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通学路に起きた問題は

――小学生は残酷だ。

というか、子供はと言った方がいいかもしれない。子供の頃は平気で蟻やバッタなんかを殺してしまったり、やたらに草をむしってしまったりと興味のままに行動する。それも必要な事なのだろうが、大人になって考えると思うところがあるのも事実だ。そんな子供の通り道はいつだって不思議に満ち溢れている。

Sさんが小学生の頃、小学校の通学路で猫が轢かれていた。これは小学生にしたらちょっとした事件だ。子供たちは何時だってなにか興味を引くものを探している。もしその猫の死体が綺麗なら誰か心優しい人が路肩に片付けたり、運がよければ墓の一つも作ってくれたのだろう。しかし、その猫は跳ねられた後、何度も轢かれていた。はらわたや、目玉は飛び出し、体は襤褸切れの様にぺちゃんぺちゃんにつぶれっていた。壮絶で凄惨というしかない。いつもの通学路はまったく違う道になっていた。

たまたまそれを見た近所のおばあさんが通学中の子供達に「可愛そうがっちゃいけないよ。ついてくるから…… 」と言っていた。なにぶん子供の事だから、そういうのを気にしてしまったのかSさんはそれを夢に見てしまい、随分うなされたそうだ。


どんな夢かと言うと夕暮れの夢だ。夕暮れなのにあたりは馬鹿に暗い。廊下のような暗く細い道にいる。寂しく暗い道を呆然と歩いていくSさん。その暗い道の奥に明かりが差しているところがある。空間にぽつんと浮かぶ窓だ。窓はこの道に一筋の光を投げかけるのだが、そこからあの猫が出てくるのだ。夢は何度も繰り返し、寂しい道の奥に猫が一匹窓から入り込んでは振り出しに戻る。

そんなこともあり、Sさんはあの道を使うのが怖くて怖くて仕方がなかったのだそうだ。そして、ほかの友達もみんな猫の死体の取り残されたあの道を使うのが恐ろしくてしばらく使えなかった。当然学校では猫の話でもちきりになった。

そんな噂話が盛り上がる中、別の通学路班の六年生のAという男の子がその話を聞いて、

「よし、その猫、俺が退治してやる 」

と言って、通学路破りをして(Sさんの住んでいた地域はいつも決まった通学路を使わなければいけなかった)、わざわざその道を通ったのだ。彼はそのぺっちゃんこになった猫を笠の先でつつくと、そのまま笠の先に引っ掛けて吊し上げ、あたりを引きずり回した。ちょっとした英雄気分からか、それとも特別な事をしている高揚感からか、Aくんはその後、猫をつつきまわした笠を女の子の方に向けて追い掛け回し始めた。女の子がキャーキャー悲鳴を上げて逃げ回るのを見ると何かに憑かれたように笠を振り回し、ひとしきり暴れまわった。もしかしたら、もうその時、A君はなにかを感じていたのかもしれない。

翌日、Aくんはなぞの高熱を発して、学校を休んだ。そのまま、一週間も三十九度の熱が続いた。A君だけではなく、ほかのみんなも熱こそ出なかったが、なにかの呼び声や視線を感じるということが起きるようになった。Sさんはその一週間は得体の知れない気配に怯え続けた。油断をするとどこからか呼ぶ声に攫われてしまいそうな気がして、恐ろしかった。あの時、A君の行為を止めなかったみんなも猫はどこかで腹立たしく思ったのか? それとも、助けを求める切なる声だったのか?


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