1.画策〜Maneuver〜
ーー時は昨日に遡る。
賑わう昼食どきも落ち着いて王宮従事者たちはそれぞれの持ち場へ戻り始める。彼女もまた同じだった。
いつもの温室へと向かう。痩せ細った小さな身体でありながら重い足音を残していくミラの表情は不安げで、暗い。ここに居ない“彼女”のことを案じていると考えるのが自然だろう。
朽ちかけたビニール張りの戸を開くと、そんな彼女とは相反する生き生きとした様子の植物たちが迎える。幼い姿の彼女の成長から秘密まで見届けてきたもの言わぬ彼らのシャンと佇む様は、まるで全てを察し元気付けているかのよう。
「みんな…ありがとう」
ミラは音にはならない声を受け止めたみたいに見上げて微笑む。一通り水を与えていくと更に背筋を伸ばしてくれる植物たち。
こっちは大丈夫、そんな声でも聞いたのだろうか。ミラはやがて部屋を後にした。
そのまま裏庭の出入り口から外へ出る。ベンチを通り過ぎ、天使の彫刻を眺め、整った細い道をちまちまと歩いていく。しばらく行ったところで道が終わり、開けた。
すっかり春に染まったかのような乾いた温かいそよ風が彼女の頬を撫でる。ふわり、と花の香りが共に乗ってくる。
わぁ…
彼女は意図せずため息をこぼす。うっとりと目を細め口元をほころばせながら。
ミラが辿り付いたのは広大な規模を誇る庭園だった。赤、白、ピンクと色とりどりの薔薇の花たち、キラキラと光の粒を撒き散らす噴水、幻想的なその光景はきっと誰もが見惚れてしまうだろう。
「何ヶ月ぶりかしら…相変わらず、綺麗に…」
思い返すみたいにこぼしながら花の庭園を歩いていくミラ。そんな彼女もまた、花の妖精であるかのよう。
やがて噴水の前の白いベンチで彼女は足を止めた。
「ちょっとだけ…」
誰も見ていないのに一人でペロッと舌を出す。ほんの少し後ろめたいくらいのときに人はよくこんな仕草をするのではないか。
柔らかく陽を反射するベンチへミラはそっと腰を下ろした。背もたれに体重を預け、空を仰ぐ。雲さえもまばらな限りなく快晴に近い空に目を細める。
ぼぉっ、と空想にふけるように彼女はしばらくそのままでいた。
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ーー更に遡ること1年前。
彼女は病院の一室で目を覚ました。色を取り戻していくアクアマリンの瞳がやがてヒビ入りそうに細かく揺れた。
何故ここにいるの?そして、何故生きているの?とでも言うように。
細い手首に巻かれた白の帯。その下が深く傷付いていることを知っていながら、そこを強く容赦なく握り締める。爪まで立てて。
ベッドの上、表面的な痛み以上の絶望にうずくまっていた彼女の側で扉が開いた。現れたのは数ヶ月前に従事したばかりの王宮専属看護師・メイサ。
「起きたのか、ミラ。もう退院していいってよ」
起こった事件などものともしないような晴れた笑顔で彼女は言う。遅れて白衣を纏った医師と見られる女性が入ってきた。
「傷なら縫い合わせたのでもう大丈夫。一週間後、抜糸に来て下さい。お薬を出しておくのでちゃんと飲むんですよ」
見えない部分が全く大丈夫でない小さな彼女の頭を撫でながら、医師は優しい口調で言った。
薬はメイサが受け取った。彼女は相変わらず何事もなかったかのように笑顔で、行こ、と促す。反してミラは小さな肩を更に小さくしてばつが悪そうにうつむく。
「メイサ…ごめんなさい。さっき看護師さんから聞きました」
あなたが助けてくれたんですね、とこうべを垂れたまま言う。
「お、おう。まぁ助かって何よりだよ」
少し頬を赤くしたメイサが鼻の下を擦りながら後ろを付いてくる彼女へ返した。
まだほとんど話したことのない二人。メイサは時折ちらちらと後ろへ視線を送る。彼女をそうさせるのはきっとただ“慣れない”ということだけではなかっただろう。
「私はまだアンタのことよく知らないけどさ、何か悩んでんなら言いなよ?」
私、一応医者なんだぜ。
気持ちを切り替えたみたいに振り返って、ししっ、と笑うメイサ。ミラは頷いた。持ち上げたその顔にやっとの笑みを浮かべて。
「そんな気がしていました。メイサ、あなたは並外れて頭がいいから…」
本当に、ありがとう。
そう言って柔らかく微笑む。幼い顔を占めるあまりにも完成された表情をメイサはじっと見ていた。
メイサの運転する車で王宮に戻ったミラはそのまま真っ直ぐ救護室へ連れられた。
「もうちょい元気になるまではここに居てもらうよ」
ベッドのシーツを整えながらメイサが言う。
「大丈夫、私が話し相手になってやっから!」
「…ありがとう」
ポンポン、と肩を叩かれたミラはまたうっすらと消えそうな笑みで答えた。
綺麗に整った白いベッドと用意された点滴。静かに横たわり嫌がる様子の一つもなく針を打たれるミラ。ためらうように伝う薬剤の流れに伴って、メイサもまたためらいがちに口を開いた。
ねぇ…
彼女は言った。
「アンタさ、もしかして…滅茶苦茶精神年齢高くない?」
「……!」
意表を突かれたように固まるミラ。それを目にして確信を覚えたのか、メイサが目を輝かせて身を乗り出す。
「前に聞いたことがあるんだ。子どもなんだけど子どもじゃないっていう…本当に稀だけど」
違う?
