第10話 やっぱり、質素倹約は大変だ!
紀州藩5代藩主に吉宗が就任したものの、当時の紀州藩には課題が山積み。
歴代藩主を相次いで失った悲しみにより、領国全体が重苦しい雰囲気に包まれていたのと、
それから、当時の紀州藩は、この頃から既に、財政難に陥っていた。
「何だこれは!?藩の米蔵も、金蔵も、からっぽではないか!
いったいこれはどうしたことなのだ!」
藩の家老に聞いた吉宗。
すると家老は、
「なにぶん、出費が多いものですから…。
参勤交代にかかる費用なども、ばかになりませんから…。」
家老はそう説明したが、吉宗は、
「出費といえば、そのほうは、たいそう豪勢なものを、着ておるな。
その金は、百姓たちが、毎年納めている年貢から、出ておるのだぞ。」
「はっ、それは…!
申し訳ございません。以後つつしみたいと存じます。
して、殿のお召しになっているものは?」
「木綿じゃ。とても着心地がよいぞ。
それにしても、百姓たちは、こんな着心地のよいものを、普段着として、着ておるのか!?
まったくもって、うらやましい限りじゃ!はっはっは!」
徳川吉宗とは、そういう人物なのであると、脇田久次、いや、前世にいた時には、どこにでもいるような、平凡な冴えない中学生、高校生だった、吉宗崇保=脇田久次は、思っていた。
しかしやっぱり、いくら財政再建のためとはいいながら、質素倹約というのは、やっぱり大変だ!
と、脇田久次は、思っていたのだった。
当然、食事も、着るものも、質素な感じになるということか…。
「あーあ、せっかく紀州藩主の側近の世話役にまでなったというのに、
食事も質素倹約、着物も質素倹約とは…。」
「それが、世のため、人のため、下級の家臣や、領民のためというものですぞ…。」
しかし、いくらなんでも、今晩のご飯のメニューが、米飯と、味噌汁には、野菜の切れはしがほんの少し入っているだけ、それと、ご飯のおかずがメザシ一匹だけというのは、なんだかなあ…。
藩の収入は、年貢米と、税金でまかなっているから、問題は、藩の支出ということになる。
必要な経費もあることはあるだろうが、まずは、経費を削減していくことになる。
要するに、支出が多いからだ。だから、いくらお金があっても、足りゃあしない。
とはいえ、この財政再建策で、紀州藩の財政は、ようやくどうにか、持ち直したといえる。