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アンノウン ~その者、大いなる旅人~  作者: 折田要
ジンセキ
102/396

100. 大きな狼煙

 ジンセキに来て早1ヶ月半。ジンセキの後方支援がほとんど出来ていた。そのおかげで地下に巨大野球ドーム10個程がすっぽり入る位の広い空間ができており、格納庫として使用していた。その空間のど真ん中に灯りを照らされてシン達が立っていた。そのせいで辺りは少し薄暗かった。


「・・・・・・・」


 ど真ん中に照らされていたシンの服装は以前とはかなり違う物になっていた。

 赤い筋の入った黒のワークキャップを被り、フード付きでポケット多めのノースリーブ の黒いYシャツ。

 その上から短ランの様なスマートなミリタリージャケットを着こんでいた。

 ズボンは膝より下の部分には分離できるようにチャックのついた着やせするスマートなデニムの様なカーゴズボン。

 左の腰部分にはホルスターが固定され左手で即座に「LP」を抜く事ができるようになっている。当然「LP」をすぐに取り出せるようにミリタリージャケットの前は開いている。

 また後ろの腰にはタクティカルポーチが付いておりその中には「LP」の6つの変えの弾倉・・・電池とグレネードが入っていた。

 そして黒のブーツを履いていた。


 そんなシンの周りにはリーチェリカ達が集まっていた。そんな集まっている中、リーチェリカはシンに声を掛けた。


「若~、前に作った通信機の調子はどう~?」


「ああ、良好良好。問題無し」


「若の身体でも問題()う使えるんやなぁ~」


「ああ。俺は最初、お前が何を言っていたのか分からなかったけどな」


「せやけど試してみて問題無かったやん~?」


「うん」


 リーチェリカはシンとアカツキとの連絡が取れる通信機を他のアンドロイドやA.Iの様に体に装着してみてはどうかと提案してきたのだ。シンは最初何を言っているのか分からなかったが、その後じっくりとよく考えてみれば手術する必要なく体に取り込む事ができる事に気が付いた。シンは、大きさは厚さ3mm大きさ1cm程の外装がプラスチック製の通信機を右耳裏に通信機を埋め込む様な形で取り込んだ。正確に言えばシンの右耳裏にある骨は当然BBPである為、それを表面に出して、通信機を入れて元の状態に戻した。これだけでアカツキとの通信ができるようになる。

 因みに通信機はワイヤレス充電で「磁界共振式」だ。「磁界共振式」とはコイルを向かい合わせに置いて一方に電源を接続して給電し、もう一方のコイルで受電する方法なのだが、これに更に受電側でも同じ周波数で共振する回路にすると、受電側コイルが共振してエネルギーを生み出す事ができる方法の事だ。

 通信方法は前の首に装着できるタイプと同じく骨伝導式だ。


 シンは念の為にアカツキとの連絡ができるかどうかを確認した。


「アカツキ?」


「おう、聞こえているぜボス」


「よし、問題ないな」


 問題無い事を確認したシンは集まった皆の方へ向いた。


「「「・・・・・・・・・」」」


 ゴォォォォォ…


 キィィィィ…


 シュー…


 シンの周りではエンジン音や何かの機械の音、蒸気を発する様な音が鳴り響いていた。その場にいる面々は当然生きている者は居ない。ほとんどがアンドロイドかA.Iだった。しかも、リーチェリカとグーグス以外の人型のA.Iや乗り物ビーグルがシンの前に集まっていた。


「皆集まったな?」


 集まったスタッフは全員頷く。それを見たシンは漸くここに集めさせた理由について口を開く。


「皆よく集まってくれた。ありがとう」


「とんでもございません」


 低くドスのきいた男の声。その声のする方向には、薄暗くてよく見えないが、人影からだった。更によく見れば少なくとも2mを超える人型のアンドロイドである事だけは間違いなかった。


