アグレッシブな獲物
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仕事帰りのJ村くんがてくてく歩いていました。
時計の針は二十一時を指しています。
外はすっかり真っ暗です。
しばらくすると、通りの向こうから若い女性がやってきました。
どうやらJ村くんにはまだ気づいていないようです。
「しめた!」
J村くんはポケットからホッケーマスクとチェーンソーを取りだし、装着しました。
女性の行く手を立ち塞ぎ、スロットルを引っ張ります。
ギュイィィィィン
エンジンが高速で回転し始めます。
その音で女性がはっとしたように顔を上げました。
しばし見つめ合う二人。
「ひょっとして、あなたは殺人鬼ですか?」
やがて女性が恐る恐る尋ねました。
J村くんは返事をしようと口を開きかけ、思い直してやめました。
喋る殺人鬼なんて陳腐です。
かわりに、
コクッ
小さく頷きました。
女性の目が驚いたように見開かれます。
街中でライオンにでも出くわしたような顔です。
「本当に本物なんですか?」
確認する女性の声は、震えているようでした。
コクッ
J村くんはまた小さく頷きます。
「私を襲うんですか?」
コクッ
「キャアァァァー!!」
女性は耐えかねたように悲鳴を上げると──
──なぜかJ村くんの方に向かって、ものすごい勢いで駆け寄ってきました。
このままだとチェーンソーに一直線です。
「あっぶなあぁぁぁぁい!!」
J村くんは間一髪でチェーンソーを放り投げました。