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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
旅の準備
17/396

15.戦闘訓練

うん・・・


今までのを書き直さなければならないのは分かってはいるんです。



ただ・・・・・ね。気が付いたらこんなにも書いてしまったんですね・・・。




すみません。直さなくてはならない文章をそっちのけにして書いてしまいました。


また、勢いに任せて書いてしまった・・・。


ああ、そんな目で見ないでください・・・。

 森はますます暗くなり、空が赤く染まっていた。皆は汗だくになり洞窟前の野原で仰向けに倒れ込んでいた。皆は「ハァハァ」と息が上がり、喋る余裕が無いからか、ほぼ沈黙していた。

 原因は午前のほのぼのコミュニケーション会とは天と地の差を感じるほどのハードな訓練だった。


「しんど・・・」


「きっつ・・・」


「「「・・・・・」」」


 弱音を吐いたり、それすらも言えない位疲れている。

 彼らが何故こんなに疲れているのか。その理由は遡る事、正午すぎの事。



 皆は横整列に並び、半ば仁王立ちで立っていた。ナーモとニックが今の状況にヒソヒソと話していた。


「何で横整列なの?」


「俺にもわかんねぇ・・・」


 シンはそんなヒソヒソ声に答えた。


「皆がよく聞こえる様にするためダ」


「「!」」


 真剣な表情で皆に目を向けるシン。


「まず、一つ約束してくレ。俺がやる訓練に文句は言わないでくレ」


 真剣な表情と同じように真剣な口調で皆に向けて話す。それに皆は少し間を置いて首を縦に振った。



 訓練開始してから少し経った頃。シンも含め皆が森の中で獣道ですらない道なき道を走っていた。


「ハッハッハッ…」


「ハァッハァッハァッハァッハァ…」


 森の中で2つ息づかいが聞こえた。一つはシンの息づかいで吸う、吐く、吸う、吐く、とリズムよく呼吸しており対して疲れの色は見せていなかった。

 それに比べ少しずつリズムが崩れているもう1つの息づかいがあった。

 その息づかいは皆のだった。一応、吸う、吐き、吸う、吐きとリズムよく呼吸していたが体力とスタミナの関係で段々と疲れの色を見せ今の様に吸うか吐くどちらかに長い呼吸のリズムを刻んでいた。


 運動やスポーツマンの人間からすれば年下とは言えこれほど体力がいないのかと言われても仕方がないのだろう。


 訓練の内容さえ知らなければ・・・



 更に遡る事、走る20分前。


「ナーモ、シーナ、ニックは武器を持って先頭に立ってくレ」


 シンがそう指示すると3人は従って先頭に立つ。


「これでいい?」


「ああ、いいゾ。次にエリーは杖を持って3人の後ろに回ってサポートダ」


「うん」


 エリーも指示に従い配置に就く。


「最後にククとココは4人の後を付いて行ってくレ」


 2人もコクリと頷き配置に就く。


「よし、配置に就いたナ」


 皆の陣形はまず先頭の右からシーナ、ナーモ、ニック。その後ろは杖を持ったエリー。最後はククとココだった。

 皆の配置を確認したシンは次の指示を出した。


「じゃあ、俺はこれから走るからその後ろに付いてきてくレ。俺の姿を見失うなヨ」


 シンはそう言った直後に走る。


 タッ!


「え、早速!?」


 話を終えて間髪入れず、訓練が始まった事に対してナーモは思わず文句が垂れる。


「文句言ってる暇があったら付いて来イ!」


 あっと言う間に30m先まで走っていたシンは皆に付いてくるように急かした。

 その言葉によってなのか皆も急いで走り始めた。


 つまりこういう事だ。まず、ナーモ、シーナ、ニックは武装し先頭に立つ。その後ろはエリーには杖を持たせてサポートしつつ、ククとココは取敢えず後ろに付いて行く形だ。後はただ只管、シンが走った後を皆が付いて走って行けばいいと言うものだった。たったそれだけだった。たったそれだけなのだが、走った先が森の中なのだ。


