前編
グロテスクと言うほどではありませんが、たまに流血表現があります。
苦手な方はご注意ください。
むかしむかし、あるところに王様がいました。
王様は大きな国を治めていて、国の中心にある立派なお城に住んでいました。
御殿の庭は瑠璃の石が敷き詰められ、大理石でできた大広間には真っ赤な絨毯が敷かれていました。
金の玉座に座り、立派なあごひげを湛えた王様は、なんでも持っていたのです。
欲しいものがあれば、家来に探させ、必ず手に入れました。気に入らない者はすべて殺しました。
戦争はめっぽう強く、今まで幾つもの国を打ち負かしてきたのです。
けれど、それすら飽きてしまった王様は、玉座に座り、今日も面白いことはないかと退屈そうに頬杖をつくのでした。
「王様、贈り物が届いております」
家来が三人、たくさんの包みを抱えてやってきました。
王様の元には、毎日のように数えきれない程の贈り物が届きます。
家来の持ってきた包みは、大きい物や小さい物まで様々でした。
「あけろ」
表情もかえずに王様が答えると、家来たちはお辞儀をして、丁寧に包みをあけ始めました。
王様の目の前に、次々に贈り物が並んでいきます。
ガラスできた木馬、夜空に星々を散りばめたようなマント、色の変わる薔薇の花。
美しい品々は、大広間を華やかに彩ります。
並べていた家来たちは見惚れるようにため息をつきました。
しかし、王様は贈り物を一瞥すると、つまらなそうに口を開きました。
「すべて宝物庫へ」
家来たちはハッとしたように顔をあげました。
「かしこまりました」
そう答えると、いそいそと贈り物をかき集め、抱きかかえるようにして部屋を後にしました。
残された王様は、ふんと鼻をならします。
「何も面白くないわい」
そう言って、すぐ横に置いてある止まり木に目を移しました。
そこには金色の鷲がいて、王様のすることをじっと眺めているのでした。
「おい、金の鷲よ」
「なんでしょう」
「私は退屈でたまらないのだ」
「いつもの狩りをお望みで?」
鷲は賢そうな目で尋ねました。
王様は小さく微笑みます。
金の鷲は、東の国の王から送られたもので、数多の贈り物の中で、王様が唯一気に入っているものでした。
なぜならとても美しく、とても強かったからです。
金の鷲は王様の言うことにいつでも頷き、望めば様々な動物を捕まえてきました。
今夜は兎の肉が食べたいと言えば、兎を殺して持ってきたのです。
最初のうち、鷲は獲物を殺して連れてきましたが、王様はそれもつまらなくなり、生け捕りにしてくるよう命令しました。
金の鷲はきちんと命令に従いました。獲物を生け捕りにし、王様の言う通りに目の前で八つ裂きにして見せたのです。
王様はいつも退屈でたまりませんでしたが、この鷲が動物を八つ裂きにするところを見るたび、少しだけ楽しいと思えるのでした。
胸の奥には常に言葉にできないわだかまりが渦巻いていましたが、獣が悲鳴をあげて殺される時だけ、それがすっと消えて行くような気がしたのです。
けれど、その残酷な見世物が終わると、またやるせない思いが押し寄せます。
それを紛らわすように、王様はいつだって金の鷲を遣わしました。
「お前は話が早くて助かる」
王様は言いました。
「狩りに行って来い。また獲物を生け捕りにし、私の前で殺すのだ。――そうだな、今回はひ弱な生き物がいい。お前に歯向かうこともできない小さな生き物が、無力を嘆きながら死ぬ様が見たい」
金の鷲は面白そうに瞳を細めました。まるで、いい案だと笑っているようです。
「おおせのままに」
言うが早いか、金の鷲はその翼を広げました。動かすたび、きめ細やかな羽毛が光を反射して煌めきます。鷲は一声鳴くと、開け放たれた窓の向こうへ飛び去って行きました。
ところで、王様の傍には六人の兵士と十二人の召使いが仕えていました。
