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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
旅の準備
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14.期待の朝

明けましておめでとうございます。本年度もよろしくお願いします。


「・・・・・」


 目を覚ましたエリーが見たのはとんでもない物だった。


「エリー、おはよう。どうした?」


 朝から絶句し仁王立ちして動かないエリーに気づくニック。

 エリーに近づき不動に陥っていた理由が分かった。そこにはこの世界ではありえない物があったからだ。



 時を少し遡る事、朝日が出る少し前。日の光こそあまり無いものの辺りが薄暗く、影で何かある程度分かる世界。当然皆はまだ眠っていた。だがシンは皆より早く起きていた。


「ついに、できた・・・」


 皆から少し離れた場所で「自動開発」を開き、ある物を出現させた。


 ドスン…


 巨大な何かが現れた。地面に着いた瞬間、鈍い大きな音を辺りに響かせる。だが、その音でも皆は起きなかった。周りのわずかな光によって分かるのは少なくとも人間よりもはるかに大きな物だった。


「おお・・・」


 シンが出現させた物、それはこの世界ではありえない物。

 日が徐々に昇っていくにつれて巨大な物の正体が分かった。

 近くにあった木と比べてもその大きさには初めて見る者にとっては圧倒してしまう程の大きさ。

 光に照らされてメタリックな光沢が出て来ているが、あまりそれが主張しないのは車体が黒色のせいなのか、あまり光沢の鬱陶しさはなかった。

 それは観光バス位の大きさの黒いキャンピングカーだった。


「悪くはないな・・・」



 時を現在に戻り、エリーとニックが不動になったままでいるとキャンピングカーの傍にいたシンが2人の存在に気付く。


「おはヨ」


 何気ないいつものように挨拶するシンに対してエリーとニックは未だに驚いた顔になっていた。エリーは少し震わせながら指をキャンピングカーの方へ指して当然の疑問を口にした。


「シン兄、これどうしたの?」


 シンは何と答えればいいのか少し悩み簡潔に答えた。


「えーと、分かりやすく言うなら「魔法で作った」かナ?」


「「魔法で作った」?」


 エリーがあんぐりするのも無理はない。この世界で複雑なものを発明する魔法は無い。「ブレンドウォーズ」の時からある能力だ。つまり、シンだけにしかないモノだ。

 そんなエリーに変わってニックが大きな声で質問する。


「シン兄、この荷馬車は何!?」


 そんな質問にシンはサラッと答える。


「生活レベルが上がる「馬車」ダ」


「は?」


 益々何の事なのかが分からずに頭の上にクエスチョンマークが飛び交っていた。そんなニックを見たシンはどう説明するかを考えるが・・・


 キュ~…


 音の発生源はニックのお腹からだった。


「まぁ、皆にも見せるからその時ニ・・・」


 そう言い、朝食の支度をするシン。朝食のメニューはスパイシーポークステーキだ。

 まず人数分の昨日のシシ肉を筋切りにしてカレー粉をまぶして5分くらいおく。

 火が付いた折り畳み式コンロの上にフライパンを乗せてよく熱し、オリーブオイルを入れる。

 肉を焼く工程に入るが、初めは強火で少し焼き目がついたら中火にして2分くらい焼き、裏返して同様に焼く。

 最後に肉に火が通ったら、器に盛るだけだ。

 その空腹を煽る香りにつられて次々に起きてくる皆。


「おはよ・・・何これ!」


「え?」


「・・・・・」


「・・・・・」


 ナーモ達が起きて来た。香りがする方へ向かうとそこにはキャンピングカーがあった。当然、皆は驚いていた。


「シン兄、ちょっと来て!」


 ニックがシンを呼ぶ。近くにいたシンは


「ああ、それ?俺が作っタ」


 とアッサリと説明した。


「「作った」って・・・・・・・ええ!?」


 エリー達とほぼ同じ反応だった。


「まぁ、メシ食いながらでも説明するから、取敢えずこっちに来いヨ。メシにしよウ」


「「「・・・・・」」」


 そう言って唖然とした皆を席につかせた。


「いただきまス」


「「「いただきます・・・」」」


 あれを見たせいか、テンションがやや下がり気味の「いただきます」だった。


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


 この世界では貴重な多種類の香辛料をまぶしたステーキを食べる皆。当然おいしい。


 間違いなくおいしいはずなのだが


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」


 「キャンピングカー」(これ)の存在が気になって仕様が無かったのだ。


「・・・じ、じゃあ改めて聞くけどあれは何?」


 代表してニックが恐る恐るシンに聞いてみた。


「あれは、「キャンピングカー」というものだ。あれは移動ができて家と変わらない生活ができるクル・・・荷馬車ダ」


 シンが「車」と思わず言いそうになって慌てて修正する。


(クルニバシャ?)