「ちょ、シン兄!?」


 シーナも突っ込みたくなるほど文句が出た。何故ならシンが走った先が茂みの中だったからだ。


「早くしロ!」


 まるで「口を動かしていないで足を動かせ」とそう言わんばかりに更に急かす。内心ムッとした怒りが出て来てシンに何か言おうとしたらいつの間にかシンは茂みの中から出ていた。シーナは何か一言言ってやろうと考えそのまま茂みに入る。


「・・・!」


 目の前には茂みの枝と葉っぱが皆に襲ってくる。腕で顔をガードしつつ茂みの中から見える光の下へ真っ直ぐ進んだ。茂みの深さはそれほど深くなかったため光がすぐに見える。


「・・・・」


 ガサゴソと茂みの中を通ってやっと先が見えた瞬間彼らの顔は青ざめる。


「嘘・・・」


 シンは真っ先に3mもある岩の上に登っていた。岩の上から無言で皆の様子を見ていた。


「・・・・・」


 つまり「この岩山を登れ」という事だ。その事を察した皆は唯々呆然としていた。



 皆は腕を伸ばし次に手が掛けられそうな個所を探して岩山を登る。ほぼ直角になっている個所が所々あった。


「ぬっ!」


「・・・」


「・・・・・」


 声を出しながら登っていくナーモや、昇る事に集中して無言になるシーナ。エリーは疲れて掴まったまま休んだり楽しんで登るククとココ。


「下を見ない・・・下を見ない・・・」


 シーナは小声で自分に言い聞かせながら登っていた。岩山の高さによる恐怖に襲われない様に下を見ず、落ちない様に慎重に且つ早く登る。最早ロッククライミングそのものだった。

 そんな中割と問題なく登って行ったのはニックだった。


「よし!」


 登り切った先にはシンが待っておりニックは両手を拳に変え万歳のポーズをとってドヤ顔でシンを見る。


「・・・・・」


 しかしシンはニックの事を目も当てず皆の様子を見ていた。シンの目線の先を辿ってニックも皆の様子を見る。


「きゃあ!」


 ガラガラガラ!


 悲鳴と岩が欠けて落ちる音の正体はシーナだった。


「!」


 シーナは一番下の岩の下で倒れていた。


「シーナ!」


 ニックが慌てて声を掛けると


「だ、大丈夫・・・」


 シーナから返事が聞こえた。ニックはホッとした。


「ゴメンね、今から・・・っ!」


 シーナが立ち上がろうとした瞬間に右足から鈍痛が走った。


「どうした!」


「!」


 ニックの心配の声によって気が付いたエリーは急いでシーナの元へと駆け寄る。


「エリー?」


「すぐ直すから待って・・・!」


 そう言って杖を翳して


「ヒール」


 そう唱えると杖から白い光が出てきてシーナの右足へ振り掛かる。


「・・・・・」


 足の痛みが引いたシーナはただ驚くばかりだった。


「シーナ、動ける?」


「う、うん、大丈夫」


 そんな2人の様子を見たニックは只々呆然と立っていた。2人が再び岩山へと昇っていく様子を見て再び胸を撫で下ろしたニックはまたシンの方を見る。


「あれ?」


 見た方向にはシンの姿はなく、思わず疑問の声を上げる。


「おい、ここダ!」


 ニックが声のする方へ見た。するとそこには、いつの間にか岩山の下まで下りていたシン。


「いつの間に・・・」


 ニックがそう呟いた。


 残りの皆は何とか登り切ったが、シンが岩山の下にいるのを見て


「今度は下りるのかよ・・・」


 ナーモはそう愚痴っていそいそと岩山から下りた。


 この後シンは道らしい道を走らず、数々の薮や木、岩山登り、草むらの中へ走ったのだ。道らしい道は無く人はおろか獣ですら通った形跡も無い所を態と通る。そのせいで付いて行くのがかなりきついのだ。しかも、履いているのはスポーツ用の黒のサンダルだ。動きづらく、下手すれば大ケガをしかねない。しかし、それはあまり大した問題ではない。万が一大けがをすればエリーが馬車から本を持ってきて学んだ「治療系魔法」で治せば良いからだ。だが、それでも限りはある。そのため、ケガをしないようにと気を配って走る。


 シンプルかつ合理的な訓練内容だった。


 シンは後ろ方へチラリと皆の様子を見る。今の所皆は何とか付いてきている。


(何とかついてきてはいるが、そろそろか・・・)