彼らはとても忠実で、王様が望む限り、すぐ傍で主を守り、身の回りのお世話をしました。
今も後ろで立っている彼らを、王様は振り返りました。
「バルコニーに出て、鷲の帰りを待つことにする。支度をしろ」
「かしこまりました」
十八個の口が一斉にそう唱え、十八個の頭が一斉に下げられました。
まもなく、バルコニーに椅子とテーブルが運ばれ、茶菓子と採れたての葡萄酒が用意されました。
茶菓子をつまみながら、王様が澄み渡る空を見上げていますと、遠くに金色のものが見えました。鷲は迷うこともなく、まっすぐに王様の目の前にやってきました。
翼を未だ動かしたまま、空中に浮かんでいます。
鋭いカギ爪の間には、白い小鳥が震えていました。
「王様、お望みの物をお持ちしました」
鷲がそう言うと、小鳥はちらりとこちらを見ました。
王様は、ふっと笑みを浮かべます。
「殺してしまえ」
鷲は頭を垂れました。いよいよ小鳥を引き裂こうと、黄金の爪に力を込めます。
「お待ちください!」
小鳥が喉を震わせ、叫びました。
「王様、なぜ私を殺すのですか?」
「理由などない」
せっかくの楽しみを止められて、王様はいらいらしながら答えました。
「捕まったお前が悪いのだ」
「確かにそうかもしれません」
逃げようともせず、小鳥は妙に明るい声で返しました。
「ですが、私を生かせば、いいものを差し上げます」
頬杖をついた王様は、つまらなそうに片眉をあげます。
「私です」
小鳥は楽しそうにさえずりました。
「私が、あなたの話し相手になって差し上げます」
「無礼者!」
兵士の一人が叫びます。他の兵士も、持っていた槍をつきつけました。
「陛下になんという口の利き方を!」
「やめよ」
表情一つ動かさず、王様は言いました。
こいつを生かしてやってもいいかもしれない。そう思ったのです。
なぜだか分かりませんでしたが、理由など必要ありませんでした。
王様は殺しにさえ飽きていましたので、退屈しのぎになるなら、なんだって良かったのです。
「そいつを離してやれ」
そう言うと、鷲は金の双眸を見開きました。こんなことは初めてでしたから、鷲が驚くのも無理はありません。
小鳥を逃がすかどうかしばらく迷っていましたが、王様が相変わらずつまらなそうに見ているので、鷲は慌ててカギ爪を開きました。
小鳥はカギ爪をすり抜けると、自由を噛みしめるように、喜んで辺りを飛び回りました。
「ああ、嬉しいな!」
白い羽を無邪気にばたつかせます。
「ありがとうございます! 優しい王様!」
嬉しそうに笑う小鳥を見て、王様はなぜか、ひどく腹が立ちました。
「失せろ!」
飛び回る小鳥が、うるさい羽虫に見えました。
「もう一度ここへ来てみろ。次こそ私の鷲が、お前を八つ裂きにするぞ!」
けれど、小鳥は怯えることはありません。
「また来ます、情け深い方!」
そう言って、楽しそうに空の向こうへ飛んで行ってしまいました。
その日、王様は一日中不機嫌でした。
夕食の時間も、一言もしゃべらず、鹿の肉を噛みちぎるように頬張りました。
兵士や召使ははらはらしながら王様を見守り、早く笑顔が戻ってほしいと願います。
王様が笑っていることが、彼らの望みでした。
*
翌朝、王様が目を覚ますと、窓から差し込む朝日が、部屋中に溢れていました。
気持ちのいい朝です。
天蓋付きの豪勢なベッドから立ち上がると、目を細めながら窓を開け放ちました。
爽やかな朝の風が吹き込み、心が洗われて行くようでした。
と、そこに、小さな生き物が飛んできました。
「おはようございます、良い朝ですね」
王様は目を見開きました。
白い小鳥は楽しそうに続けます。
「王様、お約束通り話をしに参りました。良ければ、何かお聞かせ願えませんか? それとも私がお話をしても?」
「失せろと言ったはずだ」
