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115.この雨は

明けましておめでとうございます!

今年も「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」をよろしくお願いいたします。

 町外れの何もない荒地の近くまでシン達はその辺りを見て回っていた。


「・・・・・」


 さっきまで楽しそうに話していたシュリカが急に黙り込んでいた。損の事に気が付いたシンはそっと声を掛ける。


「どうかしたのか?」


「・・・シィン、ここ、はなレル、きれい、ある、です」


「この先に何かあるのか?」


 シンがそう尋ねるとシュリカはコクンと頷いた。シュリカが「きれい」と言うからに何かあるのだろう、そう思ったシン。


「・・・分かった、そこまで頼む」


「・・・・・・・・はイ」


「・・・・・・・・・・」


 さっきまでの明るいシュリカではなく、どこか陰りを帯びた様な暗さがあった。明らかに様子が違う事にシンはジッとシュリカを見ていた。


「シュリカ?」


「はイ」


 大きな岩の物陰近くに差し掛かった時、シンがそう尋ねる。


「どうかしたのか?」


 シュリカの口はキュッと一文字になる。


「・・・・・・・」


 シュリカの心配と周りの警戒を強め、シュリカに声を掛けるシン。


「具合でも悪いのか?」


「シィン…」


 何か訴えるような目でシンを見ていたシュリカ。


「シュリカ・・・?・・・っ!」


 シンはシュリカに何か尋ねようとした時、何者かの視線を感じた。


「シィン、きけんっ!」


 ガバッ…!


 シュリカはそう言ってシンを跳びかかる様に押し倒した。その時だった。


 ドォォォンッ…!


 辺りに銃声が木霊した。近くにあった岩の一部が砕けた。シンとシュリカは大きな物陰に隠れていた。乗っていたトカゲの怪物は銃声に驚いてどこかへと去って行った。


「○○○○」


 誰かの声がする。しかも、聞いた事も無い言葉で話していた。いや正確には、この世界の言葉では無かった。モロッコを占領した連中と同じ言葉だった。

 シンは岩の物陰からそっと声のする方へ目をやった。


「○○○○・・・○○○○」


「○○○○!○○○○○○?○○○○○○!」


 シンが見る限りでは8時の方角、100m先に7人程誰かがいた。

 一人はよく分かる服装だった。男は肥えており、煌びやかに着飾り、王冠もかなり豪奢なものだった。見る限りこの国の王族の様に見える。強欲と傲慢さが混ざったような目で大きな岩を見ていた。近くには護衛と御付きの者、取り巻きの貴族と思しき身形の整った男達がいた。

 その者達を合わせて7人程だった。


「俺を狙ってきているのか・・・。シュリカ、大丈夫か。・・・っ!?」


「・・・・・・・」


 シンの目に映っていたのは、シュリカの腹部から赤い血が流れて仰向けに倒れている姿だった。シンの手と体をよく見ればシュリカのものと追われる血痕が付着していた。シュリカの息づかいが荒くなり、尋常じゃない冷や汗を掻いていた。


「チッ…!」


 シンは舌打ちをして持っていたHK416を構えて頭を出さず、7人がいる所へ向かって適当に撃ちまくった。


 ドドドドドド!


 その銃声に怯んだのか、7人がいる方から何やら叫び声が聞こえていた。


「○○○○○○!」


「○○○!」


「○○○○○○○○○○○○○。○○○!○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○!」


 シンは叫び声がする方へ頭を少し出して様子を見た。7人は、しゃがんで、動かなかった。

 シンは7人がこちらに攻撃や来るのを遅らせる為に威嚇射撃をしていた。効果はあったようで7人はその場でしゃがんで、暫く動く気配が無かった。


「(これで当分は来ないだろう)シュリカ、大丈夫かっ!?」


「・・・・・」


 コクンと頷くシュリカ。大丈夫だ、という答えなのだろうがとても大丈夫そうには見えない。寧ろ、悪い状態だろう。さっきまで健康的な浅黒い肌は、今では徐々に土色に近付いていっていた。

 シンは急いでシュリカの腹部からこれ以上血を出さない様に右手で押さえて左手でファーストエイドバッグの中を探っていた。

 その時シュリカは何か言おうとした。


「・・・シィン」


「喋るな!まだどうにかできる!」


 シンが怒鳴る様にそう言う。だが、シュリカは構わず力の限り言葉をシンに伝える。


「・・・オヤ、むかし・・・シヌ。いきる、コレ・・・もった。・・・ブガフィヘイカ、へいし、なった。こレ、ツクル・・・むり・・・。だか・・・ら、ブキ・・・うるひと、かう・・・。デモ、ワタし、ブキヨ・・・コドり・・・する、です」


