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201.道化師

 遡る事2日前の深夜。


 そこは暗い夜道。

 何かの資材置き場の様な所には異臭を通り越して悪臭となった大量のゴミが積まれており一つの山になっていた。何か食べるものはないかと薄汚れた野良犬がゴミ山を漁っていた。石畳の通りはゴミや瓦礫が地面にあちらこちらに落ちて、辺りには何かしらの悪臭が漂っていた。

 ここはアイトス帝国、羽休めの町事、ヨルグのスラム街だった。

 どこの世界でも暗くなると何も見えなくなり、この世界では灯りの頼りは火だ。それ故にランタンや松明の様な物を掲げて進む。だが、それは安全な状況や環境であればの話だ。

 ここヨルグのスラム街は治安が酷く悪く弱い者が何かしら目ぼしい物を持っていればすぐさま恐喝か盗難になる。だが、これはまだ幸運だ。殺傷力の高い武器を持っていれば持っている者をすぐさま殺し奪う。それもそれが当たり前の様に行われている。

 例えそれが相手が子供であったとしてもだ。

 それだけに命に対する価値観が小さく、ゴミのように扱われている。

 それがヨルグのスラム街の日常だ。


 ドドドドドドドドドドドドドド…!


「これでいくら入ったかな~?」


 そんなヨルグのスラム街の通りで猛スピードで駆け抜ける一台の大きな黒い箱馬車が走っていた。

 その黒い箱馬車の御者席に茶色のフード付きのマントを着た御者がケラケラと笑いながらそう呟き箱馬車に載せているパンパンに詰まった金貨の袋にどこかの国の旧王朝と言った明らかに価値ある遺品等の夥しい金品をチラチラと眺めていた。その御者は誰にも自分の顔を見られない様に深くフードを被って隠して箱馬車の4頭の馬を操って猛スピードで笑いながらどこかに向かって行っていた。


「HYA-HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」


 この御者が金品を載せながらケラケラ笑いながら移動していた理由は遡る事2時間前。





 変わらず暗い夜道。

 少し違ってヨルグのスラム街一端の地区。

 灯りもつけずにヒソヒソと寝息の様なか細い声で話す者達がいた。


「そろそろだな」


「あの中に信じられねぇほど金があるんだな?」


「ああ、何てたってミーソ一家とシルノフ一家の総本家だぜ?」


 見るからにみすぼらしい格好の上に腰に下げた剣や石弓からして明らかにまっとうな職の人間では無い事を示していた。

 そんな破落戸連中が品定めしているかのように見ていたのはスラム街すぐ隣に位置している似つかわしくない豪華な屋敷だった。


「噂じゃあ、どっちにとっても敵と利益が一致しているから最近兄弟の契りを結んだらしいぜ?」


「ああ、お陰でかなりの金が入ってきて今じゃ下手な貴族様よりも豪華な暮らしになってしまったとさ、めでてぇ、めでてぇ」


「だが、これから俺達のボスがでめてぇ、でめてぇ事になるんだろ?」


 そう軽口を叩くと小さな声でヘラヘラと笑う破落戸の一同。

 その時


「ほっほ~、良いセンスじゃないの~ぅ?」


 とオネエ口調とも年寄り口調とも言える様なそうでもない様な酷く変で笑えるとも笑えないとも言えない言葉遣いに気が付いた破落戸達は声がした方へ向いた。

 ただ声に聞き覚えがあるから咄嗟の早い振り向きではなく、ゆったりとしたスピードで向いた。


「お待ちしてましたよ・・・」


 ザッ…


「ボス・アダム」


「はじめまして、ボス・アダム~」


 青い狸・・・もといネコ型ロボットの自己紹介の様な口調で登場したのは赤髪でアシンメトリーに整えた髪型にチャラいとは言い難くもどことなく軽薄そうな顔立ちの20~30代の男だった。