王様はぎろりと小鳥を睨みました。せっかくの爽やかな朝を、台無しにされた気分でした。
「さっさと消えろ。さもなければ、金の鷲の餌にしてやるぞ」
小鳥は動きません。つぶらな黒い瞳で、王様を見上げます。
「王様、あなたは昨日、私を助けてくれました。どんなに脅しを言ったところで、お優しいあなたは、私を鷲になどやらないでしょう」
信頼しきった小鳥の声に、王様は無性に腹が立ちました。
何も知らない小鳥が、王様の事を分かったように話すのが許せなかったのです。
はらわたが煮えくり返り、いっそのこと小鳥を握りつぶしてしまおうかと思いました。
「うるさい羽虫め、殺してやる」
手を伸ばした瞬間、後ろの扉が開かれました。
「失礼します、ノックしてもお返事がなかったものですから」
召使の一人が顔を出しました。王様は怒りを堪えて振り返ります。
「何の用だ」
「朝食の準備が整っております」
王様の顔を見た召使の顔が、怯えたように歪みます。
「分かった、今行く」
王様は深いため息をつき、小鳥を一瞥しました。
「小鳥よ、命拾いしたな」
「ええ、お優しい王様」
朗らかに答える小鳥に背を向け、王様は扉へ向かいます。
その間も怒りがふつふつと湧き上がり、二度と小鳥を振り返りませんでした。
その日も王様は、不機嫌でした。
朝食を食べ終わると、届いた贈り物を見て、つまらなそうに顔をしかめます。
いつものように鷲に狩りをさせようかと思いましたが、金の鷲を見ても、口を開くことはありませんでした。
再びあの小鳥のように変な獲物がかかったらと思うと、どうしても命令する気になれなかったのです。
鷲は不思議そうに王様を見つめましたが、王様がその目を見返すことはありませんでした。
「王様、外の景色でもご覧になったらどうでしょう。いつものようにバルコニーでお食事をなされては?」
見かねた召使の一人が、そっと言いました。
王様がうむ、と顔色を変えずに呟くと、十二人の召使たちは慌てて椅子とテーブルを用意しました。まもなくバスケットいっぱいの焼きたての茶菓子と、上品なカップで波打つ緋色の紅茶が運ばれてきました。
空は昨日のように、どこまでも青く澄んでいました。そよ風が吹くたび、立派な口髭が揺れます。王様は少しだけ表情を和らげました。
その時、白い雲の一つがちぎれ、ひらひらとこちらに向かってきました。
王様が何事かと目を凝らしますと、それは雲に見えただけの、羽を精一杯動かす小鳥なのでした。
「王様、こんにちは」
二度追い払われたのに飽き足らず、小鳥は王様の目の前、テーブルの上にちょこんと留まりました。
さあ、どうしてくれよう。
怒りを堪え、王様が見つめていると、小鳥は元気な声で言いました。
「王様、聞いてください。面白い話を仕入れて来たんです。これはぜひとも、貴方様に聞いて頂きたいのです」
王様はすんでのところで怒鳴りそうになりましたが、家来の手前、そういつも怒鳴り散らすわけにもいきません。ぐっと眉を曲げ、怒りを隠して小鳥に尋ねました。
「どんな話だ。つまらない話だったら地に叩き落としてやるぞ」
王様は、小鳥の話なんて聞きたくもありませんでした。今はただ、理由もなく燃え上がる怒りを抑えるためにも、小鳥を殺す理由が欲しかったのです。
「聞いてくださるのですね!」
小鳥は嬉しそうに言い、ぴょんぴょんと王様の傍までやってきました。
「それでは、お話させて頂きます」
それは、森の動物たちの物語でした。
立派な角を自慢していた鹿が、木に角がからまり、動けなくなってしまう話。
川向こうの木の実が食べたいと、泳ぐ練習を始めたうさぎの話。
太陽に恋をしたモグラが、見つめ続けるあまり、目がつぶれてしまった話。
醜い姿を嘆き、姿の見える水面に近寄らなくなったカラスと、彼の友人である白鳥の話。
小鳥は喋るのが上手でした。
