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天才魔武器職人の最高傑作シリーズ

最高傑作の結集

作者: aym

続き書いてみました。

 



 漆黒の大理石で造られた魔王城の一角に設けられた書庫、そこで本の塔に埋もれるようにして調べものをする少年がいた。

鮮血のような暗い緋色の髪に意思の強そうな深紅の瞳を持つ、静謐で妖しげな美貌を持つ美しい少年だ。

彼の開いている書物は、かつて約二千年以上前に栄えていた今よりも高度な文明を持つ《黄金時代》の様子を記した数少ない書物のひとつである。

なぜそんなものを調べていたのか、それは彼の仲間の存在が関係している。

二千年前、歴史上最も栄えていた《黄金時代》は特異点消失とそれに伴う大規模な魔力爆発の影響で殆んど壊滅状態に近く、それは沢山の魔道具や魔武器等の製品にも及んでいた。

特異点の奥深くに眠っていた世界四大鉱石である《アダマンタイト》《ダマスカス剛》《オリハルコン》そして《ヒヒイロカネ》の喪失もそのひとつである。

そしてその喪われた超稀少鉱石ヒヒイロカネで出来た伝説の魔武器、《断刀だんとう 神斬之紅姫かみきりのべにひめ》というのが少年の正体である。

つまり少年は魔武器が人に具現化した姿だ。

そんな彼のような魔武器が当時は他にも作られていたのだ。

《神斬之紅姫》を鍛えた当時鬼才と謡われた魔武器職人の最高傑作シリーズは、彼の覚えているだけで八点は存在する。

しかしこの時代で古代の遺物……アーティファクトの魔武器の噂は、残念ながら《神斬之紅姫》しか存在しないのだった。



《く、手懸かりとなりそうな情報が少なすぎるな……》



独特の金属音が混じったような清涼な声で紡がれる言葉は苦悩に苦々しく歪んでいた。

結局この三週間ばかり閉じ籠って書庫を引っくり返した結果得た情報はとても少ないものである。

だが、全く行方が知れていなかった頃よりも進展したのではないだろうか?

最高傑作の魔武器と思わしき目撃情報が三件ほどあったのだ。

その三つの魔武器とはーーーーーーーーーーー


智扇ちせん 星詠朔夜姫ほしよみのさくやひめ

漆黒のダマスカス剛の中に星座が煌めく神器。形状は鉄扇。かなりの斬れ味と魔法伝達性を誇り、身の丈を超える大きさを持つ。そして星詠みで未来を視ることができ、時空間魔法を操ることができる。


魔弾まだん 海神玉依姫わたつみのたまよりひめ

純アダマンタイト製の弩。矢は自身の魔力で生成する。その際に様々な効果を付与することができ、射程距離、命中率共に高い武器。そして死霊系の魔物に効果が高く、聖属性を帯びている。


風薙かざなぎ 志那都瑠璃姫しなつるりひめ

純オリハルコン製の薙刀で、空間を斬り裂く風圧の刃を出現させる。他にも竜巻を生み出して破壊力を上げることができる。そして破邪効果が高く、状態異常系の攻撃を無効にする。


という性能の魔武器たちである。

彼らともそれなりに自堕落で怠惰な良い関係を築いていたが、他の魔武器たちはどうしているのだろうか?



  ∞



 ーーーーーーーーーーーという訳で放浪の旅に出る。そのうち帰ってくるから探さないでほしい。



 そう綴られた書き置きを見て魔王ディアは床に崩れたのだった。Orz



  ∞



 旅とは言っても本気を出せば世界中のどこにいようと同胞の気配を探し出すことができるのだが……。

怠惰、自堕落をこよなく愛す睡眠の申し子(自称)たる俺はどうしてもこの手段を取りたくなかった。

何故なら三日間集中して気配関知の領域を拡げる必要があり、その間に少しでも気を抜いたら一からやり直し。

そんな根性と気力のいることなんかしたら干からびる自信がある。

しかし背に腹は変えられない、どうしても彼らと連絡を取らねばならないのだ。

そして、魔王城下街の宿屋で本気を出すことにする。



『お、お久~』


『む、このなんとも言えない気の抜ける物言い……お主は《紅姫》ではないか!?』



最初に関知に引っ掛かったのは《星詠朔夜姫》だった。

古臭いしゃべり方をする女性タイプの声である。



『うーわ………久し振りの気配に誰かと思えば、物草なお前が気配関知なんて珍しいな』



次に引っ掛かったのは《志那都瑠璃姫》、男のような低い声でからかうように話しかけてくる。



『おお~、これが噂の気配関知なのでありますね! あ、どうもどうもお姉様方、十六夜いざよいの名前は《異装いそう なよ竹十六夜姫たけのいざよいひめ》というのです。鎧タイプの魔武器なのですよ~』


『鎧タイプ……ということは父君が最期に手掛けた魔武器じゃったな。《紅姫》、お主があの辺境の森へ引きこもった後に父君が作り始めた魔武器じゃ。妾らの末の妹じゃな』



あの歴史の分岐点が起こるほんの数ヵ月前に俺は人型に変化してあの妖精の森へ出向いたのだったか。

その後に作られた魔武器なら知らなかったのも無理はない。



『そうか、俺は《断刀 神斬之紅姫》男性タイプの刀の魔武器だ』


『よろしくなのですよー異端のお兄様』


『え、異端?』



なにそれ?