「その通りだぜ。気にすんなよボス、さっさと始めようぜ?」


 そんな軽い男の声で話していたのは、飛行機のエンジン音がする方向にいた者だった。男の声の時の様にシルエットが分からない程にまで奥の暗い方に居た為、姿が全く分からない。


「そんな言葉遣いでボスに気安く話しかけるな」


 今度は真面目そうな男の声がした。飛行機のエンジン音がする方向とは別の方向にいた者だった。薄暗くてその物姿は見えないが音で判断すれば自動車のエンジン音がしていた。つまり、その物は自動車のエンジン音がする方向にいた者だった。軽い男の声の時同様、こちらも奥の暗い方に居る為シルエットでさえ分からない。


「あ?そう言うお前は堅苦しくて重てぇんだが?」


「お前こそ、そのつまらん大雑把さがボスに移ったらどう責任を取るんだ?」


「あ“?」


「お“お”?」


 犬猿の仲。水と油。売り言葉に買い言葉。

 そんな2人・・・と言って良いのかどうかは分からないが、取敢えずその2人は一触即発の喧嘩一歩手前になっていた。


「・・・・・」


 シンは呆れて小さな溜息を付いてからすぐに注意しようと口を開きかけた時の事だった。


「クロハバキはんとソラギリはん~?」


「「!」」


 リーチェリカが先に声を掛けたのだ。


「別にね、仲良うして欲しいやらそないな事を言うてるわけちゃうんやで~」


「「はい」」


 クロハバキとソラギリは力なく返事をする。もし人間であれば正座されられただろう。


「たやなあ、ギャアギャア騒がんといてほしおす、て言うてるの~」


「「はい・・・」」


 するとリーチェリカはクルっと後ろへ振り向き箱の中からある物を取り出す。


「まぁ、どないしても仲良うできず騒ぐんやったら~・・・」


 ギギギギギギ…


 ドッドッドッドッドッドッドッ…


 ゆらりと後ろへ振り向くリーチェリカ。


「私無理やりにでも仲良うさせるさかいね~」


 持っていたのはチェーンソーだった。しかもエンジンが稼働していた。表情はニッコリ笑顔だったが、笑顔特有の細い目は決して目は笑っておらず濁った様な目で殺気を醸し出していた。


「分かった~?」


「「はいっ!」」


 リーチェリカの言葉に対してクロハバキとソラギリは間髪入れず大きな声で短く返事をした。もし人間であれば体をピシッと気を付けの姿勢になっていただろう。

 つまりリーチェリカが言いたいのは「無理やりにでも仲良くさせる」は「仲良く解体してゴミ箱(バラしてあの世)に送ってあげる」と言う意味だった。

 その意味を感じ取ったのかクロハバキとソラギリは間髪入れずに返事をした。


「ほな、話を進めて~」


「ああ」


 シンは何事も無かったかの様に話を進め始めた。


「この島、ジンセキを開発して1ヶ月以上経つ。その間に俺への後方支援ができる様になってほとんど確立できたと言って良い」


 シンがここまで言うとリーチェリカはニッコリ笑っていた。


「ついに俺は・・・いや俺達は旅を再開する事ができるようになった」


「「「おお~・・・!」」」


 リーチェリカは右手を強く握ってガッツポーズを静かにとっていた。


「そして俺達にはやらなくてはならない事がたくさんある」


「「「・・・・・・」」」


 肯定するかのように沈黙が流れた。


「俺達この世界の事は何も知らない。そこで最初にする事は情報収集だ。情報収集は俺とグーグスとリーチェリカで行う」


「承りました」


 グーグスは恭しく一礼する。


「了解や~」


 リーチェリカは手を頬に当てていた。


「基本的に例の超大陸内での活動は俺とリーチェリカとグーグスで行う事になる」


 シンがそこまで言うと誰も何も言わなかった。只々静かにシンの話に耳を傾けていた。シンはグーグスとリーチェリカの方へ向いてこれからする事を話した。


「情報が手に入り次第、その都度、グーグスとリーチェリカには商品の流通の確保、素材の確保、米や大豆等の食料の確保等々を行ってもらう。これが当面の間の俺達の旅の小目標だ」