彼女の問いかけにミラはしばらく黙っていた。それから小さくかぶりを振って答えた。
「…前世の記憶が、あるんです」
「キタ!!」
声を上げたメイサの拳がぎゅっ、と握られた。え、とこぼして見上げるミラの呆気にとられた顔に気付く頃、彼女は我に返って慌てて表情を立て直した。不謹慎だという自覚くらいはあったのだろう。稀少な患者に出会った医師…無理もない反応だったのであろうが。
じゃあさ、とメイサが仕切り直す。
「ミラの悩みってもしかして前世絡み?…兄貴じゃなくって?」
彼女の問いかけに一瞬動揺を露わにしたミラ。きっと、最後の一言に対して。
しかしすぐに落ち着きを取り戻した。自室にあの手紙を残したのは他でもない彼女なのだから、その後を理解するまでそう時間はかからなかったのだろう。
「彼のことは前世から知っているんです。」
忘れることなんてできない…大切な人。
はっ、という息遣いと共に大きな目を見開くメイサ。自身の表情が甘く溶け始めていたことにミラは気付かなかった。目の前の彼女に問いかけられるまで。
「…好きなんだ?」
「え…」
やっと気付いたミラの目がせわしなく泳ぎ出す。頬を熱に染めながらそれでも誤魔化そうとしている。
突如、メイサが笑い声を上げた。何か突っ込みたそうな苦笑を混じえて言う。
「だって中身はいっちょまえの女な訳だろ?何もおかしいことはないさ」
「え、ええ…」
ずっと秘めていたことを見抜かれてしまった動揺なのか恥ずかしさなのか、ミラは赤い顔を半分程、布団の中へ潜らせていく。
「“逢いたい”っていうあれは恋心だったのか…そうか…」
うんうん、と一人納得したように頷いているメイサにミラはやめて、と言わんばかりの泣きそうな視線を送る。口元を覆われた曇った声で彼女は呟く。
「…最後に思いの丈をぶつけるつもりで筆を取ったの。だけどいざとなると虚しさばかりで、残ったのは…あれだけ」
何もしなければよかった…
自らを悔いる言葉の後、ミラは更に小さく縮こまる。そこへメイサが問いかける。
「思い出したのは、いつ?」
静かな視線で見下ろす彼女を布団に埋まったままのミラがやっと見上げる。
「…去年、です。あのときはパニックに陥った私をレグルスさんが助けてくれました」
「じゃあアイツは知ってるんだ?」
こくりと頷いた。ミラは答えた。
「今、私が記憶を持っていることを知っているのは、レグルスさんとメイサだけです」
ん、と呟いたメイサが動きを止めた。不思議そうに首を傾げた彼女がまた問いかける。
「ミラの兄貴って確か、レグルスの一個下…だよね?アイツから聞いたんだけど」
「……?」
「今、21ってことだろ?前世から知っている仲なら兄貴の方も気付いてるんじゃね?普通…」
キョトン、としていたミラの表情はゆっくりと曇っていく。困惑したような悲むような、そんな色へと。感じ取ったみたいにメイサも口をつぐむ。
「…シャウラは覚えていないの。ずっと思い出せないって…」
「あー…そっちのパターンかぁ」
弱ったように顔をしかめたメイサがパチン、と自身の額を叩いた。【前世喪失】だね。聞き慣れない言葉を彼女は口にした。
これも稀に起こることなんだ…
明らかになるメイサの知識にミラは興味深げな目の色で見上げる。やがてメイサの表情がきりりと引き締まった。
「これは“女の武器”より“子どもの武器”を使う方が得策だな!」
「え?」
突然、真顔で言い出した彼女にミラは驚きの表情で見入る。メイサは得意気にふふん、と鼻を鳴らす。いいか?彼女は続ける。
「“私にはお兄ちゃんしかいないの…”っていう姿勢を全面に出すんだよ。そいつが鈍感な奴なら少々ぶりっ子なくらいでいい。とにかくよそ見をしないように繋ぎ止めておくんだ」
「え、あの…」
「アンタだってあと10年もすりゃあ嫌でも大人の身体になる。今でこれなら相当な美人になるはずだよ。その頃アンタは16歳、兄貴は…31か。まぁ、アリだろ。この世界では結婚が許されている歳だ」
「けっ…!?」
耳まで赤くなったミラの口元がぱくぱくと空回る。あくまでもマイペースに語り続けるメイサ。その漆黒の目はランランと輝いている。
「男なんて単純なもんでね、若い女に言い寄られて悪い気はしないんだぜ?」