 しかし、ククの中では「クルニバシャ」と言う間違った何かの単語を覚えてしまった。


「その「カンピングカー」ってどこで手に入れた・・・というか「作った」?」


 ナーモは聞き違いの「キャンピングカー」の入手先についてシンに訊ねる。


「ああ、俺が「作った」ナ」


 エリー達の時と同じ答えで返した。


「それってシン兄の魔法か何か?」


 エリーは冷静にシンの魔法について尋ねてくる。


「んーちょっと違うけど、まぁそんなもんダ」


 少し言葉を濁した。はっきりと、「違うこれは「ブレンドウォーズ」の元からある能力のようなものだ」、と言っても向こうは余計に分からなくなるし、そもそも自分の手の内を明かす必要もない。


 シンが言葉を少し濁した事にエリーが他に何か質問しようとすると


「家のようにって、台所とかベッドとかついてんの?」


 ニックの質問が先になった。


「あア」


 間髪入れずに答えるシン。

 馬車でベッドが付いている事はそう珍しい事ではない。貴族以上の身分の人間であれば馬車に備え付けのベッドがある。その為それに対してそれほど驚きはしなかった。


 しかし、ニックは「台所」という単語に頭の中である疑問が思い浮かんでいた。


「火はどうすんのさ?」


「台所」があるという事は当然コンロ・・・この世界では竈が存在する。しかし、この「キャンピングカー」には竈に通じる煙突が無い事に気になりシンに訊ねたのだ。


「火の代わりに電気を使ってル」


「キャンピングカー」には「電気コンロ」が備え付けられていた。電気で動く事を皆に伝えると


「「「電気!?」」」


 皆の反応が予想以上に大きかった。


「そ、そんなに驚く事カ?」


「そりゃそうだよ電気って所謂''雷''ってやつでしょ?」


「雷っテ・・・。ま、まぁ、そうだガ」


「贅沢!贅沢過ぎるよ、シン兄!」


「贅沢?」


 シンが頭の上で疑問符を浮かばせていると


「電気や雷の仕組みが余り分かっていないから使える人が少ない・・・」


 とエリーが補足説明をした。


 詳しく聞けば電気等のプラズマの存在があまり知られていない為使える者が少ない。その為電気を使う魔法はかなり貴重らしい。当然電気による発明等はほとんど無いそうだ。


「取り敢えず、口で言っても分からない事が多いだろうから後で中を見せル」


 百聞は一見に如かず。いろいろ聞くよりも見た方が早いという意味の諺。誰が考えたのだろうかと感心する。朝食が終わり次第キャンピングカーの内部を見せる事にした。


 朝食を食べ終えた皆にキャンピングカーの内部を見せた。内部は皆にとっては豪勢だった。白を基調の内部。入って手前には台所があり、1つフロア奥に行くとテレビ付きのリビングルームになっている。ソファはソファベットだ。そのため、ここで寝る時にソファを変形させればそこで寝る事ができる。リビングルームには洗濯機が搭載されている。更に奥の廊下の右側にシャワー室、左側にはトイレがあり、その奥は寝室になっている。寝室には扉付きの本棚がある。

 このキャンピングカーの動力源は水素電池だ。つまり電気が無ければ動かないのだ。エネルギーが切れてもシンが手に入れた魔力を電気に変換させる事で問題なく動かせるがこのキャンピングカーは太陽光発電システムが搭載されている。そのため、車体その物が黒いのだ。水は「ショップ」で買って給水口に入れるか、現地で調達するかのどちらかになる。


「「「・・・・・」」」


 皆が唖然としていたが、ククとココは好奇心いっぱいの目で辺りを見回していた。


「シン兄、ここは?」


「シン兄、ここは何?」


 そう瞳の中に好奇心の星達を輝かしながら無邪気に質問を投げかけてくるククとココ。


「そっちはトイレ。そっちの方はシャワーダ」


「シャワーって?」


「(ああ、そうかシャワーってものが存在しないもんな)えーと、ここをひねると水が雨のように出て身体をきれいにすることができル」


 シンがそう説明するとシーナが


「湯浴みができるって事!?」


 今度はシーナが瞳の中で感動の星達がキラキラと輝かせていた。


「あア」


 シンが肯定するとシーナの顔が綻んでいった。女性としては何日も体が綺麗にできない事は衛生的に生理的にキツイものがあった。そこに登場したのがこのシャワー室。シーナの顔が綻んで当然だ。


 ・・・因みにエリーも顔にこそ出てはいないもののフンスと鼻息を強く吐き出し、心の中では喜びの舞を踊っていた。


 そんな中ココが


「トイレに変なのが付いてる。」


 とある物を指さした。その先はウォッシュレットのボタンだった。


「それは・・・お尻をきれいにすることができる機械ダ」


「ふ~ん」


 シンは言葉を濁した。同性なら答えられるかもしれないが異性のデリケートな問題があるため詳しくは教えなかった。

 ククとココは目を輝かせて


「「「すご~い!」」」


 シン達は車の外に出た。ドアを閉め、シンは皆の方へ振りかえる。


「さて、もうこれの説明は終わりダ。今日の本題を話そうカ」


「本題って?」


 シンは急に言葉が真剣な重い雰囲気になった。そんな様子に先までの「キャンピングカー」のワイワイとした見学会からガラリと一変しナーモ達は真剣な表情でシンの方へ向いた。


「訓練の事」


 その言葉を聞いた途端、皆は気を引き締めた。


新年の挨拶と共に一応次話を投稿しましたがまだまだ改善するべき部分がございますのでまたしばらくの間は今まで投稿してきた話のを修正していきます。ですのでいつ次話が投稿できるのかは楽しみにしている方は申し訳ありませんが未定です。また改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。

こんな小説ではございますがどうかよろしくお願いします。

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