黄色のくちばしからは、物語が次々と転がるように出てきます。
その上どれも面白いものばかりで、小鳥が話すと、目の前で動物たちが生きて駆け回っているのが見えてくるようでした。
六人の兵士と十二人の召使は、仕事をしていることも忘れ、聞きいってしまっています。
けれど、王様だけは別でした。小鳥の話に興味も持てなければ、別段面白いとも思えなかったのです。なぜ家来たちが顔を輝かせているのかも、彼は分かりませんでした。
「もういい」
王様は不機嫌に言いました。
「お前の話は面白くない。殺してやる」
家来たちが息を呑みます。けれど、小鳥はめげません。
「それでは面白いと思って頂けるまで、お話を続けましょう。何が良いですか? 森の話だけではなく、色々な物語を知っているんです。私は世界中を飛んできましたからね」
小鳥は王様を見上げて続けます。
「ガラスの城に住むお姫様のお話はどうですか? それとも花を守る魔女の話? ああ、心を土に埋めた巨人の話なんてどうです?」
「黙れ!」
とうとう王様は癇癪を起こしました。
「物語なんてどうでもいい! これをやるからさっさと帰れ!!」
そう言ってバスケットの中の茶菓子を小鳥に投げつけました。
茶菓子は小鳥の足下で半分に割れてしまいましたが、小鳥は瞳を輝かせます。
「いいんですか?」
焼きたての茶菓子は赤いラズベリーが埋め込まれ、粉砂糖がちりばめられた特製のものでした。
王様が頷く代わりに睨むと、小鳥は興奮したように見つめ返します。
「ありがとうございます、王様。こんな素敵なお菓子は初めてです」
そう言って嬉しそうに茶菓子をくわえ、一つお辞儀をすると、青い空の彼方へ飛んでいきました。
兵士と召使いたちは、残念そうにその後ろ姿を眺めました。
皆、小鳥の話が聞きたかったのです。召使の一人は、がっかりするあまり、ため息をついてしまう程でした。
それを王様が見逃すはずありません。
「お前、私のやったことが気に喰わないのか」
王様が見やると、召使は縮み上がりました。
「いえ、滅相もありません」
「嘘をつけ。お前、小鳥の話が聞きたかったんだろう」
王様は表情も変えずに召使に近寄ります。
「ち、違います。王様、」
「お前は私より、小鳥の肩をもつんだな」
召使いは、いまやがたがた震え出していました。
「申し訳ございません、王様。申し訳ございません」
そう言って地につきそうなほど頭を下げましたが、王様の怒りは収まりません。
いつものように、殺してしまおう。そう思った時、頭の中に、小鳥の姿が蘇りました。
召使を殺せば、小鳥は悲しむでしょう。
どういうわけか、王様は小鳥に非難されるのが嫌だと思いました。
それすらも腹が立ち、怒りのまま召使を睨みました。
「城から出て行け」
殺すこともできず、王様は言いました。
その目は憤怒のあまり、燃えているようでした。
「出て行け! 殺されたいのか!」
召使はひっと声をあげ、慌てて王様に背を向けると、一目散に走って行きました。
王様は召使を、一人失ってしまったのです。
いつものことでしたが、王様は疲れが押し寄せてくるのを感じました。
いつもはこんなことはないのです。
きっと小鳥のせいなのだ。王様は密かに思いました。
いつかきっと、あの小鳥を殺してやる、と。
その日の夕方、王様は中庭で弓の練習をしていました。
二日後、狩りに行く予定があったのを思い出したのです。
王様はしなる弓を引き絞り、次々と的に的中させていきます。
十七人になった兵士と召使いは、矢が命中するたび、にこにこして王様を褒め称えました。
「さすが王様!」
「お見事です!」
「これほどの弓の使い手は、国中探してもいないでしょう」
けれど、その合間にまじって、「なにがお見事だ」という声が聞こえたのです。
それはかすかに、けれどはっきりと、王様の耳にも届きました。
