部屋の怪 Hくんの場合
H君は私の大学時代の後輩の弟で、たまに大学に遊びに来て顔をあわせたことがあった。ある時、私が怪談を集めていると知ると、
「実はいくつかそういう経験があるんです 」
と言って、話を聞かせてくれることになった。
Hくんシリーズ その一
H君の部屋は家で一番いろんなものがでる。ある日、夜中に目を覚ますと知らない人が顔を覗き込んでいるような事があった。光の虫が出るのもそうだし、ホラーゲームの画面に顔が映りこんだのもそうだ。
ある日、パソコンでネットサーフィンをしていたら、家に幽霊がいるかどうかを調べる簡単なテストが載っていた。それは、心を落ち着けて、玄関から入って家の中を一回りして確認している自分を想像すると言うものだ。もし幽霊がいたとするとどこかの部屋に人影がいるのだそうだ。
“こんなもの自分で想像しているんだから、もし、見えたとしてもなんにもないだろう ”
そうたかをくくっていたが、部屋を順番に開けていって、それがお風呂場まで来たとき、なぜか人影を感じた。
“あれ? ”
なんだか、妙にむずがゆいような落ち着かない気持ちがわいてきた。いると思った瞬間お風呂場の浴槽にうずくまっていた影は立ち上がり、風呂場を出て走り出した。急いで意識を解いたが、足音は止まない。だってそれはもう想像ではなかったからだ。ひたひたひたひたひたひた……それが階段を駆け上がって一番奥の自分の部屋にやってくる。自分の部屋のところまで来ると、誰かが勢いあまってバーンと扉に手をつく音が聞こえた。やたらに怖かったので、その日は扉を開けずにそのまま寝てしまった。
一時期お札を貼って見た事があった。なぜかと言えば、部屋のいろいろなところから小さな声でこそこそ話している音が聞こえてくるのが続いたからだ。その音に耳を傾けていくとその声が段々大きくなってくる。しかも話すスピードが音と共に加速度的に速くなっていくのだ。ドー!っとあたりにいっぱいになると、耳元でワッ!っと脅かして消えるのだ。