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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
旅の準備
14/396

12.魔力確保

 シンは薄く笑っていた。

 何故なら、大量の魔力を手に入れる機会が目の前にあるからだ。シンは右手を刀に変形させ横薙ぎをする構えを取る。


「ピギーッ!!!」


 1匹のオークが鳴き声を上げると群れで襲いに掛かる。


「鳴き声はブタか・・・」


 そう呟き右手で・・・


 ヒュンッ!


 風を切る音。無論この音はシンの右手を振るった音だ。


「ブ・・・・・ヴ?」


 何が起きたのか分からずにいるオーク達の身体にツツーッと切れ目が浮かび上がっていき、終にはズレた。


 ブシューーッ


 オーク達の切れた断面から噴水の様に血が噴き出し、赤い雨が出来た。


 ドサドサドサドサドサドサ…!


 辺り一面はオークの血と肉片、腸が重々しい音を立てながら地面に落ちていた。

 だが、3匹残った。残ったオーク達シン以外の皆に気づいた。そして、標的をシンから一番弱そうなククとココに変えた。


 ブーーーッ!


 そう鳴き叫ぶとククとココに向かって襲い掛かって行く・・・!


「!」


 シンの右腕は触手のようにしならせれば最大で10m程伸ばす事が出来る。


 だが、シンと3匹のオーク達との距離はその距離は13m。とてもじゃないが届かない。

「このままではククとココが危ない!」と思ったナーモはククとココの前に出て庇うように剣を構えた。


 だが、シンは慌てることもなく、左のホルスターに入っていた「LP(レーザーピストル)」をすぐさま抜き


 バババシューン…!


 グシャアッ!


 シン以外の皆は見た事のない3つの真っすぐな光の筋を一瞬だけ見た。

 そして、2つの音が聞こえた。1つは聞き覚えの無い音。もう1つは何かが破裂するような音。


 音を聞いた瞬間赤い飛沫が皆の目に映る。破裂した音の正体は分かった。オークの頭だ。オークの頭が何かによって破裂したのだ。


 ナーモ達は何が起きたのが分からなかった。唯一何が起きたのかを知っているのはシンだけだった。


「シン兄、何をしたの?」


「「LP(レーザーピストル)」でオークの頭を吹っ飛ばしただけダ」


 サラッととんでもない事を言った。


「ふ、吹っ飛ばしたって・・・え?」


 エリーは何を言っているのか分からなかった。


 シンが実際に撃った方法はこうだ。


 まずファニングショット(発射速度を上げるため、添え手側の手の平でハンマーを起こして連射する撃ち方)の様に「LP(レーザーピストル)」を抜いた瞬間に最初にククとココに襲おうとしたシンから見て一番奥にいた1匹目のオークの頭を吹っ飛ばした。


 次にシンの胸に当てるようにして同じく片手で「LP(レーザーピストル)」を撃って2匹目のオークを吹っ飛ばした。


 そして最後に同じ片手でひじを曲げたまま少し突き出し、銃を胸の方へ引きつけた様な形で、「LP(レーザーピストル)」を少し傾けるようにしてそこから片眼で照準器を覗き込む、独特の構えをとる形で撃って3匹目のオークを吹っ飛ばした。


 これはCAR System(Center Axis Relock、セントラル・アクシス・リロックの略で軍や法執行機関から高く評価されている射撃テクニック)とファニングショットを合わせたシンのオリジナル射撃方法だ。


 CARの利点は、次の様に挙げられる。

 ・まず狭い場所でも銃を構える事ができる。

 ・待機姿勢から射撃姿勢へ素早く移りやすく目標が近くても無理が無い構えができる。

 ・銃本体を斜めに構える為、照準を合わせやすい。

 ・反射の反動を抑える事が容易で、連射でも命中率が上がる。

 ・誤作動からの復帰やマグチェンジが素早く行える。


 しかし、ほぼ両手を使って撃つ為、「BBP」を使うシンにとってはそこが欠点だった。


 ファニングショットの利点は、発射速度を上げるため、銃本来の構えを取らず腰だめ撃ち(銃を腰の辺りに当てて、大まかな見当で撃つ方法)をする。一発だけなら片手でも十分に可能。その為急な対応には向いていた。

 しかし、本来ならシングルアクションならではの撃ち方であり弾を撃つたびに撃鉄を起こさなければならない。その為あらかじめトリガーを引いた状態から撃つ。次に添え手側の手の平で撃鉄を起こして連射する。


 シンが使っている銃は「LP」だ。その為ファニングショットの様に片手で腰だめ撃ちができ、CARの様に射撃姿勢へ素早く移りやすく銃本体を斜めに構える為、照準を合わせやすいため咄嗟の対応ができる。


(・・・思わず片手で撃っちまったが案外イケるもんだな)