「今喋ったのは誰だ!?」
王様は怒って振り返りました。
突然の事に、兵士も召使いも唖然としています。
「誰かが今、私をけなしたろう! 一体誰だ!?」
しかし、十七人の側近たちは、誰しも口を開きません。
皆怯えたように固まっています。それぞれ瞳だけを動かし、お前か? いいやお前だろう? とお互いに文句を言っているように見えました。
これでは、誰が王様をけなしたのかも分かりません。
いっそのこと、全員処刑してやろうかとも思いましたが、さすがにすべての側近が一度にいなくなっては困ります。
王様は仕方なく的に向き直り、一本、また一本と矢を撃ち始めるのでした。
腹立ちまぎれに放った矢は、今までと打って変わって的からはずれます。
王様がかっとなったその時でした。
「王様、何を怒ってらっしゃるのですか?」
あの小鳥が舞い降りて来たのです。
王様は怒鳴ってやろうと思いましたが、小鳥の目が真剣だったので、代わりに深く息を吐きました。
「話したところで、お前には分かるまい」
「おっしゃって下さい。何かお力になれるかもしれません」
小鳥の声は、今まで聞いた他の人々の声と、違う響きを持っていました。
ご機嫌をとろうとする側近たちのお喋りは、はちみつのようにねっとりと、王様を絡めとろうとしました。けれど小鳥のさえずりは、飾り気のないパンのように、心を満たして温めるようでした。
王様は今まで味わったことのない感覚に、弓をひきしぼる手をとめました。
小鳥のことは相変わらず嫌いでしたが、ちょうど話し相手が欲しいと思っていたのです。
少しだけ身をかがめ、小鳥にだけ聞こえる声で言いました。
「私のことを、誰かがけなしたのだ。犯人をつきとめたい」
「それは無理ですよ」
その言葉に、王様が顔をしかめると、小鳥は平然と言いました。
「そもそも、そう言わせないようにすればいいのです」
王様は眉をひそめます。
「すべて殺せということか」
「いいえ、王様。あなたが、陰口を言われないようになればいいのです」
王様はすんでのところで怒鳴りそうになりましたが、ぐっとこらえました。
こんなことを聞くのは初めてでしたから、少しだけ、その意見に興味を持ったのでした。
「小鳥よ、お前は何か良い方法を知っているのか?」
「はい」
小鳥は答え、次々に王様に注文しました。
わがままを言わないこと。側近たちの意見を尊重すること。人の物を奪わないこと。
「何より」
小鳥は言いました。
「簡単に誰かを殺さないこと。これが一番です」
さえずるように言うと、微笑むように黒い目を細めました。
王様は何か言おうとしましたが、小鳥は突然、慌てたように羽をばたつかせました。
「話を聞いてくださってありがとうございます。狩りの練習、お邪魔してすみませんでした」
そう言って空高く飛び上がります。
「ごきげんよう、また来ます」
いそいそと逃げるようにして飛んで行ってしまいました。
王様が訝しん振り返れば、そこには金の鷲がいました。
鷲は空中散歩に出ていたはずでしたが、いつのまにか戻ってきて、王様の近く、屋根のへりに留まっていたのです。
「いつからそこにいたのだ」
王様が尋ねると、鷲は羽に覆われた肩をすくめました。
「王様は最近、つれないですね。あの小鳥にかかりっきりだ」
王様は訳が分かりません。あんな小さな鳥より、立派な鷲の方が大事に決まっています。
「何を言う。お前こそ、私の一番の宝だ」
「宝、ですか」
「ああ、そうだとも。お前は私が貰った中で、一番気に入っている贈り物だ」
そう言うと、王様は鷲の傍を通り過ぎ、召使いに命令しました。
「そろそろ夕食にする。支度しろ」
「かしこまりました」
召使が頭を下げるのを見て、王様は城の中へ戻ります。
その後ろ姿を見つめる鷲は、やはり肩をすくめたのでした。




