水晶湖
その日の夜、J村くんは水晶湖にいました。
若者達でにぎわう湖畔のキャンプ場で、凄惨な殺人事件を起こし、プロの殺人鬼として名を売るためです。
プロデューサーになった星さんの提案でした。
J村くんは早速、コテージに忍び寄ります。
中からはワイワイと浮かれた若者達の声が聞こえてきます。
その声が悲鳴に変わる様を想像し、J村くんがニヤリと笑います。
「さあ、影が蠢動する地獄の夜の始まりだ・・・・・・」
イタい台詞と共にドアを蹴破ろうとして──
──J村くんはふと疑問を抱きました。
招待もされていない人が押し入るのは、不法侵入に思えたのです。
それに不審者扱いされて、気持ち悪がられるかもしれません。
空気を読めない奴だと白い目で見られる可能性もあります。
もしそんなことになったら、J村くんは耐えられないでしょう。
ガラスのハートが粉々です。
悶々と悩んでいるうちに、夜が明けてしまいました。
帰宅すると、星さんが成果を聞いてきます。
J村くんは包み隠さず事情を話しました。
「殺人を犯すのだから、そんな些末事を気にする必要ないのでは?」
星さんは呆れたように言いました。
「確かに!」
目からウロコでした。