やがて浮かんだ妖しい笑みがミラを更に追い詰める。
「そしてアンタはお色気たっぷりに兄貴に迫って言うんだ。“あなたは私の運命の人よ…”ってな。こんなことをされちゃあ健全な男はひとたまりもないよ。晴れて理性を失くした兄貴はアンタを…」
「ちょっ…ちょっと待って、メイサ!!」
がばっと布団を浮き上がらせ起き上がったミラがメイサの服にしがみついた。伏せられたりんごのような顔、ぷるぷると震える小さな手、もう限界と訴えるように。
「おい、急に起き上がったら貧血起こすだろ!」
再びベッドに横たえられたミラは今度こそ布団の中に頭まですっぽりとうずめた。
「だって…聞いてられないよ…」
やっとくぐもった声だけがそこからする。メイサはつまらなそうに唇を尖らせる。
「んだよ、こっからがいいところなのに」
布団がぴくりと動く。まだこれ以上のことを言う気だったらしい彼女に唖然としているのか声は返ってこない。
メイサは諦めたようにため息を落とした。ミノムシみたいに丸まって塊と化している彼女を見下ろしながら苦笑する。
「いっちょまえの女とは言っても純情なんだな、ミラは」
「そんなんじゃ…ないです」
いくらか落ち着きを取り戻したような品の良い口調が布団の中から返ってくる。
「私は、シャウラが幸せになってくれれば、それで…」
その言葉を受けたメイサは何処か煮え切らないような顔をした。再度のため息をついて両の腰に手を当てる。
「でもさ、そうやってウカウカしている間に他の女に取られるかも知れないぜ?あっちの組織にだって女はいるし…あ、そういう趣味の男もいるか」
「えっ…」
聞き捨てならない言葉はおそらく最後の一文だろう。思わず泣きそうな声を漏らすミラ。少しばかり慌てた様子のメイサが冗談、冗談、と言って笑った。
まぁとにかく、さ…
彼女は言った。
「アンタはこれでいいのか?ずっと妹として見られたままで、気持ちに気付いてもらえなくても?」
「……」
「そんなの寂しくねぇのか?」
「……少し」
何が少しだ、とでも言いたげに顔をしかめるメイサ。布団の塊がまたか細い声をこぼし始める。
「前世…20歳のときだったわ。私は彼を悲しませたまま死んでしまって…だから今世では笑っていてほしかった。少しでも支えになりたくて、必死に彼の居場所を探して生まれ変わったの。なのに…」
「てかさ、苦しくねぇの?酸欠になんぞ」
痺れを切らしたメイサの手が伸びた。布団を掴んで一気に跳ね除けた。小さく息を飲んだ。
自分の肩を抱きかかえて小刻みに震える華奢な少女がいた。虚ろで壊れそうな瞳。胎児のように身体を丸めてやっと息をしている。布団に埋まらなくったってすでに酸欠状態なのだと全身で主張している。
しばらく目を奪われていたメイサがゆっくり椅子へ腰を下ろした。思考を巡らせるように唸った後、彼女は言った。
「問題はどうやって兄貴を取り戻すか、だな」
「メイサ…」
ミラの潤んだ目がそちらへ向く。真剣に考えるその姿勢に心を打たれたのか、彼女は再び小さな口を開く。
「私もどうしたらいいかわからないの。シャウラはきっと…」
少しの間があった。それでも言葉は続いた。
「スピカ様を大切に思っているわ。あのお方が呪いに縛られている以上、彼はどうすることもできない。形は違うけれど、彼も私たちと同じようにスピカ様を守ろうとしているの」
寂しげににうなだれるミラ。それに対してメイサは首を傾げ、はぁ?と返す。不機嫌そうな苛立ちさえ感じさせる声色だった。
「そりゃあ王女様は誰でも崇拝するだろうけどさ、どう考えてもアンタを守る為だろ。何言ってんだ」
え……
呆れ顔で言い放つメイサに対してミラはぽかんとしている。何か思い出すみたいな間の後、その顔がふるふるとかぶりを振った。円らな目にはついに涙さえ浮かんだ。
そうだったらいいな、と少しでも思ったのだろうか。悲しみとはまた異なる、嬉し泣きに近いものへと変わっていく。そんなこと…とミラはすすり上げながら言う。
「だって記憶を取り戻す前私すっごく泣き虫で、シャウラには沢山迷惑をかけたのよ。そんな私なんてお荷物でしか…」
「大丈夫だ。今でも…」