「・・・・・」


 寂しく、悲しく、諦めた様な物言いで語るシュリカ。

 対してシンはそれ以上何か言う事も無くシュリカの言葉を聞きながらファーストエイドバッグから止血剤を取り出してシュリカの傷口に当てる。

 シュリカの断片的な単語から考えれば、そう遠くない昔、両親が亡くなり、生きていく上で小銃を持つ様になった。国王のブガフィに兵士として雇われた。シュリカの主な任務は自国では作る事が出来ない現代的な銃をこれからやってくるこの世界の兵士や住人から奪い取る事。

 恐らく軍事力を上げていくのが目的だろう。そんな目先の力を手に入れる為にこの国はシュリカに奪わせていた。

 漸く止血剤によって出血していた血液量が少しずつ減ってきていた。

 その事を確認したシンは次に包帯や消毒薬、痛み止めを探し始める。


「むかし、にし・・・ヨそ・・・・・へいし、ころす・・・。ワタし、ブキ・・・・・ヨコドり、した・・・です・・・」


 にし、は恐らく「西」の事だろう。西の方には今でこそ無いが、元々は良化軍の簡易基地があった。無くなった理由は3時方面、つまり東の方から謎の武装集団によって襲われて、撃退したもののその場に滞在するのは危険と判断して撤退したのだ。この時、数十丁の銃器が奪われていた。シュリカはそれをシンに告白したのだ。

 シュリカの告白を聞いたシンは一瞬、バッグの中を探していた手を止めてしまった。


「何で俺にそんな事を・・・?」


 シュリカは悲しさが滲み出た小さな笑顔をシンに向けて答える。

 シンは一瞬止まっていた手を動かす。


「へいか・・・イワれて、シィン・・・・・ころす・・・ダッタ、です・・・。デモ・・・できナイ・・・」


「・・・・・」


 シュリカはシンの手にそっと触れていた。シンはその事に気が付き、シュリカの方へ見る。


「ワタし・・・ダレかに・・・いう、たい・・・です・・・」


 誰かに言いたかった。詳しい事こそ分からないが少なくとも罪悪感の様なものを感じていたのだろう。だから、敵であるはずのシンに自分が何をしたのかについて告白したのだ。

 シュリカはシンの静かに頬に手を当てて愛おしそうに見つめた。


「あなタ・・・フシギ、です・・・・・。ワタし・・・あなタ、いう・・・○○○○・・・○○○・・・○○○、です」


 一部の言葉が完全に異世界語だった。貴方は不思議な人だ。私は貴方だと何か打ち明けても良いと思ってしまう、だろう。本当に、完全にシンの推測だ。もっと悪く言えば勘だ。ただ本当にこう言っている様に思えてならなかった。


「・・・シュリカ、もう分った。分かったからそれ以上喋るんじゃない」


 出血こそあまりしていないにも関わらず、シュリカの顔色は増々色を失っていく。これ以上話す等のアクションをとってしまえば体力を消耗する。当然それは命を削る行為だ。

 シンはそれ以上喋らない様にシュリカに言うがシュリカは静かに微笑みかけて続ける。


「・・・ワタし・・・シィン、ノ・・・くに・・・ミタカ・・・た、です・・・。ワタし・・・シィン・・・・・ミタ、とキ・・・」


「もう喋るな・・・っ!」


「○○○○」


「・・・!」


 シュリカは静かに瞼を閉じた。シンは少しずつ目を大きく開いていく。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 シュリカが言った言葉。


 ルビ・ダ・イー


 シュリカが棲んでいた言葉。公式設定資料集では




 その意味は




「あなたを愛している」




 シンはシュリカの髪をサラリと撫でて岩陰にそっと寄せた。


「・・・・・」


 シンはゆらりと立ち上がり、岩の物陰から姿を現した。


「○・・・?○○○○○!」


「○○○○○○○○!」


「○○○!」


 シンの存在に気が付いた7人は二ヤ~と嗤いながらシンの方へ銃口を向ける。恐らく王族の・・・自分の奴隷が殺されたというのに一瞥もしない。そんな7人の方にシンは低い声で


「失せろ・・・」


 そう言い放ち、眼光は鋭いものになり、明らかな殺気を放っていた。


 ジャキンッ…!





