいい・・・)
心の言葉が崩壊し始め、顔が蕩け始めるサクラ。
そんなサクラ達を余所にシンは冷静に観察と考察をしていた。
「・・・この動物は・・・イタチ?アナグマ?」
シンの疑問の言葉にサトリはニヤニヤしながら答えた。
「名前なら前者が正解。種類としては後者が正解」
「・・・は?」
訳の分からない正解に思わず、疑問の声を漏らすシン。
「この動物はカマイタチと言うんだ」
「カマイタチ・・・」
シンでも知っている妖怪の名前だった。
旋風に乗って現われて人を切りつける。これに出遭った人は刃物で切られた様な鋭い傷を受けるが、痛みはなく、傷からは血も出ないともされる日本に伝えられる妖怪、もしくははそれが起こすとされた怪異。
「カマイタチ」という語は「構え太刀」の訛りであるとも考えられており、「いたち」という語から江戸時代中期以後、鳥山石燕の『画図百鬼夜行』に見られるように鎌のような爪をもったイタチの姿をした妖怪として絵画にも描かれるようになり、今日に定着している。
信越地方では、カマイタチは悪神の仕業であるといい、暦を踏んだりするとこの災いに会うという俗信がある。その悪神は3人連れで、最初の神が人を倒し、次の神が刃物で切り、最後の神が薬をつけていく為出血がなく、また痛まないのだと言われていた。
愛知県東部では飯綱とも呼ばれ、かつて飯綱使いが弟子に飯綱の封じ方を教えなかったため、逃げた飯綱が生き血を吸うために旋風に乗って人を襲い傷で出血がないのは、血を吸われたからだとされている。因みに意外かもしれないが俳句では「鎌鼬」は、冬の季語である。これは外気で皮膚が鋭い刃物で切ったように傷つく現象を指していたからだ。
シン自身それ程カマイタチの事は知らなかったとは言え、カマイタチの事をある程度思い出していた。シンからすれば創作物では「風によって起きる真空の刃」という認識だった。但し、真空の刃は実在せず、実際は皸だと考えられている。
シンが名前をオウム返ししていると半ば得意気に答え始めるサトリ。
「そうそう。だけどイタチと言う名前だが決してイタチじゃない。アナグマという動物の仲間らしい」
「へぇ・・・」
シンはアナグマと言う単語に少し気になり目を細めて視線を向けた。
(アナグマ、と言う単語も現代世界、日本の言葉だな。という事はやはり・・・)
確かにアナグマとイタチと言う単語は日本語だ。という事は日本人がこの国に訪れて名付けた可能性がある。という事はこの文化自体も日本人が大きく関わっている可能性が非常に大きい。
そんな考え事をしているシンにサトリが近付いてカマイタチの感想について尋ねた。
「可愛いだろ?」
その言葉に我に返ったシンは普段の目に戻り、視線を向けて
「まぁ、確かに・・・」
と答えた。
実際確かに可愛い。イタチ・・・と言うよりオコジョをダックスフントサイズに大きくした存在だ。それ以外はオコジョの姿と変わらない。
シンがジッと見ていると
キュ?
カマイタチの視線がシンの方へ向ける。
「・・・・・」
クリクリとした目がどことなく儚く潤んで、小さく髭を動かしていた。とても捕食者とは思えない。それ位に可愛らしいのだ。だがそんな可愛らしいカマイタチを見たシンはある疑問が浮かんだ。
(カマイタチって言うから前足の所に鎌みたいな爪でもあるのかと思ったのだが、そんな感じでもないし、猫みたいに出す様な構造じゃなさそうだ。と言うかそもそも無理があるし・・・)
確かに「アナグマ」と言う単語からして「イタチ」と言う単語も「鼬」を意識して名付けられている可能性がある。とすれば「カマ」の方も「鎌」と言う単語を意識している可能性もある。とすれば今のカマイタチの姿からして何処かに鎌の様な爪を出す構造になっている部分がある。絵画の方では前足の指付近にあるが、あんな長い爪を出す様な構造には見えない。胴体も恐らく違う。爪自体硬くて長い物だとすれば胴体に収納できるとは考えにくい。そんな事をすれば常に爪が出て自分を傷つけるし、何かしらの物に引っかかる。だとすれば考えられるのは尾の方だ。尾はそれなりに長い。尾の中にその鎌の様に長い爪を収納している可能性は十分にある。
そんな事を考えているとカマイタチの口が開いて
「ジロジロ、イヤ」
「・・・・・・・・・・・ん?」
高い声で聞き慣れない片言の言葉を聞いたシンは数秒程固まって沈黙してから声にならない疑問の声を上げるシン。すると更に
「オマエ、ミル、サワル、イヤ」
とカマイタチが言ったのだ。
そう言ったのだ。
カマイタチが。
「ん?な?え?」
軽い困惑を起こすシンは疑問の声を次々と上げるとサトリは
「これが「フッタチ」だ」
と得意気に答える。
その答えにシンは思わず
「は?」
とキョトンとした疑問符を浮かべた。
因みに話が出来たら一旦確認をする為に2日後に投稿できるように予約をしています。