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第1話 源六、新之助、頼方と名を変えて

時は、幼き日の吉宗こと、源六が生まれてからほどない頃。紀州藩では、その源六の世話係として、誰か適当な者はいないか、と、人材を募っていた。


僕は、この話の主人公となる、吉宗崇保(よしむねたかやす)という、どこにでもいるような、そして、これといった取り柄のないような、男子中高生。


しかし、ある日突然、原因不明のめまいに襲われ、命を落とす。

そして、気がついたら、江戸時代の紀州藩に来ていた。

紀州藩とは、徳川御三家の1つで、現在の和歌山県にあたる。

そして僕は、なぜかその紀州藩に仕官(しかん)することを夢見る浪人者、脇田久次(わきたひさつぐ)として、ほうぼうを転々としたあげく、この紀州藩の和歌山城にたどり着いたという顛末(てんまつ)だった。


その紀州藩で、源六君(げんろくぎみ)の世話係を募集しているということで、この僕、吉宗崇保(よしむねたかやす)改め脇田久次(わきたひさつぐ)も、その場に駆けつけた。

すると、そこには、大勢の希望者の浪人者たちが、すでに集まっていた。

「うわあ…。こんなに集まっているのか…。」


すると、その中の一部の浪人者たちが、いざこざを始めていた。

脇田久次は止めに入った。

「おい!やめんか!」

「うるせえ!黙ってろ!」

ドスッ!ドササーッ…

しかし、あっさりと突き飛ばされてしまう。脇田久次は頭にきた。

「このやろーっ!」

そう言うなり、いざこざを起こしていたその浪人者たちを、あっさりとこらしめてしまう。

「なんだ!なんだ!この騒ぎは!」

そこに担当の藩士が入ってくる。脇田久次はただちに事情を説明する。

すると、その藩士は、たいへんものわかりがよく、おしおきなどもされずに済んだ。


そして、なんと、あっさりと、源六君(げんろくぎみ)の世話係に、脇田久次が任命されてしまうのだった。

「と、いうわけで、脇田久次とやら、ぜひとも、こちらの源六君(げんろくぎみ)の世話係をお頼み申したい。

心配いたすな。そなたならつとまる。源六君は、並の者では手のつけられない暴れん坊だが、そなたならつとまる!」


こうしてお望みどおりに、源六君の世話係に任命されてはみたものの、実は正直な話、まだ不安もあった。

「いえ、それは大変喜ばしいことではございますが、いきなりこのような形で、というのは何とも…。」

すると、世話係を担当するのは、実はもう1人いるという。

「心配いたすな。実は、もう1人、こちらの加納久通(かのうひさみち)と申す者が、ともに源六君(げんろくぎみ)の世話係をやってくれる。

わからないことなどがあったら、何でも、この加納久通(かのうひさみち)に聞くがよい。」

「そんなわけで、ともに源六君(げんろくぎみ)の世話係をやることになった、加納久通(かのうひさみち)と申します。」


ひととおりのあいさつを済ませて、源六(げんろく)、すなわち後の八代将軍吉宗公の世話係を任されることになった、脇田久次(わきたひさつぐ)

「えらいことになったぞ…。どうやら本当に、源六君(げんろくぎみ)の世話をすることになったようだ…。」


そして、脇田久次は、さらにもう1つ、源六君に剣術を教える、剣術指南役(けんじゅつしなんやく)の役割も、おおせつかったのだった。

「世話係といっても、実際のところ、身の回りの世話は、加納久通たちがやってくれるそうだ。

僕の方は、主に剣術指南役、つまり剣を教えていればいいということか…。」

こうして、源六こと、吉宗が八代将軍への階段を駆け上がっていく、その最初の一歩となったのだった…。




そして時は流れ、源六から松平新之助(まつだいら・しんのすけ)、さらには松平頼方(まつだいら・よりかた)と、成長するごとに、名を変えていくのであった…。それにしても、昔の大名とか、武将とか、旗本とかは、よくこうやって、名前を変えていったものだなと、脇田久次は思っていた。

そして、もちろん、自分が実は、はるか未来の時代から来た人間であるということなどは、誰にも明かしてはいなかった。


そんなことは、口がさけても言えません。もしバレたら、一巻の終わりであるということは明らかなのではないか…。

と、そのことを心の奥底にしまいながら、この時代の日々を過ごしていくことになる…。



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