ギルドと騎士
神威達が魔物の群に向かった後のギルド。
受付にいたサリアが心配そうにアギスに話しかけた。
「ギルドマスター、カムイさん達は大丈夫なんですか?カムイさんがいくら1人でドラゴンを討伐する事が出来るとしてもかなりの数の魔物相手に初めは大丈夫かも知れませんが直ぐに体力的な問題が出て来ませんか?それにアイシャさんに限ってはそこまでの実力をまだ持ってないと思います」
「確かにそうかもしれん。だがアイシャは数日間ダンジョンに挑んだだけでわしが驚く程に実力を上げている。今まであの強さでとどまって居たのが不思議なくらいだ。カムイに限っては魔法も使える様だしダンジョンでいる間カムイが戦いで疲れた様子を見たことがない、最悪魔法で逃げ帰ってくる事も出来るだろう」
「そうだと良いのですが……」
「それに、カムイの傍で居た竜の子を見ただろ?あの竜の子が、いる限り少なからずアイシャは逃げる事が出来るだろう、何かがあったとしてもカムイは竜の子を使ってアイシャを優先的に逃がすと思うしの」
「そうですか…それであの竜の子はどうしたんですか?竜が人間に懐くなんて聞いたことありませんよ」
「あぁー、余り詳しい事は言えんがあの竜の子はいろいろあってカムイにかなり懐いてる、それにアイシャにも懐いている。その上ダンジョンで出会ったブラッディーベアーを一撃で仕留めたらしいからの」
「ブラッディーベアーですか!?Bランク以上の冒険者が数十人で倒すような魔物じゃないですか!」
「ああ、その魔物を一撃で仕留める程の強さを子供でありながら既にと持っていることになるな」
「そうなりますね……ってギルドマスター結構な情報を喋ってませんか?」
「そう言えばそうだな、まぁ、サリアが情報を周りに漏らさなければいいことなんだがな」
「はぁー、カムイさんの専属になってから気苦労が絶えません」
「確かにそのとおりだな」
アギスとサリアが神威達の事を話しているとギルドに鎧を着た2人男が入って来た。
そのうち先に入って来た1人は真面目そうな印象とキツめな印象が持てる。それに対してもう1人はチャラチャラした印象である。
この、全く違う印象の持てる2人だが1つ共通しているとことがある。それは多少鎧に違いがあれど2人とも鎧の良く見える場所にこの国の紋章が見える。
その人の鎧に国の紋章があるっていうことはその人間は国の騎士であることがわかる。
そして今は先に入って来た男がアギスに話し掛けている所だ。
「貴方がここのギルドマスターのアギスさんですか?」
「そうだがお主は誰だ?」
「申し遅れました。私はアルバスタム騎士団団長カイゼルと申します。そしてこちらが……」
「アルバスタム騎士団副団長ロウレスっス。よろしくっス」
「ああ、よろしく。それにしても国の騎士がなんの用でここに」
「今日ここに来たのは私個人の理由できました」
「個人の理由というと?」
「それは、ここに私の妹が居ると思うのですが知りませんか?」
「妹と言われても名前がわからないとな……」
「これは失礼しました。妹の名前はアイシャと言います」
「アイシャなら知っておるぞ」
「本当にですか!今どこにいます?」
「アイシャなら丁度数分前に魔物の群れに向かったぞ」
「は?……それはどうゆうことですか!なぜアイシャがそんな所に向かってるのですか!」
「落ち着いて下さいよ団長。この人もギルドマスターなんですから何も考えずに行動してるとは思いませんよ、それに団長の妹さんが1人で行ったとは限りませんっスよ」
「………そうなのですか?」
「安心せい、アイシャは1人では向かってない」
「そうですか、それではアイシャ以外に何人の人がいるのですか?」
「1人だけだ」
「それで安心出来るわけないじゃないですか!」
「まぁ待て、1人と言ってもそいつ自身かなりの実力の持ち主だ、それに人間ではないがもう一匹一緒に居る、そいつがアイシャを守るだろう」
「それでも私は安心できません。私は自分が認めた相手じゃないと信用できませんので私自身がアイシャの、所に向かいます……それでは」
そう言いカイゼルはギルドを出て行った。
「ちょっ!待ってくださいよ団長おぉ!いやーすみませんっスね。団長は普段なら冷静に対処できる筈なんですが妹の事になるといつもこう暴走してしまうんっスよ。俺はそれを止めるためについて来たんっスけどね止めれませんでした。では俺も行かせてもらうっス、お騒がせしたっスね」
そしてロウレスはカイゼルの後を追いかけていった。
「なんか…いろいろすごい人達ですね……」
サリアが呆れながら呟いた。
そのあとロウレスは直ぐに門の方向に向かっているカイゼルに追いついた。
「団長待って下さいっスよ。今のままで行っても助けるどころか足手まといになるっスよ。それに馬も準備しないでどうやって行くつもりっスか」
「……すまない、少し暴走していたようだ」
「少しじゃなくてかなりっスよ」
「そうか、すまないないつも迷惑かけて」
「いいっスよ。団長を支えるのが副団長の、俺役目っスから。それより早く準備しないと手遅れになるっスよ」
「そうだな。急ぐとしようか」
そして2人は1度準備するために城に戻り自分の馬で魔物の群れに向かった。