 一周間経った頃。ギャター王国は国王が殺され、軍関係の施設や武器の破壊により、国家としての機能が半分以下に下がった。そのお陰で良化軍は特別戦闘になる事は無く、モロッコ奪還に成功した。


「あ~、これで久しぶりに家族の所へ帰るぜ」


「特に何もする事も無かったな・・・」


「俺の愛しのマリリン・・・待ってろよ・・・」


「次はコンゴか?」


「あ~くそ、俺はエジプトかよ・・・」


「久しぶりにタコス食いてえなぁ」


 モロッコに来ていた良化軍の兵士達はモロッコ奪還に成功して、次に任務に向かう者や長期休暇を手に入れる事が出来た者に分かれていた。

 今シン達、良化軍がいる所はモロッコのラバトのムハンマド5世廟の近くにキャンプと都市の一部を活用して拠点として構えていた。

 ムハンマド5世廟とは、モロッコの国王であったムハンマド5世の霊廟の事だ。1971年に完成し、ムハンマド5世の2人の息子であるハサン2世とアブダラーも収められており、ハサン2世は1999年に埋葬されさている。

 ムハンマド5世廟の内部は異世界から持ち込まれたであろう貴金属や宝石、何かの巻物等、貴重な物で埋め尽くされていた。元々あった棺やガラスのショーケース等は取り払われて、別の部屋にあった。だが、乱雑に扱われていたせいで状態が悪かった。その他の部屋ではガラスや壁の一部等の瓦礫が辺りに飛び散った部屋等がシンの目に入る。荒れた部屋には辺りに血痕が付着して、決して少なくなかった。

 モロッコ奪還の一番の功労者はシンだった。


「・・・・・」


 シンがキャンプ内で歩けば自ずと兵士達の方から気軽に声を掛けられてくる。


「おっ英雄様のお通りだ」


「シーンっ!俺の休暇ありがとな!」


「モロッコ取り返してくれてありがとうございます!」


「おい、今度一杯行かねぇか?奢るぜ」


 良化軍の兵士達はシンに対して感謝の言葉がほとんどだった。だが、これは仕方がない事だ。今のこの世界の元々の住人だった者達に取ってシンは希望の光の内の一つだったからだ。

 その上今回は成り行きであれモロッコを取り返す事に成功した。北アフリカでは元々のアフリカ人や異世界からの第三勢力との紛争や大規模な戦争により、かなり荒れていた。それはモロッコも決して例外ではなかった。だから今回のシンが行った事はかなり大きかった。