 皆がバテてシンとの距離が開くのも時間の問題だった。


 そして、一番きつかった事は敵との遭遇だった。


「グールだ!」


 グールの存在に気が付いたニックがそう叫ぶ。グールの大きさは0.9m。頭部はハイエナで尻尾が無い黒いサルの様な体。普段は死肉を漁っているが、時として人間にも襲い掛かってくる危険なモンスター。今いる数は3匹だ。

 するとシンは


 スッ…


 タッ


 ジャングルの猿の様にサッサと近くの木に登った。


「頑張れヨ!」


「え?」


 皆はキョトンとした声を発すると


「グルルルルルル…」


 グールは唸り声をあげ、歯をむき出し威嚇する。ニックは引きつった顔でシンの方へ見る。


「・・・シン兄、まさか俺達がやれって事?」


 ニックがそう恐る恐る訊ねた。


「・・・その武器は飾りカ?」


 口調は穏やかだが、言葉は厳しいものだった。


「「「・・・・・」」」


 急に顔が青くなる皆。

 つまりそういう事である。シンは遭遇した危険なモンスターで皆が敵わないものでなければ素早く皆の後ろに行き木に登り「後は任せた」と言わんばかりに丸投げをしたのだ。


「くそ、武器を持てってこういう事かよ!」


 ナーモが文句垂れながら持っていたマチェットでグールに切りつける。グールは咄嗟に避けたが


「ギャウッ!」


 ナーモの方が早く振った為右肩にダメージを負う。するとエリーが


「皆どいて!」


 そう言って前へ出て杖を振りかざした。魔法の名称を唱える。


「フレアボール!」


 ボッ、ボッ、ボッ・・・!


 すると3つのサッカーボールぐらいの火球が現れる。


 ゴォッ!


 グールの方へ飛んでいった。グールの胴体に被弾する。


 ボォッ・・・!


 身体に着火した。


「「「ギャーオ、ギャーオ、ギャーオ…!」」」


 グールが苦しそうに叫びながらその場で火を消そうと転げまわる。だが、そんな行動も虚しく焼けていき動かなくなってしまった。


「「「・・・・・」」」


 肉や毛が焼けた匂いが辺りに充満していった。グールだったものは物言わぬ屍に変わっていた。

 そんな様子を見ていた皆に声が掛かる。


「付いてこないのカ?」


 シンはいつの間にか木から下りていた。しかも何事もなかったかのように訓練の再開の合図をする。それにシーナは何か言おうとする。


「シン兄、ちょっと・・・」


「「文句」は、無しダ」


 鋭い眼光をシーナの方へ向けて「文句」という単語を強調するように言った。シーナはそういう約束である事を思い出し黙る。


「行こう・・・」


 ナーモがそう言って皆を率いるかのようにシンの後へ付いて行った。


 只でさえ道らしい道で無い所を只管走ってきついのにモンスターとの戦闘になるのだ。戦い終わるとまた道無き道でアスレチックのようなルートを休憩も取らず走る。

 それを延々と繰り返す。そんな訓練を皆は黙々とこなしていった。



 どのくらい時間が経ったのだろうか。余裕が一切感じられない無表情となった皆。


「「「ハァハァハァ…」」」


 明らかにペースが落ちていた。


(そろそろ、皆に合わせるか)


 今度は皆に合わせて走るシン。さっきまでの付かず離れずと言った絶妙な距離を縮める。


「「「ハァハァ…」」」


 だからと言って合わせているとは言えやはりきついものはきつい。もはや文句など言えるような余裕は無かった。唯一幸運だったのは遭遇したのは最初のグールだけだった。しかも、エリーの魔法のおかげでグールを倒ししたのだ。


 皆の様子を見たシンは木に疵をつけた目印を辿って帰る事にした。


(じゃあ、これをラストスパートにするか・・・)


 シンは何も言わずに洞窟前まで皆を誘導した。



 そして時は現在に戻る。


(やっと・・・終わった)


(し、死ぬ・・・)