 顔には鼻には軽く赤い点が付けるように塗られ、口角の端と目じりが付く形の赤い口紅で荒くたく塗られ、顔全体的には白といった退廃的な道化師の化粧をしていた。その上、左が赤で右が黒のジャケット、ズボンは逆に右が赤で左が黒のズボン、黄色のシャツに赤と黒のネクタイと言った派手で整った格好していた。

 見るからに人を楽しませるピエロなのだが、退廃的で不気味、ジョークが笑えるに笑えない事を言っていてもおかしくない様な姿をしていた。

 当然そんなふざけたジョークはこの世界の住人では通用せず


「わあってますよ、ボス」


「何すりゃいいんですかい?」


 と軽く流される。

 そんな扱いと流され方にめげすに笑顔のままで指示を始めるボス・アダム。


「取敢えずねぇ、君と君は僕と一緒に。残りの君達はあの屋敷の裏に回っていってくれるかい?僕達は正面から堂々と、ね」


 指示をしながら人差し指で斧を持っていた大男と石弓を持っていた痩せた男に指した。アダムの見立てでは自分以外のメンバーで実力を持った人物ではこの2人を選んだのだ。

 アダムの指示に意を汲み、分かりやすくほかのメンバーに伝えるべく口にするメンバーの一人。


「ボス達は騒ぎを起こしてくれている間に俺達が裏に回って目ぼしい物を頂戴するって事でいいのか?」


「そゆこと♪」


 人差し指で「That's Right!」と言わんばかりに指して答えるアダム。


「・・・ああ、分かりました」


 刺された男はアダムのテンションに付いて行けず、引き気味に頷く。

 そんなやりとりをしている間にメンバーの内の一人がキョロキョロと誰かを探していた。


「他にも3人いましたよね?あの3人は?」


 男が言う通り他にもメンバーはいた。その3人は身軽で石弓と短剣を得意としていた者達だった。もし屋敷に突入するのであれば狭い通路で振り回しやすい武器を持っているこの3人は欠かせない。


「彼らは隣の廃屋からロープを使って2階から侵入する事になっているよん~」


 アダムがそう答えると全員は納得して静かに頷いた。

 そして誰もアダムに何か尋ねる事なくなった。その事を確認したアダムは小さく頷いて


「じゃあ、最後に君と君は僕の後ろに付いて来る形で守ってくれ。早速、はっじめるよ~」


 と子供番組の様な掛け声でそう言うと


「「「お、おお~」」」


 どことなく力が抜ける様な掛け声に破落戸達は同じく力が抜けた様な声で応じてしまった。

 先行きが不安が出てきた事により、破落戸達は「大丈夫か?」と言わんばかりの不安の顔をして行動に移った。






 ミーソ一家とシルノフ一家の屋敷内。

 普段と変わらない一日が終わろうとしていたからか呑気に欠伸をして交代を待つ門番2人の男達。

 そんな中こちらにやって来る3人組に気が付く。


「?」


「誰だありゃ?」


 気が付いた男の言葉と視線の先でお互い腰に携えていた剣に手を伸ばす。

 そんな2人に対してやって来る3人組の内奇妙でかつ妙に高級感ある人物が手でフリフリと着ぐるみの様な振り方をしてニコニコしながらやってきた。


「こんちゃ~、強盗だよ~ん」


 気持ちの悪い猫撫で声を出して自分達がこれから何をするのかを打ち明けるアダム。


「あ?」


 ふざけた態度のアダムに少しイラッとした門張りの内の一人がドスの効いた言葉が漏れ出した。

 そんな2人にアダムはニッコリとした笑顔のまま目付きが鋭くなり、ドラムマガジンを取り付け、更に連射性能を上げた改造G18の銃口を突き付けた。


「お金ちょ~だい♪」


 パララララララララ…!





 パララララララララ…!


