告白
「ただいま」
J村くんがアパートに帰ると、
「おかえりなさい」
相変わらず星さんが居座っていました。
「退院おめでとう。お祝いにご馳走作りますね」
そういって腕まくりする星さんを、J村くんが慌てて止めます。
「恋人の料理がいらないっていうの?」
当たり前じゃないか! とは口が裂けても言えません。
「や、病み上がりで食欲がないんだ」
J村くんがフォローすると、星さんはしぶしぶ引き下がりました。
今回は難を逃れましたが、問題の先送りにも限界があります。
このままでは食中毒と入退院の無限ループです。
J村くんは必死に知恵を絞り、やがて打開策を思いつきました。
「聞いてほしいことがあるんだけど──」
J村くんは意を決して、ある秘密を告白します。
「──実は、僕はアマチュア殺人鬼なんだ」
そうです。J村くんは殺人経験のないアマチュア殺人鬼でした。
「な、なんですって!?」
星さんが驚きの声を上げます。
J村くんの作戦はいたってシンプルでした。
自分がアマチュア殺人鬼であることを明かし、星さんを失望させて出て行ってもらう。
最悪、「騙された!」と激怒した星さんにシバかれたとしても、毒料理でジワジワと弱らされるよりは幾分マシです。
「・・・・・・そうですか、わかりました」
しばらくして、落胆していた星さんが口を開きました。
このまま素直に出て行ってくれれば、理想の展開です。
しかし──
「では私があなたのプロデュースをしましょう。私好みの、立派な殺人鬼に育ててみせます!」
──予想の斜め上をいく回答でした。