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殺人鬼J村くん。  作者: うずら
1/13

ヘッポコ殺人鬼。

ネット小説初投稿です。

休日にのんびり更新していく予定です。

可愛がっていただけると嬉しいです。

よろしくお願いします。


 J村くんは殺人鬼です。

 チェーンソー片手に獲物を狩ります。情けも容赦もありません。


 その日の晩は新月でした。

 辺りは真っ暗で、寝静まった住宅街は閑散としています。時々、街灯がチロチロと点滅しているくらいです。通り魔にはうってつけの夜でした。


 JR村くんは物陰に隠れると、ホッケーマスクを被りました。

 息をひそめて獲物を待ちます。

 さっそく向こうから人影がやってきました。


「・・・・・・畜生、あんのバカ弟子めえ!」


 その人はガチムチマッチョの筋肉達磨のような男性でした。

 黒いタンクトップから、丸太のような腕がのぞいています。

 何かトラブルでもあったのでしょう。かなり気が立っているらしく、忌々しそうに唾を吐き捨てています。


 J村くんは慎重な殺人鬼です。

 触らぬ神に祟りなし。

 筋肉ダルマさんはやり過ごすことにしました。


 次にやってきたのは、小さな男の子でした。


「・・・・・・」


 今度は力も弱そうですし、一緒に親がいる気配もありません。

 これはチャンスです。チェーンソーのスロットルに手が伸びます。


 しかし思慮深いJ村くんは、ふと違和感を抱きました。

 こんな時間に子供がひとり出歩いているのは不自然です。


 J村くんは最近の子供は凶暴だというニュースを思い出しました。

 きっとこの男の子は、手のつけられない不良少年に違いありません。

 J村くんは黙って男の子が去っていくのを見送りました。


 最後にやってきたのは、腰の曲がったおじいさんでした。


「七月は〇夕で酒が飲めるぞ~っと、ひっく!」


 お酒を飲んでいるのか千鳥足です。

 上機嫌に『日本全〇酒飲み音頭』を歌っています。

 酩酊したおじいさん。一見するといいカモですが、なぜか襲おうという気になれません。


 J村くんは首を傾げ、すぐその理由に気がつきました。

 おじいさんの目は正気でした。

 ゆるみきった表情の奥で、しかしその瞳は鋭く光っています。

 何かの武術の達人なのでしょう。ふらつきながらも隙がありません。

 

 J村くんが尻込みしていると、突然、おじいさんが鋭い突き蹴りを放ちました。


 ボッ、ボッ、ボボッ


 その姿はさながら『酔拳』のジャッ〇ー・チェンでした。

 変幻自在。予測不能。

 一般人にはとても読み切ることなどできません。

 突きのようにも、何かをつかもうとしているようにも見えます。


 やがておじいさんは、必死の形相で民家の塀にしがみつきました。

 そして安堵の表情を浮かべると、路傍で盛大にリバースし、フラフラと塀伝いに歩いて行きました。


 その後も何度か様子見を繰り返す内に、空が白み始めました。

 こうなるともう獲物を望むのは難しいでしょう。


「・・・・・・ふっ、今日は命拾いしたな、羊ども」


 J村くんはニヒルに呟くと、トボトボお家に帰りました。

 決して負け惜しみではありません。違うったら違うのです。

読了ありがとうございました。

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