「何の音だ?」


 外から聞こえてくる聞き慣れない連発する破裂音。その音に警戒心を露わにして剣に手を掛けて、いつでも抜ける様にしていた。

 するとその時の事だった。


 バンッ!


 屋敷の扉はそれなりに大きい両扉式でとてもでは無いが一人の力では両方の扉が開く事は無かった。

 だが、それが今開いてしまった。


「な、何だ!?」


「こんちゃ~、ギブミーマァネェィ”ー!」


 ふざけた決まり文句を宣言するかのように言い放って改造G18の銃口を突き付けた。


 パララララララララ…!





 パララララララララ…!


「?」


「何の音だ?」


 聞き慣れない音に警戒して身構え始める内部の奥にいたミーソ一家とシルノフ一家の破落戸達。そんな破落戸達に恐ろしいものでも見た様な形相で正面口からやってきた破落戸の男一人が激しくドアを開けて入って来た。


「助けてくれ!正面でヤバイ奴が来ているぞ!」


 その様子と言葉を聞いた破落戸達は頷き合って正面口の方へ向かうべく走って行った。

 走ると複数の激しい足音が屋敷中に響く。


「聞こえたな!」


「よし」


 その足音と銃声が聞こえた裏手で待機していた破落戸達は各々が持っている武器を構えて屋敷の裏手の入り口から入り込んでいった。


 バンッ!


「な、何だテメェら!?」


 裏手にいたごく少数で配置されていた破落戸達はいきなり裏手から突入してきた破落戸達の存在に驚き思わずそう声を上げた。


 ザンッ!


「ぐっ!」


 ドサッ…


 だが気が付いた時は手遅れで突入してきた破落戸達の内の一人の剣の粗野な一閃を喰らい、その場に伏せてしまった。


「押し込め!」


 いきなりの事にパニックを起こし始めるミーソ一家とシルノフ一家の破落戸達の様子を見た突入してきた破落戸達の内の一人がそう声を掛けると


「「「おおおお!」」」


 応じて喊声を上げて雪崩れ込む様に進んで行った。





 暗い窓の外。

 上の階から侵入してきた破落戸達の内の一人が中の様子をジッと眺めていた。

 中の様子は慌ただしく動き回っており、物の数分も経たずにそのまま下の階に降りていって上の階にいる破落戸達の人数が数える程にまで減った。


「上の階にいた連中はだいぶ減ったな・・・」


 その事を確認した破落戸達の内の一人がそう言って別のメンバーに頷き、いつでも行けそうだと合図する。


「よし」


 その事を確認したもう一人は頷き返して小さな声で合図して


 パリーン!


 パリーン!


 軽くガラスを割ってそのまま侵入した。その部屋には誰もおらず容易く侵入する事が出来た。


「そのまま進め。敵がいないか探れ。見つけたら殺せ」


「ああ」


 今の自分達の存在に気が付かれると困る。だから非戦闘員でも見つけ次第殺す。その旨の事を軽く確認した時


「!」


 廊下側の僅かに開いていたドアの隙間から確認していた破落戸達の内の一人が手を挙げて誰かいる事を合図して


(敵がいる2人)


 と指で人数を表現した。

 残りのメンバーたちはコクリと静かに頷き石弓を持っていた者がドアの隙間から狙い放った。


 カシュン!


 トッ!


「!?」


 ザシュッ!


「ぐ・・・!?」


 見事一人にはヘッドショットを決めていきなり矢が飛んできて仲間が倒れた事に動揺したもう一人は短剣を持っていた破落戸に首をかっ切られて絶命した。

 各々がミーソ一家とシルノフ一家の屋敷にほぼ同時に侵入或いは突入して戦意がある敵意がある者達を悉く殺しに回った行った。

 その結果、ミーソ一家とシルノフ一家の屋敷で敵意のない女給や料理人、無防備な執事等が投稿してミーソ一家とシルノフ一家の財産がある場所を脅して知り、その場所まで行った。

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