 夕方なり、走りながら戻ると皆はバタリと野原の上で倒れ込む。

 終わった事に安堵していた皆。


「これが今のお前らの「ペース」ダ。今後の事を考えるならもっと自分に合った「ペース」というものを見つけロ」


「は、はい」


「・・・・・」


 シンの言葉に答えたり、頷く等の手段で何とか返事をする。野原の上で仰向けに倒れ込んだ皆の考えでは「もう暫くないだろう」と高を括るっていた。


 だがシンの口から言い放った言葉は皆の身を凍り付かせる。


「ああ、そうダ。明日は俺とエリー達の学習時間に充てるが、明後日は今日と同じ事をするからナ」


 何事も無いいつも通りの口調で伝える。するとそれを聞いた皆は絶望を知ったような顔をし、シーンとより静まり返った。



 更に時間が経ちシンは夕食の用意をしていた。


「メシ出来たゾ~」


 やや早めの夕食だった。「ショップ」でコッペパンとクラムチャウダーの素とエビとアサリが安売りしていたので夕食は大量のコッペパンとクラムチャウダーだった。


「じゃあ、いただきまス」


「「「・・・いただきます・・・」」」


 疲れてるせいなのか、かなりテンションが下がった「いただきます」だった。


 皆疲れて中々食べ辛そうにしている中でシーナは疲れと呆れた気持ちがこもった言葉を吐き出す。


「・・・シン兄は良くたくさん食べるね」


「まぁよく動いた方だからナ」


 シンはムシャムシャ食べていた。あれだけのハードスケジュールをこなし、それでいて平然と夕食を食べているシン。シーナは信じられない気分で見ていた。


「食欲無い・・・」


 エリーはそうぼやく。腹に何か入れたくても中々受け付けられなかった。


「・・・気持ちは分かるが少しでも食べないと後が辛いゾ」


 シンは諭すようにエリーが食べるように勧める。


「うん・・・」


 エリーは力無い様な返事をし、クラムチャウダーを少しずつ食べ進めていく。

 そんな中、最年少のククとココはヘトヘトではあるが割と平気でご飯を食べていた。


(ククとココはよく食べるな・・・。きつい訓練したというのに・・・。育ち盛りだからか・・・?)


 エリーの様になるのではとククとココの事を少し心配していたのだが、どうやら杞憂に終わった。

 シンは驚きつつも安心して食事を続けた。



「何とか食えた・・・」


「もう何もいらない・・・」


「また、同じ内容の訓練が明後日やるのか・・・」


 とナーモがそう呟くと皿や鍋を洗い終わったシンが絶望の宣告を告げた。


「言い忘れていたが明後日の訓練は今日より厳しめにやるからナ」


 それを聞いていたかのように答えるシン。それを聞いた皆は絶句する。


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 絶望を知ったような顔再び。しかも、前と比べてムンクの「叫び」や虚空を見るかのように遠い目をする等と一層酷い顔になっていた。


 シンはそんな皆を無視して寝る準備に入っていた。



 同時刻にて。暗い森の中である物を見ている者がいた。


「むぅ、こんなにも死んでいる・・・」


 車輪が真っ二つに斬られた2台の馬車。15人程の人間と10匹以上のゴブリンに、何匹かの狼が死んでいた。斬られた武器や魔法の杖。

 それらを見てそう呟くのは直立二足歩行をし、全長4mもあるドラゴンだった。


 身体は美しい白銀の鱗で覆われ白目の所は黒く、瞳に爪、無数の角を生やし、尾や肩の所に2本ずつ角のような突起があり、綺麗な黄金色だ。翼をもち、広げれば恐らく7mもある。尾は長く先には刃物のように鋭い突起があった。2本の前指と後ろ指1本の両足。五本指の両手に、長く太い腕を組み姿勢の良い形で立っていた。知性と理性を持っており言葉を操っていた。

 一言でいえば「格好良い」。そんなドラゴンが今の状況について考え込んでいた。


「・・・随分、鋭利だな」


 そう言いながら死骸を間近で観察する。


「死んでからそう時間は経っておらぬようだが・・・」


 ゴブリンを見るのをやめて辺りを見渡す。


「何が起きているのだ?」


 そう言いながら森の奥の方へ突き進む。進んだ方向にもモンスターの死骸があった。

 しかも、その奥はシン達がいる方角だった――


今回は11話程連投とさせていただきます。文章におかしなところがあると思いますがよろしくお願いします。

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