220.垢擦り
最近、服2着が破れて廃棄する、仕事面で色んな方々からのストレス、右手の親指をケガして化膿して腫れて投薬療法して、原因不明の背骨のズレによる腰痛になって・・・。
その上腎臓の件でも悪化して薬が増えると言った事が9月に丸々喰らって、気が滅入ってしまい落ちる一歩手前になってしまっています。恐らくですが今までの投稿した話にも影響が出てしまっているかもしれません。心身共に余裕があれば修正に入ろうと考えています。
ですので、申し訳ありませんが10月の投稿が今回と10/31の1話だけとさせて頂きます。11月以降はその後の経過次第になりますので、心身ともに以前と変わらない、または悪化していれば最悪投稿頻度が1ヶ月に1話となるかもしれません。
楽しみにされている方々には大変申し訳なく思っております。色々とボロボロな作者でございますが今後ともよろしくお願いいたします。
本当に申し訳ございません!
今のシンの姿は腰に手拭い一枚巻き付けるだけの半裸だった。それもそのはず。今いる場所は宿の中にある大きな浴場だからだ。大浴場は男湯と女湯に分かれており、同時刻にシン達は入浴した。シンとサトリとアルバは山中行動をとったから汗と泥が体に付着した。だから宿に戻ってすぐに身を清める為に来たのだ。
シンは浴場に入った時見慣れない物を見てしまい思わず立ち止まったのだ。
「・・・なぁ、こいつって「スライム」って奴じゃないのか?」
シンの目の前には赤くてゼリーの様な透き通った不定形の体を持った何かがプルプル震えながらかなりの移動速度でうろついていた。それも複数だ。
シンが立ち止まっているとシンと同じ格好で目を閉じたサトリがやってきた。
「「スライム」の一種の「アカナメ」だ」
サトリの方へ向くシン。その体には幾つもの傷跡があり、しなやかで決して弱いと言う単語を思い浮かばせさせない体。
隣にはアルバが居り、細くも決してひ弱には見えず、そればかりか老人とは思えない位に肥大した筋肉がヒシヒシと主張していた。
どこかで聞いた事ある単語に思わず
「「アカナメ」?」
とオウム返しするシン。
「そうだよ~」
サトリは呑気そうに答えた。
「・・・・・」
人が寝静まった夜に侵入して、風呂桶や風呂に溜まった垢を嘗め喰うとされる妖怪で、古典の妖怪画の画図では、足に鉤爪を持つざんぎり頭の童子が、風呂場のそばで長い舌を出した姿で描かれている。
『古今百物語評判』によれば、垢ねぶりとは古い風呂屋に棲む化物であり、荒れた屋敷等に潜んでいるといわれる。当時の科学知識によれば、魚が水から生まれて水を口にし、シラミが汚れから生じてその汚れを食べるように、あらゆる生物はそれが生じた場所にあるものを食べる事から、垢ねぶりは塵や垢の気が集まった場所から変化して生まれたものであり、垢を嘗めて生きるものとされている。
一説には「垢」には心の穢れや煩悩、余分なものという意味もある事から、風呂を清潔にしておくというだけではなく、穢れを身に溜めこんではいけないという教訓も含まれているとされている。
(こっちのアカナメって、スライムみたいな形なのかよ・・・)
アカナメの動きは意外と早く動き、止まれば体上半分が左右に伸びては縮んでいた。まるで何かを探しているかのようだった。
そんな様子を見ていたシンにサトリが
「あ、そうそう!彼らは体を洗ってくれるよ」
と衝撃的な言葉をが飛び出した。当然
「は?」
「は?」
の一言だった。
因みにこの言葉を発したのはシンではなくサクラだった。サクラがこの事を知ったのは予めサトリからのアカナメ情報の提供によって頭に叩き入れたアンリの口から出た衝撃的な言葉によるものだった。
当然だが、サクラもアンリもステラも身に付けている物はタオルの様な手拭い一枚だけ巻き付けており、いる場所は女湯だった。
「何でも、頭を埋めず、長い間身を預けずにいれば、安全に体の垢を落としてくれるそうらしい」