「しっかし・・・あいつらって、結局魔法とか使わねぇのな」


「ああ、銃とかばっかに執着してよ、自分の(とこ)の子供で殺させてさ」


 良化軍の兵士達、全員が思っている事を口にする。


「「「やっぱ、あいつらテロリストじゃん」」」


 シンはそんな兵士達が常々に思っている事を聞いて、そのまま自分の上官のキャンプへ向かった。





「失礼します」


 シンは上官がいるキャンプの前にいた。ドアではないのでノックはしなかった。


「入ってくれ」


 声が返ってきた。


「失礼します」


 シンはそのまま入る。そこには椅子に座って書類と戦っている今にも真面目そうな顔をした中年の男がいた。この男がシンの上官だ。


「すまん、連中がここでやらかした事についての書類のまとめや目を通さなければならん書類があるので、この状態で聞かせてもらうぞ?」


 上官は小さな溜息を付いてシンに声を掛ける。


「まずはシン、何か言う事はあるか?」


「はい・・・自分の任務を放棄して勝手に戦闘行為を行った事について大変申し訳ございませんでした・・・」


 シンは力なくそう答える。その言葉を聞いた上官は種類に目を通しながら答える。


「本来なら軍法会議もんだが、成果の方が良いからな。更に上からお前への罰は軽いものにしろとの仰せだった」


「・・・・・」


 シンは何か答える事なく、ただ黙って上官の言葉に耳を傾ける。


「だから、お前には謹慎と言う7日、一週間の休みを与える。褒美は今までの6倍の給料だ。」


「・・・はい」


 シンはまた力なくそう答える。そんな様子のシンに上官は持っていた書類を机の上に置いてシンの顔を覗くように見る。


「お前のお陰で、モロッコを取り戻す事ができる算段が出来た。よくやったな」


 少し疲れて、無愛想に近い顔だが、穏やかな口調でシンに労いの言葉を贈る。


「ああ・・・」


 それでもシンは力なく答える。しかもぶっきら棒気味に。そんな言い方でも上官は何か異を唱えるわけでも無く、穏やかな口調のままでシンに休む様に言った。


「・・・何があったのかは知らんが、ゆっくり休め。今から休め。()()()()()だったろ?」


「・・・・・・・ああ、そうですね。・・・少し・・・疲れました。分かりました・・・。今から休みます・・・」


 シンは力なく答える。上官は心配そうにシンを見ていた。


「体に気を付けろよ」


 上官はそう言ってシンを退室するまで見送った。


「失礼しました・・・」


 シンが退室すると、上官は深く溜息を付いた。


「しかし、たった一人で国王を消して、主力の軍事施設を潰すとはな・・・。一体何が起きたんだ?」


 上官はそう呟きながら机に置いた書類をもう一度目に通した。

 シンは、7人の国王らしき人物と取り巻きらしき者達を抹殺して、そのまま軍事拠点を潰しまくった。シンに武器を向ける者は全員殺していった。

 そのお陰で、モロッコは取り戻す事が出来たのだ。






「・・・・・う・・・ぅ・・・?」


 目に映っていたのは青空や自分が知っているような天井では無く、赤く柔らかそうな布がシンの方に向かって少し膨らんだ変わった天井だった。

 体全体が布と柔らかい感触に包まれていていた。

 これらの事からファンタジー等で出てくる小さい頃、女性が誰でも憧れる赤と黒を基調とした天蓋付きベッドで眠っていたのだと気が付いた。


「ここは・・・」


 辺りを見渡そうとした頭を動かした時、シンの頬に何か小さくて冷たいものを感じた。


「・・・何で・・・涙が?」


 シンの目から少し前に流れたと思われる涙が頬を伝っていた。シンは訳も分からず、涙を拭った。その時シンの目にはある物が映った。


「・・・?」


 シンの手首には白い糸が見えた。外したはずの糸がまた巻き付いていた。これはどういう事だと思い体を起こす。


 ビンッ…


「は?」


 上半身を起こす事は出来たが両手首に白い糸が巻き付けられて、四隅にあるベッドガードに繋がれていた。また、両足首にも、同じく白い糸が巻き付けられて同じくベッドガードに繋がれていた。部屋をよく見渡せば糸があちらこちらに無数の糸を張っていた。恐らく鳴子の様なものだろう。この糸のせいでシンはベッドから離れる事が出来なかった。

 これらの状況を理解したシンは、やっとこの状況になってしまったのかを思いだした。


「・・・ああ、そうだ。そうだった・・・」


 入浴の後、シンの裸を見たステラに白いシャツと黒いズボンを渡されて着替え、この部屋に案内された。だから起き抜けの今の服装は白いワイシャツに黒いズボンだった。ステラが案内を終えた後、1時間位たった頃、サクラがこの部屋に入ってきて、シンの四肢を拘束と部屋中に鳴子を仕掛けられた。それをしたサクラは勝ち誇った様な笑みを浮かべて、そのまま部屋から出て行った。少しの間、呆気に取られていたシンはここで変に行動起こすよりも大人しくした方が良いと考え、仕方なくここで就寝したのだ。

そして現在に至る。


「あー…結局朝まで眠ってたのか」


 シンがそう小さな溜息を吐く。その数分後、この部屋のドアが開いた。


 ガチャ…


「やっと起きたか、シン」


 入って来たのはサクラだった。


「ああ、おはよう」


 少し不機嫌そうに答えるシン。


「何だ?随分不機嫌そうだな」


「そりゃあ、この手首についている物さえなければな・・・」


 それを聞いたサクラはカラカラと笑う。


「お前が何か答えるまでそれは外すつもりは無いからな?」


「あっそ」


 サクラは、シンがどういう訳か両手首の拘束をいとも簡単に解いた事に興味を持っている。シンとの軽い戦闘での手首の異様な動かし方と何か関係がある、サクラはそう考えていた。

 シンはサクラのそんな事を考えているのだろうと考え、無闇に変な行動は慎み、様子見に徹していた。


 ポタッ…ポタッ…ポタッ…


 丁度その時、窓に小さな水滴が付いていた。サクラとシンは窓を見ると、空は全く曇天では無く晴天だった。そうであるにも関わらず、軽く雨が降っていた。


「何だ?雨・・・か?」


 サクラがそう珍しそうに答えるとシンは思わず訊ねてしまった。


「サクラは狐の・・・天気雨を見た事が無いのか?」


 狐の嫁入り、と言う単語自体知らないだろうと、考え、より、ポピュラーな単語である、天気雨と言って訊ねるシン。


「何だそれは?」


「あ~…雨雲が動くか、消える時にこういった雨が降るんだ」


「そうか、天気雨・・・か。そう言えばシンはさっき、狐・・・とか何とか言っていたがあれは何だ?」


「ああ、天気雨を別の言い方で「狐の嫁入り」とも言うんだよ」


 自分の事ではないからすんなりと答えるシン。それを聞いたサクラはもう一度窓の方へ向き、狐の嫁入りを見ていた。


「ふ~ん・・・まるで青空が泣いている様に見えるな・・・」


「・・・・・」


 シンは大きく目を見開きサクラを瞳に映した。サクラはただ何気なく見ていた。本当に何気なくだ。だが、そんなサクラにシンは見とれていたと言って良い程ジッとサクラを見ていた。


「ん?何だ?」


 視線を感じたサクラはシンの方へ向き訊ねる。


「いや、何でもない・・・」


「・・・そうか」


 サクラはシンに何かいう訳でもなく窓の方へ向き、狐の嫁入りを眺めていた。シンも無言で狐の嫁入りをジッと眺めていた。

 狐の嫁入りはすぐに止む事が多い。日本でもよく見る光景だ。シンにとってそれは当たり前の事だった。

 だが、この狐の嫁入りは目を離す事が出来なかった。


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