『お前、魔武器なのに人型になったり、ふらっと親父のもとを離れたり、一番能力が高いのに全く本気を出さないし、だから異端なんじゃね』


『えー…………まぁいいや。ーーーーーーー……お、最後の魔武器に当たった』


『おぅ、久し振りだな妹たち。ってか、五つしか生き残ってないか~』



最期に見つかったのは《海神玉依姫》、俺と同じ男性タイプの魔武器で一番最初に作られた長男である。



『久しいな兄君。妾たち以外の魔武器は特異点消失と共に消え去ったわ。これはやはり純魔武器と魔鉱石魔武器の違いかえ?』


『え、あいつら消えたのか? くっそー、《翡翠姫ひすいひめ》の奴と賭けてたのに……』



《朔夜姫》と《瑠璃姫》の会話に俺は他の魔武器たちの状況を理解する。

ここにいる俺たちは純魔武器と呼ばれる魔武器で、優れた一つの鉱石のみを使用して作られた魔武器であり、その他の魔武器たちは魔鉱石と呼ばれる錬金術で生成された鉱石を使用した魔武器だ。

というのも俺たちみたいな世界四大鉱石と呼ばれる鉱石は加工に向かないと言われている。

生産の神の加護と最高の技術力を持つ鍛治師が、稀に鉱石そのものに語りかけられてその鉱石の望む姿に鍛える、そんな奇跡のような加工方法であり、魔武器とするにはそれに加えて鍛治師に負けないくらいの最高の魔武器職人が一緒に魔武器の核となる魔核を埋め込む必要がある。

当然そんな魔武器を幾つも作れるはずがなく、俺たちを作った魔武器職人も純魔武器は生涯で五つしか作れなかった。

因みに《十六夜姫》はミスリルの純魔武器であり、四大鉱石よりは稀少価値は落ちるものの鉱石としては優れたものだ。

それに反して魔鉱石は四大鉱石に混ぜ込むことで加工しやすくするのに加え、他の優れた鉱石を掛け合わせることもできるようになる。

魔武器職人もこの鉱石が発明されてからは専らこの鉱石を使った魔鉱石魔武器を作っていたので、四大鉱石の純魔武器は最初期の最高傑作シリーズでしか見られない。

つまり、特異点消失で消失した技術、錬金術を用いて作られた魔鉱石の魔武器たちは爆発の影響で消え去り、魔核によって魔武器として変質した俺たちは他の地下に眠る鉱石のように喪失しなかった。

俺たち以外の魔武器は特異点消失と共に喪失したのだ。



《そうか……。《慈愛銃じあいじゅう 天照翡翠姫あまてらすひすいひめ》に用があったんだけどなぁ……》



彼は恵みの雨を降らせることができるから、あの件をどうにかしてほしかったのだが……。

これは諦めるしかでき……ぬ! 否!! そんなことは有り得ない!!!

日本人のソウルフード、米の普及は異世界食生活において必須事項だ。



《……おぉ、そうじゃ、忘れるところじゃった。《紅姫》よ、お主は人型になれるのであったな? ならば妾を回収しに来てもらえぬか?》


《ん、いいけど《朔夜姫》はどこにいるんだ?》


《ヴェノム教の宝物庫じゃ》


《うええー》



ヴェノム教とは二千年前に起きた魔力爆発の後で興った宗教で、今では人類種の殆んどがこの宗教に入信している最大勢力の宗教である。

その教えは世界樹信仰で、魔力の元となる魔素を世界に巡らせている巨大な御神木の上に我々の世界が栄えているというものだ。

そして二千年前に起きた爆発は異種族たちが世界樹の逆鱗に触れたからで、人類種以外の種族は世界樹の害悪なので選ばれた人類種が異種族を駆逐しなければならない、と教えている馬鹿げたものだ。

実際に魔力爆発を起こしたのは人類種なのだが、都合良く事実を曲げている。

何時の世も人間は愚かなのだろう。

そんなヴェノム教の宝物庫には幾つかの古代遺物アーティファクトが納められており、その幾つかは黄金時代の骨董品である。

どうやら《朔夜姫》はその予知能力から神具扱いされて厳重に保管されているのだそうだ。



《カビ臭くて敵わぬ。はよ、助けてくれぬか?》


《だったらオレも頼むぜ。どうやら爆発に巻き込まれて地下に沈んじまったみてぇでよ》


《むむ、ならば十六夜もお願いするのです。十六夜は《迷宮ダンジョン》の最下層に囚われているのです》


《おお、なら俺もな。津波に流されて海底に沈んでんだよ。そろそろふやけて錆びちまいそうで……助けてくれ》



口々に助けを求めてくる同胞たちに俺は溜め息を吐いた。

またしちめんどくさいところにいるんだな。



《わかった。取り敢えず回収はするから、大人しく待っててくれ》



面倒な労働の予感に怠け主義者な俺は憂鬱とするのである。




 それから、ヴェノム教の教皇の前に美しい一振りの刀が現れることになるのだが、それはまた別の話になる。





お粗末様でした。

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