巻いた布の上からでも分かる恐らく一般的な小人族の体格。更に言えば11~12歳位の少女の体格体系だった。
それとは引き換えにステラは巻いた布の上からでも分かる位にピンとした背筋に引き締まった腹。そして大きい2つの丘が胸部に存在していた。
サクラは体格体系自体は変わらないが、何かしらの訓練の賜物なのか背筋が引き締まり、腕がひ弱には見えない細さに仕上がっていた。
その言葉を聞いたサクラは「うげ・・・」と言わんばかりの顔になる。それもそうだ。見るからに独特の水気があり、ヌメヌメ、ネバネバ、と言った表現してもいい位の質感を持ったアカナメに身を預けるという話だからだ。
更に分かりやすく表現すれば、ナメクジのヌメヌメと独特の粘りにヘドロの感触を持った「何か」に全身に塗りたくる様なものだ。
「・・・ワタシはとてもでは無いが、こいつに身を預けられるような気分にはなれないな」
「私も同じ心境でございます」
「・・・・・」
怪訝と嫌悪感がある青をするサクラにアンリはアカナメの方をジッと観察していた。
ペタペタ…
「アンリ様?」
アンリはそのまま近づきしゃがみこんでアカナメの様子を観察した。
「・・・・・」
プルプルと震えるアカナメに少しの間だけ観察していたアンリはそっと指で突く様に手を伸ばした。
プルプルプルプル…!
震えるアカナメはそのままアンリの手に向かってゆっくりと伸ばした。
「アンリ!」
「・・・・・」
「あ~…」
所変わって男湯。サトリは風呂椅子に座って前屈みになり、その傷だらけ背中をアカナメに擦らせていた。そのお陰なのかサトリは愉悦に浸った様な顔になっていた。
そんな様子のサトリの右に座っていたシンはどことなく胡散臭そうな目で見ていた。因みにアルバはサトリの左側に座っていた。
「・・・なぁ、それって無害なのか?」
見ている限りでは安全の様に見えるが、相手は言葉が交わす事が出来ない、得体の知れない相手。そんな相手に無害なのかどうかと警戒するのはごく自然な事だ。
警戒するシンにサトリは気持ちよさそうな声で答える。
「んん、案ずる必要は無い。短い時間の間であれば頭以外の部分を擦らせれば、体の垢を取ってくれる」
気になる単語に首を傾げるアルバ。
「短い時間、でございますか?」
「あまり長い時間浸っていれば、身体ごと溶けるからね~」
「・・・・・」
飄飄とした口調で結構とんでもない事を答えたサトリに、アルバは少しの間絶句する。シンは世間話でもするかのように話に入る。
「あ、やっぱりタンパ・・・こう、動物の肉っぽい何かを食べるんだな」
「肉もそうだし、動物の糞とか、蟲とか、そう言ったものを食べるんだ」
そんな会話をしているとアルバが前に屈んでいるとアカナメがやってきて背中を擦り始めた。その様子に気が付いたシンは思わず
「あ」
と声を漏らす。
アルバは肩もみをされている熟練の労働者の様な蕩けた顔になる。
「ほ~、これは中々・・・」
声も普段の毅然とした張った声ではなく、田舎の老人の様な柔らかい声になっていた。
「アルバさん、身体に少し赤みが出たり、少し痒みが出てきたのであればすぐにアカナメから離れるように」
サトリの注意の言葉にアルバは静かに頷く。
「離れろって、纏わりついてるんだったら簡単には離れないんじゃないのか?」
確かに、RPG等創作物でよくあるパターンがスライムは纏わりついたら中々離れないというイメージが強い。
そんなシンの疑問にサトリは払拭の言葉を掛けた。
「いや、案外すんなりと離れてくれる。アカナメは定期的に自分達に食事を提供してくれる生き物をそのまま食べてしまうよりかは逃がしてまた来る事を望んでいるからだろう」
その答えを聞いたシンは「ふ~ん」と小さな納得の声を出して
「知性みたいなものがあるのか?」
と思っていた言葉を出した。
するとサトリはコクリと頷いて
「かもしれんな。「フッタチ」を掛けたアカナメは人語を話すらしいし」
と答えた。