 グーグスとリーチェリカは静かに頷く。シンは補足する様に話を続けた。


「自分達の能力や武器の性能を調べる為に俺、グーグス、リーチェリカ、ディエーグでこの世界にあるダンジョン、或いは盗賊の塒か奴隷商人のアジトに1人ずつ潜入して踏破する。活動する期間は22時~4時までとして頻度は問わない。ただし、少しでも怪しまれたらそこで終了とする」


 シンはディエーグというアンドロイドの方へ向いた。その方向は低くドスのきいた男の声がする方向だった。どうやらディエーグとは、大柄な人型のアンドロイドである様だ。


「ディエーグ、それでいいか?」


「拝承」


 ディエーグはそれだけしか答えず他は何も言わなかった。シンはリーチェリカとグーグスに盗賊の塒か奴隷商人のアジトで手に入れたものの事について話した。


「基本的にリーチェリカとグーグスは資金集めと素材集め、俺の許可が必要になるが、・・・誠に、本当に、全く持っっっっっ・・・・・・・・・・・て、不本意だが、実験用の人間も確保する為に盗賊と奴隷商人の件はリーチェリカをリーダーとして任せる」


「え、またそれ?」


「グーグス、しっかりリーチェリカの監視してくれよ?」


「畏まりました」


「え、うち無視?」


 リーチェリカのツッコミが入るがシンは無視してグーグスに勝手な事しない様に監視を言いつけた。そんなやり取りをするとリーチェリカは再びむくれたような顔になる。

 そんなシンは構わず軽い男の声の方と真面目そうな男の声のする方向へ向いた。


「ソラギリは俺からの要請で近接航空支援を頼む。場合によっては移動の際も頼む」


 どうやら軽い男の声の主はソラギリと言うそうだ。確かに名前の事に関して一切否定しなかった。

 シンの言う近接航空支援とは戦闘可能な航空機による火力支援目的に行われる航空作戦の事だ。つまり、シンからの要請があれば現地に赴き戦闘支援を行う、という事だ。


「いいぜ」


「クロハバキは基本的に俺の「足」だ。だが、状況によっては戦闘支援か補助も頼む事になる」


「問題ない」


 逆に真面目そうな男の声の主はクロハバキという様だ。その証拠に名前の事に関して一切否定しなかった。


「フリューは俺や物資の輸送が主だ。それでいいか?」


「戦闘支援は?」


 どこにでも居そうな若い男の声。この場では聞かない声。どうやらフリューと言うそうだ。会話から鑑みるにどうやら航空支援のスタッフの様だ。


「場合によっては必要になる。ただ、お前の場合は自分の脅威となる対象を排除か一時撤退を優先してくれ」


「了解」


「残りは俺が特殊な支援が必要と感じた時まで待機だ。取敢えずそれでいいか?」


「「「了解」」」


 ほとんどの指示は大雑把だった。であるにも関わらず、シンの言った言葉には誰も反対しなかった。

 シン自身は生活基盤ができて、可能な限り臨機応変に対応できるようにした為、ジンセキそのもの自体のシステムは構築済みと言って良い。

 その為、今後の目標の全てはシンが旅をするに当たって有利に推し進める為のものばかりだ。

 だから、目標の意に沿えば良いので大雑把で少々杜撰が目立つような指示があっても問題ない。更に言えば、シンやスタッフは基本的に臨機応変に対応できる為ほとんど問題ない。だから、こんな指示であるにも関わらず対して反対の意見が無いのだ。


 ・・・中にはそれを利用しようとする者がいるにはいるのだが。


「後はこの世界で旅をする事で必要なモノは作っていく、という形で行く。それで全員に聞きたいのだが、今の所これが不足している、もしくはこれが必要と思うものを上げてくれ」