「ブレンドウォーズ」のプレイヤーキャラクターの時はCARが中心の射撃方法を取っていた。

 現実世界では某西部劇に影響して安いエアガンでファニングショットの真似事をしていた。


 シンはその時を思い出し咄嗟にそれぞれの利点を合わせて撃ったのだ。そしてそれに成功し見事オーク3匹を倒したのだ。


「そ、それって・・・」


「・・・・・・っ」


 シンは何か言おうとしたが皆の事も考えて敢えて日本語に戻してエリーに話す。


「・・・えーと、俺が持っているこれの何かは、エリーなら分かるよな?これはほぼ音も無く攻撃ができて、人間の頭を軽く破裂させる威力を持った武器だ」


「・・・・・・・・」


 エリーも何か言おうとした。だが、皆の方を少し見た。


「見間違いじゃなければ、レーザーを撃ったように見えたけど・・・」


 シンの考えを察してなのかシンが急に日本語で話した事に特に驚いた様子もなく続けた。


「見間違いじゃない」


「!?」


 エリーは驚愕した。


「何で撃つ事ができるの!?確かそれって電力の関係で実現は難しいって・・・」


 シンは完全に確信した。エリーはシン・・・「黒元 真」が元いた世界の住人だ。そうでなければさっきの話なんか出てこないからだ。


「エリーの言う通り、本来コイツで攻撃をすると電力は半端なく食う。だけど、科学技術に魔法が関わったら別だ」


「?」


 シンが日本語で軽くそう説明するもエリーは何の事なのかさっぱり分からなかった。


「・・・これ以上話すと頭がこんがらがるからここまでだ。それよりも鍛錬の事について話そうカ」


 実際複雑な事情があるから、それ以上話さなかった。それよりも皆の事を考えてこれからの事について話した。

 急に日本語から異世界語に戻り、「鍛錬」というキーワードにエリーは


「鍛錬?」


 とオウム返しに聞いた。


「あア」


 軽く頭を縦に振ったシンの言葉が急に重くなった事に気が付いたナーモ達に緊張が走った。そんな皆に対しシンは「まずは・・・」と言わんばかりにナーモを見た。


「まず・・・ナーモ、状況判断は悪くないが目を離してしまっただロ。危機管理が甘イ。そのせいで撤退のタイミングが遅くなっタ」


 次にシーナの方へ向き口を開いた。


「シーナはククリナイフで構えるナ。あの場ならトンファーダ。防御に徹した方がいイ」


 その次にニックの方へ向く。


「ニック、弓矢なら即座に放った方がいイ。放って怯んだ隙に逃げる事も攻撃する機会ができル」


 今度はエリーの方へ向く。


「エリーはビビッて動かなかっただロ?論外ダ」


 最後にククとココの方へ向く。


「ククとココは今回が初めてカ?もし初めてなら覚えておケ。これが命のやり取りダ・・・!」


 シンの言葉の重さに皆はシュン・・・と落ち込んだ。

 ナーモとシーナは最初、ある程度剣等を振っていた事があるから少し自信があった。だが、今回の事で現実は甘くは無かった事を思い知らされる。

 エリーは魔法さえあれば何とかなる。そう思っていたが現実は違っていた。いざとなると怖くて何もできなかった。

 ニックは弓矢を構えたが狙いを定めるのに夢中で結局放つ事ができない上に周りへの配慮が疎かになった。

 ククとココは危険な森に入った事は無かった。さっきまで楽しかったからピクニック気分で皆について行ったが恐ろしい現実を見て自分の愚かさと悔しさに心がいっぱいになる。2人とも口をキュッと一文字に閉めて眉間に皺を寄せた。


「「「・・・・・」」」


 皆はなめているつもりは無かった。だが、心のどこかでなめていた。その事を知り、悔しさがこみあげてくる。エリーやククとココは涙目になっていた。


「皆の決定的な欠点は冷静さと危機管理が出来ていなかった事ダ。ナーモ、さっきお前は何でオークらはこっちに来たか分からなかっただロ?」


 ナーモは頷く。


「多分だが、オークは人間よりも鼻が利くんだろウ。それで匂いで気づき、こっちに近づいて来たんダ。」


「・・・・・」


 沈黙するナーモ。シンの状況分析に対する感服と自分の不甲斐無さに歯を食いしばっていた。


「だが、決してどうにもならないわけではなイ。明日、それなりの特訓をしようカ」


 そういうと、皆は少し開けたような顔つきになった。


「じゃあもう遅いし帰るカ」


 そう言うと皆が明るい表情になる。


「「「うん」」」


 そう明るく返事をする


 今日の出来事は皆にとっては大きな一歩となる。

 明日からはそれなりに見合った特訓を開始をする。




 そしてシンは20頭のオークを倒した事で大量の魔力を手に入れた。

 これから何に使うか無表情の顔のシンの頭の中では次に何に使おうかについて考えていた。


ガクッ…



改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。

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