気になる単語を聞いたシンは疑問を投げかけた。
「「フッタチ」?人語?」
「ああ~そっかそっか、知らんかっただな。・・・まぁ、それは明日のお楽しみという事で。今日はそれらを忘れて体の疲れを癒そうじゃないか。シンさんも浸って見てはどうだい?」
サトリは「しまった」と言わんばかり口調で、半ば納得のいかない答えにシンは少しだけ眉間に皺を寄せる。だが同時にアカナメの垢擦りを勧めるサトリの言葉にはどことなく魅力を感じるシンはアカナメの方へジッと見た。
「・・・・・」
アカナメは首を傾げる様に少しだけ横に傾ける様に動かした。
「お”お”お”お”お”お”お”ぉぉぉ~~~~…」
サクラは風呂椅子に座り前屈みになって、アカナメに背中を擦らせていた。サクラもサトリと同じ様にアカナメに体を擦らせて洗わせていた。アカナメの見た目の体面とは違い、ヌルヌルしておらず、滑々した感触と僅かに砂漠の砂の様なごくごく僅かなザラザラとした感触が、サクラの白く透き通った柔肌を優しく擦っていく。
その感触がまるで絹で出来た高級な風呂用の手拭いで擦らせて洗っているかのような酷く気持ちのいいものだった。
お陰で若い少女という見た目とは裏腹に酷く低く濁声を出し、蕩けた様な顔になって今の気持ち良さを表現していた。
「これは良い・・・」
アンリも同じく座って前屈みになって体を洗わせていた。小人族の小さくて果物の果実の様な繊細そうな背中の柔肌を擦るアカナメにアンリも気持ち良くなって思わず眠たそうな目になり今にも瞼がとじそうになっていた。
「確か痒みが帯びてきたらすぐに離れるんだったな?」
もう既に目を閉じ切ってしまったサクラがそう尋ねる。
「そうそう。それ以上やると体が溶け始めていく初期段階らしい。離れてもアカナメはそれ以上擦る事はせず、別の客の所に行く」
遂に目を閉じ切ってしまったアンリは答え始める。その答えに同じく白く滑らかな布の様な背中をアカナメに擦らせているステラは気持ちよさそうに目を閉じながら
「結構怖いものでございますね・・・」
と率直な感想を口にした。だが、その口調はとても怖がっている様には窺えず、日ごろの疲れが抜けていく気持ち良さが窺えた。
「だけど、離れるタイミングを間違いなければ問題ない」
アンリも釣られるように日ごろの疲れが抜けていく気持ち良さが窺える言葉で答える。その言葉を聞いたサクラはアカナメに対する認識を改めた。
「思っていた以上に気持ちがいいなこれ」
背中の垢擦りと同時に強めに押し付けているから指圧に近い圧力のお陰で背中のコリが取れていく。
「今頃、サトリ様とアルバ様、シン様がこの気持ち良さに浸っているかもしれませんね」
その言葉を最後にステラはサクラと同様低い濁声を出して気持ち良さに浸った。
「来ない」
そう寂しく浴場の中で響く声の主はシンだった。シンは風呂椅子に座り、前屈みになってアカナメが来るのを待っていた。だが10分程経ってもアカナメが来る気配はなかった。
お陰で酷く虚しい言葉を吐いていた。
「来ないな・・・」
その言葉に釣られるように同じく虚しい言葉を吐くサトリ。
「来ませんね・・・」
アルバも同じ虚しさを感じる言葉を口にする。
「何だ?これはどういう事だ?」
シンがサトリにそう問いかけるとアカナメに擦られながら小さな声で「う~ん」と唸って
「う~ん、シン自身が綺麗すぎる、将又シンが何か嫌がる様な匂いでも出しているか・・・」
と考えられる可能性を提示した。
「・・・・・」
その事を聞いたシンは眉間に皺を寄せて唯々無言になった。その様子に気が付いたサトリはフォローに入る。
「一向に来ない事もあるから。な?」
飄飄としているも、明らかにシンが肩を落とさない様に嘘を混じらせているのがよく分かる。
「・・・・・」
一向にアカナメが来そうにない様子にシンは諦めて渋々持っていた手拭いで背中を洗い始めた。
その背中はどことなく虚しさをを感じるものが漂わせていた。