 シンがそう言うと真っ先に手を挙げたのはリーチェリカだった。


「捕まえてきた人間を実験の許可・・・」


「他にはないか?」


「ん~まだうち話してへんのやけど~?」


 シンは明らかに自分の知識欲を満たされる為の人体実験の許可をとろうとしていた事を見抜いた。当然声を挟む形でリーチェリカの要望を却下した。


「あ~ボス?」


「お、アカツキか、何だ?」


「前から思っていたのだが、数での武力面で地上しかないだろ?海上面と航空面はカバーしないのか?」


 スタッフで数による武力・・・この場合であれば暴力になるが、地上面では一応カバーできている。しかし、海上面と航空面は出来ていなかった。

 もし、相手が数による武力行使をしてきた場合、こちらでも数による武力行使が必要になる場合がある。となれば陸海空でそれぞれ必要になる。


「そうだな、何とかしようか。他には?」


「「「・・・・・・・・・」」」


 シンは数による武力の海上面と航空面に関して改めて作る事にした。そして他に提案はあるかどうか尋ねる。だが、誰も何も言わなかった。シンはもうないと判断した。


「じゃあ最後に・・・」


 シンはさっきまでとは違う神妙な顔つきになる。その様子を見たスタッフ全員はピンと張り詰めた空気を漂わせた。


「この先、俺達が「明日も笑っていられる」とはならないかもしれない」


「「「・・・・・」」」


 シンは少しウロウロする形で歩きまわりながら話す。スタッフ全員は静かに聞いていた。


「だが、その時は明後日には倍笑えるようにすればいい」


「「「・・・・・」」」


 シンは歩みを止めて、徐にスタッフ全員に背を向ける。


「しかし、明後日には倍笑うには俺だけでは難しい。だから・・・」


 シンは後ろへ振り返りスタッフ全員の方へ向いた。


「皆俺に力を貸してくれないか?」


 シンの真剣で真直ぐな目を浴びたスタッフ全員。その様子を目の当たりにしたスタッフ全員は一斉に


「「「了解!」」」


 と答えた。その答えにシンは少しほっとした顔になる。


「ありがとう、頼んだぞ」


「「「はい!」」」


 後方支援等、ほぼ全ての準備を整え、シンは・・・シン達は再び旅をする狼煙を上げた。


「シャッターを」


 シンがそう言うとシンの後ろから大きなシャッターが開いた。


 ゴウンゴウンゴウンゴウン…


 キィ…ガラガラガラガラガラガラ…


 シャッターから漏れ出す、閃光のように感じる程の外の眩い後光がシンの背中に射した。




 この時、この世界の歴史は大きく動いた。




 様々な伝わり方をして、良くも悪くも、あらゆるものが大きく変わるきっかけを作った者。


 時には敵として


 時には英雄として


 時には魔人と呼ばれ


 時には賢者と呼ばれ


 時には巨人


 時には黒き者


 そして、この世界のあらゆる者達から畏敬と親しみを込めて、後にこう呼ばれるようになる。





「大いなる旅人」と―――


丁度100話で取敢えず、ジンセキ編が終わりました。


祝!100話目!!自分、おめでとう!!!


この小説を初めて投稿したのはおよそ2年前です。もうほとんど気ままに書いて投稿しようという軽い気持ちで初めていつの間にか100話になっていました。

もう、切りがよろしいので、今回で「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」はこれで終わりになります。





































































という事には決してありません!


実際まだ伏線も回収も出来てませんし、このまま終わりますと読者の方々も、何より私、作者が全っっっっっっっっく納得いきませんっ!


という事ですので当然と言いますか、絶っっっっっ対に続きがありますので、いつ投稿ができるのかは分かりませんがご安心して次回の話をお楽しみにしてください。

こんな行き当たりばったりな小説ですが今後とも「アンノウン ~その者、大いなる旅人~」をよろしくお願いいたします。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

次回をお楽しみに!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白い [気になる点] 後書きが… [一言] ここまで読んで気に入っているので、まだ読めていませんが最新話の先…完結までいっていただけたら幸いです。
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