十分泣き虫じゃねぇか。そう続けようとしたであろう最後をメイサは飲み込む。ひとまずは静かに、水音混じりの声に耳を傾ける。
「それに私、赤ちゃんのときに引き取られたから何もできなくて…」
「うん」
「おしめまで替えてもらっちゃっているのよ…!」
「そこかよ!!」
真っ赤な顔を両手で覆ったミラへ、ついにメイサの突っ込みが降りた。
口にすると余計にリアリティを増して迫るのが羞恥心というもの。いたたまれず身体を丸めたミラはその後しばらく熱にうなされていた。
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皆が寝静まったその日の晩、自室の窓際に腰掛けたメイサは一人葡萄酒を飲んでいた。
月明かりの満ちる十六夜の日、しかも晴れ。窓を開けると蒸した空気と共に青白い光が部屋へ流れ込む。
漆黒の目に映るのは南の空。夏の星座・蠍座がはっきりと見える。
メイサは瞼を伏せた。脳内から溢れて広がっていくように彼女の記憶が動き出した。
ずっと昔、まだフィジカルの離島に居た頃。
満点の夜空の日、屋根裏に幼い少女と少年が居た。姉さん…望遠鏡に手を添えたままの少年が振り返った。
ーーあれが蠍の尻尾、【おどとい星】ーー
ーー“兄妹”って意味なんだってーー
とりわけ星座に関して物知りな少年が得意気に語り出した昔話。黙って聞いていた少女は痛みに胸元を握った。
恐ろしい山姥に追いかけられてなお、決して離れることのなかった幼い兄妹の小さな手。もしその手を離さなければならないとしたら、どれ程身を切られるような苦痛を感じるのか…
そんな風に思いを馳せたのか、少女はそっと少年へ近付き手を取った。驚き見上げる弟にはっきりとした口調で言った。
私だって離さないよ。何があっても。
やがて少年は笑った。僕もだよ、姉さん。そう返してくれた。
遠ざかっていく屋根裏の景色。
グラスの中身を飲み終えたメイサはふっ、と熱いアルコール混じりの息を吐いた。ミラ…か。小さく呟いた。
陰る表情。今思い返しているのは間違いなく呟いた“彼女”のことだろう。
「取って付けた仮面なんて、長持ちしないよな…」
独り言を漏らすメイサは思い描く彼女の気持ちの何もかもをわかっているようだった。
すでにヒビの入ったその場しのぎの仮面が粉々に砕ける日が遠くないことも、希望を見出せなくなったアクアマリンが汚染された海の如く淀んでいくであろうことも…
そして、彼女が今後も自分を痛め付けていくであろうことも。この世界での死を迎える日まで、ずっと。
うーん、とメイサは無意識に唸った。腕を組んでおどといの星を仰ぎ見る。そのままブツブツと呟き始める。
これは可能、これは不可能、こっちは…
知識の網を張り巡らせ、繋いでは解き、また繋いでを繰り返している。その姿は普段のおちゃらけたものとはまるで異なる、やや変人寄りの才女そのものだ。
断片的な呟きが徐々に纏まりを見せていく。おもむろに立ち上がったメイサはなおも呟きながら部屋の隅へと向かう。
書類と本にまみれて散らかっている、女性のものとは思い難いデスク。そこを掻き分け一冊の本を見つけ出し、間から栞を取り出した。
一見しっかりラミネートされているように見える栞に付いた紐を引くと、すとん、と小さな鍵が姿を現した。デスクの一番下の引き出しにそれを差し込んで回した。
カチャ、と響く音。開いた引き出しの中へメイサの両腕が差し入れられる。いかにも重量感のある分厚い冊子を掴んで戻る。
「確かこの辺りに…」
纏まりかけていた案を見失わないよう同じ内容を繰り返し呟きながらページをめくっていく。素早い手の動きはある場所で止まった。
魔力と科学が融合したセキュリティシステム【ガーディアン・エンジェル】
親しいシステムエンジニアと共に幾度もの研究を重ね、つい最近形になったばかりのもの。
「まさかこのタイミングで引っ張り出すことになろうとはね。これは…」
大きな賭けだ。
大部分の緊張の中に一抹の好奇心を秘めたメイサの漆黒の双眼が月明かりを余すことなく反射する。何度かためらうように二の足を踏んだ彼女はようやくデスクの前へ着いた。覚悟を決めたように乱雑に転がったペンの一つを強く握った。