11.探索
な、何と書けました・・・
昼食を食べ終え、すぐにでもスムーズにこの世界の言葉で話せるように、皆とコミュニケーションをはかるシン。シンの方から何か話そうとしたが先にナーモが話しかけて来た。
「シン兄、これから戦い方を教えてくれるのか?」
「するにはするけど、俺はこの世界の常識の事を知らなイ。それで、周辺の探索をすル。そのついでに皆のそれぞれの戦い方を見てこれからどう鍛えるかを判断するが、それでいいカ?」
独特の訛り交じりの言葉で答えるシン。
「じゃあ、この森にゴブリン以外の危険生物がいるのは知ってるか?」
「そういえば、どんなのがいたっけ?」
ナーモは思い出すように顔を少し上を向く。
「えーと、狼、クマ、イノシシ、オーク、トロル、ククロプス、グルフ、ワイバーンかな?」
「多分他にもいるけどちょっとわからないね・・・」
聞きなれない単語があった。
「狼とクマ、イノシシは分かるが、オークとかワイバーンって何ダ?」
「・・・ホントに知らないんだな」
聞けばオークは全長2~3mで頭はイノシシだが、体は茶色のゴリラのような体を持ち、雑食性の生き物だ。直立二足歩行する事もある。人間も食べるために襲って来るそうだ。群れで動いている。
トロルは3.5mとオークより一回り大きく赤茶のゴリラの様な姿だが、こっちは肉食性だ。そのため、人間を見かけると襲い掛かる。こっちも直立二足歩行する事もある。
ククロプスは全長3.8mで雑食だが草食寄りで大人しい。しかし、奴らには縄張りがあり、入ってきた侵入者には容赦が無い。見た目は灰色のゴリラの様だが額に大きな目玉のような模様がある。直立二足歩行をし、丸太を武器として使う事もあるそうだ。
グルフは全長5mほどある肉食性の鳥だ。頭は鷲、ネコ科の足を持ち、翼には2本のかぎづめを持っている。そのためか、4足歩行で走ることができる。主にオークやククロプスを食べるが決して人間は例外ではない。
最後にワイバーン。全長5.5mのコウモリの翼をもった赤いオオトカゲだ。硬いうろこに覆われ、牙には毒がある。上空から襲い掛かる。例え、地面に降りても後ろの2本足で大地を駆け巡るため油断はできない。肉食性であまり人間を襲うことは無いが鉢合わせすると容赦無く襲ってくる。
シンはそれらの生き物の名前と容姿を聞いてふと思った。
(これらって、俺の世界では伝説上の生き物だな・・・)
オーク、トロル、ククロプス、グルフ、ワイバーン。言葉の訛りのせいなのか、若干違う所があるが、良く聞き取って考えてみるとこれらの名前には前の世界ではゲームでも知れ渡っている伝説上の生き物だ。この世界の生き物はどうやって進化してこうなったのかは知らないが名前は人間が付ける。
(これらの名前は前の世界だと通じる。という事はこれらの名付けた人は前の世界の人間か?・・・確かに、エリーの様に「日本人」という単語があるぐらいだからな・・・)
シンは「もしかしたら、自分以外にこの世界にやってきた人間がいるのでは?」と考えてしまう。
何気なくエリーの方へチラリと見る。
「?」
エリーは少し傾けるように小首を傾げる。
「・・・・・」
だが今は語学と周辺の探索、戦い方の教授をしなければならない。さっきの考えを振り払うかのように首を振り
「準備はできたのカ?」
と皆に尋ねる。
「問題ない」
「おう」
「大丈夫」
「行ける」
エリー、ナーモ、シーナ、ニックはそう返事をしたが、ククとココは不安そうにしていた。シンは2人に近づき
「大丈夫、何かあったら俺が何とかすル」
そう言い、ククとココの頭をなでる。
「・・・・・」
ククはコクリと頷き
「うん・・・」
ココは静かに返事をした。
2人には不安の表情が少し和らいだ。
2人の表情を見て問題無い事を確認すると早速出発した。
まず最初に洞窟が見える範囲のみを探索をする事にした。青空が見える程の開けた場所から一転し暗く鬱蒼とした森の中へ入る。シンは周りを見渡す。
「・・・・・」
不安そうな顔で突き進む中ナーモ達はキョロキョロと周囲を確認する。
「・・・・・」
だが、周りには敵らしい気配はどこにもいない。
(まぁ、周辺に居たらとっくに襲われてるもんな)
敵がいない事を確認すると洞窟が見える位置の木に「BBP」で刀に変形した右手でまず、その木の周りの生い茂った草や木を刈っていく。その木にどこからでも見えるようにぐるっと周りを疵つける。
「シン兄、何やっているの?」
そう聞いてきたのはシーナだ。
「目印ダ。この疵が見える限り迷わないだろウ?」
シーナは「ああ、なる程」と言わんばかりに云々と頷く。この木を目印に周辺を探索していき、4m置きこの木が見える第二の目印の木を作っていく。これが、延々と続いていく。
目印の木を作りながら歩いていくと
「!」
何かの集団の気配を感じた。シンはそっと茂みの物陰から集団の様子を窺う。シンの様子を見てただ事じゃないと感じたのか皆も同じように物陰から集団の様子を窺った。
(何だあれ?)
その集団はこちらに気付いていない。そっと近寄り、50m離れた所である生き物を視認する。シンは見たままのそれの様子を推測しナーモに
「もしかして、あれがオークってやつカ?」
と聞いた。
「うん、あれがオーク・・・」
当たっていた。オークという生き物は大きさは2~3mで頭はイノシシ、体は茶色のゴリラのような体だった。今は直立二足歩行をしている。そんなのが20頭程いた。
「マジカ・・・」
始めてみる光景にやや関心気味に見ていたシンに不安でいっぱいのナーモが
「シン兄、ここを離れよう」
とナーモがそう言ってきた。何故そう言ってきたかは分かる。
「もしかして相当危険なのカ?」
「うん、危険。あいつらは獲物を見かけると群れで襲ってくるんだ。あの数でこっちに来たら一溜りもないよ・・・」
ナーモは冷静に状況を分析して撤退の道を示した。だが・・・
「残念だが、撤退するタイミングが少し遅かったかもしれないナ・・・」
「え・・・?」
ナーモがもう一度オークたちを見てみるとこっちを見ていた。オークはこちらの方へ向きそのまま群れで向かって来る。
「な、何で・・・?」
顔を青くしたナーモ達。プレッシャーに耐え切れず、立ち上がって逃げようとするが
「落ち着ケ。今逃げても追いかけられて確実に誰かはやられル」
気が付いたのが遅かったため30mと距離は縮んでいた。今全力で逃げても少なくともククとココの様な小さな子供は襲われてしまうだろう。
「じゃあどうすれば良いんだ!」
声を荒げ、冷静だった頃のナーモはもういない。エリーは顔を青くし、ニックは震えた手でアーチェリーを構え、シーナも震えた手でククリナイフを構える。ククとココは完全に恐怖でブルブル震えていた。だが、シンは冷静に諭すように皆に言った。
「俺が何とかするかラ」
「何とかって・・・」
シンは立ち上がりオーク達の前に行った。オーク達は獲物を見つけると今か今かと襲い掛かる素振りを見せた。
その時、シンは薄く笑っていた―――…
追記 改善してほしい部分がございましたらご連絡ください。